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地下での出会い

何時もの時間には遅れたけど何とかその日の内に投稿出来ました。

休日出勤のおかげで執筆の時間が削られて辛い…。

年末は仕事が忙しくて仕方ないですね。

ライとフィアが魔窯のある広場で晩御飯を済ませた翌日、マリアンベールは生憎の雨に見舞われていた。


「雨が降ってるけど、依頼の方はどうするの?」

「今日はお休み、わざわざ悪天候な日に依頼を受ける意味もないし、安全第一だよ」


そう言いながら、ライはベッドの上に腰掛け装備の点検をしていた。

日頃使ってる物も、そうでない物も念入りに見ていく。

毎日のように使ってる物は当然劣化もするし、普段使いで無い物でも時間の経過で自然と劣化したり、戦闘の最中に気付かぬうちに破損している可能性もある。

装備の点検を怠ったばかりに、肝心な時に整備不良で使えないという事態をライは良く知っていた。

そのため、ライは暇な時間さえあれば毎日のように装備の点検をしていた。


「毎日毎日、良くやるよね」

「命を預ける大切な装備だからね」


フィアに視線を向ける事無く、ライは自身の手元に意識を集中させたまま答える。

そんなライの様子にフィアはつまらなそうな表情を浮かべていた。


「ねぇライ、今日一日どうする気なの?」

「そうだね、ここに来てから依頼やら特訓やらでまとまった時間が取れなかったし、この機会に念入りに装備の点検をするつもりだよ」

「今日一日中?」

「まさか、流石に丸一日使う程の作業量じゃないよ。普段使いの装備は毎日点検してるからそこまで念入りに整備する必要は無いから…まぁお昼までには終わるかな?」

「ふーん…そっか、お昼まで…ね」


フィアはそう呟くと窓際から離れ、対面にある部屋のドアを開ける。

それに気づいたのか、ライが顔をあげて部屋の外に出ようとするフィアに声を掛ける。


「どこか出掛けるの?」

「うん、ちょっと場所を探しに、お昼までには戻るから」

「分かった、いってらっしゃい」


部屋のドアが閉じられると、ライは再び自分の手元に視線を落とし作業に集中する。

装備を弄繰り回す音が部屋に響き渡る中、ふとライが何かに気付いたように顔を上げドアを見た。


「場所って、何の?」










「さぁライ、特訓に行くよ!」


時刻は昼過ぎ、宿屋での昼食を終えた直後にフィアがライに向かってそう宣言する。


「特訓って、外は雨降ってるのに何処でやるの?」

「それはすぐ分かるよ、ほらご飯食べ終えたんだから早速行こ」


そう言ってフィアはライの手を取り階段を上り二人が泊っている部屋を目指す。


「まさか部屋でやるとか言わないよね?」

「流石にそんな事は言わないよ、実はさっき外に出て特訓に使えそうな場所が街中に無いか探してきたんだよ」

「あぁ…場所って特訓する場所の事だったのか」


という事はまたサンドバッグにされるのだろうかとライが不安そうな表情を浮かべながら、自分の手を引くフィアの後ろを黙って付いて行き、二人が泊る部屋の前に着いた。


「じゃあ行こうか」


何処に行くんだとライが口を開こうとした時、フィアが部屋の扉を開ける。

開かれた扉の向こう側、そこには二人が泊っていたはずの部屋の景色ではなく、壁や床、天井の全てが石造りで出来た薄暗い通路が広がっていた。

その光景にライが呆気にとられたように口を開いたままポカンとした表情を浮かべる。

そしてライはフィアに手を引かれるまま、引きずられるように扉を潜るのだった。






「もぉーライ、何時までそんな顔してるの?」

「はっ!」


フィアのその言葉にライが我に返る。

扉を潜り石造りの狭い通路を歩いていたはずだったが、ライが気が付いた時にはもう通路ではなく、開けた大部屋のような場所に立っていた。


「ここは一体…?」

「この街の地下にある空間だよ」

「マリアンベールの地下にこんな物が…」


