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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十章 妖精の国 編
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三人の名前

俺はもうどうにかなってしまいそうな現実に思考が追いつかない状態だ。妖精の国を離れる時、彼女らはこの地で生きて行くことになるのだから頑張って生きて欲しいと思う次第。明日には出発だし父と呼ばれようが実感なんて無い以上、愛称で呼ばれているようなもんだと割り切る他無いだろう。


「小僧、お前は男でありながら妖精に選ばれた」

「それはニーナに聞いてるよ、選ばれたらこの国で一生を過ごすんだろ?」

「あぁ……」

「それは出来ない相談だな!」

「これは掟だ、鉄の掟、例外は基本的には無い」

「勘違いすんなよゾルじーさん? 選ばれたんじゃない! 俺の力で生まれただけだ! 子が父に母に懐くのは当然だろう?」


俺は役に徹する、俺の力で生まれた妖精達は俺を父と呼ぶだろうがそれはそれで俺に関係無いと。面倒臭い訳じゃあない、少なくとも自分が起こしたことだから責任はあると思う。でも契約ではないし、この国で生きて欲しいから俺にそんな事を言うのは間違いだから止めろと。


「ですがシンが父なのは変わりないのですよ?」

「じゃあゼスの父親は? 力がそうだと言ったけど本人はいないじゃないか?」

「それは!」

「それにこの国にとって大切な妖精なんだろう? 俺には俺でやるべきことが、目的があるんだ!」

「「「父様~」」」


「ふぅ~今回の件、私の一存で決めますから聞いて欲しいの」

「グラディー! 幾らなんでもワシは……」

「大丈夫です! オトシゴ様をこの国に縛ることなんてありえません!」

「だがグラディーよ」

「あなたも! シンは命の恩人であり、そしてこれから生まれ来る妖精達の父です。そんなシンを縛り付けるなんて有り得ないの」


「はぁ~まったく冷や冷やするよ」

「ですがシン? あなたはオトシゴ様であると同時にこの子達の父。縛りはしませんがこの国へは何時でも気軽に来なさい! それが条件」

「分かったよ、顔を出す事は約束するよ」

「後、せめてその子達には名前を挙げて頂戴。明日には竜殿へ出発でしょう?」


そうして解散となった。明日俺は竜殿に向けてこの国を去るんだ。

グラじーさんは何人かお供を付けると行ってくれたが断った。

レミナの事が前進した今、俺は変な焦燥感を得ていたのかもしれない。

早くこの事を伝えたいってそんな思いが俺を逸らせるんだ。部屋へ戻ると三人の妖精達も後ろから付いてくる。一度もコミュニケーションを取ってはいないのに俺を父と呼び付いてくる。


でも、もし自分が逆の立場だったらどうだろう?

親と呼べる相手がずっと自分を無視しているなんて考えたら悲しくなる。それを今、俺はしているんだと気がついて気持を切り替えた。地面に座り彼女達と話してみよう試みる。


「「「父様?」」」

「ふぅー三人共おいで」

「「「はい!」」」


俺の目の前に綺麗に並んでニコニコしながら見つめてくる。グラディーが名前を付けてあげてと言うから俺は考えた。左のF級の妖精を掌に座らせてから頭を撫でてやる。そうすれば指を抱きしめてうっとり笑顔。


「そうだなーお前は出雲って名前にしようか」

「私の名前は出雲ですか?」

「そうだ、お前は今から出雲だ」

「私は出雲ですっ!」

「はい、おりこうさん」


出雲は俺の左肩にちょこんと座って頬ずりして嬉しそうだ。

次は二番目のE級の妖精を手に座らせてから同じ様に頭を撫でてやる。


「父様~ん~」

「お前は~そうだなー八雲にしようか?」

「私は八雲?」

「そうお前は八雲だ!」

「私、八雲!」

「はいおりこうさん」


八雲は右肩に座って出雲同様に頬ずりしている。

最後、D級の妖精を座らせて頭を撫でてから考える。


「父様! 私の名前!」

「そうだなーう~ん」

「私も!」

「よし!雲母だ!」

「私の名前は雲母!」


雲母は俺の首に抱きついてすりすりしていた。

出雲、八雲、雲母。単純に雲を付けただけだったけど喜んでくれたようで何よりだ。この世界ではあまりない発音だけどそれは俺も似たようなもんだし問題あるまい! 後はこの三人に説明やら何やらやったらそれで完了だ! 俺が三人の名前を呼べば空中に浮いて綺麗に並ぶ。何かの部隊の隊長になったかのような気分になるけど、この子らは俺を父と呼ぶ。


