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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十章 妖精の国 編
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ゼスたそ

ルセルに来て五日目の朝、雨の音で目が覚めた。

あれから雨は止むことなく振り続いて強さを増していた。大粒の雨を横目に廊下を歩く俺を見つけたのは妖精共が二人、また絡まれるんだろうと諦めて正面から警戒心剥き出しで進む。二人の妖精は外を眺めていたが俺の気配を察知して同時に振り向く。

あ・・・これはもう確実に絡まれると覚悟した。


「オトシゴ様!」「おはよう!」


え?今なんて言った?

理解出来ない行動を取った妖精二人を交互に見れば空を泳ぐように近づいてくる。目の前で左右に分かれた妖精は俺の顔の横を通過して両肩に止まった。


「お!は!よ!う!」「おはっ!よう!」


コイツらは一体何を話しているんだ?

意味が分からない・・・どうかしてしまったんだろうか?俺がおかしくなったのか?

それとも彼女らがおかしくなったのか?

それとも両方がおかしいのか?確かめる必要がある。おもむろに右肩に座っている妖精を掴んで色んな角度から観察してみる。頭、背中、足を見てから女の子がお人形遊びをするように手を動かしてみたりしてからスカートも捲ってみた。


「ちょっと!なんで捲るの!!」

「オトシゴ様は小さい女の子が好きなんだ!」

「離して!捲らないで!」

「リルのパンツずっと見てる・・・」

「黄色のパンツか、元気だな」

「言わないで!!!」

「リル、顔が真っ赤!!」


リルと呼ばれた妖精を肩に戻して今度は左側。

「やだ!逆さにしないで!捲れちゃうから!!」

まるでバナナを食べる時のように妖精を握り、逆さに向けてからスカートを捲れば・・・。

「こっちも黄色か、トレンドなのかもしれん・・」

「やだ!やだ!なんでリムのスカート捲るの!」

「元気は良いことだな」


リムと呼ばれた妖精を肩に戻してから息を吸い込んで言葉を交わす。

「今日は何時もみたいに絡んでこないんだな」

「捲る必要無いと思う」

「オトシゴ様はえっち・・」


「いつもと違うからおかしくなったかと思って心配したんだよ」

「だからって!妖精の下着を見るのはおかしい!」

「犯された・・・もう生きていけない」


「素敵なパンツだったぜ!かわいこちゃん!」

「褒められた・・」「うっ・・」


彼女達は特に何する訳でも無く肩に黙って座ったままで時折、俺を覗き込んではニコニコしてしばらく放って置いたらどこかへ飛んでいった。


去り際に彼女達のスカートをぺろっと捲りあげたら恥らいながらも睨まれたが肩の使用料だと思って欲しいもんだ。まるで俺が全て悪い見たいで完全悪のようじゃないか・・・勘弁して貰いたい!


「貴様はまた妖精達に卑猥なことをっ!!」

「あぶなっ・・」


背面から空気を切る音が響き同時に体を半身だけずらしてかわす、俺の頭が本来あるべき位置には拳が突き抜けていた。反射的にその手をとって背負い投げしちゃったんだけど勢い余って屋根の無いバルコニーに投げてしまった。


「うっ!!」

「あ・・・すまん」


水でびちゃびちゃになったリノリスが大の字で地面に横たわり天を仰いでいた。勢いで叩きつけちゃったからダメージ残っちゃったか?それとも体に何か違和感でもあって動けないのか・・・。


駆け寄り手を差し伸べたらパチンと払われて近づくなって叫ばれた・・・。これほどに嫌われるようなことなんてした覚えが無い。リノリスが俺に対して思っていることは勘違いだったってのは理解してくれているハズだが・・。そりゃ、妖精の裸は見たけどさ?元を辿ればコイツの父親が悪いじゃないか。そんな思いを丁寧に俺は説明した。


