もう一人の王
ルセルジーア、妖精の国。女王が総べるこの国には妖精が多く存在していた。妖精、簡単にその言葉で表現すれば小さくて愛らしく羽の生えた存在と思うことだろう。女王の許可を得てルセルに滞在すること三日目。
女王とゾルじーは久々の再会に喜び、連日ちちくりあっているらしく姿は見ていない。時季が来れば分かるからその時にこちらから声をかけると言われてから放置だ。他国の人間にも関わらず俺はかなり自由に城の中を散策していた。
「いたぞ!あいつだ!」
「囲め囲め!!」
「逃がすな!」
また来た、捕まると面倒くさいことこの上ない。本当に面倒くさい、エルジュが言っていた意味が分かったと気が付いた時は遅かった。故に俺は走って逃げる!だかヤツらは空を飛び回りトランシーバーの如く魔法で連絡を取り合うから性質が悪い。逃げ切ったと思った矢先の曲がり角に普通にいたり、隠れたのにピンポイントで発見してきたりとその機動力には目を見張るものがあるのだ。
「今日は逃げ切らせてもらうからなっ!くそっ!!」
「逃がすな!空中待機組み!」
「ずるいぞお前ら!!」
「行け!!行け!攻め立てろ!!」
廊下を走り曲がってみれば妖精が二人、踵を返して振り返れば既に後ろにも二人。完全に挟まれる形になって逃げ場が無い!前と後ろから突貫してくるがコイツらは少しだけお馬鹿さんで助かる。確かに妖精側から見れば完全に隙が無い布陣だろうけど、俺とお前らには決定的な差がある!
全力で前に走り衝突する寸前、体を屈めて真下をすり抜ければ簡単に突破出来るんだよ!体の大きさが違うんだ、大人が二人で正面に立つのと妖精が二人正面に立つのではスペースに圧倒的違いがあるんだよ!すり抜ける間際、チラッと目線を上げてみればパンツを拝見出来るのだ!
「白と黒か~あはははは~」
「また見た!」「色を言うなぁ!!」
この三日間、部屋から外に出ればこうして襲われて一段落したら散って行く。がその一段落までが面倒でうざったくて疲労感だけが残るんだ。
本日はどうやら巧みにトラップを仕込んでいたようで綺麗にそれに引っかかった。妖精達が魔法で編んだ網がまさかの十枚重ねで俺を捕らえる。
一度目は簡単に破いた、二度目はギリギリでかわして自爆を誘い、そして今日だよ。流石に十枚なだけあって強度はそれなり、身動きとれずに人間ホイホイの出来上がりだったが豆蒼煉を展開して全部焼いてやった。
「あっ!!ほら!あれだよ!」
「ほんとだ!きれい!!」
「なんで!魔法じゃないの!!」
「きれーー!!」
龍法から生まれる残光が彼女達には美しいものに見えているらしい、体に絡みついた残りの網をゴロゴロ転がって完全に剥がしきる。残光に見惚れてる妖精達を横目にすぅ~と移動したが、後頭部・正面・両手・両脚に妖精が張り付いて俺の負け。地面に座り込み対話を試みようと思う、言葉が通じることこそ知能の高い生物に許された奇跡だぜ。
「お前らさ、何で毎日絡んでくるんだ・・・」
「ねぇ!なんで!」「なんで?」「どうして?」
「ねぇねぇ!」「綺麗!」「凄い!」
「何がだよ!」
「キラキラ!」「ふわふわ!」「もっと!」
「もう一回!」「早く!」「ゴツゴツしてる!」
「聞けよ!」」
「はぁ~」「和む」「癒し系」「溶ける」
「ふにゅ」「たまんない!」
「あぁあああああ~うぜええぇええええええ!!」
「うるさい」「揺れた!」「クラクラ」
「頭いい匂い」「耳たぶふにふに」
「手怪我してるの?」
「聞けやぁああ!!!!」
「黙れ!」「もっとふわふわ出して!」
「早く早く!」
「気持いい!」
「怪我なの?なんでゴツゴツしてるの?」
「あぁぁあああぁあああぁああああぁああ助けてぇええええええ!!」
こいつら人の話を全然聞かない、言葉なんて通じない、知能が低くい生物の如くの奇跡だぜ。絡まれ続けてどれくらいたっただろうか?耳元でぎゃーぎゃー騒ぐ、手を弄られる、眼帯をびよ~んされてバチンされる、膝の上で寝る等。うざい、うるさい、うっとおしいの3Uがここに成立して俺の精神はゴリゴリ減ってもう目盛りが真っ赤。
「あなた達?困ってらっしゃるでしょう?」
「あ~姫様!」×六。綺麗にハモったことが奇跡に思えて、奇跡って起きるものではなくて起こすものなんだって悟った。
姫なんて呼ぶからリノリスかと思ったけど、正面にいたのは羽が六枚、風に流れる髪は膝あたりで綺麗に切り揃えられた藍色、服は真っ白で柔らかそうな生地のドレス。右目は碧、左目は黄のオッドアイ、そして期待するべきぐにぃは・・・。
妖精の中では大きいんだと思う。
成人女性に当てはめてみれば恐らくE級だろうか?