「いいか? ちゃんとゼスの言う事を聞くんだぞ?」

「「「はいっ!」」」

「明日にはこの国を出て旅の続きをするからな?お前達はこの国でちゃんと良い子にするんだぞ?」

「父様はどこかに行くのですか?」

「八雲も行く!」「雲母も父様と一緒!」


「それは駄目だ、俺の旅は常に危険と隣り合わせなんだ!お前達は連れて行けないんだ」

「父様、育児放棄ですか?」「放棄嫌ぁ!」「捨てないでぇーー!」


「生まれて間もないのにどこからそんな言葉を捻り出すんだよ……」

「「「父様ぁ~置いてかないでくださうえぇええええああああ」」」

「まじか」


知能はそれなりに高いぞ、さっきから父様連呼してたから子供同然に扱ってはいたけど。思惑は大いに外れてしまったようで困惑、胸の中で泣き叫ぶ三人を見れば心が痛むのは何故か? でも危険な事には変わりない、ゾルじーさんの話を聞いた後なら尚更に危険度が増すし到底連れて行くなんて出来るハズも無い。


「出雲、八雲、雲母。聞いて欲しいんだけどな? お前達三人は妖精の中でも稀少な六枚の羽を持ってるんだ。お前達はこの国で同じ六枚羽のゼスを手助けして欲しいんだ。ゼスは王だけど皆をまとめている立派な妖精なんだ。それでも王は孤独で寂しいんだよ。六枚羽はゼスしかいなかったからな?でもお前達が生まれたからもう一人じゃなくなったんだよ」


「でもぉ~出雲は父様と一緒にいたいです!」

「うぅう~八雲も父様といたいです!」

「雲母もっ!」


どうしたものか? 力を受けただけなのに、この懐きようは異常なんじゃないのかと思ってしまう。何も考えずに流した力が作用して生まれたことは確かだけど、それでも何でそこまで俺に縋るような態度なんだ。


「あのさ? お前達三人は何でそこまで俺なんかに拘るんだ?」

「「「父様だからです!」」」

「う~ん?」

「出雲は暖かい場所で一人でした。でも声が聞こえる時があったんです!」

「八雲もっ!」「雲母も聞こえてた!」


「それは誰か分かるか? 何て言ってたんだ?」

「きっと何時か龍が現れるって言いました!」

「黒と白の狭間の龍、優しい力の強い龍って聞きました!」

「いつか会うことが出来るって! その時は龍と共にいらっしゃいって!」


俺が会うべき龍、流れる城に住まう龍は予言者なのか?単純に何時か誰か来るだけなら誰でもそのセリフに当てはまる。希望的観測として祈りのような願いのような言葉だと聞き流せるけど、黒と白の狭間の龍ってのは完全に俺の事を指している。俺がルセルに来るって初めから分かってないと生まれない言葉。答えはその龍が全て知っていて、きっと俺に教えてくれるだろう。でもこの三人を連れての旅ってのは……。


