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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第九章 偽オトシゴ 編
81/217

行き着いた先で出会ったぐにぃは・・・・

ノヴィスを出発し山を越えた少し先、着いたのは港町。普通に山越えをしたらそれこそ半日以上はかかるであろう距離を、数時間で走破してしまうとは自分の事ながら恐ろしい。石造りの門からは船が何隻も見えていて心躍る、先にどの船に乗るか調べないとって思ったのが悪かったんだろうか。町の様子を眺めながら港へ足を向けて歩き出す。


なんか視線か感じるんだよ……それも一つや二つじゃなくて複数。明らかに見られてるって俺の元ヒキニートレーダーが言ってるから間違い無くて気味が悪い。もしかしたらモテ期だったりして! どうしーよ! ふひひひ!ぐにぃの楽園に誘われたい!でも辺りに見える人は、人間の男、エルフの男、シルキーだったりで女性がいない。年取った婆さんが店番してたりはするけど若い女性が居ない。通りを抜けた先に船乗りの格好をした男達が集まって話をしていて話しかけた。


「お尋ねしたいんですけどルセルジーア方面にはどの船に乗ればいいですか?」

「ん? あ~らあら可愛い坊やね!」

「坊やはお船を探してるのね!」

「ルセルジーア! 妖精の国よ!」

「なら、あそこに見える大きいお船よ?」

「一人で大丈夫? おねぇさんが連れて行ってあげるわね!」


この世界にもいるんだ、いや別に否定的な訳じゃないんだけどね? 居るんだなぁ~って思う訳ですよオネェが。全員身長180ぐらいで筋肉隆々で見た目も怖い、ウィッグとか存在しないからみんな地毛を伸ばしてるようで髪が長い。他人に迷惑掛けなければ自分が好きなものに没頭するっては悪い事じゃないと思う。それだけ好きだって思えることがある人と、無い人じゃあ魅力が違うからだ。


船は見えているけど、連れて行ってくれるって言うからその通りにして船を目指して歩く。四方を筋肉に囲まれて歩く様は、さながら護衛のように見えるのだろうか? 少しだけ気分が良い。周囲を見ながら気がついたこと、オネェが多い。凄く多い。でもそれと同じぐらい美女が多い。港方面には若い女性が多く、男性は少なく、漢娘が多い。一体全体この港町はどうなってるんだ。何がどしてこうなった。先頭のオネェが船から出てきた人物に声を掛けてくれて話初めている。目の前には筋肉の壁、前が見えず声だけが耳に入る。


「ルセルに着くのってどれぐらいだったかしら?」

「ん~海も静かだから三日あれば着くと思うぜ?」

「じゃあこの子も乗せてあげて~」


筋肉の壁が取り払われて、ザ・船長って見た目の船長と目が合う。彼は俺に手を差し伸べて必要な金額を提示してくるも、おねぇ達の援護射撃のお陰もあって安く済んだのだ。お礼はちゃんと言うべきだし、頭を下げて感謝すると。


「いやん! いいのよそんなこと!」

「あたし達に普通に声掛けてくれるんだもの! うれしいのよ!」

「そうよ~そ・れ・に・坊や可愛いんだもの~!」

「食べちゃいたいわ!」

「俺を食べるとかどんだけ~~!」


流れに乗ってみたら意外とウケてしまった、異世界でも関係無く共通項ってのあるもんだ。オネェさん達と別れを済ませ出航まで甲板で町を眺めて時間を過ごす。色んな荷が積み込まれて行くの眺めているうちに出航となった。三日と聞いていた船旅は途中の大時化で二日も遅れ、五日間の船旅になってゲロを数回吐く羽目になった。しかも、二日遅れたにも関わらず超過で金を払えときたもので気分は最悪。着港した町は出航した町と違って規模は小さくて小汚く、船から下りてくる人間を目踏みするかのような視線が気持ち悪い。


