追いかける三人組
前回と合わせて一つにまとめても良かったけど分割で、そのため短いです。
ライ達がエアストの街に到着した頃、ヴァーレンハイドとキラヒリアの国境付近に三人の冒険者の姿があった。
「どうぞお通り下さい!」
「ご苦労様、お勤め頑張ってくださいね」
「は、はい!【聖壁】殿に労って頂けるとは光栄であります!!」
三人の冒険者の正体はルーク、アリス、イザベラであり兵士に労いの言葉を掛けているルークにアリスが苛立ちを隠す素振りも見せずに言い放つ。
「ちょっと何やってるのよ、そんなのに構って無いでさっさと行くわよ」
「アンタ、自国の兵士に対してそんなのってのはあんまりじゃない?」
「別に兵士なんて何処の国も同じでしょ。ただ所属が違うだけ、そんな事でイチイチ態度を変えるなんて阿保らしいわ」
「アリスのそういう考え方はたまに見習いたくなりますね」
一通り兵士を労い終えたルークが二人に近づきながらそんな事を言う。
「捉えようによってはどんな人間であれ平等に接すると受け取る事も出来るけど、アリスの場合はただ単に他人に等しく興味が無いだけでしょ」
「そうかもしれませんが、国という括りに囚われないというのは素直に好感が持てる事は確かですよ」
「無駄話してるなら一人で先行くわよ。こんな所で無駄に時間を浪費してたらあの馬鹿を置いて追いかけた意味が無いわ」
ライの願いにより国王から命じられCランクを素手で倒せるようになるまで闘都を離れる事が出来なくなったアドレアを置き去りにし、三人はライを追っていた。
「それもそうですね。アドレアが何時解放されるかも分からないからと三人で追いかけてきたのにこんな所で無駄にする訳には行きませんね」
「急ぐのは良いけど街に着いたらどうする気?三人だけで探すの?」
「そうするか無いでしょうね。ギルドの力を借りれば人手は簡単に集まるでしょうが極力Sランク冒険者である事を知られるのは避けたい所ですし、自力で探すしかありませんね」
「しょうがないわね…それで担当はどうするの?」
「エアストの街は確か中央に冒険者ギルド、右側は宿屋含む住民の居住区、左側は商業区でしたよね。では右側をイザベラ、左側は私が、中央はアリスで行きましょう」
「私はまた早くに切り上げて宿を取れば良いのよね?」
「えぇ、出来るだけ大通りは避けてください。それと豪華な宿もですよ」
「分かってるわよ、そもそも冒険者を育成する為に作られたエアストに豪華な宿なんてあるとは思えないし」
そんな話をしつつ三人はライ達を追ってエアストの街へと近づいて行く。
「アリスは変装した方が良いでしょうね。アリスは闘都の武闘大会に出場して大勢に姿を見られていますし、何よりキラヒリアの冒険者、他国の冒険者である私達は兎も角アリスの事を知っている人間は多いはずです」
「それもそうね、私のローブを貸すわ」
そう言ってイザベラがローブを取り出しアリスに差し出すも、アリスはそれを煩わしそうに見る。
「別にそこまでしなくたって」
「アリス、正体がバレれば間違いなく大勢の人間に囲まれますよ?。何せ貴女はキラヒリアが誇るSランク冒険者なのですから、そうなれば人を探す所では無いし何より貴女も人に囲まれるのは嫌でしょう?」
「…分かったわよ」
ルークの言葉にアリスは渋々と言った様子でローブを受け取りそれを羽織る。
「さて、それでは行きましょうか」
ルークを先頭にアリスとイザベラがエアストの街と向かう。
駆け出しの街エアスト、ライとフィア、そしてSランク冒険者達の出現によってこの街が抱えていた問題が大きく動き出す事となる。