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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十章 妖精の国 編
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男は子が産まれるまで父として自覚を持てない

樹の香りと虹色の光りが充満する空間でガラスが砕けるような音が三つ響き渡った。龍の手から流し続ける龍力は尽きることなく、樹には未だ満たされることなく流れ続けた。そうしている内にもリーンと鳴ってはガラスの砕ける音が連続して鳴った。


流した龍力も相当な量になっていただろうけど、それでも樹を満たせたのは半分程度。そこで若干の疲労を覚えて手を樹から引き抜いた。


「ふぅ~少しだけ疲れたけどこんなもんで大丈夫じゃないか?」

「「「……」」」

「なんか小さいのがいっぱい浮いてるな! これが妖精か?妖精も小さい状態で生まれるんだな!」

「「「……」」」

「神秘的な光景ってのはこんなことをいうんだろうな」

「「「……」」」

「どうした? そんなに固まって? あっ!」

「「「……」」」

「もしかしてこんな事したら不味かった? だよねすっすいませんでした」


三人とも無言で脱力し地面にへなへな座った。

俺の目の前にゆらゆら流れて漂う光りを手に取れば十五センチ程の妖精が膝を抱えて眠っていた。素直な感想を漏らすならば可愛い、そう思った。

妖精も生まれた時は裸なのは変わらないらしい。


続け様に二つの光りが流れて来たから同様に手に取ったら三人とも可愛かった。俺はそのまま宙に流してあげるとまたふわふわと漂って行く、それがなんとも気持良さそうだが、現在の俺は何かやらかしたらしくそんな余裕を見せたら余計に怒られると思い三人の前に正座をする。反省の表情を貼り付けて緊張の面持ちで言葉を待つも三人共が未だに固まったまま。


「あのその……」

「小僧は今何をしたんだ……」

「樹にはもう微力な力しか流れてなかったから流したんだけど」

「シン? その力一体どれほどだったの?」

「流石に全部満たそうとしたらまだ時間が掛かると思うけど半分ぐらいかな? なんなら満たそうか??」


俺としてはレギュラー満タン入りまーす!!

ぐらいのノリと勢いだけでやってたから疲れはしたけど余裕はまだ全然ある。俺の言葉を聞いてまた少しか固まる三人にどうしていいか。


「あなたは本当にどれほどの力が……」

「なぁ! ゼスに聞きたいんだけどさ?他の妖精は羽が四枚なのにゼスはどうして六枚なんだ?」

「私は妖精の中でも稀少な部類で他にも二枚羽の子もいればシンの言う四枚の子達もいます」

「六枚の妖精はゼスしかいないのか?」

「今はもう私しかおりませんね」

「なら良かったな!」

「シン! 幾らなんでもそんな言い方は!」

「いや! 違うって! ほら見てくれ! あそこの三人は羽が六枚あるだろ!」

「え!?」


俺は立ち上がってからさっき流した三人を手に取りゼスの前に差し出した。それを見たゼスもグラディーもゾルじーさんも絶句な様子でまたしても固まった。もうどうしようもなくて俺も真似して固まってみようと思う。さぁどうなるかな?


「「「「…………」」」」

「「「「…………」」」」

「「「「………」」」ぷぅ~」

「「「「………」」んふっ」」

「「「「………」」」今笑っただろ」


「シン! 私は驚いていてそんな事で笑える程じゃないんですっ!」

「小僧、六枚羽の妖精はゼス以外だとニーナと共に居たレイルだけだったんだぞ? それを……」

「そりゃ力は流したけど生まれは自然だろ?」

「違うのシン、樹から流れた力によって彼女達の生まれは大きく変わるのよ」


グラディーとゾルじーさんが俺に一から説明してくれたお陰で理解できた。本来なら六枚羽の妖精が生まれること自体が奇跡だそうで、六枚羽の妖精は六枚羽の妖精の力を受けた妖精からしか生まれないそうだ。つまりいくらこの樹で次を待っていようとも六枚羽の妖精が生まれることはありえないらしい。