そんな町にでもギルドはあるようで、一応道ぐらいなら教えてくれえるだろうと期待し足を踏み入れる。感想、汚い。臭い。帰りたいと思わせる雰囲気の3k。中にいる人物らはそれぞれ安そうな酒を飲み、下世話な会話と汚い笑い声。唯一まともそうなのはギルドの関係者だけという肥溜めのようなギルド。


「ギルドに依頼ですか?」


そう言った男は俺を値踏みするように見て返答を待った。目的地へはどう行けば良いのか、そう聞いたら小馬鹿にしたように鼻で笑いあろうことか金をせびる始末。初対面でこうも明確に嫌いと思わせることが出来るのも一種の才能だろう。少しの苛立ちを覚えてワザとらしくギルドの証をチラつかせれば、ほら簡単。


「こちらに簡単な地図と経由出来る町を書いておきましたが……」

「肝心の町の場所が書いてないじゃん」

「正直、申しましてあの国に住んでいる者達と交流を持つ者と出会った事がありませんので」

「適当に書いたにしては出来すぎじゃねーか?」

「大体の当たりは付きますが、それ以上は申し訳ありません」

「なるほど、いや助かるよありがとう」


ちなみにこのブレスレットはエルジュの住みかで、これの近くに居ないとどうにもならないと聞いていたのにね。あいつ、ソルナとルビネラに特訓されてあっと言う間に「もうそれなくても困らないのですよ!」なんて言うんだ。一度しか入った事ないくせにさ……もう中古物件になっちまったよ。


流石にテュルがくれた地図と違って汚くて乱雑だったけど無いよりマシって程度。当たりが付いている場所は広大な森で、どうやらその森の中にあるらしいって事しか分からん。行けば分かるか? 山越えた時みたに調子に乗って走る事だけは避けようと心に誓った。いくらかの食材を買い足し町を出た。


天気は良くて気分は良いけど、明らかに後方から嫌な空気を感じる。振り返り確認こそしないけど三人ってとこか、荷物をあえて落として拾いながらチラッとっね。ギルドに居た汚い三人が一定の距離を保ったまま尾行してるけどバレバレなんだが。バレてないとでも思ってるんだろうか? そうだとしたら才能の欠片すら無い。このまま尾行され続けるのも気分が悪いし、いっそのこと話でもするか?それとも逃げるか?どう対処しようか思案して林へ入り込んだ。こちらの姿を確認出来ないことに焦りを見せた三人は、尾行も糞も無く同時に走り出し姿を探し始めるも俺は木の上。


「おい! どこ行ったか見てたか?」

「いや、林に入った途端に姿が消えたぞ!」

「あんな上物のガキなんだ高く売れるだろう!」


最後のヤツは馬鹿だろ……勝手にゲロったぞ。拉致して売り飛ばすらしい、俺には一体どれ程の値が付くのか興味が沸く。人の命に値段なんて付けられないって倫理的には言うけど、実際はこうやって値札が付けられて売られる者がいるんだ。善悪なら悪だ、圧倒的悪。それもギルドに出入りしている者が率先してこんな事してやがる。


ギルドが裏で色々している可能性は大きいか? そうでもなければこんなに大胆な行動に出るもんか、忌々しい。こんな風に捕まって売り飛ばされる者は一体どれぐらいいるんだろう、なんだか痛ましい。これも縁だろうし、見てしまった以上は見なかった事には出来ない。以前の俺なら知らない振りして見ない振りしてそれでお終いだった、けどもうそんな訳には行かないんだよなこれが。


体を小さくしてある事に気がついた。ドラシャール邪魔じゃね? ガキの姿でこんな鎌持ってたら流石に無理あるだろう……絶対無理だろ。大の大人が持ってたらまだ理解しようと努力するけどさ。子供でこんなの持ってたら完全に怪しまれてしまうし……うーん?