「そうだったとしても!貴様は妖精達を捕まえて、のぞっ覗いていただろ!このど変態が!」

「おいおい褒めるなって!真正面から褒められたことなんてあんまり無いんだから照れちゃうだろ」


「何をどう聞いたら褒めているように聞こえるんだよ!馬鹿か貴様!えぇいそこに直れ!!」

「何んだよ~このままじゃ風邪ひいちゃうよー」

「アタイのことを舐めてんじゃねーぞっ!!」


「あっ!女王様!ごきげんよう」

「ひっ!?」

「うっそぴょんぴょ~ん!!」

「この野朗!!!」


「そろそろ勘弁して貰えないでしょうか・・・」

「何だ!怖気付いたのか!!」


自分の状況をちゃんと把握出来てないんだろう、俺がそんな状態だったら恥ずかしくて人前に立ってられないよ。ルセルの衣類の特徴。


生地が薄くてどれもヒラヒラしていて綺麗なんだけどさやっぱり雨なんかに濡れるとねぇ?女王にお尻をペンペンされた時と同じ色のおぱんつ様におぶらじゃー様・・あぁ~ケツ叩かれてる様子を見てたことを怒ってるんだ!!


「お前だけは許せない!!」

「あのさ・・前隠しなよ・・・」

「そんな手には乗らない!」

「上下ちゃんと揃えてるんだな~同じ色だし~着替えてないのかなぁ~」

「えっ・・」


そこまで言ってようやく自分の姿を見て固まった。

ゆっくりとした動きで内股になり手をす~と胸にもっていき顔が赤く変色した。


「なんだ見たいなら見ろ!とか言ってくるかと思ったけど女らしいじゃんか」

「なっなっなぁ・・・見るなよぉ~あっちいけよぉ・・」

「なんだよ尻打たれる所まで見せつけられたんだから今更だろ?」

「うっ・・・いやぁああああ~~~」


凄まじい瞬発力を発揮したリノリスは走り去ってしまったとさ・・・。あいつは一体何をしたかったんだろうか?痴女の烙印を与えてやろうと心に決めたそんな雨の日だった。


そして七日目。

あれだけ降り続いていた雨が嘘のように晴れ渡り、天の明かりが燦々と降り注ぎ風が葉を揺らす。その音が綺麗でのんびり過ごす時間が気持良いのに兵士が数名で俺の部屋へ入り込んでくる。女王が呼んでいるから付いて来いってさ、どいつもこいつも俺を信頼ならんってのは目を見れば分かる。

妖精達とのことは事故だってのにいい加減にして欲しいけど、あんまり関わりの無い相手にまで媚を売るほど品揃えは良くないのだ。


「お連れしました!」

「お入りなさい」

「連れられて参りました!」

「ふふっ、本当にシンは面白い子ですね」

「おい!貴様!如何に客人とてその態度は何だ!!」

「ふぇっ!!!」

「構いません、彼は個人的な恩人なのですから」

「ですが女王様!」

「良いと言っています」

「分かりました!失礼しました!」


未だに妖精の裸体を見た事を怒ってるのか?

其れほどまでに彼女達の存在はこの国にとって大切なのかもしれん。仮にマーレ達がそんな事を立て続けにされている状況に陥ったなら俺は怒り狂う事間違いないだろう。少し自重しようと心に決めた。


「こちらへ来て頂戴」

「女王様申し訳有りませんでした・・・」

「あら、急にどうしてしまったの?先ほどのことなら気になさらないで」

「いや~普通に考えたらおかしいのは俺ですからね・・・」

「構いません、長く生きていれば多くの命と出会います。そんな中でシンのような者と出会えるのも大切な出会いですからね」

「じょうおうざまぁ~~」

「ふふっ、先ほど夫が森の様子を見に行きました。夕方には戻るでしょうから出発の話をそれを聞いてからでいいですね?」

「じゃあなんて俺を呼んだんですか?話なら夕方って・・・」

「改めてあなたに感謝したくてお呼びしました」

「はぁ~」


ここ連日、あのゾルじーさんとのイチャついた話を熱心にする女王の姿は完全に女子だった。女子側から男の話を聞くってのも新鮮なもので、いかに素敵でいかに格好良いかを聞かされ続けた。もっと威厳のある女王かと思っていたけど好きな相手の前にはそんなもの必要無いらしい。


