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始源を宿した者達

安西先生、祝日が欲しいです…。

「ごめんよカイル、まさか様子見で放った一撃が通じるとは思わなくて」

「うっぷ…い゛や、師匠が謝る事は無い、ぞ」


口元を抑え込み上げ来る吐き気を堪えながらカイルが言う。


ライとカイルの試合はカイルが嘔吐した段階で続行不可能とみなされライの勝利で終わり、現在は全員が地面にへたり込むカイルを囲み、ある者は心配そうな顔で、またある者は申し訳なさそうな顔で見つめていた。


「申し訳ありません、私が腹部に魔力を集中させていなかったばかりに」


実はライがカイルの腹部に回し蹴りを叩き込んだ時、魔力は突き出した左拳と踏み込む際に使用した右足に集中しており、腹部の魔力はその二ヶ所に集中していた分通常よりもむしろ薄くなっていたのだ。


相手がカイルであるにも関わらずつい熱くなってしまったライ、相手の行動を予測出来ず防御にまで手が回らなかったクリオ、それぞれが申し訳ないといった様子で顔を俯ける中、その両者の肩をアランが叩く。


「まぁまぁ、ライもクリオもそう落ち込むなって、別に人死にが出た訳でも後遺症が残った訳でも無いんだからさ。男なら誰だって戦いの最中熱くなる事はあるし、人間なら読み間違いをする事だってあるしよ」

「お ま え が 言 う な」

「ぐぉぉぉ!?」


ディズが背後からアランの首を絞める。


「元はと言えばアラン、お前がライを焚きつけたのが原因だろうが!」

「ご、がぁ、く゛首が締まる…!」

「締めてんだよ!お前はもうちょっと考えて行動しろ!」

「わ゛がった!分かったから、放せ!このままじゃおち、落ちる…!」


アランとディズの二人がそんなやり取りをしてる中、多少吐き気も治まり落ち着きを取り戻したカイルが傍に立つライを見上げる。


「くっそー、先生の力がありゃ師匠に一発くらい喰らわせられると思ったのによ」

「そう悔しがる事は無いよ。最後はかなり惜しかったね」

「あれのどこが惜しいんだよ。ただの慰めなら止めてくれ」

「本当さ、もしこれが俺とカイルだけの普通の戦いだったら俺はあの一撃を喰らっていた」

「普通の戦いだったらって、どういう事ですか?」


ライの言葉にリザが反応し質問を投げる。


「今回俺がカイルの動きを読めていたのはクリオさんの魔法のおかげなんだよ」

「自分の魔法の、ですか?」

「えぇ、クリオさんの予測は見事な物でした。カイルがやろうとしている事を完璧に把握していた。だからこそ、俺はそれを信じて動く事が出来たんです。要は何処に魔力が集中しているかを見てカイルの次の手を読んだんですよ」


足に魔力が集中していれば踏み込み、剣先に集中していれば突き、ライは何処に魔力が集中しているかを見る事で事前にカイルの動きを察知し、予知とも思える程の先読みを可能にしたのだ。


何処に魔力が集まっているのかを見て次の手を読む、ライの言っている事は理解出来ているはずなのだが、カイル達は疑問の表情を浮かべていた。


「理屈は分かったけど……」

「魔力が何処に集まっているのかを見るって、一体どうやって?」

「え?」


予想だにしていなかった言葉にライが面食らったような顔をする。


「えっと、身体強化を発動した時に出る光、その濃淡で見分けたんですけど」

「光の濃淡?ねぇキシュナ、分かる?」

「いや、流石に発動しているかどうかくらいなら分かるが、光の濃淡までは見分けられないな」

「だよねー、確かに身体強化は使用する魔力が多ければ多い程、発する光が強くなるってのは聞いた事あるけど、でも正直人の目で見分けられる程ハッキリとした差なんて早々出ないよね」

「他の部位よりも魔力を何十倍も使用していればライさんの言う通り光の濃淡で見分けがつくかもしれませんが、私の場合は精々7~8倍が良い所、人の目で見分けるには厳しいと思います」