物腰柔らかい印象を受けるが大きさは他の妖精と同じサイズ。
「彼女達が大変な無礼をしてしまったようで申し訳有りません」
「いやまぁ・・大丈夫です」
「ですが助けを求める声が聞こえましたので・・」
「出来れば助けて頂けると有り難いですけど」
「あなたたち?離して差し上げなさい」
「は~い」
またも奇跡のハモりだと感じていれば、姫と呼ばれた妖精に手を引かれて立ち上がっていた。こんなに小さい体のどこにこんな力があるんだ?魔法を行使したようには見えなかったけど。不思議そうな俺の表情を汲み取った姫は俺の手を引いたまま「少しお話をしませんか?」なんて逆ナンされて断る理由も無い俺は彼女について行く。
樹の中を歩いて進めば行き止まりで一瞬ここでしばき倒されるかと思ってしまった。彼女は樹に手を付いて魔力を込める、何も無かった壁に扉が生まれそのまま手を引かれた。どうやら彼女の私室のようでベットから椅子から全てがミニチュアサイズで可愛らしい。
「私はルセルジーアの妖精達を束ねる王、フィルディア=ゼスです」
「ヴォルマから来たランザヴェール=シンです」
「オトシゴ様ですね、森であなたを見た妖精達からも話は伺っていますよ?」
「申し訳御座いませんでした!!!」
「あら?何か謝るようなことをしたのですか?」
「あのっ~そのっ・・・」
「ふっふ、魔力浴を見たのですね」
「妖精達の裸を見てしまって・・・」
「大丈夫です、殿方ですからね?」
「いえっ・・そのサイズ的にそのっ」
「あら?大きさは問題ではありませんよ?それとも私も魅力がありませんか?」
「あのっそのっゼス様はとても綺麗です!!」
「有難う御座います、オトシゴ様にそう言って貰えて嬉しいです」
「ひゃい・・・」
「形式は大切ですけど~できたら私のことはゼスとお呼び下さいませんか?」
「ゼス様」
「ゼスです」
「でしたら俺もシンと呼んでください」
「シンですね?では私も呼んでください」
「ゼスたそ~」
「え?」
「なんでもありません!」
「次はその口調もですねぇ~」
「それを言ったらゼスもですよ?」
「私はこれが普通の話方ですからどうかこのままで」
「え~」
どうやらゼスは単純に俺と話をしてみたかっただけらしい、前のオトシゴとは会うことは無かったそうだが俺に興味を持ってくれているようだ。
色々と話をするうちに魔力浴についても聞くことができた。妖精達は人間と違い自然環境の中からでも魔力を抽出して己の力と出来るらしく、俺が見たのはその最中だったと。そうしているうちにゼスは何かを話したい様子でチラチラ俺を見る、その姿が何とも可愛らしくて美人とのギャップがクッと来るんだ。
「一つお願いを聞いて下さいませんか?」
「俺で出来る範囲であれば・・・」
「妖精達が言うにはあなたの力は綺麗で美しく癖になると聞いたので」
「へ?」
「話を聞けば魔法を使えないにも関わらずそれに似た力を使ったと・・・」
「あ~龍法だな、こんな感じか?」
実際に目の前で豆蒼煉特別サイズを展開して見せて直ぐに消したら、何やらゼスの様子がおかしい。体をクネクネさせて何かを耐えている様子だったからもっと見たいのかと思い、今度は両手で展開して見せる。
「っ・・ん・・これ・・ほど・・までとっは・・」
「こんなんも出来るぞぉ~」
朱食みを指先で展開して親指の先から小指の先まで這わせたり、碧乱をふわ~とさせて見せたりと。楽しんでくれたかと思ってゼスを見るも、彼女は両手をふとももに挟んだまま悶えてる様子。笑ってるのかとも思ったけど、どうやらそうでもないらしく名前を呼んでも無視。
相手をしてもらえない寂しさを紛らわす為に龍力で色々と遊んでみた。蒼煉をジャグリングのようにぽんぽん飛ばしてそれを朱食みで消したりと色々と遊んで見せたけど無視。
「はっはっはっ・・・・もう・・だめ・・です」
「どうしたの?」
「もう我慢出来ません!!」
「うぉっ!!」
「綺麗で気持ちよくてはぁ・・はぁ・・・ふわふわで・・蕩けそうです」
ゼスは俺の手に絡みついて指先に顔を擦りつけ始めたのだ。全然意味が分からないその状況に俺も困惑してしまう。この妖精をまとめ上げる王は一体何をしているんだろうか?
