俺は変態なんかじゃない!
ヴォルマに戻り三ヶ月の時間が流れた。
ノヴィスでは竜殿が再建され、学校の方も順調にスタートしている。
ヴォルマとジョコラ間の無人島群の開発に関しても着工が始まりこれから忙しくなるらしい。ルナもリエラも後は時間の問題だけで、諸所問題が出た時に対応するだけで気にしなくてもいいと言ってくれた。俺もそろそろ動き出そうと、朝のボコられ時間が終わるとソルナに訊ねた。
「この前、妖精の国のことを聞いたんだけどさ?行くならレミナもエルジュも連れていくなって言われたんだけどさ」
「まぁー連れて行くなと言うのは人間やらの問題なのじゃ」
「国のせいか・・・」
「でもなんで急に妖精の国の話なんじゃ?」
「リュウに関して何か分かるかもしれないって聞いたからだけど・・・」
「ふむ、確かにフェアリー達ならば何か分かるかもしれんのじゃな~」
「ソルナ様、あしょこって遠くにゃいでつか?」
「コレには些細な問題じゃろうし、行くなら行くで良いと思うのじゃ」
「行くにしても妖精らは面倒くさいから気をちゅけるにこしちゃことない」
「後はあの二人か・・・絶対行くっていうだろうし」
「あの二人は何かと面倒に巻き込まれそうじゃからな・・・ここ最近は強くなってきてるのじゃけどな」
「しょれはしょうですね、素質もあったしっ後はにょばしてやるだけでじたし」
「何にしても妾に任せておくのじゃ、後は契約を少し強めてやるのじゃよ」
ソルナは立ち上がり俺の眼帯をペロッと捲り上げてちゅーをした。
力が流れてくるのが分かる、じわっと目の奥から流れてくる力が眼球を覆って行く感覚。その感覚が次第に収まると俺の目を見て満足気で笑う。
「完璧なのじゃ!」
「そんなに変わったような感覚は無いけど・・」
「その目に力を込めて妾を見てみるのじゃ」
「あ?ソルナの色が・・・」
「見えるじゃろ?同じ色は基本的にないのじゃ」
「あるとしたら同じ魂ってことか!」
「そういうことじゃ!」
「みしぇてみろ!」
ルビネラに顔面を掴まれ目を凝視されて動けないまま数秒、何かに満足したようで顔面は解放された。二人を呼んで来いってソルナが顎で命令するからその通りにして二人を呼んだ。二人はソルナの前に座って何があるのかとウキウキしていて申し訳無い気分。
「今日から二人とも妾達とより一層の鍛錬をするのじゃ!」
「おー!!」
「頑張るのですよ!」
「と言ってもレミナはこれまでの総括から、エルジュも同様だゃ」
「そして俺は羽ばたく!」
荒ぶる鷹のポーズで止まった俺を全員が凝視し冷たい目で見てくる。
レミナなら乗っかってくれると信じていたのに裏切られた気分だ・・。
「そやつはこれから少し旅に出るんじゃ」
「レミナも行く!」
「私めも行くのですよ!!」
「鍛錬はどうしゅるんだよ」
「やめる」のですよ」
「それは許さんのじゃ!中途半端は許さんのじゃ!!」
「主様!どこいく!!レミナも連れて行け!!!」
「そうなのですよ!!!ずるっ子なのですよ!!」
「今回行く場所は女だとややこしい事に巻き込まれる可能性が高いんだよ」
「知らん!!」
「そうなのですよ!!!」
やっぱりこうなるよな・・どうしたもんか?黙って行くと後から怖いし、かと言って連れて行く訳にも行かんし。俺が頭を悩ませて物思いに耽る様子を見ていたルビネラが言葉を放った。
「お前らのせいでゲロが巻き込まれても良いっていうんだにゃ」
「う~~!!」
「飼い主様はどこに行くのですよ!!!?」
「え?妖精がいる国だけど・・・」
一瞬エルジュの動きが止まったように見えたのは俺の勘違いだろうか?