「そんな……そんなはずは――」

「ライ」


そんなはずはないと食い下がろうとするライの背後からフィアがライの名を呼ぶ。

その声にライが振り向くとフィアは無言のままライの瞳をじっと見つめてきた。


――それ以上喋らない方が良い


言葉も無く、フィアの表情からライはフィアの伝えたい言葉を理解する。

可笑しな事を言うライに視線が集まっている中、フィアがその視線を逸らす為にアランの方を指差す。


「ねぇ、その人真っ青な顔して泡吹いてるけど大丈夫?」

「え?うわぁ!?ちょっとディズ!アランが!!」

「ん?うお!?大人しくなったと思ったら気失ってたのかよ!」

「何故気付かないんだこの阿呆!」

「早くアランさんを横にしてください!私が診ます!」


気を失ったアランのおかげでライの先程の発言は有耶無耶になって終わり、その日はそれ以上その事に関して触れられる事は無かった。

しかし納得の行かないライは一日中その事が気になって仕方が無かったのであった。







そしてその日の夜、夕食を取り終えた後、部屋に戻ってきたライは早速フィアにこの事について聞いてみる事にした。


「ねぇフィア、ちょっと聞きたい事があるんだけど」

「ライが見分けられたのに他の人が見分けられなかった事に関して?」

「そう、フィアなら何故か分かるんじゃないかなって」

「勿論分かるけど…ライにも心当りはあるんじゃない?」


一日中今日の事を考えていたライ、フィアの言う心当りにも検討は付いていた。


「ミリアの事だね」


ライの言うミリアとは以前マリアンベールの街で出会った魔窯の御子、アルミリア・エインズワースの事だ。

彼女もまたライと同じくその身に始源を宿した人間であり、アルミリアの場合はライとは違って全身では無く瞳にのみ始源を宿しており、その影響か他人には見る事さえ出来ない大気を漂う微細な魔力や人が体内に保持している魔力を視る事が出来るという力を有していた。


「ミリアの魔力を視るという力、あれは瞳に始源が宿っていたからこそ発現した物、それなら全身が始源で満たされているライの瞳にもアルミリアの瞳と同じように魔力が視えても不思議じゃない」

「そうか、ミリアの場合は視る視ないの切り替えが出来たから気付けたけど、俺の場合は常に視える状態だったから始源の影響を受けてる事が分からなかったのか」

「それだけじゃないよ。ミリアは大気を漂う魔力すら視る事が出来たけど、ライは精々濃淡を見分けられる程度で普通の冒険者の人達と視える物に差があまり無かったのも気付けなかった原因だと思う」


そう言いながらフィアが身体強化を発動させ、フィアの全身を淡い光で包み込む。

その状態からフィアはライに向けて自身の右手を突き出し、そこに魔力を集中させる。


「ライ、目の周りの始源を除けて、私の右手を視て」


フィアの言う通りにライが瞳を覆う始源を押しのけると、他の箇所よりも強く光輝いていたフィアの右手の光は徐々に弱くなっていき、最後には他の箇所と殆ど見分けが付かない程にまで弱まっていた。


「普通の人にはこう視えて居るのか。そこに魔力が集まっていると事前に分かっているなら他の箇所と比べて光が強く感じるけど、正直気のせいだと言われたら信じてしまうくらい僅かな差だ」

「そんな僅かな差、それを戦闘中に見分けるなんて普通の人間にはまず不可能だよ」

「通りで皆があんな反応をする訳だ」

「そもそもライが魔力を視る事に関して意識しだしたのは始源の制御が出来るようになってからの話で、それまでは考えた事すら無かったんでしょ?」

「まぁ自分は魔法が使えない、相手にするのは魔法を使わないCランク以下、他の冒険者は誰も組んでくれないとなると、魔法を目にする機会なんて殆ど無いからね。しかしそうか…まさか当たり前のように見えていた物が他人にとっては当たり前じゃ無かったなんて」


