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次の街へ

連休明けの忙しさ舐めてました。

今週は一話だけの投稿になってしまいましたがご了承ください。

「もう行くのかい?」


闘都の武闘大会が閉幕した翌日の朝、闘都の東門にライとフィア、エリオ一家の姿があった。


「はい、少し派手にやりましたから…誰かに捕まる前にさっさと出て行かないと」

「最後魔形が壊れて素顔が見えてたもんねー。遠目だったし手ですぐに隠してたからしっかり見えた人は殆ど居ないと思うけど」


ノーラの言葉にライが申し訳なさそうな顔をする。


「すみません、お借りした魔形なのに…」

「いえいえお気になさらず!そもそも武闘大会に出場する為にお貸したのですから壊れる事は承知の上ですよ」

「それよりも身体…大丈夫…?」

「ギリギリで避けたとはいえあの【豪腕】の魔力を込めた一撃、当たっても無いのに魔形を破壊する程の威でしたからね」

「身体は問題無いですよ。別にどこも違和感は無いですし、試合後に一応治癒魔法を掛けて貰いましたからね」

「それなら良いんだけどね、それよりもライ、アンタ本当にアレで良かったのかい?」

「アレとは?」


ライが首を傾げながらカレンに聞き返す。


「ほら、優勝した時国王に願った内容の事だよ」

「あぁ…アレですか」


カレンの言葉にライが微妙な顔をする。


「正直その場のノリと言いますか、勝つ事ばかり考えてて願いの内容なんて何も考えてなかったんですよね」

「だからってアレはどうなの?まぁ願いの内容はお兄さんの自由だけどさ。でもあんなノリノリな感じで言っちゃって、実は密林仮面の事気に入ってたり?」

「あんな事素で言える訳無いでしょう?。それにもうあんなのは御免ですよ」


武闘大会に優勝したライは国王に願いを言う権利を得た。

だが何も考えていなかったライは土壇場で願いの内容を聞かれた際、こう答えたのだ。


「貴国の英雄、彼の者では私の隣に立つ事はおろか立ち塞がる事さえ難しい。私を追うと言うのならせめて魔法抜きでCランクの魔物を薙ぎ払えるくらいになって貰わねば話にならない。そのため陛下には彼の者を鍛えて頂きたい」


というような事を願ったのだ。

国王に願うような事などライ自身には特になく、しかも戦闘時とは違い表彰式の時は国王だけでなくライの声も闘技場中に聞こえるよう細工が施されていた。

観客からの期待の籠った視線を受け、ライは咄嗟に噂で語られる密林仮面のイメージを壊さないように願いを言ったのだ。


「兎に角、あの変態達が追いかけてくる前に俺達はもう行きます」

「達?【豪腕】一人じゃないの?」

「Sランク冒険者に追われるなんて、本当に色々と凄い奴だね。一体どんな人生を歩んできたんだか」

「色々あるんですよ、詳しくは聞かないでください…」


疲れたような顔をしながら言うライの外套が突然引っ張られる。

ライが視線を落とすとライの足元に三人の女児の姿がった。


「行っちゃうの?」

「一緒に居ようよー!」

「寂しい…」

「コラ、我がまま言うもんじゃないよ」


そう言ってライの外套を引っ張る三人をカレン、ライラ、ノーラがそれぞれ抱きかかえる。


「ごめんねお兄さん」

「うちの子達が…」

「大丈夫ですよ。それに分かれるのが寂しいって言うのは自分も同じですから」

「旅を続けるならそのうちまた出会えるさ」


カレンの言葉にライが無言で頷き、抱えられる三人娘の頭を順に撫でて行く。


「また会おうね」

「うー…約束だよ?」

「ぜったい、ぜーったいだよ!」

「約束…」

「分かってる」


ライはそう返すと、エリオ達から離れフィアの隣に戻る。


「それじゃあ皆さん、短い間でしたがお世話になりました」

「それはこっちのセリフですよ。お二人のおかげで私達は無事に闘都まで来れましたし、闘都に着いても楽しく過ごせました」

「迷惑も掛けたけど、まずはお礼を言わせて貰うよ。ありがとう二人共。それと悪かったね、ノーラが馬鹿やらかしたり、それに…最初にあんな態度をとって」

「気にしてないですよ。確かにノーラさんの行動には頭を悩ませる事が多々ありましたけど、楽しかったのも事実ですし、カレンさんがあんな態度をとったのも仕方のない事ですからね」

「ライが気にして無くても私が気にするんだよ。なーなーで済ませちまったがハッキリと謝ってなかったからね。こういうのはキッチリ済ませないと気が済まない性分なんだよ。本当に済まなかったね」


そう言いながらカレンが申し訳なさそうな顔をしながら頭を上げるも、顔を上げた時にはスッキリとしたような笑みを浮かべていた。


「さぁ湿っぽい話はこれくらいにして、送り出す時は笑顔じゃないとね!」

「そうだな、ライさんフィアさん本当にありがとうございました。また何時か会いましょう」

「二人共、元気でやるんだよ!」

「また会おうね…」

「今度会った時はまた新しい服選んであげるからねー!」

「お二人にまた出会える事を願っていますよ」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん!元気でねー!」