「へぇー凄いなそれ」

「小僧がそれを力でやったからこうして驚いているんだろう!」

「それにこの神樹に力を半分も流すこと事態がもう常軌を逸しているのよ」

「シンありがとう」

「それは良いんだけど話がまだ~」


生まれた妖精達が起きるまで時間が掛かるようで一息に話を聞いた。神樹はある龍がその昔に芽吹かせたらしくその力を持ってしてこれ程までの成長を遂げたようだ。つまりそれは長年に渡って龍力を流され続けたが故に、俺が龍力を流しても余裕で内包出来たと言う訳。その龍はその後、この地を去ってしまったらしいがそれが俺の探すべき流れる城にいる龍と女王は言う。


そして今の目的とニーナの話、ゾルじーさんが野垂れていた理由を聞いた。騙され殺された妖精と妖精狩り。ゾルじーさんの失敗。妖精を殺されたニーナは獣人の国へ乗り込み、そして王を切り加担した者達全てを殺したそうだ。獣人の国は衰退を見せたが善意のあった者、女子供だけは生かして再興させて今に至ると。


だけど、それは百年前に崩されそうになったらしい。ゾルじーさんはそれを完全に阻止出来なかったが、柱を折ることで先延ばしに出来たと。それでもゾルじーさんは力を抜かれあの様になってしまった。


折った柱は獣人の国の現国王だったと聞いて全員が息を飲んだ。あれだけの思いをしてようやく終息したハズなのに何故そんな事になったかは分からなかった。でもまたあんな事態が起こる事だけは避けたいと思う一方で不安は募る。グラディーとゼスは足早にこの場所から去り妖精達に改めて知らせを出すらしい。


俺はそれでも竜殿に行くことだけは変わらないと伝えれば、少しだけ考えたグラディーだったが了承を貰った。出発は明日の朝になって俺はゾルじーさんと時間を過ごすことにした。


小さな歯車がゆっくりだけど回転を始めていた、その歯車には力は無く回るだけだったが次第に大きな歯車を回して行く。気が付けばとても大きな何かを動かす力になっている。俺にとってルセルは次の大きな歯車を回すきっかけをくれた場所になった。


「なぁゾルじーさん、あんたの予想で良いんだけどどうなると思う?」

「言葉にはしたくないけどな、何時になるか分からんが争いは起こるだろう」


「前からもう凄い時間が経ってるんだろ? 相手も懲りてるんじゃないのか?」

「グラディー達には言うなよ? あやつらは妖精を狩ろうとしていたんだよ。それに何故、王が誰にも見つからないままルセルの地にいたか」


「何かを企んでいるって考えるしかないか、そもそも何で妖精を狩るんだよ。そりゃさっき理屈は聞いたけど腑に落ちないぞ」

「力を削ぐことは間違いないがそれ以外の目的があると?」


「でなければ王が先人を切ってそんな事するか? それにもうルセルとしても対応する為に動いてるんだろ?」

「小僧は聡いな、小僧のお陰でグラディーに全てを話せたぞ。既に森には兵を放ってはいるし妖精達にも事は伝わっておるだろう」


「グラディーとゼスからさらに情報が行けばより警戒はしてくれるか。ルセルの城へ集めたらいいのに」

「城付近の者達は戻ってきておるけどな?如何せん森は広いんだ……全てに情報が行くには時間が掛かるだろうな」


「いかんともし難い状況なのに、俺が勝手に動いてもいいのか?」

「小僧のお陰でワシは救われたし、妖精達も生まれたんだこれ以上を小僧に押し付けるのは国として恥ずべき行為だ」


「別に俺は気にしないけどな、己の面子なんかより大切なモノがあんならそれこそ形振り構わずって思うけど」

「小僧の気位は有りがたく貰って置くがルセルはそこまで弱くはないぞ?」

「侮ってる訳じゃないし舐めてる訳でも無いさ、俺だって自分一人で何でも出来るなんて思っちゃいないよ」


「まぁ今日はゆっくり休め、森に入れば嫌でも歩く事になるからな」

「仮の話だけど、あんまり事が大きくなった場合は勝手に介入させて貰うぞ?」

「小僧、お前がこの国にそこまでする理由も無いだろう?」

「寂しいこと言うなよ、もう他人じゃねーんだって。知り合っちまったんだ」

「そんなセリフは女の前で言う事だな」

「違いねぇ……」


「それと小僧……その」


何かを言いかけたゾルじーさんは何も無いと言い残して立ち上がり、俺はその後ろに付いて円の上に足を進めるのだった。グラディーの私室へと戻った俺はゼスを見つけてトコトコ後ろから近づいた。彼女の後ろからスカートにふぅ~と息を吹きかえるも捲りあがらなかった。残念、捲りあがらなかった! くそっ!