彼女を見ると何かを思い出すような表情の後、凄くダルそうな顔したのを俺は見逃さない。
「なんかしってるのか?」
「あいつら面倒くさいのですよ!!私めはその・・・今回は・・・」
露骨どころか全面的にパスの意思表示を示したエルジュはヴォルマに残ると言ってくれた。残るはレミナだが・・・。
「なんでエルジュは行かない!」
「私めは一部の妖精が余り好きじゃないのですよ・・・」
「ふむ、ニンフじゃから分かっておるのじゃ」
結局、レミナもエルジュに説得されてぶーたれながら三侍女達の所で食べ物を貰うらしく消えていった。俺より彼女達から分け与えられる食べ物の方が上らしくなんだか悲しい。
「あの二人は妾達がまともにしてやるのじゃ」
「とっとと行けばいいんだゃ」
「あぁ・・ありがとう」
去り際にワザと転んで地面に張り付いてから見上げる。
「ソルナは今日も白でルビネラは青パンか・・・」
「妾はいつも白なのじゃ!」
「にょぞくな!!!」
城から厩舎へ向かいドリドゲスにも今回は置いて行く旨を伝えた所、まったく興味を示してはくれずヴィネジュとイチャ付いてた。「なんか腹立つから連れて行こうかな」が聞こえたらしく、俺へゴマをすりだしヴィネジュに蹴られてた。
「ヴィネジュ~ドリドゲスのこと頼むな~」
「ひん!」
去り際、ちらりと見たら速攻でイチャついてた、少しぐらい俺も行く!見たいな感じ出してくれてもいいのに!なんだよ・・・ドリドゲスめっ・・・ちくせう!
ルナにも説明したら「二人は任せておいていいから、気にせずいってらっしゃいな」なんて優しく言ってくれる。
嬉しかったから小さくなってぐにぃを堪能しておいた、調子に乗りすぎたかと顔を見たら満更では無いような表情だったけど・・・多分勘違いだろ。
三侍女達も同様にしてやったけど、こちらはいつも通りで何よりです。
そして最後はフェル、お楽しみのフェルです。チビのまま竜殿内を走り回り見つけ出したフェルの後ろから飛びついた。
「竜殿内を走り回ってはいけませんよシン?」
なぜ俺だと分かったし・・・あえて無言のまま張り付いてたら、引き剥がされた挙句に軽く説教を喰らい凹む。しばらくヴォルマを離れるからあの二人宜しくとだけ伝えると何故か抱っこされた。黙ったまま珍しくぎゅーしてくるフェルに違和感を覚えたけど、「ちゃんと帰って来るのですよ」って頭を撫でられ俺も抱きついた。フェネルギーは充電完了で意気揚々、城へ戻り翌朝に備えて必要な物を用意して安眠する。
翌朝は天気が良くて、いつも通りにソルナ達を訊ねた。
「行くのじゃな?」
「おう、行って来るからあいつら頼む」
「任せておくのじゃ」
「げろまる・・これやる・・」
「何これ?履くのか?」
「ちぎゃう!その手にちゅけりょ」
ルビネラから渡されたモノは手袋だけど、手袋の穴から包帯のように布が垂れていた。なんだかよく分からない。おしゃれ?って聞いたら黙ってそれを龍の手へはめた。
「お前の手はめだちゅからな、これをしてからはみ出てる部分はこうしてきゃくしぇばいい」
「おっお~!カッコいい!」
「龍製じゃからそのままでも大丈夫なのじゃ!」
「ありがとうルビネラ!!」
「べちゅに・・この前のしぇいじゃないから」
「今日も青なんだな!!そうなんだな!!」
「うるづぇえ!」
「そろそろその噛むどころか意味の分からん言葉使いやめてもいいよ?」
「最近特にひどいのじゃ・・・」
「じゃあ戻します」
「なんの信念も無いんだな」
「お前の為にわざわざしてやったんだから感謝ぐらしていもいいんじゃない?」
「そうですねパンツ見せてくれてありがとう」
「きゃってに覗きこむな!」
「半分戻っとるのじゃ・・・」
「しゃしゃっと行けよ!」
ルビネラに惜しまれながら裏ルートでノヴィスまで速攻で到着。
