第二話
少し長いです。
試合の場所は学校関係者が見やすいようにとの配慮で学校でやることになり、試合開始時刻は午後一時からに決まった。
だが、試合前に練習もするので9時集合と言われて、今時間に合わせて学校に向かっているところである。
はあっ、何で俺まで朝っぱらから練習なんてやらなくちゃならないんだまったく。とは言っても特別扱いの方がやだけどな。それにしても勝てるんかねぇ。相手チームも弱いとはいっても毎年一回戦敗退の内よりは強いんじゃねぇか?それにそもそも今勝てるぐらいなら部を潰す話も出なかったんじゃないか?
等といろんなことを考えてる内に学校に到着した。
ちょっと早く来すぎたかな?まだ45分位だからなぁ、誰かは来てるだろうしグラウンドに行ってみるか・・・・。
グランドに付くと、予想通りに2人の人が居て一人は今日此処に来る原因になった人物の 間野 で、もう一人も見たことはあるのだが、思い出せない。だが、少なくとも同学年で無いことはわかった。
話し掛けてみるか。
「おはよう、間野初めまして俺は 森下 光です。今日は楽しんでやるつもりです。」
「うん。そうしてくれて構わないよ、それに、今日はありがとう来てくれて。僕たちも突然のことでかなり困ってたんだよ。あと、紹介が遅れたけど僕は主将をやらせてもらっている 白岡だよ、よろしく。」
あ〜あ〜、そうか、そうか、この人この前の部活紹介の時に見たんだ。それにしても、主将か、・・・まあこの人ならちゃんとやれそうだな。
「ところで、利腕はどっちなのかな?あと身長はどれくらいかな?」
「左利きで、身長は170センチぐらいです。」
「じゃあ、僕は左用のグローブとユニフォームを取ってくるから。」と言うと直ぐに走っていった。
主将の姿が見えなくなるとほぼ同時に新しく2人の人がグラウンドに入って来たが、多分野球部員だろうと思って挨拶することにする。
「ちわ〜す。今日だけの部員の森下です。」
すると、俺より背の低い方の人がかなりハイテンションでしゃべった。
「よろしく〜僕は二年生の瀬谷だよ〜。」
それで、次に背の高い、と言うよりヒョロイ方が
「ぼ、僕も、・・に、二年生、の、・・・相川、です・・・。」
ところどころ言葉を切りながらしゃべった。
「相川君はね〜、かなり人見知りする人で〜、初めてあった人としゃべる時はこうなるんだよ〜。」
「あー、そうなんですか。」
俺、そんなに疑問そうな顔してたかな〜?つーかこの人今日かなりの人が試合見に来るらしいのに、こんな状態で大丈夫なんかな〜。あれ、今気付いたけどもう練習し始めてる人が二人いる。
「なぁ、間野。向こうにいる人は誰なんだ?」
「あ〜、あの人達か。先に走ってる方が二年生の羽村先輩で後ろの方が一年の竹橋だよ。ちなみに羽村先輩はかなり熱血的で今日は一年ぶりの試合だからって言って昨日から張り切っていて竹橋はそれに巻き込まれてるんだ。」
確に、そんな感じするなぁ。竹橋の方はなんか嫌々やってそうに見えるからなぁ。羽村先輩には関わらないようにした方が良さそうだなぁ。
「あ、また一人グラウンドに入ってきたやつが巻き込まれた。あれ誰だ?」
「あの人は三年の戸塚先輩だ。」
はあ〜〜〜っ、あの人三年生までも影響及ぶんかよ。ヤバイなあ。俺とか普通に巻き込まれそうで少し恐いけどなぁ。今気ずいたけどもう集合時間越えてるなー。それにキャプテンも遅いなあ。
「おっはよう!!」
「うわぁっ。え〜っ、とおはようございます。」
先輩との接し方について考えてると、いきなり後ろから声を掛けられたのでかなり驚いた。
「あはははっ、ごめんごめんそんなに驚くとは思わなくてな。俺は二年の田崎だよろしくな光君。」と、言って部室の方に歩いていった。
「あの人はいつもあんなんなんか?」
「ああ、ジョークの好きなユニークな人だぜ。」
なんか個性豊かな人達だなぁ。
「なぁ、後は監督で全員か?」
「いや、多分監督は今日来ないんじゃないかなぁ。面倒なことが嫌いな人だから。それに一年のマネージャーがいるぞ。」
「ふ〜ん、そうなのか。」マネジはいいとして、監督不在って部としてどーなんだ。
「森下君ユニフォームとグローブ取って来たけどそれでいいかな?もしいいんだったら着替えて来てくれるかなぁ。」
「はい、着替えてきます。」
服はまあまあだけどグローブは年期入ってるなあ。多分キャプテンが戻って来るのが遅かったのはこれを探してたんやろうなあ。じゃあ間野は俺の利腕知らなかったんか。まったくそれぐらい調べとけよなあ。体育の時間以外に体動かすのなんてずいぶん久しぶりだなぁ。体ちゃんと動くかな?
