そんな事されるなんて聞いてない・・
俺は他国に行く度にこうして捕まる運命にあるのだろうか?俺が何をしたって言うんだよ、説明しても信じて貰えないのはどこの国でも同じだよ。後頭部に鈍い痛みを感じながら目が覚めたら、俺は現状を把握して心の中で嘆いていた。
なんでこうなったんだ・・・そう全部あの爺が悪い。あの爺の言葉を聞かずに立ち去っていればこんなことにはならなかったんだ。なんか昔にもこんな事があったような気がする。俺は全爺から呪われてるのかもしれない。そんな星の元に生まれたんだと思う事にして、目の前を見る。
手と足を魔法で生成された鎖で繋がれて地面に仰向けの状況。この程度の魔法なら朱食みを展開すればそれだけで解くことは出来るけど、ここが目的の国である以上は下手に動けない。暴れたり逃げたりしてしまえば二度とこの国に入るチャンスは無くなる。それは自ら手がかりを捨てる行為と同義なんだ。そしてエルフの兵士に脇腹を蹴られるのだ。
「どっむっ・・」
「正直に答えねばここで死ぬことになるぞ!」
「だからっ・・さっきも言ったじゃないですか」
「まだ言うか貴様!!」
「グフッ・・」
「それが嘘だと言っているだろう!!」
小さいおっさんに出会って、背中に張り付かれて、言われた通りに走ってたらあの部屋に居た。それが事実なのに信じて貰えない。何度言ってもその度に蹴られて、転がされて、最後は水を張った桶に顔面をどぼんなんだ。どう考えても拷問です。
「あばばっ!勘弁して下さい!本当なんですっ!」
「嘘を付け!!」
「おい、森で妖精達が覗きにあったらしいぞ!!」
「・・・・」
オワタ、人生オワタ。これはもう流石にどうしようもないだろう。俺の意思で見たけどアレははめられた訳でそんな言い訳しても無駄に終わるだろう。
絞首刑かな、それとも魔法の実験台にでもされるのかな、もはや俺に生きて帰る術な逃走以外に残されてないっぽい。ギリギリまで何とか無実を訴えるしか無い、それで駄目なら最後は抗ってでも生きてヴォルマに帰ろうと覚悟した。
「妖精達が今こっちに来てるそうだ」
「魔力浴をしている妖精達を覗き見るなんて最低だな!」
「・・・」
なんてタイミングなんだろう、俺はどうやら運に見放されているらしい。
妖精達がここに来れば終わりだ。
「おっ、来たようだ!」
「ありえない!普通覗きとかするかな!」
「でも本当なのか?覗きなんて・・・」
「ほんと!裸見られた!」
俺が感じていた違和感、ぐにぃに対しては圧倒的眼力を持っている俺が感じた違和。それは妖精と呼ばれた三人の彼女達のサイズ、普通なら掌にちょこんと佇んで可愛らしいと思えるであろう妖精達の大きさがおかしい。体長が三十センチぐらいある、それでも小さいけどデカイだろう。
そして目が合った・・・。
「あっ!コイツだ!そうだよね!」
「間違いないよ!覗き見してたのはコイツ!」
「殺せぇ!」
「お前達、間違いないんだな!」
「おわた・・・」
侵入するだけに飽き足らず覗きとは!なんて激昂されながら再び俺は桶に顔面ダイブをかまされた。この桶の水、実は既に三杯目なんだよ。一杯目は全部飲んでやった、二杯目は中でぶくぶくしたりして水嵩減らしてやった。その度に蹴ったり殴ったりを十数発貰ってぼこぼこにされる。
まじであの爺許さん。
「おい!妖精の裸見て何してたんだ!」
「話せよ!このっ!」
「痛い!耳引っ張らないで!!」
「ならこうだ!」
「痛い!痛い!」
俺の耳たぶはパンチングボールなんかじゃない、俺の唇はぶら下がるものじゃない、俺の目蓋は懸垂する為のもんでもない。三方向からの妖精達の執拗な攻撃は止むことがなくそのまま続けられるのだった。
「妖精の裸見てただで済むと思うなよクズが!」
「耳引き千切ってもいい?」
「眼球抉ってから殺してやる!」
「勘弁して下さい!あの爺に騙されたんです!!」
俺がずっと言い続けていた爺さんの情報を妖精達へ質問してくれる兵士に感謝したい!これで俺は無実だぜ!本当に辛かった、何発殴られたかなんてもう覚えてないけど一発ぐらい殴ったって怒られないよね!まったく!!ぷんよっ!
