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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十章 妖精の国 編
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ゼスたそ その②

森の様子見から戻ったゾルじーさんが言うには道中問題なく行けるとのこと。しかし、妖精をまとめ上げている王ことフィルディア=ゼスは俺に大切な話があるからまだ行くなと言う。ルセルの女王はその言葉の意味が分かっているかのように一度座るように言うのだ。


「これから竜殿に向かう事に関して問題が一つあります」

「それはワシから話をした方がいいだろう」

「あまり良い話が聞けそうじゃないな」


空気が重い、問題として挙げている事柄が国に関わるって言っているようなもんだ。その辺の兵士が話すのと、ここに集まる者が話すのとでは意味合いも自ずと変わってくるから。そんな空気にも関わらずゾルじーさんは俺に向かって躊躇無く話しを始める。


「ワシが倒れていたのは何も勝手にそうなった訳ではない。この話をする上で重要なのは過去、それもニーナの話をする必要があるんだ」


現在のヴォルマの龍殿の長の名前が出る次点で、彼女が俺に話していた妖精が絡んでくる事は間違い無い。契約した妖精と共に生きて行く、それがこの国では当たり前で当然のこと。呼吸をすることが当たり前のようにそれもまた当たり前。


ニーナは契約していた妖精が殺されてとか言っていし、それがこの国でどれ程の事態かは俺には分からない。それでも、仮にソルナ達に何かあったと考えれば必然として怒りがこみ上げて来るって感じる俺としては、その重みだけは理解できる。


「ニーナは契約していた妖精を殺されたとかそんな風に言ってたけど?」

「昔、山の向こうの獣人達が総べる国と争いが起こった。ヤツらは妖精を狩っていたんだ」

「妖精はこっち側にしかいないのか?」

「無論、向こうの国にもおるよ。それでも他国で妖精と契約する者が増えればそれは脅威となりうるんだ」

「妖精の数を減らせば契約する機会も減るから力も削げるとか言わないよな?」

「・・・・」

「胸糞悪い話だな・・・」


「それでニーナは部隊を引き連れ狩りに興じる者共を撃ち滅ぼしはしたんだ。だがニーナと契約していた妖精はその後に裏切りを働いた」

「妖精は契約した相手を裏切るようなことなんて絶対にありえないのです!!」


ゼスが叫ぶように俺に言うが女王が彼女を慰めるように撫でるよ涙をぽろぽろ流して悔しがる。それを見たゾルじーはそれでも俺を見据えて話しを続けた。


「裏切りを働いた妖精は敵と内通し、間者を幾人も呼び込みそして妖精を何度も狩ったんだ」

「なぁ?フェアリーは死ぬ時は消えるように逝くんだよな?なら妖精はどうなるんだ?」

「妖精達には死という概念が無いと言っても問題ないだろう」

「なら殺されたなんて表現はおかしくないか?」

「それでも個が失われれば死と表現するものだろう?」

「・・・・?」

「シン?妖精は肉体が滅んでもその魂までは消えないのですよ」


そういった女王の言葉が俄に信じられないのは俺がヴェルさんを知っているからだろう。死んだ魂は全てルーチェリアへ行くと話していたヴェルさんを疑う訳は無くて、でもそうなると俺は女王の言を信じられない。二者択一であれば悪いが俺はヴェルさんを信じるし、女王を疑うのに時間は掛からなかった。


「シンは私を信じてはいませんか・・」

「女王様には悪いけど信じる事が出来ないです」

「はっはは!やはりオトシゴだな!そんなことを面と向かってグラディーに言う馬鹿はワシぐらいなもんだぞ」


「何故シンは私を信じられませんか?」

「話せることと話せ無いことがあります。俺の中を見た時に全て見えなかったと言いましたけど、それが答えの一部とだけは言っておきます」

「やはりあなたはタダのオトシゴ様という訳では無いのですね」

「・・・・」

「いいでしょう!今からシンをあそこへ連れて行きます!」

「グラディー幾らなんでもそれはっ!」

「ワシは構わんよ、小僧は聡い。見れば理解出来るだろうよ」


何やら俺は知らない何か、この国の重要な秘密でも見せられるらしい。単純にこの国に来ただけならあまり関わる気も無かったけど、ニーナが関わってくるなら話は別だ。俺の楽しいにニーナだって入っている。彼女の何かをどうにか出来るなら俺は精一杯ことを成す覚悟はある。


女王に連れられて行ったのは何も無い空間。

上も下も右も左も全て樹の香りが充満した茶色の空間、中央には円形の床が配置されいてそれがあるだけで違和感を感じる程。

その上に女王達が乗り、俺を呼ぶ。

円の内側に入れば女王が魔力を加えてその円は輝き光に包まれた。俺はこの感覚を知っている。

それはまるでソルナ達のあの空間で起こる現象そのものに似ていたんだ。


光りが収束して視界が元の戻れば、そこには光り輝く樹の根が空間を構成していた。虹色に輝いてるそれらがこの空間の光源でそれしか光は無い。

何故か俺はそれが懐かしくて心が温まるような感覚を得ていたが、その理由が分からなかった。


女王に呼ばれ近づけば俺の掌に輝く玉を一つだけのせた。ここで俺は理解する、これは魂が収められた玉だと。レミナがう●k竜の中から出て来た時は玉の状態だった。

ヴェルさんが俺の魂を助ける時に龍玉に収めるとかそんな話をしていたことを思い出す。でも、妖精の魂も世界の一部ならこの世界で死んだ以上はルーチェリアに昇るはずなのにどうして・・・。


