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闘都の様子

「随分と賑わってるね」


人々の往来を眺めながらフィアが呟くように言う。


現在ライ達は闘都に入ってすぐ、西門の側でエリオ達が積み荷の検査を受けている間、目の前を行き来する大勢の人間達を眺めていた。


「そりゃそうだよ。なんたって武闘大会が開かれるんだからさ」

「あ、ノーラさん。もう積み荷の検査は終わったんですか?」


ノーラの声に反応し、声のした方に視線を向けながらライが尋ねる。


「うん、積み荷の検査といっても全部確認するわけじゃ無いからねー。今はエリオが確認の手続きをしてるところだよ」


そう言いながらノーラはライ達の隣に立ち、同じように人々の往来を眺める。


「流石は闘都、マリアンベールよりも活気に溢れてるねぇ」

「魔窯祭りを見に来ていた人達の殆どが自分達と同じような目的で闘都に来てるでしょうし、当然と言えば当然ですけどね」

「それにしても魔窯祭りの次は武闘大会…よっぽど祭りが好きなんだね」

「祭りが好きっていうのは否定しないけど、魔窯祭りと武闘大会が連続してるのはわざとだよ」

「どういう事?」


フィアが首を傾げながらノーラに聞き返す。


「ほら、魔窯祭りって開催日不定期でしょ?。それも特別感を高めるための一つの売り何だろうけど、その場合だとたまたまその時に近くに居た人くらいしか祭りに来ないんだよね。だから定期的に開催されて、国外からも人が集まる武闘大会と同じ時期に祭りをする事でより多くの人間を集めたって感じだね」

「なるほど…」


ノーラの説明にフィアが納得したように頷く。


「そういえば二人は宿はどうするの?」

「宿ですか?。この後すぐに探しに行こうとは思ってますけど…」

「今からじゃ空いてる宿を探すのはかなり厳しいと思うよ」

「ですよねぇ…」


マリアンベールを出発したのは魔窯祭りが終わって一週間後、武闘大会が目当ての人間はもう一ヶ月以上も前から闘都に来ており、既に宿屋の空きなど殆ど無くなっている頃だろう。


どうしたものかと考えるライに、ノーラが提案する。


「一部屋だけなら宛があるんだけど、もし二人が良ければそこ紹介しようか?」

「え、空きが有るんですか?」

「うん、まぁ空きがあるというか、私達マリアンベールに行く前に闘都に立ち寄って部屋を確保しといたんだよね。その時大部屋一つと二人部屋を二つとったんだよ。その内の二人部屋一つなら空けられるよ」

「良いんですか?。三部屋で泊るつもりだったって事はベッドの数とか…」

「大丈夫、一応八人で部屋は取ったけど子供達は何時も一つのベッドで寝てるし、だからベッドが丁度二つ余るんだよね」

「最初から余るって分かってるなら、何で二人部屋を余分に取ったの?」


フィアがノーラにそう質問する。


「あぁ、それはゆっくり休むためだよ」

「…どういう事?」

「ほら、子供達と同じ部屋だと面倒を見ないといけないし、あの子達も元気いっぱいだからね。身体が休まらないし、エリオと同じ部屋でも身体が休まらないからねー。子供達の面倒を見る部屋とエリオの相手をする部屋とは別に、ゆっくり休めるように余分に部屋を取ったんだよ」