「おはよう。森下君だよねえ。私はマネージャーの永谷だよ。今日はありがとう試合に出てくれる事になって。」
俺が部室から歩いて行っててグラウンドの前まで行った時に声を掛けられたので振り向くと可愛らしい人が話し掛けてきていた。
「まあ今日は俺も楽しんでやろうと思ってるし、それにかなり下手なことして逆に迷惑になるかも知れないから感謝すること無いと思うけど。」
「そんな事無いよ。」
「まあ兎に角感謝するなら終わってからでも遅くないと思うよ。」
「フフッ、わかった。そうする。」
「お〜い!!もう着替え終わったんなら、仲良くしゃべってないで早くアップ始めるぞ。」
「はい!はい!じゃ、行って来るわ。」
今はランニングを終えてストレッチをしている所である。
「羽村先輩達早いなあ。もうキャッチボール始めてるじゃねえか。」
「そうかあ、いっつもあんな感じだから。もうあまり気にならないけど。」
やっぱりいつもなのかよ、あの人はテンション高いのとか関係なくいつでも自由行動なんか。
「おい、間野キャチボールやるぞー。」
「はい!!じゃあもうストレッチも終わろうぜ。」
間野は田崎先輩の所に行った。
おいおい、皆もうキャチボールの相手も決まってるじゃねぇか。どうするか・・・・・おっ、一人だけまだいたなあ。話し掛けてみるか。
「なあ、俺キャチボールの相手いないんだけど一緒にやってくれないかなあ。」
「え、私。」
俺が話し掛けたのはマネージャーだった。もちろんちゃんと右用のグローブも持って、
「うん、そう。あってる、下手でも良いから一緒にやろう。」
「本当に下手だからね。」とすねたような顔をしながら返事をして乱暴にグローブを取って走っていった。
少し言葉が過ぎたかなあ。
シュ、パスっ・・、シュ、ヒョロッ、ヒョロッ、パシ。シュ、パスっ・・、
「ククックックッ。」
むっ、
「だから下手だって言ったじゃん。」
シュ、ヒョロヒョロ、パシ
「ごめんごめん。」
シュ、パシッ。
「でも、大分うまくはなってきてるよ。」
シュ、ヒョロヒョロ、パシ
「ほんとかなあ。」
シュ、パスッ。
「本当だって、最初は投げ方とかとかが面白かったもん。」
シュ、ヒョロヒョロ、パシ
「でも、今は様になってきてるし。」
シュ、パシ。
「ありがと。う〜ん・・それにしても」
シュ、ヒョロッ、ヒョロッ、パシ
「何でそんなに森下君はうまいの?いっつも構えてる所に投げてるじゃん。」
シュッ、パスッ
「う〜ん、何でかなあ?」シュ、ヒョロヒョロ、パシ
「何ではぐらかすのかなあ。」
〈皆ー、そろそろキャチボール終わりにして。〉
「終わりだって。」
「教えてくれても良いじゃない。」
あらら、またすねてるや。
「じゃあ、少しだけ見せてあげるから。皆には言わないでね。」
私は言っている意味が分からなかったけど少し待ってみることにした。
「じゃあ、行くよ。」そう言って、ネットに向かって綺麗なフォームでボールを投げた。ボールはぐんぐんと伸びて行って当たって落ちた。
森下君からネットまではちょうどマウンドからホーム位は離れていたけどその間をボールは全く落ちなかったと思う位に伸びて行ったのだ。あんなに奇麗に見えるフォームも始めて見た。
私はなんだかわけが分からなくなって
「行こう。」
と、森下君に声を掛けられるまで固まったままでいた。