「またねー!」

「約束…だよ?」


エリオ一家の言葉を受けライとフィアが顔を見合わせた後、笑みを浮かべながら言葉を反す。


「皆さん、お世話になりました!また会いましょう!」

「機会があればまた何時かね」


そう言うとライとフィアはエリオ達に背を向け東門を潜り闘都の外へと出る、次の街へと旅立つために。












ライとフィアが闘都を旅立ってから三日、武闘大会も終わり一般入場が禁止された闘技場の舞台内にアドレアの姿があった。

全身からは玉のような汗が浮かび上がっており、舞台の外周には無数の魔物の亡骸が転がっていた。


「おらぁ!次の奴連れて来い!!」


アドレアがそう叫ぶと舞台の鉄格子が持ち上がり、そこから魔物が姿を現す。


アドレアは現在、ライが国王に願ったあの願いによって素手のみでCランクの魔物を相手どれるようになるまでここで特訓を重ねていた。

そんなアドレアの様子を観客席から見守る二人の人間の姿があった。


「まだ三日目だというのにもうDランクでは相手にならなくなってきおったの…流石【豪腕】と言った所か」

「しかしいくら何でも早すぎませんか?。魔物っていうのは魔法抜きでこうも簡単に相手どれるものではないでしょう」


一人は人食いリドル、もう一人は威厳ある佇まいの中年の男だった。


「今まであやつは力で押し切る事に拘っておった。実際にそれで今までどうにかなっておったしの。だがあの決勝戦で決して力押しでは倒せない相手が居ると悟ったのだろうよ。しかもその相手は力押しとは程遠いあやつとは正反対の男じゃった。あやつの固定観念をぶち壊すには十分じゃろ」

「とはいえ今まで力押ししかした事の無い男が、僅か三日でこれ程の技を身に付けるとは」

「そこは才能としか説明が出来んが、もし仮に何か説明付けるとするならあやつ自身は力押ししかしてこなかったかもしれんが、相手はそうでは無かったという事じゃろうよ」

「どういう事ですか?」

「あやつの動きを見てお前は何も気づかんのか?。あやつのあの動き、わしと戦ったあの小僧を彷彿とさせる動きをしとる」

「まさか相手にした人間の動きを見様見真似でやってこれだけの事を?」


中年の男が驚いた様子で舞台内に転がるEランクやDランクの魔物の亡骸に視線を落とす。

その横でリドルも同様に魔物の亡骸に視線を落としながらふと疑問を口にする。


「そう言えばやけにオークの新兵(ティーロ)が目立っとるが…良くもこれだけ集めたもんじゃの」

新兵(ティーロ)だけではありませんよ。Cランクの兵士(ミーレス)隊長(プリンケプス)も用意しています」

「先程からオークばかりじゃが、これは例の南東から流れてきたもんか?いい加減処理したらどうじゃ鬱陶しい」


リドルが本当に鬱陶しそうな表情を浮かべながら眼下に転がるオークの亡骸を見つめる。


「そう簡単な事では無いのですよ。処理に向かうにしても国境を越えねばなりませんし、北の国境からの魔物の進行も激しくなってきていますからね、少しでも戦力はそちらに回さねばなりません。しかも噂によれば大将(ラートル)が居るという話です」

大将(ラートル)は確かAランクじゃったか…いっそアドレアでも向かわせたらどうじゃ?」

「それは出来ません。いくら自国のSランク冒険者とはいえSランク冒険者を動かすならそれ相応の報酬は用意せねばなりません。たかがAランク如きにアドレアを使える程今の我々に財政的余裕は有りませんし、Sランク冒険者を動かすには色々と制約が…」

「まったく面倒じゃのう、まぁ今のわしはただの治安維持部隊の一兵卒じゃし、国の運営にアレコレ口出し出来る立場には無いのだがの…特にこうして国王に異を唱える事などの」


くつくつとかみ殺したような笑いがリドルの口から漏れる。


「そんな事は有りませんよ。先々代の国王の親友であり、先代、そして私の剣の指南役で在られた貴方に異を唱えられる者など今の闘都、いやこの国の何処を探してもおりません」

「そうかの?少なくともわしは二人ほど知っておるがの」


そう言って穏やかな笑みを浮かべるリドルの脳裏にはライとフィアの二人の姿があった。


「わしを目の前にしてあそこまでハッキリと物言うたのは先々代の国王以来じゃわ」

「二人…ですか。一人はあのライとかいう青年ですか?」


国王が口にした名前にリドルが反応する。


「なんでお前さんがその名前を知っとる?。大会には偽名で出場しておったに、まさかお前さん立場を利用して選手の個人情報を調べおったか?」


リドルが鋭い視線を国王に向ける中、当の国王は呆れたようにため息を吐いて言う。


「何を言っているのですか、準決勝で貴方が名前を呼んでいたじゃありませんか。しかも観客席まで届くような大きな声で」

「そ、そうじゃったかの…はて、興奮しとって余りよぉ覚えとらんわ」


誤魔化すようにリドルが逸らし空を見上げる。


そうして数秒程空を見上げて続けていた時、リドルがポツリと呟くように言葉を漏らす。


「そう言えばライの奴も南東に向かうと言っておったな…」


リドルの頭の中にはライの向かう先についてと南東で問題となっている事件の事が頭を過っていた。


「何事も無ければええんじゃがのぉ」


そんなリドルの心配を他所にライ達は南東に向かい旅を続ける、新たなる出会いを求めて。

これにて第四章は終わりです!。

いや長かった…本当に。

当初は第三章より短くなるかなーくらいに思ってたんですが、短くなる所か倍に膨れ上がりましたね。

武闘大会が始まるまでの間が思ったよりも長くなり過ぎたのが原因です。


次は例の如く補足兼人物紹介です。

ただ登場人物がかなり多いので一纏めにしたり一部出番の薄いのは省略します。

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