「こいつ一人だけだった!」
「爺さんなんていなかった!!」
「こいつ嘘付き!!」
「・・・・なんでやねん」
てめぇ!やっぱり嘘じゃねぇーか!このゴミ屑が!等と罵倒されまたも桶にダイブ、しかも今回は大分長いこと突っ込まれたまま。顔面を上げられたらそのまま正面から殴られ、罵られ、無理矢理立たされた挙句に二人の兵士のストレスを発散させる為の道具になりました。
おでこを切って血がダラダラ流れてもお構いなし、髪を掴まれ顔面に鋭い一撃。ぶーんが飛んでくる恐怖もあって俺は龍力を使っていなかった。
最後に留めとばかりにラリアットを食らい壁に頭部を打ち付け、意識はまた飛んで行く。次に目が覚めた時には壁に磔にされてました。水を何度も掛けられたらしくびしょ濡れになっていたんだ。
「いい加減に自分の罪を認めろ!」
「俺は爺さんを背負って気がついたらこぼっ・・」
「その妄想はもう良い!」
「何の目的で侵入した!言え!」
「元々は案内人と近くまで来てたんだ・・」
「なら何故一人なんだ!そのまま来れば問題なく入国出来ただろうが!」
磔にされていた壁が後ろに倒れて壁ごと移動を開始する。どこに連れて行かれるんだろう?もしかしてこのまま殺される?流石に逃げないと不味いかな・・・。そんなこんなを考えている内に広い空間に出て、数人に囲まれていましたとさ。
「こいつが昨日の侵入者ですっ!」
「そして妖精達の魔力浴を覗いていた犯人でもありますっ!」
「そんな事をしたのか!」
「既に妖精達からも確認が取れてますからっ!」
「なんて下劣で卑しい人間だ!気持ち悪い!アタイ自ら殺してやるよっ!」
そう言ったのは、B級のぐにぃを持ちし女で160あるかどうかかな?緑のドレスを着ているからもしかしたら女王なのかもしれないけど・・・。
見た目はまだ幼さが残っていてあどけない十八ぐらい?だろうか。
髪にはウェーブが掛かっていて肩で切り揃えられていて綺麗なエメラルドグリーンが映える。でも自分のことアタイなんて呼ぶヤツには初めてあった。
こういうのって性格粗暴な事が多いけどさてはて・・・。
「最後に何か言い残すことがあれば聞いてやる!望みはあるか?」
「膝枕してください」
「貴様!姫様に向かってなんと戯けたことを!」
「口だけはまともに動くんだな?誰がお前見たいな汚物に膝枕しないと駄目なんだよ馬鹿がっ!」
「ごふっ・・・」
「どうして殺されたい?聞いてやる!」
「なら抱きしめて!狂おしいほどに抱きしめてから殺して!!」
「なっ何を訳のわかんねぇ事いってやがるんだ!汚物がっ!」
「んだよ・・最期なんだからそれぐらいやれや」
「調子に乗るな!」
「がふっ・・・」
兵士に殴られるよりまだ良い、良いって言ってもそれは気持良いとかじゃないからな!威力的な意味だからなっ!諭すように言い聞かせて気持を落ち着かせるけど、さすがにこれ以上はほんとにまずいかな。
「何事ですか騒々しいですね」
「はっ母上様!」
「何を騒いでいるのです?」
「女王様!侵入者です!妖精達の魔力浴も覗き見していた犯人ですっ!」
「これからアタイが刑に処すところです!」
「あたい・・?」
「わっわたしがですっ!!」
まさかの女王とこんな出会い方をするとは思ってもみなかった。では、いきますね?身長180はあると思います。髪はあたいっ子と同じ色でポニーテールさんだ!地面に届きそうなほど長いのが特徴か?
ぐにぃ・・・Eか・・・いやFはあるだろうけどサイズの合うブラじゃあないのか?少し押さえつけてるようにも見えるが・・・。服装も綺麗な緑のドレスであたいっ子より豪奢。目はキリッとしてて眉も同じくキリッとしていて、頼りがいのある姉御肌系女子だな。間違いない!