「なんでエリオと一緒だと身体が休まらないの?」


ノーラの発言の意味が良く理解出来なかったのか、フィアがそう聞き返す。

傍から聞いて居たライはその意味を理解したのか、何だか気まずそうに空を見上げていた。


そんな二人の様子を見て、ノーラがニヤリと笑みを浮かべるとフィアの質問答えた。


「そんなの、旦那と妻が一緒の部屋で一夜を過ごすんだよ?。アレするに決まってるじゃん」

「アレ?」


まだ意味を理解出来ないのか、フィアが小首を傾げるもすぐに思い至ったのか納得したような表情を浮かべた。


「あぁ、アレって性交しょ――むぐっ」

「それ以上は色々とまずいよフィア!」


爆弾発言をしそうになったフィアの口をライが慌てて塞ぐ。

常にすまし顔のフィアが恥ずかしがる所を見てやろうとあんな言い方をしたノーラだったが、フィアの余りにも直球な物言いに逆に顔を赤くしていた。


「なははー、まぁそう言う事何だけど…フィアちゃんド直球だね。何だかお姉さんの方が恥ずかしくなってきちゃったよ」

「す、すみません…」

「お兄さんが謝る事じゃないよ。話をしたのはこっちだからねー」


そう言って笑うノーラの様子を見て、気分を害していない事にライは安堵する。

それと同時に自分の腕の中で口をもごもごさせているフィアに気付き腕を放す。


「ぷはぁ………もう、いきなり口を塞ぐなんてビックリしたよ」

「ごめん、でもフィアが唐突にとんでもない事口走りそうになったからつい…」

「とんでもないって、別に大した事じゃ無いでしょ?。性交――」

「わぁー!女の子が真昼間からそう言う事言うもんじゃありません!!」


明け透けないフィアの物言いにライが慌てて口を塞ぐ。


「プッ…くふふふ、やっぱり二人は面白いねー。見てて飽きないよ」

「見世物じゃないですよ…」

「ごめんごめん、ほら一部屋空けるからそれで許してよ」

「本気で怒ってる訳じゃないので良いですけど…でも本当に良いんですか?一部屋空けて貰っちゃって」

「良いよ良いよ。子供達だって寝てしまえば大人しいし、エリオの相手はフローリカが喜んでやってくれ――」

「ノーラ」


ノーラの背後から、ノーラの名を呼ぶ声が聞こえる。

名を呼ばれた途端ノーラの動きが一瞬にして硬直し、まるで錆びたブリキの人形のようにノーラの首がゆっくりと後ろに向く。


「随分と、楽しそうにお話していましたね。私の名前が聞こえた気がしましたが…私も混ぜてくれませんか?」

「フ、フローリカ…いや、ちょっと待って!これには訳があったと言うか!?」

「訳とは何ですか?ごめんなさい、途中から話を聞いて居たので良く分からなくて…最初から全部話してくれません?」


笑みを浮かべながら優しく問いかけるように尋ねるフローリカだったが、ライとノーラにはその笑みの裏に隠れた怒りのような感情が見て取れていた。


このままでは殺られる――そう直感したノーラは必至に弁明する。


「だ、大丈夫!大した事は話してないし、それに重要な部分というか大事な所は話してないというか、フローリカが女王様プレイが好きとかそう言う情報は一切――」


ドス――バタンッ


鈍い音と辺りに響くと同時にノーラが前のめりに地面に倒れ伏す。

ノーラの身体に隠れてフローリカの動きを一切見る事が出来なかったライだったが、腹部を押さえ地面に倒れ伏すノーラを見て何があったのかを察した。


「あらあら、ノーラったら余程疲れてたのかしら…地面で寝るなんて駄目よ?」

「ぐぇ」


ノーラの襟首をフローリカが無造作に掴み上げる。

襟が首に食い込んだのかノーラが小さな呻き声を上げていたが、フローリカはそれを気にする様子も無くそのままノーラを引き摺って行く。


その時、ふとフローリカが足を止めライの方へと向き直る。


「あ、そうだライさん」

「な…何でしょう?」

「お部屋の件、ノーラが勝手に話を進めていましたけど私達も構いませんよ。一部屋分の余裕が有るのは事実ですし…それと」


フローリカがいっそう笑みを深めながらライに告げる。


「ノーラの発言含め、私達の事は”気にしないで”くださいね」

「…はい、分かりました」


フィアの口を押えたまま、ライは身体を震わせながら頷くのであった。

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