「シンには分かるのですね?」

「妖精の魂ですね・・・でもなんで・・・」

「妖精達はこの世界の龍によって創造された種なのですよ」

「え・・・・」

「妖精達が死ねば、その魂はこの樹に戻ってそして次を待つことになるんです」


この世界にとってのルーチェリアが妖精達にとってはこの樹になるのか?でもなんで・・・分からん!頭の中がごちゃごちゃしてきて冷静にまとめられない。他人が見れば俺は混乱して狼狽しているように写っていたことだろう。女王はそんな俺の頭を撫でて笑顔で抱きしめた。


「シンは何かを知っているからこそ、そうして混乱してしまっているのです」

「ぐぬぬぬ・・・小僧っ!貸しだからなっ!!!」

「でも・・・あれは・・」

「シン?少し落ち着いて」


ゼスに後頭部から抱きかかえられていた俺は混乱どころではなかった。うへへへ・・・ぐにぃだぁ~!!暖かくて気持の良いぐにぃだよぉ~!

あーやっぱり見た目通りの良いぐにぃをお持ちですね。これは・・・本当にいいものだぁあ!!!!!


「おい!小僧!グラディーの胸でそんな顔をするな!!」

「うるせぇ~よ~あーここが楽園なんですね~」

「あら?気に入ってもらえて良かった!」


一頻り堪能していればゾルじーによって引き剥がされて説教された。申し訳ないとは思うけどさ?でも俺から飛び込んだ訳じゃないし?俺別に悪くないもーん。気持良いのが悪いんだもーん。ぷーん。


「小僧!貴様ぁあああ!!」

「そもそもゾルじーあのまま死んでたのにさ?誰のお陰であんな素敵な楽園に飛び込めてると思ってんの?ねぇねぇ?」

「ぐぬぬぬぬっ!!!貴様!!!!!!」

「はいキャッチー!!!」

「離せ!!!顔を掴むな小僧ぉおおお!!!!」

「聞こえないもーん、俺悪くないしー事実だしー」

「大分、落ち着けたようですね」

「それにー今はゼスの楽園があるから別にいいしー」

「ひゃっ!!!」


ゼスは俺の後頭部に張り付いたままだった。

俺はゼスのぐにぃがぐにゅぐにゅしているのを楽しんでいただけだったのだ。それを理解したゼスが急に後頭部から離れてしまったから俺はゾルじーを解放してやった。


「シン?出来れば貴方の話を聴かせて貰えないでしょうか?」

「何か知っているですよね?」


二人が俺を見つめる中、ゾルじーだけはずっと睨んでいたけど俺だって混乱するんだよっ!まったく!


「あなたが知っている全てをどうか私共にご教授頂けませんでしょうか?」


振り返れば、両膝を付き祈りを奉げるようなポーズを取った女王とゼスが居て、ゾルじーもまた頭を下げていた。俺の混乱を収める為に抱擁してくれたのに、今度はこっちから混乱の種が飛んできたのだ。


「ええぇえ・・・えええぇえええ・・」

「癪だが、小僧が特殊だというのはここにいる全員が理解していることだ」

「オトシゴ様、全ての妖精を代表して私が言います、どうかお願い致します」

「・・・・・・」


もうなんだか訳が分からんが再燃してきたぜ。が、全員が子供のような純粋な目だけど真面目で真剣。そんな剣幕を前にしてふざけた押すほど馬鹿じゃない、オトシゴとしての生まれの全てを話しても良いと思った。

それにこの樹のことだってどうしてこんな事になっているか聞きたい、俺だけが対価無く知識を貰えるハズもないのだ。


「俺が話せるのはこの世界とは別にある世界の事、そして俺の魂がどこから来たかについてだ」

「小僧は自分の魂の根幹を覚えているのか・・・」

「言葉にすれば・・・そうだな俺は自分の前世の記憶を全部覚えている」


「そんなっ・・シン、いえオトシゴ様!それは一体どういうことなのですか!」

「女王様、さっきの俺と逆になってますよ」

「グラディー、オトシゴ様のお話を先に聞かせて頂きましょう」


三人が驚きの眼差しで俺を見る中、淡々とそれが普通のことだと言わんばかりに話をしていく。こんなやり取りをしたのが懐かしいと感じる中で、フェル達には黙ったままの内容を話すのがどうにも胸に響く。彼女達を騙しているような、そんな気持にさせる。次にヴォルマに戻ったら俺の全てを聞いてもらおうと心に決めた。