「あなたお名前は?」
「ランザヴェール=シンです。このような体勢と状況では御座いますが、お初にお目にかかれて光栄です」
「あら、礼儀正しい子は好きですよ?」
「母上様!こいつは・・・・」
「あなたは少し黙ってなさい、今は私が話をしているのです」
「はいっ・・」
おっかねぇ・・今すげー魔力がぶわ~ってなってた!エルジュも大概凄いと思ってたけど、これは圧巻というか圧倒的というか名は伊達じゃないか。
「この国の女王、ルセルジーア=マグラディです」
「綺麗な名前ですねっ!とてもお綺麗ですね!」
「お上手ねっ、それであなたは一体どうしてこんな事になっているのかしら?」
「あの~誰も信じてくれないんで、言ってももうどうしようもなくてですね」
「あら?私は女王ですよ?それに嘘を見抜くことぐらい簡単ですからどうぞ話して御覧なさい?」
「俺はヴォルマから~~」
とまぁ全部を話した訳です。
「それで呻き声にする方角に行ったら爺さんが倒れてまして・・・あとは聞いての通りです」
「ふっふふ・・」
「母上様?」
「あなたは災難にあったようですね。彼を放してお挙げなさい!」
「ですが女王様!」
「私が判断したのです、いいから放しなさい!」
ようやく解放されたけどね、顔には血が固まった痕やらなんやらで大変だぜ。
「シンと言いましたね?」
「はい!」
「私の部屋で少しお話をしましょうか?」
「喜んで!」
「母上様!!」
「リノリスあなたも来なさい」
女王の後ろに付いて歩く城内から外が見えた時に俺は感動した。
「うぉおおおすげえええ!!!なんだこれぇえ!」
「ルセルは気に入って貰えましたか?」
「これって全部同じ樹なんですか?」
「えぇ、神樹でありこの国の全てです」
「そんなデカイ声で驚くことかよ汚物がっ」
「リノリス?誰がそんな言葉を教えましたか?」
「うっ・・」
「せっかくの美人が台無しですね!」
「そうでしょう?しゃべらなければ美人だなんて言われるのです」
「母上様!そんなことは今は関係無いでしょう!」
馬鹿でかい樹が一本あってそこに国があるだなんて、今見ている光景が信じられない。世界樹なんてゲームでいくらでも見てきたけど、これがそうだって言われたら誰もが納得することだろう。その後は女王に付いて歩いていたら神樹のかなり上の方まで来ていた。一体この樹はどれぐらいの高さがあるんだ?下手なビルなんかじゃ相手にならんぞ・・・。
「ここが私の部屋です」
「外から丸見えなんですね・・・」
「開放的で素敵でしょう?」
「お前!母上様に対して如何わしいことを考えただろう!!」
「如何わしいって具体的になんですか?教えて貰ってもいいですか?自分汚物なんで分からないんですよ」
「おまえっ・・・!!」
「ふふっ!シンはよく口が回りますね」
「鬱憤なら相当堪ってるもので・・・」
「ですが侵入した事実は変わりませんよ?」
「すいませんでした!!」
土下座。見事なまでの土下座に二人は引いてただろう。それでも女王は俺の頭を撫でた後に立たせてくれるのだ、足をな。
「衛兵、彼らをここに呼んで頂戴」
そう命令すれば衛兵が瞬時に動き消えた。
今のどうやったんだろう?瞬間移動?
「シンは森で爺さんに会ったといいましたね?」
「はい!」
「どのような見た目でしたか?」
あの爺のことを思い出すだけで腸が煮えくり返りそうだ。あの腹立つ感じがたまらなくムカついてイラつく。外を眺めながら落ち着いてクールダウンしてたら、あの爺が壁から顔を覗かせていた。
本話もお読み頂きまして有難う御座います。
ブックマークにも感謝を。
明けましておめでとうございます、2016年、初投稿になります。
日付が変わると同時に投稿してやろう!なんて画策してましたがTVを見ていたら新年になってました。眠さの余りそのまま寝ればこの有様・・・。
とは言っても元日なのであまり大差無いと言い訳してます。
本年度も「龍軌伝」を宜しくお願い致します。




