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特訓仲間

「あー落ち着いた?」

「はい、すみません…つい興奮してしまって、ご迷惑をおかけしました」

「本当にね…」


確認するように尋ねるライの言葉にアルミリアが申し訳なさそうに俯き、フィアが疲れ切った様子でボソリと呟く。


「まぁ、落ち着いたなら良かったけど…取り合えずどうしてあぁなってたのか教えてくれる?目が覚めたら急にあんな事になってたから何が何やら…」

「えーと…」


アルミリアが躊躇う様子を見せながら、チラリとフィアを横目に見る。


「言っても大丈夫よ、ライだって貴方と同じなんだから」

「え?そうなんですか!?」

「いや、俺に聞かれても説明がないと何が同じなのかサッパリなんだけど…でも説明を受ける前に取り合えずだ」


そう言ってライが真剣な表情を浮かべる。


「これ、いい加減外してくれない?」


目が覚めたライは未だに全身を拘束され、顔には乾いた鼻血の跡が残っていた。


「どうせ話が終わったらまた特訓するんだからそのままでいいでしょ?」

「良くないよ!これ地味に辛いんだよ!」

「フィアちゃん、ライさんも辛そうですしお話する間だけでも開放してあげたらどうです?」

「説明なんてそんな大した物でも――って、フィアちゃん?」


一瞬スルーしそうになりながらも、フィアがアルミリアに尋ねる。


「フィアちゃんって…何?」

「何時までも”貴方”って呼ぶのもどうかと思ったので、気に入りませんでした?」

「私は”ちゃん”なんて呼ばれるような存在じゃ――」

「良いじゃないか、好きに呼ばせてあげれば、別に困る訳でもないし」

「えー…うーん…ライがそう言うなら…」

「だってさ、良かったね」

「はい!よろしくお願いしますね、フィアちゃん!ライさん!あっ、私の事は”ミリア”って呼んで下さい!」

「分かった、よろしくねミリア」

「…よろしく」


まだ納得していないという様子で、フィアが不貞腐れながら言葉を返す。

そんなフィアに、ライがニヤニヤとした笑みを浮かべながら話しかける。


「ほら、挨拶だけじゃなくてちゃんと名前も呼んであげなきゃ、フィアちゃ――」


ライの言葉を遮るように、二つの魔力の塊がライの両目に突き刺さる。


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛目がぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

「ライさん!?大丈夫ですか!?」

「ふんっ!」











「もう二度と目が見れなくなるかと思ったよ…」

「ライが変な事言うからだよ、反省してる?」

「からかって悪かったよ…でも流石に目を潰すのは酷くない?」

「目潰しっていうより頭蓋骨まで突き抜けるような勢いでしたけど…大丈夫なんですか?」


二人の会話に割り込むようにアルミリアが先ほどの光景を思い出しながら呟く。


「ちゃんと元通りにしたから大丈夫だよ」

「元に戻れば良いって問題じゃないからね?フィアは加減を覚えてお願いだから」

「これでもかなり加減してるんだけど…」

「普通の人の基準でお願い」

「むぅ…分かった、努力してみる」


若干不服そうな表情を浮かべながらもフィアが頷く。

その様子にライが諦めとも、安堵とも取れるような微妙なため息を吐きながら話を切り替える。


「っで、途中になっちゃったけど一体何があったの?」

「別に大した事じゃないよ、ただアルミリアが――」

「ミリアって呼んで下さい」


フィアに顔を近づけながら、アルミリアが笑顔のまま威圧する。


「…ミリアが魔力を視る事が出来るってだけ」

「魔力を?でもそれでどうして俺と同じになるの?」

「え?ライさんも魔力が視えるんじゃないんですか?」

「いや、俺は別に魔力なんて視えないけど…」


二人が暫くそうして見つめあった後、どういう事だとフィアに視線を向ける。


「”同じ”とは言ったけど、誰も魔力が視えるなんて言ってないよ」

「じゃあ、どう同じなんです?」

「二人共、同じ力を持ってるんだよ、宿っている場所も、量も質も違うけどね」

「それって、もしかして」

「そう、ライが今まさに特訓して操ろうとしてる力の事だよ」

「そうなんだ…ミリアも俺と同じ力が…」

「あのー」


アルミリアがゆっくりと手をあげて質問する。


「私にはお二人の言ってることが良く分からないんですけど…力ってなんですか?」

「普通の人じゃ扱えないちょっと特異な力の事だよ」


フィアの簡素な説明にアルミリアが首を傾げる。


「えーと、特異な力って言われても全然良く分からないんですけど…その力があると魔力が視えるようになるって事で良いんでしょうか?」

「貴方の場合はそうだね、でもこの力に関して言えば別に魔力を視るだけじゃないよ、まぁ…詳しい説明は面倒だからしないけど、普通の人には無い力で、この力があると魔力が上手く扱えないって事だけ覚えておけば良いよ」