「それでね?シンに一つ提案があるのですよ」

「はぁ・・・」

「リノリスについてどう思いますか?」

「あ~元気な子ですね」


「口調ははしたない子ですけど根は良い子なんですよ?それにちゃんと叩き直しますからどうですか?」

「何がですか?」

「あら?疎いですね~」

「ん?」


「お嫁にどうですか?と訊ねているのですよ」

「・・・・」

「シン?」

「はぁあああああああ???」


「そんなに驚くことも無いでしょう?あなたはオトシゴ様なのですからね?」

「いやいやいやいや!俺は目的あってこの国にたまたま来ただけですから!」


「確かに出会いは偶然かもしれません。でも、夫を救ってくれた方がオトシゴ様だなんてルセルと運命的なモノを感じるでしょう?」

「いえ!俺はゾルじーに巻き込まれただけですよ。それに仮に出会って無くてもこの国に来ていたのですから・・・」

「あら!リノリスでは不満ですか?そーですね!では・・」


女王が後ろを振り返った先から女性が二人登場しましたとさ、リノリスは長女で二人の妹だそうだ。二人揃って姉を追い越してしまったぐにぃが素敵で、姉とはまったく逆の御淑やか系の令嬢様の様相を呈している訳で。


「あなた達?」

「はい、母上様。始めましてオトシゴ様、私はレフルと申します」

「オトシゴ様、私はノイエと申します」

「・・・・・」

「どうかしら?この子達もそろそろ相手を決めてあげないといけませんから」

「・・・・・」

「シン?」

「いや・・・そのっ・・」


何やら女王が合図したらしく俺を挟むように二人が座る。にこにこ俺を見ているのだがこれは困ったことになった。簡単に断れば女王は怒ってしまうかもしれんし、二人を傷つけるようなことにも繋がる訳で・・・。

俺としては結婚なんてそもそも考えてないしやるべき事を優先したい気持があった。あの頃の、生まれ変わる前の俺なら簡単に飛び付いていたかもしれない。でもそんな俺の持つ二面性のお陰で一歩引いて冷静に考えれるのは有り難いけど。


「オトシゴ様は何がお好きですか?」

「オトシゴ様はレフルと私ならどちらがお好きですか?」

「二人共貰って下さっても良いんですよ?子沢山は良いことですからね」

「母上様!オトシゴ様の前でそのような・・」

「恥ずかしいです!」

「・・・・」

「どうですか?リノリスも入れて三人でも良いかもしれませんね」

「・・・・」


やばい。これは・・この展開は考えてなかった。

何か逃げる算段を付けねば押し切られそうな雰囲気。どうする?地面に穴あけ・・樹だもんな・・無理だ。ここを乗り切る一手が欲しい!!はっ!!


「いや~俺は女王様みたいな女性がタイプなんですよねー」

「あら?三人は私の娘ですからもう少し成長すれば私のように成りますよ?」

「・・・」


やってしもた・・・これはあかんやつ。この展開そのものの流れに乗ってしまうのが一番やったらあかんのや。自ら飛び込んでどないするねん。

アホか俺は!俺の言葉のせいで余計に期待感膨らませた娘が・・・。二人共リノリスより少し年下って感じだけど、見た目はリノリスにそっくりで違うと言えばぐにぃか?


「あら?シンもやはり殿方ですね」

「やだ、オトシゴ様ったら・・・」

「そんなに見ないで下さいませ!」

「・・・・」


あかん、この女王やりおるで・・・俺が断るって道筋を先手を打って全部潰しよる。それにさっきから目だけ笑ってないのは勘違いやろうか?