改めて知った自身と他人の違いにライが頭を悩ませる。

フィアからある程度は始原について説明されているライだったが、それでもその全てを理解出来た訳では無い。

ライの全身を覆う始源、それが一体ライの身に対してどれ程の影響を与えているのかをライ自身まるで把握しきれていないのだ。


自身の身体と始源の関係についてライが考え込んでいると、不意にライの中にある疑問が浮かび上がる。


「ねぇフィア、俺とミリアって他の人と比べても身体に宿している始源の量が多いんだよね?」

「そうだけど?」

「じゃあ俺とミリア、どっちの方が始源が多いの?。全身を始源で覆われている俺なのか、それとも俺よりも魔力を視る力が優れているミリアの瞳に俺よりも多くの始源が宿って居るのか」

「量、質共にライの方が圧倒的に上だよ。それにミリアの始源は厳密に言えばもう始源とは言い難い」

「そうなの?」

「前に説明しなかったっけ?始源を始源のまま保有し続けるのはその存在にとってかなりのリスクになる。微量ならまだしも始源として扱えるだけの量となると下手すれば自身の中にある始源によって自身の存在を塗りつぶしかねないんだよ」


その説明でライは以前に魔窯の中に落ちた際、フィアが始源を使って暴走する魔力を塗りつぶし、無に還した事を思い出す。

つまりあれが魔力では無く、人間に対して起こる危険性があるという事だ。


「ねぇフィア、それって俺とかミリアは大丈夫なの?」

「ミリアに関しては問題ないよ。さっきも言ったけどあの子の中にある始源はもう始源とは言い難い、別の物へと変質してる。でもライの場合は――」


ライの顔をじっと見つめたまま、フィアは黙り込んでしまう。


「あの、そこで区切られると凄い不安になるんだけど」

「ごめん、でも正直私自身、何故ライがそこまでの始源を受け入れられているのか不思議で仕方ないんだよ。第一こんな量、しかもこれだけの質を持った始源、一体どこから……」


フィアでさえも分からないと言った様子にライの不安は増々加速し始める。


「俺の始源の出所は一旦置いといて、俺の身体はどうなの?このまま始源を持ち続けても問題無いのかな?」

「……先にライの不安を解消する為に、何故ミリアは大丈夫なのかも含めてちょっと始源について話しておこうか」


そう言ってフィアは座っていたベッドからライの対面の椅子へと腰掛け直し、改めて説明を始める。


「まずミリアの中にある始源についてだけど、あれは始原としての力の殆どを失っている。いえ、失っているというよりはその力の殆どを別の力へと変化させてしまっているの」

「別の力?」

「さっきも言ったけど、始源には始源によって生み出された物、つまりこの世の全ての存在を塗り替える力が存在する。この力のせいで始源を持つ者には常に存在の消滅という危険が生じてしまうの」

「じゃあ力を別の力に変化させるっていうのは」

「そう、この塗り替えるという力をその力を持ってして宿主にとって安全で無害な力へ、ミリアの場合は魔力を視るという力に塗り替えているの。この変化は宿主が意図したものではなく、いわば自身の存在が危機に瀕した為に無意識に起こした自己防衛本能って所かな」

「なるほど…あれ、それじゃあ俺の始源が始源としての力を保ったままなのって」

「始源を宿したライの魂が今の状況を問題無いと認識してるって事になるね」

「どれだけ鈍感なんだ俺の魂は…!こんな全身に始源を溢れさせといて問題無い訳ないだろ」


落ち着く所かどんどん加速していくライの不安に歯止めをかけるべく、フィアが説明を続ける。


「落ち着いて、事実三十年以上こうして生きられているのが何よりの証拠だよ。ライはその膨大な始源を受け止め切っている」

「いや、受け止められてない気がするんだけど、思いっきり漏れ出してるんだけどこれ」


身体の表面を漂う始源を出したり引っ込めたりしながらライが言う。


「そんな目に見えない程度の始源なんてライの中に眠る始源から発せられたただの残り香みたいな物だよ」


確かにフィアの言う通り、ライがここぞという時に身体がから捻り出した始源は誰の目にでも捉えられる程に色濃く、眩く光輝いていた。

それと比べれば今の全身を漂う程度の始源の事を残り香だと例えるのも納得は出来る。


「ライが気にしなきゃいけないのはそんな残り香程度の始源ではなく、その魂の内に宿した本体の方、今はただ出したり引っ込めたりするだけだからライの魂や肉体にそれ程悪影響は出てないけど」