「分かった、俺はまたここに戻って来るからそれまでなら待てるか?」

「父様と一緒!」

「父様は八雲が嫌いなんだぁああぁあああ」

「父様が雲母のこと嫌い……うぇっ」

「あぁあああ助けえええうえぇえええええええ」


「父様!?」「父様! 泣いたら駄目」

「うぇえええ」

「うぇええええええええええん」

「何をしているのですか」

「ゼスたそーーーー」


ゼスが部屋に来てくれた事で俺は息を吹き返し、三人の話した内容をそのまま伝えた。それを聞いたゼスは本日何度目かの驚きの顔と停止を見せてくれた。


「出雲、八雲、雲母ですか、良い名前を頂きましたね」

「「「はいっ!」」」

「話の通りならばシンに付いて行く方がいいかもしれませんね」

「ゼスたそおおお話が違うだろおおおお」

「ちょっ! ちょっと羽を弄らないで……」

「ゼスたそーーーー」

「グラディに私から話をしておきます! それで明日の出発前に答えを出す、それでいいでしょう?」

「うぇーい」


ゼスは三人の頭を撫でて窓から飛んでいってしまった。心なしか嬉しそうなその表情はやっぱり寂しかったんだと教えてくれていて、俺はこの三人がゼスの良き理解者になって欲しいと願った。明日まではまだ時間もある、天の光りはまだ落ちてはおらずで三人と話をして時間を潰すことにしたのだ。


「そうだ! これを見てくれ!」


そう言ってから手袋を取って龍力を流してみたんだ。ゼスみたいになるのかどうかを確かめてみたいとそんな好奇心。果たして三人の様子は!!さぁどうだい!


「父様綺麗!」「キラキラ!」

「噛み付きたいです!」

「え……?」


「父様?」「ん?」

「父様! 触りたい!」「あれぇ~」

「噛みついて良いですか?」「なにがや?」


ゼスの様にならないんだけど?眼帯をとって彼女らの体を確かめるように一人ずつ確認をして行く。


「父様! ひっくり返さないで欲しいです!」

「見えちゃうからやめてください!」

「逆さになると変な感じがします!」

「そりゃそうなるってのは分かるけどそうなるんだよなやっぱり」


彼女達がゼスの様にならない理由、答えは至って簡単だった。そもそも俺の力が流れて生まれたんだから影響なんざ受ける訳がねぇ。それどころか俺の力で満たされてる訳で……。もしかしたら六枚羽の妖精は龍の力でしか生まれないのか?そうだとしたら、なんで三人だけが六枚羽になったのか疑問が生まれる。


樹の中の力には龍の力が混ざってなかったのは確認出来てる。魔力と龍力は混ざり合わないのも実験済みだし。現状であの樹には俺の龍の力が入ってて? 先に生まれた三人だけが六枚羽。初めは力を強く流したからそうなったのか?

でも腑に落ちないんだけどまぁいいか。


「父様? 二人を放してあげて下さい!」

「くらくらしますぅ~」

「父様! もっとして下さい! 楽しいです!」


八雲を開放してやるとへなへなした軌道で俺の頭の上で伸び、雲母は楽しそうだったから回転させたりしてやるとケタケタと笑う。それを羨ましそうな顔で見る出雲は退屈そうで、言葉にこそ出さないけど俺の龍の手にしがみ付いていた。


「父様もっとーーー!」

「ほれほれほれえぇえ! これがええのんかぁ!」

「あはは~!」


「貴様はまた妖精達にそんな下劣なことをおおおおおおお!」

「うべぇええええ」


腰を蹴り抜く一撃をモロに食らい地面を滑るようにして進んだ。その先、ベットの足があって……俺は脚を開いていたからぽこにゃんがぐにゅ~した。


「あっうっぐうっつううあぁあああ」

「ど変態のゴミ屑が! 母上様がどう言おうがお前は屑だ! 死ね!」


ぽこにゃんが痛みに襲われて俺は立ち上がることが出来ないでいた。こんな衝撃は久方ぶりでリトルダディが俺の事を忘れてないか?とそんな風に問いかけているようだ。大丈夫だよ、お前は俺の最高の親友なんだから忘れる訳なんて無いさ。


「聞いているのか! 変態野朗! 用が済んだらとっとと出て行け!」

「うっ~っぐ~あぐっぅう~~」

「は! アタイの蹴りを喰らっただけでそんな状態かよ! 良くそんなゴミの分際で妹達を娶ろうなんてしたもんだな!」


痛みでリノリスが何を言っているか良く分からんけど怒ってるってことだけは分かっている。それでも痛みの方が先に来るものだから如何ともし難い状態で悶絶するだけだったんだけど……。力の圧力、底に沈んでいる力が急激に浮上して放たれる力の奔流を感じてそれを見た。


