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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十章 妖精の国 編
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シンの仕込み

大樹から見える風景を見れば人の営む姿が良く見える。露店があれば捕獲した獲物を解体している場所、様々な動きがあれどそこから外に目を向ければ緑だけが長く広く続いている。

生活をしていれば沢山の音が耳に入る、そして匂いもある。この国は樹の良い香りだけが充満していて気持が安らぐ。乾いた樹の香り、濡れた樹の香り、色んな香りがして心地良い。目の前の女王の膝に座り後頭部でぐにぃを楽しむゾルじーさんが居なければ最高だった。


「ん~百年振りのグラディーはやはり最高だ!」

「あなた、オトシゴ様が見てますからそんなお戯れを~」

「その茶番止めて貰っていいですかね」


「ノリが悪いな~それともグラディーのこれに興味津々か?」

「人妻の体に興奮持つほど歪んでねぇよ」

「んふふっ~シンは嘘を言いましたね」


「ははっはは!馬鹿めグラディーは嘘を見抜けると聞いただろうが!」

「ゾルじーが居なかったら抱き付いてるとこだ」

「あら?そのまま抱きつかれてしまっては駄目ですよ?でもシンは・・・」

「駄目だ!グラディーのこれはワシんもんだ!!」

「女王が良いって言うんだから良いだろ」

「駄目だ!駄目!死ね!」

「モテモテね~」


確かに魅力的ではあるけど今はそんな事どうでもいいんだよ。さっきの問いの答えを俺は早く聞きたいんだ、その後に許されるならたっぷりと楽しみたい!そんな顔を読み取った女王はゾルじーを摘まんで放り投げて俺に詰め寄った。


「私は龍と竜の二人を知っています」

「ほっ!ほんちょうでつぅかっ!」

「落ち着いて、あなたが求めるのは橙のタツノコの根源・・・」

「ふぁい!!」

「その龍を私は知っています」

「ほっ本当ですかお嬢さん!!」

「おい!ワシの嫁に言い寄るな!散れ!!」


「あら~こんなに情熱的に言い寄られては靡いてしまいそうね」

「駄目だ!グラディ~戻って来い!!」

「あなた?少し邪魔だから黙ってて頂戴」

「うっ~百年振りなのにあんまりだ!!」


小指を立てたその手で涙を拭い樹から飛び降りて消えていった。あんな高さから落下したら死ぬんじゃないか?ゾルじーが落下して消えた先を覗き込んでみれば消えていた。一体どんなワザを用いたのか?まさか体を消す方法でもあるのか?もしそうなら俺は・・・・。


「シン?如何わしいことを考えていますね」

「また読んだ!!」

「顔に書いてますからね・・・」

「はっ・・」


「龍、橙の龍が住まうは流れる城の主で間違い無いかと」

「海を漂流してると?島流しみたい・・」

「正しくは海では無く空、私も幼い頃に一度だけ見た覚えがある程度です」

「人が想像出来ることは、必ず人が実現できるなんて言った人がいたけど似たようなもんか・・・」

「面白い言葉ですね、人ではなく龍ですが」


「それでそれはどこにあるんでしょうか!!」

「それは分かりかねます」

「そう・・ですか・・・」


「昔の魔法は今よりもっと発達していました。時が進むに連れて少しずつ衰退しているのがこの世界の現状」

「もっと生活の中に魔法が溶け込んでいた訳ですよね?」

「何故そう思ったのですか?」

「魔法の力があるのに生活の中でそれを見るのは極限られた場所だけだって思ったんですよ」

「シンは聡い子ですね、正解です。それにもっと文明として発達していたし、それに見合う魔法の技術でした」


「あのぉ~女王様はそのぉ~」

「私は二千年以上生きてますよ」

「おぉう・・凄まじい数字ですね」

「この国を創ったのは六百年程前になります、ありとあらゆる所で魔法の技術は導入されていた時代。様々な理由があって今に至るのですけどね」

「もしかしたらその当時の技術があれば見つけることは出来たり・・・?」

「そうですね、あれば見つけるどころか城そのものへ行くことが可能でしょう」

「何か他に~」

「あの山の頂きに今は誰も近づかない竜殿があります」

「そこに行けば!!」


そこで制された。俺の言葉を遮るように、俺がこれから起こすであろう行動を抑制するように。女王は笑顔を崩しこそしなかったけど、何かを思い出すように悲しい眼になったことだけは見逃さなかった。理由は女王が丁寧に説明をしてくれた。