「始源を始源として使おうとする場合は話が変わってくるって事?」

「うん、ライの魂が宿した始源を無害認定してしまっている以上、ミリアのように始源がライにとって無害な力へと変わる可能性は極めて低い。始源を始源として使う以上は常に消滅の危険性が付き纏う事になる」


フィアがライに始源を使って欲しくない理由は以前、ライが始源を使えるようになりたいと言い出した時にも話していた。

強すぎる力はその力を持つ者を堕落させる。

もしライが始源を使いこなせるようになった時、ライが今まで培ってきた物全てが無駄になってしまうのではないかという不安。

そしてもう一つ、ライ自身の存在の消滅、それこそがフィアがライに始源の使い方を教える事を嫌がる最大の理由でもあった。


「……俺、自分の中にある始源って力について認識がちょっと甘かったかも」

「まぁその時その時、必要な所しか説明してないからってのもあるとは思うけど、ライの中にある始源は今まで出会ってきたどの人間が宿している始源よりも異質であるってのは理解しておいた方が良いと思うよ」

「うん、分かっ――ん?」


フィアの言葉に対し、分かったと返そうとしたライだったが、そのフィアの言葉に違和感を覚える。


「ねぇフィア、”今まで出会ってきたどの人が宿してる始源よりも”って言ったけど」

「それがどうかしたの?」

「なんかその言い方だとまるでミリア以外にも始源を宿していた人が居たような口振りだなーって思ってさ。まさかとは思いつつも一応念のため確認を」

「あぁそんな事か、だったらライの思ってる通りだよ。闘都で一人、エアストで一人、マリアンベールで出会ったミリアも含めれば私達は三人の始源を宿した人間と会ってるよ」

「マジか…そんな一体何時の間に……って、エアストに一人!?」


ライが驚きのあまり椅子から立ち上がって机に身を乗り出す。


「だ、誰!?」

「今日あったクリオって人だよ。あの人は他人の感情、思考を読み取るって力に始源を変化させてるんだよ」

「感情や思考を読み取る?」


他人の感情や思考を読み取るという言葉にライが反応する。


「そうか、あの予知じみた先読みの精度は始原のせいだったのか。それなら納得が行くけど、なら何で俺の動きは読めなかったんだろう」


フィアの言う通り、他人の思考を読む事が出来るならあの時、カイルの動きを読み反撃に出たライの攻撃を防げるはずだ。

しかしあの時の様子、クリオ自身の言葉から考えてもライの動きをまるで読めていなかったように思える。


「目には目を、歯に歯を、始源には始源をってね。始源に起因する力は同じく始源で対処する事が出来る。まぁ”始源に起因する”なんて言い出したら全ての物がそうなんだけどね」

「でも俺はあの時始源を使った記憶は無いよ。普段通り、ただ始源を纏わせてただけで」

「それだけで十分なんだよ。言ったでしょ?ライの始源は他の人が宿している始源とはかなり異質だって、ライの始源はただそこにあるだけ魔力だけでなく微弱な力なら勝手に跳ね除けてしまうんだよ。しかも読心の類は相手の内側を探る力、例えライの体表を覆う始源を抜けられたとしても内側に進むにつれて密度を増す始源を超えるのは容易じゃない」

「意識して居なくても始源は俺の身体を守ってくれてるんだね」

「そうだね、でもそれを過信してはいけないよ。これはあくまでも読心なんかの実体を伴わない、ライの肉体ではなく精神に作用するような力に対しては凄まじい効果を発揮するけど、一転して実体を伴った魔法、通常の攻撃魔法なんかを防げるほどの物じゃない。始源を視覚化出来る程に一点集中させれば話は別だけどね」

「そこら辺はマリアンベールでフィアに嫌ってくらい身体に叩き込まれたから理解してるよ。しかしそうか、実体を伴わないって言うと回復魔法なんかも駄目だったりするのかな?。精神ではなく肉体に影響する魔法ではあるんだけど」

