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同居

銀さんは今からお兄ちゃんと仕事の打ち合わせの為家を出た。

私も落ち着かないまま、一旦自宅に戻り自分の荷物を整理する。

勢いで銀さんと同居すると言ってしまったが本当に大丈夫なのだろうか?


色々考えていると携帯が震えている事に気付きディスプレーをみるとそこにはお兄ちゃんの名前が。


慌てて切り、着信履歴をみるとずらりとお兄ちゃんの名前が並んでいた。


するとすぐにまた電話がなり、ゴクリと覚悟を決め電話に出る。


「…はい。」


『円香!今何処にいる!?』


「どこって…家だけど…」


『今銀次から聞いたんだが、一緒に暮らすって本当か!?』


『だから本当だって言ってんだろ。』


電話越しから銀さんの声も聞こえた。


『ダメだ!許さないぞ!お前はまだ学生なんだぞ!』


「お兄ちゃんには関係ないでしょ!ちゃんと銀さんの許可はもらったし、タダで住ませてもらうじゃないもん!」


『だとしてもダメだ!お前何考えてんだよ!いきなり家出って!』



何考えてんだよは私の台詞だよ。

毎日毎日お兄ちゃんとあの人のラブラブな姿を見て我慢しろっていうの?

今まで私がいた場所はあの人のモノになったって思い知らせたいの?

毎日お兄ちゃんとあの人の事でイライラしたまま私に過ごせというの?

そんなの無理だ。


「私に家に戻ってきてほしいならあの人と別れて。」


『円香何言ってんだ?』


「出来ないでしょ?だったら私ももうお兄ちゃんと一緒に暮らせない。少しは私の気持ちも分かってよ鈍感!!」


ブチと電源を切り、主電源もおとす。


分かってよ…

お兄ちゃんとあの人の幸せそうな姿を見る度に私の中の黒い部分が渦を巻きどんどん嫌な奴になっていく。


「早く…まとめよう。」


ゴシゴシと目を擦り、鼻をすすりながらまた作業を再開した。



「何怒ってんだあいつ?」


頭の上にハテナを浮かべ首を傾げる貴弘。


「お前って頭いい癖に鈍いよな。」


「お前何か知ってるのか?」


「俺からは言わねーよ。円香が話してくれるまで待てば?」


貴弘が勤めているビルの一室に銀次は打ち合わせに来ていた。

編集の仕事をしている貴弘は銀次に仕事を依頼する。


「ほら、お前に頼みたい翻訳はこれだよ。」


銀次は英語、ドイツ語、中国語、韓国語とあらゆる言葉を翻訳する仕事をしている。

彼が翻訳する本は作者の伝えたい心情を崩さず正確に伝えてくれる為、是非翻訳してほしいと依頼が絶えないのだが何分銀次は自分が気に入った作品しか手掛けない為、貴弘はいつもハラハラしていた。