何故誰も近づかないか?その理由を逆に問われたけど俺には答えを出す事が出来なかった。でも、ニーナの名前を出してみれば小指の先ぐらいは引っかかったようで話を聞かせてくれるのだ。


「あの山からこちらは私達の国、その向こうには獣人達が総べる国があります。今でこそ双方が静寂で豊かな生活を営むことが出来るようになりました。

ですけど、その昔は争いが絶えることが無かった・・。そんな時にニーナが全てを終わらせて今に至ります」

「妖精・・・・」


「ニーナから話は聞いているのでしたね、妖精は森の宝。私達も獣人達も妖精と共に生きています。中には妖精と契約をし生涯を共にする者だって少なくありません。ですがニーナと共にいた妖精はあざむかれ殺されてしまった・・・。獣人達はこの森で妖精狩りをしていたのですよ・・・」


「この土地は、あの竜殿の竜の地なんですよね?」

「そう伝わっています、ですが竜は何もせず姿も現さず全てが終わった今でも現れません」

「初めから建物だけの空ってことは・・・」

「この国は建国した折に一度、挨拶に赴いたことがあります。その当時に一度だけ話をしたのですよ」

「いるのは間違いないか・・・」

「恐らく、私達の行いを見ていて呆れたのでしょうね・・」

「俺が個人的に行ってもいいでしょうか?」

「そうですね・・・オトシゴとして行くとなれば大丈夫かもしれませんね・・」

「なら早速!」


とは行かなかった。女王にしばらく待った方が良いと言われたのだ。山側の森は湿地帯で今の時期は道が悪く、沼が広がりはまれば死ぬと脅された。

この時季は雨が多く推量が上がり危険らしくそれが収まるまでは止めて置いた方が良いだろうと。森そのものを歩きなれている者でもこの時季は近付かないそうだ。女王の計らいで俺はルセルに滞在する許可が下りたから、その部分において泊まれる場所を確保したと思えば有り難い。



一方オネェ船に乗り込み山を越えノヴィスに到着したトルト達。偽オトシゴを運んでいたせいか彼女らはずっと緊張したままで道中を過ごすことになった。それでも騙されていた男達やオルクスと言った腕利きに踊り子が四人もいたことで幾分かはマシだった。


ノヴィスの町へ入ろうと正面の門から入城を試みる。以前であれば対した役にも立たなかった門番達は、ラガノによって性根から叩きなおされて門番の風格が似合うようになっている。トルトはヴォルマの龍導院の人間であること、偽オトシゴを搬送中の旨を伝えと、門番の一人は少し待てと言い残し馬の乗るとそのまま走り去った。


「ルーシャも疲れたでしょ?」

「私よりトルトの方が・・体だって・・・」

「大丈夫、もうヴォルマまでそう遠くないし後少しってね」


そうしてノヴィスの城を眺めながら待っていれば馬が二頭に増えて戻ってくる。先ほどの兵士と筋肉隆々の男が馬を下りてトルトに近付いて言葉を交わす。


「ノヴィス王国騎士団団長のラガノだ」

「ヴォルマ王国龍導院のトルトですっ!」


「何やら物騒な話のようだな?シン殿を語る輩が居たと」

「オトシゴ様を知っておられるんですね」


「無論だ、彼はこの国の英雄だからな?ヴォルマでもノヴィスの一件は聞いているだろう?」

「私共は龍導院の人間ですから詳細の全てを聞いている訳では無いんです・・」

「あの!それで・・」

「ここからヴォルマまではまだ遠いだろう、クレフィア様からの許しも出ているから今日は城で休むといい」

「有難う御座います!!」


-これで少しだけ休める・・それにしてもルーシャも相当疲れてる。私も正直言えば体が重くて辛い。本来だったら私達が城に入ることなんてそうそう無いことなのに、あの騎士団長はオトシゴ様の名前を出しただけで通してくれるなんて・・・。話には聞いてたけど本当にオトシゴ様は英雄なんて呼ばれ方してるんだ。本当に凄い、二度も助けられてもうどうしてお礼をして良いか分かんないや。-