「微妙な所かな。全く効かない訳じゃ無いけど、傷口までの間に漂う始源に阻害されて効力は落ちると思う」

「やっぱりか、怪我した時にギルドの魔術師の人に回復魔法を掛けて貰ってたんだけど、たまに治療の際に利きが悪いって言う事があったんだけど、始源が原因だったのか…」


いや、治療の時だけではない、そういったライが怪我をするような事態に陥る時は何時もクラックブーツの調子が悪かった。

当時はブーツの不調を疑ったライだったが、今にして思えばそれも自分の包む始源の影響を受けての事だったのだろう。


「そういえばフィアの声がまた聞こえるようになったのも俺の中にある始源の力が増したからなんだよね?。フィアの声が聞こえるようになってからクラックブーツが使えなくなった訳だし」

「ライは――」

「ん?」


フィアは少し言い淀みながら、ゆっくりと言葉を続ける。


「ライは、始源が無くなれば良いって思ったことは無い?」

「それは当たり前の、ごく普通の冒険者になりたいかって事?」

「そう」

「うーん…」


フィアの問いにライが少し困ったような顔をする。


ライは未だにこの始源の扱いについて悩んでいる部分があった。

ただ黙って見ている事を良しと出来ないライはフィアに始源の扱い方を教えて欲しいとは言ったものの、果たしてそれが良い事なのかを判断出来ずにいた。


ライの考えが正しいか、間違っているか、そのどちらかで言うのであればそれは正しいのであろう。

頼るのではなく、自分の力で誰かを救いたい、その思いに間違いは無い。

何より迷わないと言ったのはライ自身だ。

だがそれが始源を使う事が良いか悪いかという話になって来れば話は別である。


「確かに始源のせいで困ってる事は幾つもある。魔法や魔道具の類が使えない事、そのせいで誰とも組んで貰えなかったり、普通では見えない物が見えてその差に戸惑ったり、冒険者としては致命的な事もある」

「やっぱり――」

「でもね、それでも俺は始源が無ければ良かったなんて思った事は一度も無いよ」

「――え?」


キョトンとした顔をするフィアを他所にライは言葉を続ける。


「そりゃ魔法が自在に使えたらーとか自分も他の冒険者みたいにーとか考えた事は何度もあったけどさ、そんなの始源の存在を知る前の話だしね」

「で、でもじゃあ始源の存在を知った今ならそう感じるんじゃ」

「いや?そんな事は全然ないよ。だって始源が無ければフィアの声を聞く事も無く、こうしてフィアと一緒に居る事も無かっただろうしね。それだけで俺は始原があって良かったって、そう思えるんだ」

「っ――!」


何の事はないと、当たり前の事のように言ってのけるライの姿にフィアは言葉を失い、頬を赤く染め上げ


「ちょ、ちょっと夜風に当たってくる!」


そのまま脱兎の如く部屋を飛び出して行ってしまった。

開け放たれた部屋の扉の方を暫し見つめた後、ボソリと呟く。


「少しクサかったかな」


フィアと同じように赤く染まった頬を指で掻き、フィアが戻ってくるまでの間ライは一人ベッドの上で悶え苦しむのであった。









~三人目についての話~

「ところでフィア、闘都に居た始源を宿した人って誰の事なの?」

「ほら、前に武闘大会のルールを聞きに行った時に会ったあの人だよ」

「あぁ、あの凄まじい記憶力の受付の人か…そうか、あれも始源に類する力だったのか」

「厳密に言えば記憶力ではなく、そのモノの本質を見抜く力って所かな。それが何であるのかを知ろうと考えれば、それに対する答えが見えてくるって所かな」

「例えば?」

「”この人が過去に面接を受けているか?”とか、そんな感じで探りを入れたらそれに対して”この人は過去に面接を受けている”という答えが返ってくる感じ」

「何それずるい」

始源の説明を色んな所でチョコチョコやってるせいで何処まで説明出来たのかを正確に把握出来てない……。

その為説明が重複してたりするかも知れませんがご容赦下さい。


それと闘都の始源保持者について本編中に書きそびれたのでおまけ的な感じて末尾の方に書かせていただきました。

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