「はぁ…なるほど――って、魔力が上手く扱えない!?」


魔法が上手く扱えないという言葉にアルミリアが強い反応を示し、掴み掛からん勢いでフィアに問う。


「魔力が上手く扱えないってどういう事ですかフィアちゃん!?」

「簡単に言うとこの力っていうのが魔力を勝手に跳ね除けてしまって、それが体内にあるせいで二人は魔力の扱いが上手くいってないんだよ」

「仲間外れにされるばかりか、そんなデメリットがあったなんて…魔力が視えるってだけで本当にロクな事が無いです…」

「そう落ち込む事は無いよ、少なくともライよりもずっとマシだよ」

「ライさんよりも…ですか?」


フィアの言葉に、アルミリアが顔をあげてライを見る。


「貴方、体内に魔力を取り込む事は出来るんだよね?」

「はい、ただ体内で魔力を循環させるのが苦手というか…どうしても途中で流れが乱れてしまって」

「それは貴方が全身を使って魔力を循環させようとしてるからだよ、魔力が目の辺りを通ろうとする時に力が邪魔になってるんだと思う」

「なるほど…」

「ちなみに俺の場合は、その力ってのがミリアとは違って目だけじゃなく全身に行き渡ってるみたいで、魔力が一切取り込めないみたいなんだ」

「そうなんですか…ライさんも苦労なされたんですね」


ライに対して同情的な表情を浮かべた後、アルミリアがふと何か思いついたような顔をする。


「ライさんが受けている特訓というのは魔力をうまく扱うための物なんですよね?」

「正しく言えば力を操り、魔力を取り込むのに邪魔にならないようにする特訓だけどね」

「私もその特訓を受ければ魔力が扱えるようになるのでしょうか…?」

「やめときなさい」


恐る恐ると言った様子で質問するアルミリアに、ライがそう制止する。


「自分で言うのもなんだけど、こんな特訓受けてたら命がいくつあっても足りないからね?」

「こんなとは言ってくれるねライ…まぁ、私もライの意見に賛成かな、そもそも貴方は私の特訓を受ける意味がないし」

「意味がないというと?」

「私の特訓はライが力を操れるようになって、魔力を取り込む事が出来るようにするための物、それを魔力が取り込める貴方が受けた所で意味なんてないよ」

「そうですか…」


フィアの言葉に、アルミリアが残念そうな安心したような微妙な表情を浮かべる。


「この力がある限り、私は魔力をうまく扱ないんですね…」

「そうでもないよ」

「え?」

「貴方はライと違って目に宿った力が邪魔っていうだけで、その部分を避けるようにすれば問題なく魔力の循環が出来るはずだよ」


数秒程、アルミリアがポカンとした表情を浮かべた後、機敏な動きでフィアの両手を取る。


「フィアちゃん!私に魔力の扱い方を教えてください!」

「嫌」


逡巡する事も無く、フィアが即答する。


「何故です!?」

「ライの特訓が最優先、そもそも貴方に物を教える義理はないよ、邪魔をするならどこかに行って」

「で、でも最初に会った時は特訓を見ても良いって…」

「見るくらいなら邪魔にならないからね、でも流石に特訓してくれって話になったら別だよ」

「そんなぁ…」


しょげくれるアルミリアの様子に、ライが助け船を出す。


「良いじゃないか、特訓を見てあげれば」

「そうは言うけど、ライの方の特訓はどうするの?」

「魔力をぶつけるだけなんだし、フィアなら片手間にミリアに教えるくらいは出来るんじゃないの?」

「んー…確かにそれはそうだけど…」

「お願いします!ライさんの特訓が最優先で良いんです!ただたまに様子を見てアドバイスをくれるだけでも良いですから!」

「俺からも頼むよ」

「うーん…」


暫し考える素振りを見せるフィアだったが、二人の説得が効いたのか諦めるように小さくため息を吐く。


「分かったよ、ライの特訓が最優先、その片手間に貴方の特訓も見る…それで良い?」

「あぁ…はいっ!よろしくお願いします!」


こうして、ライの特訓仲間が一人増えたのだった。

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