そう呟きながらライが辺りを見渡す。

天井や床は先ほどの通路と同じく石造りの物だったが、壁には光を放つ何かが埋め込まれており部屋全体を明るく照らしていた。


「ここは一体何のためにあるんだろ?」

「さぁね、私はただ雨風が凌げて人が来なさそうな場所を選んだだけだから」

「…立ち入り禁止の場所だったりしない?」

「分からないけど…まぁ入った所を誰かに見られた訳でもないし、大丈夫だよきっと」

「本当に大丈夫かなぁ…」


フィアの曖昧な言葉にライが不安そうな顔をする。


「それよりも、ほら特訓始めるよ!」

「待って待って!」


そう言いながら魔力の塊を空中に三つ漂わせ準備万端のフィアに対して、ライが両手を付き出し待ったの合図を送る。

少し不満そうに頬を膨らませながらも、フィアが魔力を霧散させる。


「むぅ…何?」

「いやさ、フィアが頑張ってくれてるのは分かってるんだけどね、特訓の方法を元に戻した方が良いんじゃないかなぁ…って」

「何で?」

「正直言って、あれじゃ耐えるのに精一杯でとてもじゃないけど力がどうこうとか考えてる余裕が無いんだよ…」


ライのその言葉にフィアが少し考える素振りを見せる。


「んー…でも、今のままのペースだと一体いつになったら力が使えるようになるか」

「ごめんね、俺がこんな状態になったばっかりにフィアに迷惑かけちゃって…」


ライが申し訳なさそうな表情を浮かべながらフィアに言う。


「気にしないで、ライに力が無ければ私の声を再び聞く事も出来なかっただろうし、私からしたらこれ位迷惑の内に入らないよ」

「フィア…」


フィアの励ましの言葉に、暗く沈んでいたライの表情が少し明るくなる。


「さぁ、何時までもクヨクヨしてないで、力を制御できるように特訓するよ!」

「うん…やろう!」


フィアの言葉で元気をライだったが、ふとそのフィアの言葉で何かに引っ掛かりを覚えた。


(そういえば、なんで俺はフィアの声が聞こえなくな――)


そんなライの思考を遮るように、フィアから放たれた魔力の塊がライの顔面に叩きつけられる。


「ぶほぉ!?」


不意打ち気味に受けたその一撃に、ライは受け身を取る事も出来ず後頭部から思いっきり石畳に叩きつけられる。


「っ―――!!」


声にならない悲鳴を上げ、ライが後頭部を押さえながら地面を転がる。

そんなライを気にした様子もなく、フィアはそのまま次の一撃を繰り出そうとする。


「さぁ、次行くよ!」

「待って…!ちょっと待って…!」


後頭部を押さえたまま、震える声でライがフィアを止めた。


「今度は何?」

「石畳は駄目だ…こんなの繰り返してたら頭が割れる…」

「その時は私が治療するよ?」

「治療すれば良いって問題じゃないからね!?」


涙目になりながらも、ライがゆっくりと立ち上がる。


「流石にこの痛みは洒落にならないって、まだ頭がクラクラする…」

「そんなに辛い?」

「かなり…」

「私の魔力よりも?」

「うん…」


ライのその言葉に、フィアがむすっとした表情を浮かべた後、おもむろに自身の左手に魔力を集める。

フィアの左手に集まった魔力は姿を変え、一つの物体を形作る。


「あの…フィアさん?それは一体…」


ライが恐る恐ると言った様子でフィアの手の中にあるこぶし大の石を指しながら尋ねる。


「ただの床に負けたくない」

「張り合わなくて良いからぁ!お願いだから勘弁して!!」

「大丈夫、魔力で出来た石だから力を使えば跳ね返せる」

「その力もまだろくに使えないのに無茶言わないでよ!?」

「多少痛くした方が覚えも早くなる」

「それ絶対多少じゃ済まないからね!?」


お互いに一歩も引かず、睨みあっていたその時、


「貴方達、ここで一体何をしているんですか?」


大部屋に繋がる唯一の通路、その影から一人の少女が姿を現した。

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