ドラシャールを取り出してなんとなく龍力を流し込んでみたら、やっぱり安心と信頼のソルナ謹製、期待は裏切りませんことよ。持ち手は下から上まで龍がとぐろを巻いているんだけど、それがシャキーンと伸びて刃が落ちる。ロープみたいになった持ち手を腰にグルグル巻いてベルトの出来上がり! 龍の口が尻尾を噛んでるからバックル入らずさ! 残るのは刃の部分だけど、大丈夫だよね? ソルナ製だからね! 同じ様に力を流したら小さい鱗になっちゃったとさ。バックル代わりの龍の口へと鱗を餌のようにちょんちょんしてたら口が開いて飲み込んでくれた。


この時に初めて気がついたけどね、普段からこうやって持ち運べば楽だったって。遣る瀬無さがふわりと浮き出てきたけど、吹いた風がそれをさらってくれて気合注入。やりますかね?


「うぇーん! 怖いよ!」迫真の演技、可愛いなー俺って子供は! それを見つけた男の声を俺は聞き逃したりなんかしない「おい、もうアレでいいだろ?」って妥協すんなやって思うけど有り難い。三人が同時に首を縦に振り、一人の男が木をよじ登って助けてくれるのだった。馬鹿め。


「坊主、さっき男が一人ここを通らなかったか?」

「凄い速さで走っていったよ?」

「くそっ! 撒かれたか!」


「このガキ、さっきの野朗に似てないか?」

「ん?」

「なに?」

「どうしたのおじさん達?」


「見ろって! 服もなんか似てるし……それに眼帯なんてつけてやがる」

「昔、ツノツノの子供に……うぇっ~うえっ」

「泣くな面倒くさい! それに似てても大きさが違うだろうが! お前は馬鹿か!」

「似てるけど子供だぞ?」

「似てるって言っただけだろ! そもそももっと早く仕掛けてれば!」

「おい!」

「すっすまねぇ」


馬鹿で良かった~にしてもツノツノなんて生き物が本当にいて良かった。

一瞬、ペッパーティパルドの名前出そうとしたけど……ねぇ?

あの顔面にされたなんて嘘でも言いたく無い! なんか全面的に負けた気分になるからね! でもこちらの予想通りなら。


「おいガキ! お前の両親はどこだ!」

「いない」

「あの施設のガキか」

「なら丁度いいな」


想像力が豊かで助かるよ、馬鹿過ぎて涙出るわ。その後もテンプレの連続で、連れて行ってあげるだの何だのでそのまま拉致されたんだけど。麻の袋に入れられることも無く、馬車に乗せられ山奥へと進んでいるようだ。山奥であんなことやこんな事されるんだわ! エロ漫画みたいに! とはならなくて、ただただケツが痛いのだ。


ジョコラに初めて行った時の事を思い出す訳で、あの時は追う側だったけど今回は捕まる側。一応、泣き叫ぶ真似事はしたら目隠しと猿轡付けられてどの道を進んでるか分からなくなっちまった。叫ばなければこんな風になることはなかったんだと、後で気が付いた訳で。どれくらいそうしていたのか、馬車から下ろされて体に衝撃を受けた。運が悪かったなって一言だけ投げかけられた後に、扉が閉まる音が聞こえて静寂だけが残る。


今回は四歳児です。三歳だと体が辛い、五歳児だと余裕はあるけど愛らしさが若干消える。つまり間をとったら丁度良いんじゃないかと、安易な発想で四歳時を選んだのだ他意しかない。寝転んだまま伸びをしていたら不意に体を起こされる感覚を得た。


「坊や大丈夫?」

「痛くない?」

「痛そう」


目隠しと猿轡を外されて振り返れば天使が降臨なされていた。

薄暗いけど良く見える! ふひっ! んひひひっ! あへへへ!

でも回りにはちびっ子達が沢山いるんだけど。木で作られてた牢のようだ、見る限り俺を含めて十人がそれほど広くない牢に押し込められているらしい。横にも同じ様な牢が幾つか並んでいて、子供がいるのはこの牢だけで後は女性ばかりのようだ。俺が居る牢には天使以外は皆が幼女、変態でも投げ込めば狂喜乱舞すること間違い無い。


「坊や? 痛くない?」

「えっと、うん」

「良かった、可哀想に」

「!?」


初対面における人との接し方ってのは大切だと俺は思う。当然、これは誰もが思う事だし大事なのは中身って言うけれど、初対面は見た目で決まるのも事実。初対面で相手に嫌われたいって思いながら接するような人間は恐らくいないだろう。出来れば誰しも誰かに嫌われたくないのだ。さて、ではここで俺が求められている事は一体なんだろうか? 子供とは言え初対面の相手に対してこのような状態になった時に取る行動の答えは何か?


