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先生

投稿遅れてしまい申し訳ありません。

休日出勤で土日にあまり執筆出来ませんでした…。


ライがこの街に来てから早二週間、ライと駆け出し四人の距離も大分縮まりライがマクリールやフランチェスカの事をマックやフランと呼ぶようになった頃、ライとフィアは何時ものように集合場所である訓練場に向かっていた。


「ねぇライ、ここに来て二週間になるけど何時までここに居るつもり?。確かこの依頼を受けた時は一週間くらいって話してたのに」

「そのつもりだったんだけどね、つい熱が入ったというか何だか中途半端に放り出せなくて…それに今はこの街もオークの問題でごたついてるし、そのせいでアラン達も駆り出されて人手不足だからね。少なくてもこの状況が僅かにでも解消されない限りは離れられないかなぁ」

「それって一体何時になるの?」

「それは――何時だろうね?」


呆れたようにフィアがそう言うと、ライは苦笑いを浮かべながら返す。

そんなやり取りをしている間にも二人は訓練場のすぐ傍まで来ており、二人の耳に何者かの言い争う声が聞こえてくる。


「この声は」


言い争う者達の声の一方はライの良く知る人間の物であり、自然とライは足を速め訓練場内へと足を踏み入れる。


訓練場の中央には9人の人間が集まっており、一方は案の定カイル達四人だった。

その四人に対峙する形でカイル達と同じくらいの年齢の少年少女が四人、そしていがみ合う両者の間に立ち宥めるように声を掛ける男が一人居た。


どうやら言い争って居るのはカイルともう一方の四人組の少年の一人らしく、マクリールやリザ、フランに少年の仲間と思われる三人も言い争う二人の姿を見て止めようとしたり、呆れたような顔をしていたりと三者三様だった。


「あ、師匠!」


二人の言い争いを止めようとオロオロとしていたマクリールの視界にライが映ったのだろう、ライの姿を見つけたマクリールがそう声を上げると、訓練場に居た全員の視線がライの方へと向く。


そんな視線に引っ張られるようにライは一団の元へと歩み寄り声を掛ける。


「おはよう、今朝は随分と騒がしいけど…そっちの子達は?」

「ただの悪ガキだよ!」

「あ!?ガキはお前の方だろうが!?」

「んだとぉ!?」

「二人共落ち着きなさい。カイル君、友達の事を悪ガキなんて言う物じゃありませんよ。カイト君も悪口を言われてそれに言い返すようじゃまだまだ子供ですよ。それに挨拶してくれた人を無視して喧嘩をするなんてどういう事ですか?」