どうなんや?怖いぜ・・・。


「シン?どうですか?」

「いやっ・・・そのっ・・」

「私はオトシゴ様が御相手だったら嬉しいです!」

「私もです!」

「シン?」

「・・・・」


もう無理ぽ。誰か助けて・・くれ・・・。


「あら?こんな所にいたのですね探しましたよ?」

「あら!ゼスどうしたの?ここに来るなんて珍しい!」

「「ゼス様」」

「グラディー久しぶり、それに二人も元気そうで何よりです」


「ゼスたそ~~~」

「ちょっとシン?離して下さい」

「ゼスたそ~」

「聞いてますか?離して下さい!」

「ゼスたそ~~~」


「もう知り合っていたのね」

「えぇ、私の部屋でお話に付き合って貰ったの」

「えぇ!!オトシゴ様はゼス様のお部屋に行ったのですか!」

「まだ私達も言った事なんて無いのに~」

「ゼスが部屋に他人を入れるなんて珍しいこともあるのね」


「ゼスたそ~」

「グラディー?シンに何をしたのかしら?」

「別に何も悪い事なんてしてないわ!娘を嫁にって思ってね」

「シンが困っているのを楽しんでいたように見えたけど?」

「ゼスたそ~~」

「まぁ良いわ~シンも御免なさいね?」

「ゼスたそ~」

「グラディ~?シンに何か魔法でもかけたのかしら?」


俺はしばらくゼスを掴んで離さなかった。

話を聞いてみれば女王とゼスはお互いに契約を交わした間柄、その付き合いも相当長いそうだ。お互いに小さい頃から知っているようであれやこれやとぺらぺら話に花を咲かせている。


「いい加減に離してもらえないでしょうか?」

「ゼスたそ~」

「シンはゼスが好きなようね」

「ゼスたそ~」


ゼスを捕まえたままいたのは離せばさっきの流れに巻き込まれてしまうって思っていたからだ。ここでゼスを逃がすようなことが起これば確実にトドメを刺される!それは駄目だ!だから俺はゼスを捕らえた左手に龍力を展開させた。


「ん~//」

「どうしたのゼス?顔が赤いわ!」

「ゼス様!」

「お体が悪いのですか!」

「ゼスたそー」

「しっん・・それは卑怯ですよ」

「ゼスたそー」


後頭部に衝撃を受けて俺は地面を転がった。

その最中にゼスは俺の掌から逃れて女王の肩へ移動するのだ。くそっ!大切なジョーカーを奪われた!このままではまずいことになる!

そんな焦燥感のまま立ち上がる。


「お前はグラディーと我が娘を集めて何をいちゃついてるんだ!」

「ゾルたそ~」

「やめい!気持ち悪い!引っ付くな!」

「ゾルたそー」

「おい!ワシは女にしか興味は無いんだ!離せ!」

「グラディー・・・本当にシンに何もしてないのよね?」

「してないわ!娘を嫁にどうか?って話しかしてないもの」

「ぬぁあああにぃいいい我が愛しき娘をこんな男にだとぉ!!」

「ゾルたそー」

「いい加減離せ小僧!!」

「うぶっ」


良い一撃を貰った俺の意識はゾルじーを捉えて、こんな爺さんに抱きついていたなんて気持ち悪くて吐き気がするぜ。英雄色を好むなんて言うけど俺が好きなのは女性なんだよ!自分で英雄なんて言いたかねぇけどな・・。


「それであなた森の様子は・・・」

「あのぐらいなら問題なく進めるだろうよ」

「じゃー俺は早速出発すっかなぁー」


「いけません!」

「なんだよゼスたそー」

「その呼び方もやめて下さい!」

「ゼスはシンに気に入られているのねー」

「グラディーもふざけないで!」


どうやらもう一波乱あるようで俺の目的はまだ少しだけ先になりそうな予感。ゼスから大切な話があるらしく、女王とグラじーと俺での対談が始まるらしい。嫁にどうだと言われた二人も空気を読んで俺に挨拶しそそくさと退室していったのだ。どうせなら両脇に座ってくれてても良かったのに・・・。

本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


鏡開きで御餅食べたら人生で初めて喉に詰まりました。

毎年ニュースで喉に詰まらせて無くなる、なんてのを見ますが喉に詰まるとホントに息出来ないんですね・・・焦りました・・・。


次話以降も宜しくお願い致します。

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