「こわかったよぉお~!」

「もう大丈夫だからね、頑張ったね」

「大丈夫だよ泣いちゃだめだよ?」


嗚呼やはり、女性とは神秘的だ。どうして此れほどまでに安らぎを与えてくれるのでしょうか? 不思議で堪らないのです。やはりこの包容力なのでしょうか? 暖かくて柔らかくて何ともいえないのです。心に染み渡るこの癒しは男には生み出すことなんて出来やしません。きっと神様が女性だけに与えた特権なんだと思うんです。さぁ心行くまで癒されましょう……ぐにぃいだぁああああ!!


これは、D級か? いや違う! 昇格を果たしたE級だ! 程よい弾力があるけどそれだけじゃない! こっこのぐにぃには圧倒的な張りがあるんだ! ぐにぃってしてみた時に生まれる反発力が半端ないじゃないか! 今まで出会ったぐにぃ達の中でも張り部門なら上位入賞を果たすことが可能だぞ。


「怖かったんだねぇー」「大丈夫だよー」「大丈夫!」

えぇい! 邪魔をするなちびっ子ギャング共! 俺は癒されてんだ! ペタペタ頭やら背中やら撫でまわすんじゃない! まったくもう! 俺の癒しの時間を邪魔する者には龍之介の爺さんから天罰が下るぞ! まったく! このままずっとこうしたい、そう思わせる程のぐにぃなだけに離れる時は辛かった。


「坊やお名前は?」

「しっ・・シンラですっ」

「私はルーシャ、龍導院で働いてるの」


龍導院、単語自体はフェルから聞いた事があるしヴォルマにもそれは在る。

俺も流れ落ちた当時に何度か連れて行かれたことがあるけど、あの雰囲気は怖い。

龍殿で働く者達なら俺がどういった人間かある程度理解してくれているが龍導院ではそうはいかない。全員が崇め奉るが如くなのだ、基本は龍導院から選出された者だけが龍殿で働けるし巫女にもなれる。大きな龍殿を持つ国にならどこでも存在していて、龍殿の下部組織のような構図となる。下部組織とは言ってもその任の最たるは医療行為にあって、魔法に才を見込まれた者はそちらを主軸に鍛錬するのだそうだ。


「おねぇちゃんはね! ヴォルマって国ではたらいてるんだって!」

「そうなの?」

「私はヴォルマ龍導院で働いてるの、ただ今は訳あってここへ来ているんだけど」


こんな天使がヴォルマに居ただとっ! 何で気がつかなかった! 俺の馬鹿野朗!

ちくしょうめ! ルナか? いや龍殿ならニーナだ! あいつめっ! こんな天使がいるなら龍殿で働いてもらえよ! くそっ! ええい! とっととここ出るか!

いやダメだ! 一端落ち着け! 大丈夫ぐにぃは逃げない逃げないクール!


「どうしたのシンラ君?」

「なっなんでもにゃいよ?」

「シンラ君、今どういう事になってるか分かるかな?」

「変な人に捕まった!」

「ちゃんと分かってるのね」


売られるな、この天使ことルーシャも……それはダメだ! 彼女はヴォルマには少ない人間だぞ! しかも天使、灰色の綺麗なショートだぞ! ぐにぃも最高級! そんな彼女を売るだなんてありえない! 何とかせねばならん。彼女は訳あってと言ったからそれを聞けばあるいは。

本話もお読み頂き有難う御座います。ブックマークにも感謝です。


偽オトシゴ編は後五話で終わりますので、次話以降も宜しくお願い致します。


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