「偽オトシゴは我々の方で牢に入れて監視しておくから君達は彼女に着いて行くと良い」

「「有難う御座います!」」

「ねぇ・・私達みたいな踊り子風情が城なんかに入っていいのかしら・・」

「どっどうしようか・・」

「でっでも・・」

「ねむい・・・」


どうにも場違いだと分かっている踊り子三人は城の雰囲気に飲まれ、もう一人はいたってマイペース。オルクスはラガノの前に膝を付き接触を図った。


「ラガノ殿で間違い無いのですね!」

「あぁ、自分がラガノで間違いはないが?君も疲れているだろう?」

「いえっ!自分はあなたに会う為にここまで来たのです!!」

「どういうことだ?」


オルクスはオトシゴと対面し、騙された自分の恥を素直に全て語りノヴィスで騎士になりたいと懇願するのだ。

「君がどれ程の腕前かは分からないが、今はあまり外から人を入れる余裕が正直無いのだ」

「ですが!オトシゴ様は仰られました!ノヴィスなら大丈夫だと・・・」

「疑うようで悪いんだがな?シン殿からの紹介とは口では幾らでも言えるのだ」

「あの!オトシゴ様があなに合ったら一言だけ伝えろと!それで全部分かると!」

「聞こう」


オルクスはラガノに近付いてシンに言われた事をそのまま口にした。

「マーレとは上手く行っているか?」

「なっ!!!!!!」

仰天したラガノは驚くべき声を発して手で顔を覆う、その顔には裏切られた人間の絶望がべっとり張り付いていた。だがシンがあれこれ構わず口外するような人物では無いと理解していたラガノはオルクスの一言で信じるしか無かった。


「わかった!でもいくらシン殿の後押しがあろうと最終的な判断は自分が行う」

「はい!」

「今から訓練所へ行くぞ」

オルクスを連れたラガノは彼に見られないように顔の冷や汗を乾かすことに終始必死だった。


「オルクスさん行ってしまったね・・」

「何?ルーシャもしかしてタイプだったの?」

「ちがうっ!!私は・・・!!」

「はいはい!」

「もうっ!!」

「私はテュルと申します。皆様、どうぞこちらへ」


テュルの案内で城内を進む、まさか玉座の間に連れて行かれるとは思いもしなかっただろう。彼女達が完全に硬直したのは、この国の王ことクレフィアと対面した瞬間だった。


「アタクシがノヴィス王国国王ノヴィス=クレフィアですわ」

「えっ・そにょわちゃくちゅちは・・・えっ・・」

「そんなに畏まらないでいいですわよ?」


テュルが前もって玉座に行くと伝えていなかったのも悪いが、トルトの狼狽振りをみたルーシャはもう笑うしかなかった。そして一歩前出てクレフィアへ改めて挨拶をするのだった。王の御前とあって緊張した面持ちではあるが逆もまた然りだった。


ヴォルマとジョコラの王とは話をする機会はあったが、このような形で外からの人間に王として振舞うのはこれが初めてだったから。それもオトシゴ絡み、緊張と高揚が相まっているそんな心持。本心は少しでも近況を聞きたいというのが本音だが。


「シン様は元気にしてますの?」

「はいっ!私共の窮地を救って頂きました」

「偽オトシゴですわね?」

「その、オトシゴ様だと初めは知らずに無礼を働いてしまって・・」

「シン様に何をしたんですのっ!」

「へっ!!」


テュルの視線を感じてクレフィアは、佇まいを直しゆっくりとした口調で丁寧に言葉を送り返した。聞けばオトシゴが小さくなっていて、それを子供と同じ様に扱ってしまったとの事。