「でも先生、カイルの奴が――」

「”でも”ではありません。良いから挨拶をなさい」


二人の間に割って入っていた男の言葉にカイルとカイトと呼ばれた少年は黙り込んでしまう。


「挨拶が遅れました。私はクリオ、教鞭を取りこちらの四人に色々と教えている者です。さぁ、皆さん挨拶を」

「カイト…です」

「初めまして、イリィだよ」

「クルバです、よろしくお願いします」

「じーなぁ」

「俺はライ、冒険者でカイル達に色々と教えてる人間だよ。で隣に居るのが」

「フィア、ライと一緒に旅をしてる」

「それでカイルとカイトは一体何を言い争ってたの?」


簡単に自己紹介を済ませたライは気になっていた事を尋ねてみる。

するとそれに答えたのはカイルでもカイトでも無く、イリィだった。


「別に特別な理由なんて無いよー。この二人仲が悪くて顔を合わせるだけで何時も喧嘩してるんだもの」

「とりあえず”おはよう”とか”こんにちは”の前に暴言が飛ぶもんね」

「まぁ、この二人にとって暴言が挨拶みたいな所はありますし」

「例え理由があったとしてもくだらない事が多いし、前なんかどっちの名前がカッコいいかで喧嘩してたわよね。一字違いの癖に何やってんだか」

「似てるからこそどっちの方が良いか気になったんじゃない?。そもそも全く違ったら比べる事もないだろうし」

「けんかするほど仲がいぃ?」

「「お前ら好き勝手言うんじゃねぇ!」」

「ほら、息ぴったり」

「「くっ…!」」


互いを罵り合いながらもまるで鏡合わせのようにシンクロするカイルとカイトに、その場に居る殆どの人間は平然とその様子を眺めていた。

どうやらこのようなやり取りは日常的に行われているようだと、周りの空気から察知したライはそれならば特別気にする必要も無いかと意識を子供達からクリオの方へと向ける。


ライに視線を向けられたクリオはビクリと肩を揺らし何やら緊張した様子だった。


「ど、どうか致しましたか?」

「いえ、先程先生と呼ばれていたので、もしかして貴方はBランク冒険者の?」

「何故私の事を?」

「カイル達から話を聞いて居たので、この街には先生と呼ばれるBランク冒険者が居ると、それに純粋な魔法使いだとも聞いて居たのでどんな人かと興味があったもので」

「あ、あぁ…なるほど」


挙動不審な様子のクリオをライが訝しんでいるとその後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。


「おーい、ライ」

「アラン?」


ライが背後を振り返ると片手を上げながらこちらに歩み寄ってくるアランとその仲間達の姿があった。


「どうしたんだ朝から来るなんて、何時も来る時は依頼を早めに切り上げた夕方くらいからなのに」

「実は今朝からオークが巣を作ってる森にギルドの調査が入ってな、それが終わるまでギルド関係者以外立ち入り禁止になってんだ」

「調査?」

「端的に言えばオークの活動地域が何処まで後退したか調べてんだよ。俺達がここ数週間じわじわとオーク達の数を減らして森の奥まで追い込んだからおかげで森の浅い所ならオークに襲われる心配は無くなったはずだからな」

「じゃあその調査の結果次第では森に入れるようになるって事?」

「多少の制限はあるだろうがまぁそういうこった」


アランがそう言うとライの後ろで話を聞いて居たカイル達のはしゃぐような声が聞こえてくる。


「森に入れるようになるって事は」

「あぁ、やっと冒険者らしくなってきやがった」

「いけませんよ二人共」


カイルとカイトがそんな事を言うとクリオが二人の肩を優しく叩く。


「森に立ち入れるようになったからと言って貴方達がすぐに入れる訳ではありません。まずはこの街で学べる限りを学んでから、森に行くのはその後です」

「「えぇー!?」」


二人が声を合わせながら不満そうな様子でクリオに抗議すると、アランが割って入ってくる。


「まぁまぁ話はそれくらいにしといてさ。それよりも珍しいなクリオが訓練場に居るなんて、何時もはギルドの一室借りて勉強教えてるのに」

「今日もその予定だったのですがね…訓練場の前を通り過ぎようとした時にカイト君がカイル君を見つけまして…」

「あぁ、なるほど」


そこから先の流れは容易に想像が付いたのだろう、クリオがそこまで説明した所でアランが納得したような顔をする。


「まぁ何せよこの場に俺とライにクリオ、それに悪ガキ八人が勢ぞろいするなんて滅多に無いだろうからな。良い機会だしライ、ちょっとお前戦ってみろよ」

「今の話の流れでどうして俺が戦う事に?」

「アランさん、貴方は何時も主語を抜いて話しますね…」

「悪ガキって誰の事だよアラン兄ちゃん!」

「俺達何もしてねぇじゃん!」

「そうよ!悪ガキなのはカイルとカイトだけよ!」

「「フランてめぇ!?」」


一気に騒がしくなった訓練場内でアランが大きな声を張り上げる。


「お前ら静かにしろ!ったく、おいカイル」

「ん?なんだよアラン兄ちゃん」

「ライと一対一でやってみろ」

「え?」


アランのその言葉にライが驚いた顔をする。


「え、戦うってクリオさんとじゃ?」

「いやいやクリオは無理だ。貧弱過ぎてカイルにも余裕で負けかねない」

「本人を前にして言ってくれますね…まぁ事実なので仕方無いですが」

「そうだとすると本当にあの話の流れが理解出来ないんだけど、何で俺にアラン、クリオさんが集まった機会に俺がカイルと戦う事になるんだ?」


当然の様にライの口から湧き出た疑問にアランは意味有り気に笑みを浮かべながら答える。


「クリオの戦闘能力は皆無と言っても良い、だがBランク冒険者に名を連ねている以上ただ戦えない訳じゃない」

「Bランクと呼ばれるだけの何かがあるって事か」

「あぁ、それを体験するには普段から相手してるカイルと戦うのが一番分かりやすいと思ってな」

「今この場で教えては――くれそうにないな」


アランの顔を見てライは諦めたように言葉を漏らす。


「知りたきゃ戦って確かめな。って訳でクリオ、頼むわ」

「人の了承も無く…それに頼むって戦うのは私じゃなくてカイル君何ですから、まずはカイル君に了承を――」

「へっ!先生の力がありゃ百人力、師匠に一矢報いて見せるぜ!!」

「……確認するまでも無さそうですね。はぁ、分かりました。やりましょう」

「そうこなくちゃ!じゃあやるか!ライ対カイル&クリオ!」


こうしてライは流されるがままカイルと戦う事になったのだった。

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