「読んでみて面白かったらやってやるよ。」


「お前仕事選ぶなよ。金だってお前が希望する金額出すって向こうも言ってんだぞ。」


「俺は面白くない作品は世に出したくねぇーんだよ。どうしてもって言うなら他の奴当たればいいだろ。翻訳家なんて他にもいるだろ。」


「そうだが…」


「あ、そういや今日から円香俺ン家に住む事になったから。」


「そうか……………は?」


あ、いいリアクション。


「一緒に住む?は?何言ってんだ?」


「そのまんまの意味だが?」


「ダメに決まってるだろ!まだ円香は学生だぞっ!!」


ポケットから携帯を取り出し急いで電話をかける。

そして上記のやり取りがあった。



「イイじゃねぇかよ。貴弘だって菜々子ともうすぐ結婚するんだろ。円香に邪魔されずいちゃいちゃ出来るじゃねーか。」


「そういう問題じゃない!」


「お前昔家では円香が居て邪魔するから彼女連れていけないって言ってたじゃないか。」


「そ、それは昔の事だろ!」


「今だって同じだろ。」


「で、でもお前みたいな危ない奴と同居なんてっ!」


「円香ってさ…着痩せするタイプなんだな。意外と胸デカかった。」


「おおおおお前ェェェェ!!円香に何したァァァァァ!!」


「まだ何もしてねーよ…まだな。」


「何もすんじゃねーよ!!」


ガクガクと肩を揺らされ少し気持ち悪くなったので、頭を叩く。

ブツブツとまだ何か言ってる貴弘を置いて俺はビルを後にする。


「おいっ銀次っ!」


後ろから貴弘が呼び止めようとするが、編集長に呼ばれそれは叶わず俺はそのまま自宅に戻った。


家に帰ると美味そうな匂いがした。

ダイニングに灯りがついている。


ただいまと声をかけると、お帰りなさいと返事が返ってきた。



「何作ったの?」


「シチューと唐揚げとサラダだよ。多めに作ったから残りは明日のお昼ご飯に食べてね。」


「貴弘はいつもこんな美味そうな飯食ってたんだな。あいつ基本外食しないだろ?」


「うん、余程の用事がない限り家でご飯食べてたよ。外食はお金かかるから極力避けてるって言ってたから、彼女なんているって全然分からなかった。」


「だろうな、さ、飯にしよう。腹減った。」


いただきますと手を合わせご飯を食べ始める銀さん。


「俺のさ…お袋スゲー飯下手でさ、味は悪くないんだけど見た目がな…だから俺オムライスを綺麗に包むのはプロにしか出来ないと思ってた。」


「意外…銀さん器用に何でも出来るからお母さんもそうなのかと思ってた。」


「料理とか裁縫とか…そういう作業が苦手みたいでさ、まあバリバリの仕事人間だったからな。ま、そういう俺も家事全般苦手だけどな。でもその時が一番楽しかったかも知れねーな。」


一瞬だけどとても哀しそうな、子供が親に置いて行かれたような顔がちらりと見え、思わず銀さんの手を握ってしまった。


「……誘ってる?」


「はっ!!ち、違うっ!これは!!」


握っていた銀さんの手を離すが直ぐにまた捕まえられ離せなくなる。


「…本当円香は昔から変わらねーな。」


「え?」


「覚えてない?昔俺が雨にびしょ濡れでお前ン家に行った時熱出して倒れた俺を一晩中看病した時あったじゃん。」


「覚えてるよ。本当にあの時はびっくりした。だっていかにも不良みたいな格好した銀さんをお兄ちゃん担いで帰ってくるんだもん。」


「あん時グレてたからな。で、お前ら兄妹が付きっきりで看病してくれてたじゃん。最初お前ら兄妹馬鹿だろって思ってた。」


「ヒドイっ!」


「だって普通見ず知らずの男の看病なんかするか?しかも円香俺の手ずっと握ってたし。」


「だ、だってお兄ちゃんが看病してやってって言うから…」


「でも久しぶりに人の暖かさに触れて、お前の手料理食って涙でるくらい嬉しかった。」


「………」


「あの時からかもな、円香を好きになったの。」


「……ふえ!?」


「当時は小学生と高校生だったけど今はもうどっちも立派な大人だから犯罪にはならないだろ?」


「ちょっちょっと待って銀さん!!」


手をひかれ、薬指にキスを一つおとす。


「ここ、俺の場所だから誰にも付けさせるなよ。」


「ーっ!!」


いかにも少女漫画にでてくるような甘い台詞に恋愛に関して免疫の少ない私には耐えられないようで、恥ずかしいので頭がいっぱいになる。


少しずつ銀さんの顔が近づいてくるが、パニックになっている私はどうして良いのか分からず唇があと1センチまで来た時、来客を知らせるチャイムがなった。


「はっ!!ぎぎぎぎ銀さん!お、お客さんだよ!!」


「あん?ほっとけ。」


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!


「「…………」」


異常な位チャイムを鳴らす来客におもわず2人で顔を見合わせインターホンの画面を見るとそこにいたのは…


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