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16話 心機一転

 シルト、ロゼ、リヒトの三人はメルクーアから衝撃の事実を知らされた。

 なんと愛用の武器が呪われていたのだ。

 師匠からの愛の鞭なのだろうが、早いところ武器を買い替えることを決意するのだった。


「メルクーアさん。いろいろとお話しできて嬉しかったです! 武器のことも教えて頂きありがとうございました!」

「いいのよ。どうやら私はあなたたちのファンになっちゃったみたいだもの。応援してるわ!」


 三人がメルクーアと別れようとしたとき、


『ピィー』


 と鳴きながらジルが飛んできた。

 ジルはまだ生まれたばっかりのため、一日中よく眠る。

 そのため、この村に滞在している間は宿屋で寝かしつけていることが多かったのだ。

 今日も宿屋に寝かせていたのだが、目が覚めてロゼを探しに来たらしい。

 飛んできたジルはロゼに抱きかかえられている。


「起きたのね、ジル! ごめんね、宿に一人ぼっちにして」


 ロゼはジルを撫でたり頬ずりしたりしてあやしている。

 ここ数日ですっかりお母さんらしくなったようだ。

 その光景をほんわかとしながらシルトとリヒトが見ていると、


「もしかしてドラゴンの赤ちゃん!? カワイイ~! 撫でてもいい?」


 とやや興奮気味にメルクーアが話し掛けてくる。


「良いですよ!」


 ロゼがジルをメルクーアに近づける。

 メルクーアがおそるおそると言った様子でジルの頭を撫でると、ジルも気持ちよさそうに目を瞑ったり喉を鳴らしたりしている。

 どうやらメルクーアのことが気に入ったみたいだ。


「カワイイわね~ジルちゃん!」

「カワイイですよね!」


 ロゼとメルクーアはジルの話しでキャッキャと盛り上がっている。

 なぜかシルトとリヒトは蚊帳の外になってしまったようだ。


 二人がジルを愛で終えると、


「じゃあまたいつか会いましょう!」


 とメルクーアが笑顔で送り出してくれた。

 三人は会釈すると、村を後にするために歩き出す。

 村の通りの道すがらで村人や村長が、また来てください、と笑顔で送り出してくれ、お土産などを手渡してくれた。

 そうして三人は、冒険者ギルドへ報告するためにアンファングの街を目指して数日滞在したこの村を後にするのだった。


 三人は街道を歩きながら話しをしている。


「メルクーアさん優しかったな!」

「ええ。天環の騎士団の一員ってだけで、もっと近寄りがたい人なんだと思ってたわ。本当に良い人だったわね」

「強くて人格もしっかりしてるから天環の騎士団として活躍できるんだろうね!」


 先ほどまで一緒にいたメルクーアが話題の中心のようだ。

 世界に名を轟かせる天環の騎士団の一員と話しをしたというのは、ちょっとした自慢の種になるだろう。

 ただ、三人にとってメルクーアとの会話は誰かに自慢するということよりも、もっと大きな意味を持つことになった。

 三人はいずれメルクーアに再会することを心待ちにしながら、そして強くなった姿を見せるために頑張ろうと思うのだった。


 アンファングの街に到着した三人は冒険者ギルドへと向かう。

 依頼達成の報告が冒険者ギルドに伝わっているころだろうと判断したのだ。

 今回の依頼は魔物の討伐がメインではなく護衛というのが主たる依頼だったので、魔物の核を提出するのではなく、依頼者からの達成報告で依頼達成が認められる。

 そして、報奨金がもらえるのだ。

 三人は自分たちは何もしていないので受け取れませんと、村長に言ってはいたのだが、ぜひ受け取ってくださいと言われたので、厚意に甘えることにしたのだ。


 冒険者ギルドで手続きを済ませた三人は無事報奨金を手にすることができた。

 当面は生活できそうな金額が手に入ったので、


「お金も少し貯まったし、武器買うか!」


 ということで、冒険者ギルド周辺にある武器屋を訪れることにしたようだ。

 武器屋の中に入ってみると、所狭しと武器が置かれている。

 樽の中に入れられているものや、壁に掛けられているもの、厳重なケースに入れられているものなどがある。


「武器屋ってこんな感じなんだな!」

「武器がいっぱいあるよ! シルト兄、ロゼ姉!」

「はしゃいでると怪我するわよ、リヒト」


 三人にとってはこれが生まれて初めての武器屋になるのだ。

 冒険者ならば早々に立ち寄るべき施設なのだが、師匠の教えを忠実に守っていた三人にとってはそこまで重要視していなかったところだ。

 もしかすると、メルクーアから武器の指摘を受けなければまだ武器屋に立ち寄っていなかったかもしれない。

 それだけ今までの武器に愛着があったのだ。


「どの武器にしようかな~」

「悩むね~」


 シルトとリヒトは自分たちの得意とする槍と剣以外の武器も嬉しそうに眺めている。

 男というのは武器屋に来れば誰しもこうなってしまうものだ。

 武器のカッコよさにはロマンが溢れているのだから。


 ロゼはそんな二人をハァとため息をつきながらも放っておく。

 相手するだけ無駄だと悟ったようだ。

 そのため黙々と魔法の杖のコーナーを見ている。


 しばらく三人は武器を選んでいたが、それぞれが新しい武器を選んできたようだ。

 三人揃ってレジへと向かう。

 選んだ武器をレジにいる店員さんに渡すと、テキパキと会計してくれた。


「ビギナーソード、ビギナーランス、ビギナーワンドの三点ですね。購入ありがとうございます! 今後も贔屓にしてくださいね!」


 三人はこれで名実ともにビギナー冒険者になることができた。

 武器とは高いものだ。

 今の所持金ではビギナー武器が精一杯。

 そして、武器を買ったことによりお金がスッカラカンになってしまった。


「もっと良い武器買いたかったな」

「仕方ないわ。お金がないんだから」

「もっと頑張ってケースに入れられてた武器買いたいね!」


 初心者からのスタートを切ることになった三人。

 メルクーアからの教えと新しい武器を装備して最強の冒険者になるために歩み出したのだ。

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