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大会の報酬

予想通りこのまま繋げると長くなりそうなので分割しました。

そのため今回はかなり短めです。

闘技場の観客席が満席になってから暫くした頃、闘技場全体に誰かの声が響き渡る。


『んー、あーあー、もしもーし観客の皆さん聞こえますかー?。聞こえてたら手を挙げてくださーい』


気の抜けた女の声に反応し、観客席の何人かが手を挙げる。


『んー、北よし、西よし、南よし、東よしっと………すぅ――』


声の主冠が手を挙げる観客を見て観客席全体に声が届いている事を確認した後、大きく息を吸うような音が聞こえてくる。


「ダリア、耳塞いどきな」

「え?」


突然何を言い出すのだとフィアが横を見るとエリオ一家だけでなく、観客席にいる人間全員が耳を塞いでいた。

訳も分からず言われた通りにフィアが耳を塞いだその時


『ヒィィィィハァァァァァァァアア!!』


観客の鼓膜破るような絶叫が響き渡り、空気を震わせる。


『観客の皆さんお待たせいたしました!さぁ今年もやるぞ!!闘都の武・闘・大・会!!開・幕!!!イェェェェェェェェェェエ――ゲッホ!?ゴホ!!』


叫び過ぎたのか、女の咽る声が観客席中に木霊する。

女の叫び声が途切れた所でフィアがゆっくりと耳から手を退ける。


「な、なんなのこれ…」

「っ…お、驚いたかい?」


絶叫のせいか、カレンが朦朧としかけた意識を覚醒させるよう頭を左右に振りながら言う。


「驚いたというか、鼓膜が破れるかと思った。一体何だったの?」

「あーなんというか開会の挨拶というか、毎年のお約束って奴さ。闘都の武闘大会はこの咽る所から始まるんだよ」

「絶叫じゃなくて咽る所なんだ…というか毎年のお約束って毎年咽てるの?」

「いや、たまに吐く」


カレンの言葉に”一体何を?”と聞き返しそうになったフィアだったが、聞くまでも無く帰ってくる答えが想像出来てしまったためその口を噤む。


そうこうしている間にも声の主も落ち着いたのか、再び観客席全体に声が響き渡る。


『ひ゛ぃー…ひ゛ぃー…あ゛ー失礼しました。改めまして――コホン、どうも皆さん!私は司会進行を務めるフーバーでーす!!今日はこの武闘大会の為にお集まり頂き誠にありがとうー!』


堅苦しいようなそうでないような微妙な挨拶をするフーバーと名乗る女性、事前に知って居た者が殆どなのであろう、特に先程の出来事に対し文句を言い出す観客の姿も無かった。


『怪鳥の出現やらなんやらで大会が延期してしまって皆さん首を長ーくして待っていたと思います!長らくお待たせしてしまった事、誠にごめんなさい!声しか聞こえないでしょうけどこの通り!頭を下げて謝るね!!』


何度か頭を机に叩きつけるような音が数回響いた後、女性が話を進める。


『さぁー散々待たされた皆さんの事ですし、良いからさっさと進行しろとお思いの事でしょう!!なのでサササァっと行きましょう!って事でホイ!陛下!!』


女性の口から出た陛下という言葉に今までざわついていた観客席がピタリと静まり返る。

静まり返った観客席に、先程までのハイテンションな女性の声とは違う、男の声が響く。


『諸君、今日は集まってくれてありがとう。出場者、観客、そして大会関係者の者達も含め、今日という日を諸君らと共に無事迎えられた事を嬉しく思う』


落ち着いた声が観客席に響き、全員がその声に黙って耳を傾ける。


『さて、堅苦しい挨拶なぞ好んで聞きたがる者も居ないだろうし、本題に移らせてもう。諸君らは既に噂で耳にしているだろうが、今年一般募集していた出場者の枠は当初16名だった。だがこちらの都合で急遽その枠を減らす事となってしまった。予選まで出場した者、その他関係者には多大な迷惑を掛けた、本当に申し訳ない』


頭を下げているのだろう、例え姿は見えなくても雰囲気と微妙に開いた間にその姿を用意に想像する事が出来た。


『そこで今年は謝罪の意味を込め、例年の大会とは異なる所を用意した』


その言葉に今まで黙り込んでいた観客席が再びざわめき始める。


『知っているだろうが大会の優勝者には優勝賞金ともう一つ、私自身が考えた報奨を与えてきた。選りすぐりの武具、地位、出場者用の宿舎への永住権…様々な報奨を与えてきたが今年の報奨はまだ考えていない。そしてそれを優勝者自身に決めて貰おうと思う』


「優勝者自身にって」

「おい、それってまさか…」


国王の言葉に先程よりも観客席のざわめきが大きくなる中、国王が宣言する。


『今年は例年通りの優勝賞金ともう一つ!何でも良い、願いを言え!私に叶えられる物なら叶えてみせよう!』


国王のその宣言に観客席が一気に沸き立つ。


『それでは諸君、長らく待たせてしまったがここに武闘大会の開幕を宣言する!観客、選手共に存分に楽しんでくれ!』


未だ興奮冷めやらぬ観客席に再び女性の声が響く。


『はーい!という訳で陛下のご挨拶でしたー!いやー願いを言えだなんて太っ腹ですねー!これは出場者の皆さんも気合が入ったんじゃないでしょうか!?』


「気合が入ったなんてもんじゃないよ。随分と気前の良い事言うもんだね」

「それだけ申し訳なく思ってるって事なのか」

「もしくは…優勝する人間が分かってて言ってるのか…」

「予選も無しに通ったという三名、その内の一人はあの【豪腕】という話ですからね」

「つまり自分の手の者が優勝すると考えてるから問題ないって事?」


カレン達の話を聞いて居たフィアがそう口にする。


「真意は分からないけど、出場選手を全員把握してるであろう国王なら優勝者の予想も出来てるんじゃないのかね。その上であんな報奨の内容にしたのだとしたら何ともセコイ話さ」


周囲の観客とは対称的な様子でカレンが言う。


観客、選手、大会関係者、各々がそれぞれの思いを胸に抱く中、ついに本選が始まるのであった。

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