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何でまたそこを狙った?ドラッグフジタに魔王の手先現る!

ドゥルルルン パパパパーパーパーパッパパー パーパーパパーパーパーパーパパーパーパーパーパパー♪


文字にするとパがゲシュタルト崩壊しそうなファンファーレが枕元のスマートフォンから鳴り響く。

「もう朝かぁ…」

私の1日はいつもこの電子音で はじまる。

「あっ…そういや今日私休みだわ。山村さんとシフト交代したんだった…やったね、もうちょっと寝よ」

…はじまらない時もある。



ー2時間後。

「さすがにもう起きよ…洗濯物も干さなきゃいけないしなあ…」

ベッドの上でひと伸びして私はフラフラとロフトのはしごを下りて洗面所に向かう。

「久々にしっかり寝たな〜まあいつも6時間は寝てるけど…」

着ていたTシャツとスウェットを脱ぎ洗濯機に放り込む。

スーパーのPBの安い洗剤と何かよくわからない香りのついた柔軟剤を入れおいそぎモードで洗濯機を回す。

パンツ一丁で歯を磨く。歯磨き粉は昨日新しく買った期間限定のマンゴー&バニラ風味のものだ。いつも使ってるものが残っているけど好奇心に負け封を開けてしまった。どれどれ…


「………やっぱり歯磨き粉はミントでいいな…」


微妙に選択を失敗した。物珍しさでつい買ってしまったけど歯磨きに甘ったるい味はスッキリしない。まあもったい無いから使うけど。

口を濯ぎ顔を洗う。洗顔フォームがもう残り少ない。そう言えばシャンプーももう少なくなってきていたな。

よし、朝ごはん食べたらドラッグストアに行こう。

オールインワンゲルを塗り髪を後ろで結びパット付きのマキシ丈ワンピを着て朝の準備(休日版)完了。


ケトルに水を入れ沸かしながら目玉焼きを焼き、トースターに8枚切りの食パンを入れる。

同時進行でお皿に千切りキャベツとミニトマトとアーモンド入りのチーズを乗せる。

焼きあがったトーストに目玉焼きを乗せ黄身の部分を少し割り醤油を垂らし塩胡椒をかける。沸いたお湯で昆布茶を淹れる。

5分で出来る私のいつもの朝食である。

目玉焼きトーストを齧りながらテレビを付ける。

10年位前に人気のあった男性アイドルが電撃結婚したらしい。

テレビのレポーターが街を行く人に感想を聞いている。

OLのAさん「え〜ウソ〜!独身の希望の星だったのに〜!もう今日は会社休みたいですぅ〜」

派遣社員のBさん「私が結婚する予定だったのにぃ〜!悔しいですぅ〜」

「…」

レポーター「独身女性のみなさん阿鼻叫喚ですね〜!」

「ええ〜…私も独身の女だけど芸能人の結婚なんて他人事すぎてどうでもいいよ…アイドルにも興味ないし」

世の独身女性への偏見にはよくウンザリさせられる。やれ年収1000万のイケメンと結婚したがってるだとか若い頃遊びまくって婚期を逃しただとかBLが好きで30代になっても処女だとか…そんな極端な奴はどう考えても少数派だろう。珍しいからテレビに出されたりネットで晒されたりしているんだろうに、それを独身女のスタンダードだと本気で思っている人がそれなりの割合でいるのがやるせない。


ー次のニュースです。園辺町のドラッグストア「ドラッグ・フジタ」に魔王の手先を名乗る生物が出現しました。


えっ?

園辺町のドラッグフジタってそれ今から私が行く予定の…魔王の手先?なにそれ、新手の変質者か何か?

画面に見慣れたドラッグフジタが映し出される。店内の商品が床にばらまかれ食い荒らされている…

「うわー、アイスクリーム溶けちゃってるじゃん、もったいな!卵も!」

画面の奥には…なんと、よくゲームの序盤に出てくるようなゲル状の生き物が蠢いていた。

「は?何これ?CG?」

画面が切り替わる。

「一体何故うちの店がこんな事に…というかあの生き物は一体何…?」困惑するドラッグフジタの店長。

ー「謎の生き物については今調査中という事です。では次のニュース…」


………コントだったのかもしれない。

ニュースの合間に急にコントを入れてくるか?そうだとしても何で地方のドラッグストアなんて微妙なところを舞台にチョイスしたのか?疑問はたくさんあるが、あまりにも内容がありえなさすぎてそれが1番現実的な気がしてきた。