「だから、俺は龍の力を行使出来るんだよ。この樹がどうにも俺を懐かしい気持にさせてくれんだ」

「信じ難い話だ、壮大過ぎて思考が追いつかんわ」

「でもオトシゴ様が嘘を言っている訳でもありませんからね」

「本当に凄い方と知り合ったようですね」


「でさ?その態度やめて欲しい訳で・・・」

「ワシはこのままで行くぞ?確かに小僧は凄い男だ!ワシが本気で殺しに掛かったところで返り討ちだろうがな!あはは!!」


「それはオトシゴ様としての願いでしょうか?」

「はい、そう受け取ってもらっていいですよ」

「ではこうしましょう!私もシンと呼び普通に話しますから、あなたもそうして頂戴?」

「いや、流石に女王様を相手に為口はいかんでしょう・・・」

「ではオトシゴ様、今後もどうか宜しくお願い致しますね」

「グラディーはこれでも頑固なんだ。一度言い出したら聞かんから諦めろ」

「ああああもう分かったよ!女王様!」

「グラディーと」

「ゾルじーの目が怖いから無理」

「あ・な・た・?命の恩人に対してする態度ですか~?」

「うっ・・・それを言われては・・」

「グラディー、これからも宜しく」

「えぇ!」


女性の名前を意識して呼ぶことがこれ程までに恥ずかしいと感じたのはこれが初めてだった。そして最後にゼスが俺の前で目線を合わせるように宙に浮いてひれ伏すようなポーズを取る。ゼスは初めて会った時にグラディーと同じ様な下りをしていたから対して変わらないと思っていたんだけど。


「オトシゴ様、どうか今後とも・・ふぇっ!」

「ゼスは俺にもグラディーと同じ様にしてくれないと困るなー」

「そっそのような無礼は許せません!もはや貴方様は龍と同じなのですよ!それを・・・」

「ゼスたそ~」

「ひっ!おやめ下さいオトシゴ様!」

「ゼスたそー」

「どうか!御戯れはよして下さいませ!」

「ゼスたそー」

「ゼス?シンがそうして欲しいと願っているのにそれを無視するの?」

「グラディーが軽すぎっ・・・ひっ・・あなたは龍や竜を前にしてそのような態度をとれっ・・・」

「ぜすたそーーー」

「はっ羽をそんなに弄ってはいけません!どうかお許し下さい!」

「ぜすたそーーーーーーーーーーーー!!」

「わっわかったから!普通にしますから!」


俺から解放されたゼスはヒラヒラ舞いながらグラディーの肩に引っかかった。

それはそれとて目の前のここに俺を連れて来た目的を聞いておかないといけないし、ニーナの話の全てをまだ聞いていない。レミナの根源を探し始めてから一番答えの近くまでこれたことは間違いなく、ここが最大の分岐点だと俺は思った。


「この場所は妖精が始まりに戻り、次を待つ場所です」

「でもどうやって妖精は生まれるんだ?」

「この樹の力を持って本来は生まれてくるんだ」

「もう長い間、子が生まれることがなくて私は妖精の王として悲しいです」

「妖精の王でも何とか出来ないのか?」


ゼスは目を伏せたまま答えを返すことが無かった。

それはグラディーもゾルじーさんも同じだったが徐にゾルじーさんが口を開く。


「生まれてくる数が減ってここ最近は一度足りとして生まれこないのだ」


樹の光りを眺めて懐かしそうな顔をするゾルじーさんを横目に俺は樹を眺め、眼帯を取ってじっと力の流れを見極めればそれが見える。

力そのものは微力ながら流れているけど圧倒的に足りていないのが分かったのだ。本来ならもっと強く流れるはずの部分に力がちょろちょろある程度。

物は試しと手袋を取り外して龍の手を露にした。


ゾルじーさんが息を飲む音が聞こえた、グラディーは俺の中を見たと言っていたけどこの手は見えてなかったのだろうか?顔が固まったまま。

ゼスはヒラヒラ飛んできて前回同様におかしくなっていた。自分がぺろぺろ舐めていた手袋の下にこんなものがあるとは思わなかったんだろうな。


俺は踵を返して樹の前に立ち構える。

穿つは一点、流すは全力だ!

今まで鍛錬以外で龍力を全力で行使した事はなかったけど、この樹のキャパシティなら余裕で受け止めてくれるだろうと信じて全力で力を流す。


「もっていけやぁああああ!!!!」


樹に力が流れ行くのが手に取るように分かる、この辺りはまだ足りてないとかここはもう満たされたとか自分の体の一部のように分かる。

時間が経つにつれて樹そのものが輝き始め、光量が増して眩しくなるも構わずに流し続けて行った。そうしているとあの懐かしい音が聞こえてきた。


リーィンリーーンリーーィン


俺があの空間で聞いた音、それが示すのは一つだけ。いくつかの玉が輝きを持ったまま宙に浮いて割れたのだった。

本話もお読みいただきまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


あと三話でこの章は終了して新章に入ります。

明日も更新致しますので、次話以降もどうぞ宜しくお願い致します。

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