「お前! 父様になんてことを!」

「父様に泣いて謝れ!」

「父様を虐めるヤツは許さない!」

「なっなにを! 何で羽が六枚! なんで父なんて呼ぶんだ! そんな変態をっ!」


力の爆圧が放たれてリノリスの体が吹き飛んで壁に叩きつけられ、三人がそれをしたと理解するには時間は掛からなかった。豆蒼煉を展開した三人を見た時は目を疑ったが、痛みを堪えて朱食みを高速展開して豆蒼煉を喰った。驚いた表情の三人に近づいて大丈夫だと伝えれば、笑顔で胸に飛び込んでくるのだった。


壁に打ち付けられたリノリスは意識を刈り取られ地面に伏したままだった。

俺が近づこうとしたタイミングでまさかの女王様ことグラディーが入室さ。

どう見てもこれから一発しけこみます!みたいな状況に俺の額からは油汗がぶわっと噴出する。


「リノリスが良いのなら先に言ってくれれば!」

「ちっちがう! ちがうちがう! いってぇ」

「そいつ! 父様を虐めました!」

「父様を蹴り飛ばしました!」

「遊んで貰ってたのに!」

「またこの子が失礼をしたのね。まったく……」


「父様を虐めるのは許せないです!」

「父様ね、凄く痛そうでした!」

「股が裂けそうになってました」

「おい! 詳細は言わなくていいから!」

「「「でもっ!」」」

「出雲、八雲、雲母。俺は大丈夫だからな?」

「「「はーい」」」

「出雲に八雲、それに雲母。三人共良い名前を貰いましたね?」

「「「はいっ!」」」


「シン、本当に大丈夫? 顔から凄い汗が流れ落ちてきてるわ」

「大丈夫だから! これは男にしか分からないヤツだから!」

「私からちゃんとこの子に説明しておくから、どうか許してあげてね」

「「「はーい」」」


リノリスをひょいと肩に担いだグラディーはそそくさと部屋を後にしてくれた。俺は飛び跳ねながら大事なものを定位置に戻す作業をしてベットにダイブ。ふわっと反発するこの瞬間はあの世界のベットと同じで変わらない安らぎを俺に与えてくれる。寝転がる俺の胸に三人が近づいてくる、ちゃんと力のことも言っておかないといけない。


出雲を引き寄せれば恥ずかしそうでいて嬉しそう。

八雲は背中を撫でてやれば気持良さそうな顔をする。雲母はくすぐってやると胸の上でバタバタを暴れた。


「いいか? さっきのは本当に危ない力なんだ。俺の為に怒ってくれたことは感謝するけど力の使い方を間違えたら駄目だぞ?」

「はい! でも父様! 出雲もこの力の使い方が良く分かりません」

「なんだかぶわーと出ました!」

「ぼぉおお! って感じでがあああでした!」

「そうだな~よし! 三人共、俺と少し鍛錬するか!」


そうして力の使い方を三人にゆっくりレクチャーして時間を潰し、夜は同じベットで眠りをとった。


「父様~おやすみなさい」

「出雲おやすみ」


「父様ぁ~ここで寝ていいですか?」

「ゆっくり休むといい」


「父様! 雲母はまだ眠くありません!」

「雲母も寝ないと怖い化物に食べられるぞぉおお」

「あははは!」


雲母の背中をとんとんとしてやればあっと言う間に寝息をたて落ちた。なんとも寝つきの良い子で羨ましい。化物がくると驚かしてみたけど無反応だった事が少し恥ずかしいけど、出雲が俺の腕をぎゅっと握ったことは知らん振りしてやろうと思う。三人の寝息が聞こえ始めた頃に俺も眠りへ落ちて行った。

本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝致します。


本章はあと二話で終了します。

明日と明後日に更新して新章へ入りますので次話以降も宜しくお願いします。

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