でも何やら気持良さそうってことだけは理解できたからサービスしてあげようと思う。龍の手を出してから龍力を纏って強化してみたらもうおかしくなってしまった。
「その手は・・それっにっ・・あぁ・・・もうこんな・・・」
「あのさ?さっきから様子が変だけど大丈夫?」
「あのっ・・少しだけ少しだけでいいですから!」
龍の手の人差し指に顔を擦り、腕に体を絡め、そしてなんとペロペロ舐め始めるのだ。一体何が?おかしくなってしまわれたのだろうか?試しに龍力の展開を止めてから残光を出来るだけ消して、今度はピンポイントでほっぺに集中。さて何がおこるのだろうか?もしかしたら・・・・ってそんなことある訳ないか?
「はぅっ~今度はそこですねっ!んちゅちゅ」
「へえぇえええ!あんた何してんの!!!」
俺のほっぺをペロペロしてる!どうしてしまったんだ!!!何かおかしいと感じ龍力の展開を全て止めてゼスの体を両手で掴んで引き剥がした。なにやら悶絶したままで顔が蕩けているけど次第にその表情は赤らみ、最終的には元に戻ってくれた。
「ゼス・・・一体どうしちまったんだよ」
「もっ申し訳・・んっありませっ・・」
「大丈夫か?痛いのか?」
「いえっ!気持ちよくて体が火照ってしまっ・・あのっ・・」
「どうしたんだ?」
「あのっ・・ですね、魔力浴については話しましたよねっ」
「自然の中から魔力を体内に入れるんだろ?」
「そうです、ですが・・シンのは違ってて、気持ち良くてこのような淫らな姿を見せてしまって・・」
「魔力じゃなくて龍力のせいでそんなことになっちまった訳か・・・」
どうやら妖精にとって龍力を行使した俺は猫にとってのマタタビのような存在らしい。そう考えるとあの妖精達の行動にも納得出来てしまうけどさ、目の前であんな淫靡な姿を見せ付けられたらどう対応していいか分からん。
「シン・・そのっ離して貰えると嬉しいのですが」
「あっあぁすまん!」
ゼスのぐにぃが俺の指に乗っかってて変な興奮を覚えたなんて言えない。もし俺が彼女達のようなサイズになれるのならぐにぃしたい!そう思わせる雰囲気だった。
「ふぅ~それにしてもシンの力には凄いものを感じます。今まで人前でこのような姿なんて見せた事などないのに・・・」
「なんか・・・凄いことになってたな・・・」
「思い出すのは止めてください///私自身でもまさかあんなことをするとは思ってなかったのですから!」
「うっうん。なんかすげー艶かしかったよ」
「うっ///」
こうして俺はルセルにおける王二人と知り合いになった。ゼスとの別れ際、彼女は俺の肩に手を付いて耳元でこっそりと言う。
「またお話しましょう。それからっ・・・」
言い難そうだったから悶えてたのは誰にも言わないって念を押して言っておいた。それも大切だけどそれだけじゃないらしくて、「出来ればまた///」
あぁ~完全にハマったんだね、中毒症状みたいだけど大丈夫だろうか?彼女の案内で元の廊下まで連れて行ってもらいそこで別れた。
大粒の雨が降る中、本当にあと四日ほどで出発出来るかと不安になるけど気ままに待とうと思う。
本話もお読みくださり有難う御座います。
ブックマークにも感謝です。
十章はあと五話を予定しておりますので宜しくお願い致します。
今年は去年に比べてあまり寒く無いので助かります。
場所によっては、イチョウがまた落ちてないのに桜が云々とか聞きました。
どうなってるんでしょうね・・・ただ油断してたら風邪引くんですよね。
皆様も寒暖の差にはお気をつけ下さい。
では次話以降もどうか宜しくお願い致します。