…ま、とりあえずドラッグフジタに行ってみるか…本当にスライムいたら写メ取ってTwitterにでも載せてみよっと。

私はパーカーを羽織りニット帽を被り愛車(中古で20万円だったワゴンR)の鍵を取り現地に向かった。


平日昼のドラッグストアは普段はそんなに混雑はしていない。大体主婦の人や定年後のおじいちゃんおばあちゃん、まばらに平日休みの人なのか大学生なのかニートなのか若い人もいるといった所だ。

あんなコント?が放送されたしいつもより人はいるかもしれない…と思っていたが大正解!いつもの2割増位で人が多い。微妙!地方の平日の限界である。

しかし、店は出入り禁止になっていてみんな外から様子を伺っているようだ。

中では警察の人が何人か集まって話しあっている…

近くにドラッグフジタの店長がいる。よく見ると手が思いっきりかぶれていて痛痒そうだ…

「スライムに触れるとこうなるからみなさんもし出てきても素手で触るのはやめてください!」

\ドッ/\ワハハ/

「いや、本当に危険なんで!!コントとかじゃないんで!!」

私と同じようにコントだと思っている人も多いらしい…でも、特殊メイクにしては店長のかぶれた手リアルだなあ…

その時。

「ウワアアア!!」

「み、みなさん!!逃げてください!!」

なんと店内からゲル状の生き物が飛び出してきた。見た目によらずわりと素早い!ママチャリでそこそこ早めに走った時くらいの速さだ。

「あれーーーーーーっ!」

「俊子ぉーーー!」

ドゴッ…!!!!

近くにいたおばあさんにスライムが激突する。見た目より重そうだ…

ウワアアア!

逃げろーーーー!!

みんな散り散り逃げていく…うわ、私も逃げよう!!

車までダッシュ…即エンジンかけて出て行こうとするも同じ事を考えた人が多く入り口が詰まりなかなか出ていけない。スライムが車に激突してくる。

「わーちょっと止めてぇ!窓割れたらいくらかかると思ってんのこのスライム!嫌ああ!前の人お願い早く出て!!」

ちんたらちんたら。

「お、遅いよ!!おじいちゃん達!!」

車はなかなか動かずスライムは私の車の窓を執拗に狙ってくる…何なんだこの悪夢は…

私はただシャンプーと洗顔フォームと適当な食材を買って家でゆっくりしようと思っていた、ただそれだけなのになんでこんな目に遭わないといけないんだ…

なんだか腹が立ってきた。このスライムもなんでこんだけ車がある中私の車ばっか狙ってくるんだ!

…もう、ダメ元だ。

私はハンドルを切った。

そして車を思いっきり…スライムのいる方に走らせた。

ジュギュルルルルルルルルルルルル!!!!!バチュン!!!!

轢いた。

もしかしたら生きているかもしれないからバックでもう一度轢いた。

「やったか?」

もう殆ど動かないが敵が死んでないフラグを立ててしまったので念のためもう一度轢いた。

窓をよく見たらヒビが入っている…治す費用の事を考えると腹が立ったのでもう一度バックで轢いた。

もうここまできたらもう一回轢いとくか!ノリでもう一度轢いた。

「あ、あの…」

警察の人たちが寄ってきた。

「あっ、もう死んでますかね?」

「死んでるっていうかもう跡形もないですね…」

ワゴンRに散々すり潰されてゲル状の生き物はただの水分に成り下がっていた。



その日の夕方。

ピーピーピー…お米の炊けた音がする。

炊飯器を開ける。炊きたてのお米のいい香り…

「久々にこんないい米食べるなぁ〜♡おかず無しでも食べれそうだよ〜♡」

私は謝礼?としてドラッグフジタから貰ったちょっといい米(10キロ6000円するコシヒカリ)を貰ったのだ。

それにしてもあの生き物ほんとになんだったんだろ。新種の生き物?ツチノコ的なアレ?だとしたら殺したのまずかったかな…でも車が壊される方が私にとれば洒落になってないからなあ…。

チーン!

トースターの中ではカリカリに焼けたたらこが。

「たらこも久々に食べる〜♡よーし、今日はビールも開けちゃおう!たまにはね、たまには…♡」

優子がビールだと思っているものは実は第3のビールで実の所はただの発泡酒なのだが、本人が美味しいと思っているので万事OKなのだ。

こうして非正規雇用OL優子(32)の休日は過ぎていくのであった。

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