「るっルーシャさんと言いましたね?あなたはシン様に何をしたんですの?」

「その・・・小さいオトシゴ様を抱きしめてしまいまして・・」

「シンさんは小さくなれますからね、抱っこすると暖かくて髪も柔らかくて気持良いですよね?」


咄嗟にテュルがぼろっとそんな事を言うものだから、クレフィアの目線はテュルに釘付けになった。しまった!そんな表情をしてしまったものの一瞬で気持を引き締め話を元に戻す。


「偽物をヴォルマに連れ帰る道中なんですね?」

「はい!」

「では、本日はお疲れでしょうからお部屋に案内しますね!」


テュルが他の侍女に指示を出し早々に退室してもらい事なきを得・・なかった。


「テュル?シン様を抱っこしたっていうのは本当ですの?」

「あ~そんな事もあったかもしれません」

「テュル!!」

「あのっ!エルジュさんがシンさんを抱っこしているのを見て・・・そのいいなぁって・・・」

「シン様からでしたの!それともテュルが頼んでそうしたんですの!!」

「私がシンさんに頼みました!!」

「アタクシだってしてないんですのよっ!!」


そんなやり取りが起こっているとはいざ知らずトルトとルーシャは案内された部屋で一息付いた。疲れもあってトルトは倒れこむようにベットに寝転がり天井を見つめる。ルーシャもベットに腰をかけて豪奢な内装に息を飲むのだった。


「クレフィア様もオトシゴ様には様付けだったね」

「トルトは緊張しすぎて話せてなかったね」

「それはっ!いきなり王様の前だなんて思いもしなかったのよ!」

「ビックリしたけど素敵な方だったねクレフィア様」

「オトシゴ様のこと好きだっていうのは分かったね」

「そうだね・・・」


二人同時に溜息をついてルーシャも寝転がり天井を見つめた。外からは剣戟の音が響くのを聞きながら少し目を瞑れば自然と眠りに落ちて行く。剣戟の元、そこにはラガノと対したオルクスが膝を付いて息を荒げていた。


「確かに光るモノは持っているようだが傭兵止まりの剣だな」

「くそっ!!!」

「シン殿が言うぐらいだからどれ程かと期待したが・・・足りんな」

「そう・・・ですか・・」


「まだ何も答えは出しておらんだろう!最後まで聞け!貴様はノヴィスで騎士になりたいのか?」

「いえっオトシゴ様の騎士となりたいのですっ!」

「正直な話だ!自分がもしシン殿と正面から本気で相対してもまず勝てない!」

「それ程・・・強いのに・・ですか・・」


「シン殿の強さは圧倒的、いかに剣を極めようと魔法を使いこなそうと勝てる者はいないだろう」

「ですがっ!お一人では限界があります!」

「本当にそう思うか?シン殿はこの国もヴォルマも救った強者だぞ?下手に誰かが側にいればそれだけで枷にすらなるぞ?」


「・・・ですが」

「貴様はシン殿の騎士ではなくオトシゴの名に連なり名誉が欲しいだけでは無いのか!?」

「っ・・・」


「気がついたか?貴様自身の心の片隅にそんな思いが巣食っていたのだ!脆弱も良い所だな」

「憧れては駄目なんですか!オトシゴ様に憧れることはいけないんですか!」


「それは貴様の思いだろう!騎士としてシン殿の前に立つのであればそんなもの馬にでも食わせてしまえ!良いだろう!シン殿の推薦もあることだ!貴様のその脆弱な性根を叩きなおしてやる!」


ラガノに火が付き、オルクスは一人の兵から鍛え上げられることになる。オルクス自身は気持の整理を出来ないままだったがノヴィスで騎士を目指すこととなった。叩き潰された全てを捨てることが出来れば、絶対に強くなれるとラガノは思うがそれは言わずに空を眺める。


「シン殿・・・口が軽すぎるぞ」

虚しく響く声だけが空へ溶けていった。

本話もお読みいただきまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


新年に入ってもう六日。

寝正月をしていればあっと言う間に終わりました。

もっと休みたかった・・・、誰しも思いますが気合を入れなおして頑張ります。

次話以降も宜しくお願い致します。


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