見たいのに! ふと俺はおかしいんだろうかと思い立ち、先日の自重のことを思い返してそれ以上は止めた。


「シン何をしようとしたのですか……」

「スカートの誇りを落としてやろうとしたけど、その誇りは圧倒的だったから諦めたんだ」

「手で取って下さればいいのです。何も吹くことなんてありません」

「触れられないモノってもんがあるんだよ。目には見えないものだからな」

「何のことを話しているのですか?」

「なんでもなーい」


俺がゼスの横を通り抜けようとした時、視界を奪われた。眼帯をしていない目、そして左右の耳に何かが張り付いている。それも俺の福耳をちゅぱってる音が聞こえるし、目蓋もちゅぱられているんだけど。


「うぁあなんだこれぇえええ」

「こら! あなた達! お止めなさい!」

「ん~」「ん~」「や~」

「何! 何だよ! ゼス!」

「良いから一度離れなさい!」


視界が戻り次いで耳も開放される。

目の前にはゼスと妖精が三人浮いていた。

三人とも見覚えがある、さっき生まれたばかりの六枚羽の妖精達だったけど?

光り輝いていたせいもあってその細部まで気がついてなかったけどおかしい。

三人とも腰まで伸びた髪、両目も同じ色、服は可愛らしいドレスでゼスが見繕ったんだろう。


三人には特徴があった。

左から順にF級、E級、D級、ただこれはあくまで人間サイズにした場合の話。さっき見た時より明らかに成長していて、ゼスの半分ぐらいしかなかった身長が今はゼスと同じサイズになっている。それに髪も目も真っ黒で?

黒髪って珍しいって聞いてたけど案外いるじゃないかと思ってしまった。

次の声を聞くまでは……。


「「「父様っ!」」」


咄嗟に俺は後ろを振り向いて見るも誰もいないしゼスも俺を黙って見ている。

今度は俺に見えない何かが見えているのかとも思って、目で周囲を確認してみるけど何もいない。はて? よくわからんけど下手に絡んだ場合を考えると絶対に面倒な流れになると信じて俺は歩いた。今日はゾルじーの言った通り、ゆっくり休んで明日の英気を養うかなぁ~。


「ふんふんふーん」

「「「父様!」」」

「シン少しだけいいですか?」

「ゼスたそーまた明日なー」


そうして俺は完全に無視を決め込もうとしたが時既に遅しだった。その場の勢いに任せては身を滅ぼすことになると先人は教えくれていたのに。

奥からグラディーが出てきて俺を呼ぶのだ、満面の笑みと共に。


「なっ何かな?」

「シン、途方も無い事態になったの」

「グラディーは美人だなー見てて飽きないぜ!」

「おい小僧! ワシのグラディーを誑かすなっ!」

「え? 美しいと素直に言って何が悪いんだ? あほなのか?」

「あらあら~靡いてしまいそう!」

「グラディー駄目だ! お前はワシの女だぞ!」

「「「とーさまー」」」


「人は己の想像出来うる事象よりも遥かに斜め上を行く事が起こった時に混乱するんだ」

「小僧! お前……」

「そして俺はもう何がなんだか分からないのだ。でも俺にはこの事象を回避する方法がある」

「ほぅ~小僧の凄さをワシに見せてみよ」

「へんし~ん」


そうそれは現実逃避。見さえしなければいいのだ。簡単過ぎて欠伸が出るぜ!

今回も三歳児が良いだろう。五歳だとなまじ思考能力も成長するからな!

すかぽんたんになるには三歳児が俺には丁度いいのだよ! あはは!


「まぁまぁまぁ! シンの中を覗いた時に見えたこれは真実だったのね!」

「こっこぞう!それワシにも教えろ!」

「シンが子供に……」

「こんにゃちわ!」

「まぁまぁ! なんて愛らしいの! さぁおいで坊や!」


へへへっ! 特盛りぐにぃ山を登頂してやったぜ! 頂きから見えるこの景色は絶景かな! グラじーさんが明らかに嫉妬しているのが見えるけど、俺だって混乱してて大変なんだ!更なる混乱を起こせばその場は乱れて本質を失うのだ!

これ程の策略を持ってして俺は逃げ切るのだよ!


「シンちゃんはかわいいでちゅねー」

「おねしゃんもねー」

「まぁ~~~! あなた聞いた!?」

「小僧! いい加減にしろおおお!」

「ふぇっ……ふぇっ……」

「あなた! こんな小さい子に何を言うの!」

「だがそれは小僧だろう! 体小さくなっただけで中身は変わらんだろう!」

「いいえ、今のシンは見た目通りです!」


嘘を見抜くはずの彼女が見抜けなかった?

これが俺の力?この三歳児の力? いや俺の本質的な力かもしれん!

そんな思いを抱えるもグラディーに耳元で言われるのだ。


「可愛いから特例ね? その代わりまたこうして小さくなる約束ができまちゅか?」

「……あいっ!」


見抜かれていた。だが思考が幼児化するのは本当なんだ! 確かに己であざとくしていたけど本当なんだよぉ! 結局、俺の心はあっさり折れて元のサイズに戻る。其れすなわちグラディーのぐにぃに包まれた状態だったからね。そりゃなるでしょう? 俺はぐにぃに挟まれたまま大きくなる。とても気持がいいのだ!


「小僧! 戯れもいい加減にせんかぁああ!」

「うるさいな! こんな素敵なモノを見せられて我慢できる男なんておらんだろうが!」

「あら! 私の胸の中でそのような事を仰られては靡いてしまいますぅ~」

「グラディーーーーー! お前はワシのもんだぁあああああああ!」


後頭部を掴まれて宙に投げられた。

どこにそんな力があるのかと問いたいが少しやり過ぎたな。チラッとゼスを見れば呆然としたままで隣からは「「「父様!」」」が三度聞こえて混乱だ。ゼスの代わりにグラディーが全て説明してくれるらしい。


「その子達はシンが一番最初に力を流した時に生まれた子、それが何故だかシンを父と呼ぶの。目覚めてから泣きじゃくって父様、父様ってね」

「相手もおらんのに子なんて生まれないから!」

「でもシンには似たような覚えがあるでしょ?」


不意の言葉にレミナを思い出す、確かにレミナは俺が竜玉に力を流して生まれたけど主様であって父様ではない。


「あのですね、妖精にも父と母がいるのですよ」

「えっ! ゼスたそにもいるの!」

「私個人と言う訳ではなく妖精全体の父と母になりますね」

「……」

「私の父はあの樹の力、母はあの樹そのものになります」

「六枚羽の妖精は樹から生まれないって力を貰った妖精だけがって」

「それは違います! 私の魂は元から六枚羽の魂なのです! 故に私が死んでも次にこの魂から生まれる子も六枚になります」

「遺伝?」

「六枚羽は六枚羽、四枚は四枚、六枚は元から私を含めて後一人だけなんです」

「いや! さっきの話だと六枚羽はもっと沢山居るような感じだったじゃんか」

「シン? ゼスとレイルしか六枚羽の妖精はいないの、これは本当なのよ」

「じゃあコイツらは何なんだ?」


「ワシが思うにだが、小僧が神樹に力を流す時に力はもう殆ど無かったと言ったな?」

「あぁ殆ど空に近い感じだったぞ?」

「そこに小僧の力が一気に流れた、次に生まれる妖精達が小僧の力を直接その魂に受けた」

「俺の力のせいか……」

「より上位の魂へと成ったと言うのが正しいだろうな」

「本来なら六枚羽は私とレイルだけ、それは絶対ですからそう考えるしか」

「それでその三人は俺を?」

「そうなりますね」

「てことはさ今回生まれた妖精達の父は俺になるのか?」

「今回と言うより今後もですね」

「…………」

「「「父様~~」」」


俺は樹と結婚したような感じらしい、元の世界でも結婚なんてしたことないのに初婚が樹だってさ。何の冗談だよ、しかも今回だけで妖精は二十も生まれたらしくて行き成り二十人の父になってしまったそうだ。まじかよ異世界。

どうなってんだよこの世界! ヴェルさんが今の俺を見たら体を捩りながら爆笑すること間違いないだろう。

本話もお読みいただきまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


急に寒くなりましたね・・東京じゃ雪が云々・・寒さは敵です。

温度変化で体調を崩さないようにしなければ。皆様もお気をつけ下さい。

明日も投稿しますので宜しくお願いします!

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