本来なら他国の中に急に現れたりしたら一瞬で捕まってしまうだろうが、俺に関してはその辺り融通が効く。レミナもエルジュもソルナに頼んで勝手に行ったり来たりしているから今更なんだけどな。小さめのリュックを肩に下げ、ドラシャールを背負っているが一応布で巻いてある。こんな鎌を背負って歩いていたら怖がられるかもしてないからな・・・。
「お兄ちゃん!!」
「おうノシュネ元気か~フォスキアはどうしたんだ?」
「お姉ちゃんは上で服着せられてるよ」
「ノシュネも今日はおしゃれさんさんだな」
「んひひ~今度の儀式?に着る服着てるんだよ」
「あ~あの儀式か・・・焼かれて食べられるんだよな・・・」
「えっ・・・」
「頭からがぶぅ~されるんだぞ?」
「怖い・・やだ・・・」
「嘘だから・・・」
「ぶー!!」
ノシュネにぷんすか怒られながら竜殿の一階へ。
随分と様変わりした内装を見ながら綺麗だのなんだの話をしながら階段を上がって行く。先にペタペタ階段を上がるノシュネのスカートがひらりしてぱんつが見えた、見ようとした訳じゃない。事実だ、これは事故で俺は見たくて見たんじゃない。そう自分に言い聞かせたけど声って勝手に出る時あるよね・・。
ソルナやルビネラに対して行ってきた素行の悪さが出たのかもしれない。
「ノシュネは水色か・・・」
「ふぇっ!?」
「ん?どうかしたか?」
「今なんて・・・」
「水って美味しいなって言った」
「嘘だもん・・・う~お兄ちゃんわたしのぱんつ見たでしょ!」
「違う!見えただけだ!見ようとして見た訳じゃない!」
「うっ・・うっええぇえええ」
泣きながら走り去ってしまわれた・・・でも俺もある意味被害者じゃね?
悪く無いでしょ・・。恐る恐る階段を上がった先で行き成り兵士に囲まれて剣を向けられ正面のラガノと目が合う。
「シン殿!来ていたのか、何かあったのか!!」
「え?いや何も・・べちゅに」
「どうした何故そんなに同様している?ノシュネ様が泣きながら上がられて来たんだが?!」
「いや・・本当に何も・・ふぇ」
もうどうしていいか分からない勘弁して下さい。しどろもどろしている内にレアレがテクテク歩いてきて難を逃れることが出来そうだぜ!
「オトシゴで英雄と呼ばれようがノシュネ様の下着を見るのは頂けんぞ?」
「シン殿・・・」
俺を囲む兵士達も自分達の奉る竜、もといアイドルノシュネちゃんが泣いている理由を聞いて目が据わっている。いい訳してもどうにもならないんだ。
これが冤罪と言うやつなんだね、クレフィアが俺を見つけて駆け寄る頃には心が折れた。
「シン様?如何なされましたの?」
「もう二度と来ないから勘弁して下さい!!」
「えっ、行き成りどうされたのですか?」
「勘弁して下さい!!」
「いくらなんでも小さきノシュネ様の下着を見て欲情するとはの・・・」
「ちがう!俺はロリコンなんかじゃない・・」
「ろりこんとはなんですの?」
「何でもない、もういい。俺は旅に出るんだ、さよなら・・」
目の前のラガノを押しのけてトボトボ歩く俺の背中には哀愁なんて無かったんだろうな。ヒソヒソ聞こえたもん、回りばっかり気にして生きていた俺の聴力舐めんなよ。
「オトシゴ様でも流石にな」
「まぁ~英雄って言っても男だしな」
「男でも越えて良い線越えすぎだろ」
全部聞こえてるからな!!俺は結構~~~根に持つタイプだからなっ!ぷんよ!
クレフィアが駆け寄るも俺の脚はもう止まらないんだ。
「シン様・・あっアタクシに一言そのっ・・」
この縦髪ドリルは何を口走ろうとしてんだよ、良いんだよ!哀れみなんて受けたくなんかねぇんだよ!くそが。
「お兄ちゃん!!」
トテトテ走ってきて抱きついてきたのはフォスキアだった。
「これはフォスキア様、お元気そうで何よりです。とても可愛らしい御召し物ですね。これからも頑張って下さいね」
「お兄ちゃんがおかしくなってる!!」
「フォスキア様、危険ですから・・」
聞こえてるからな!!!なんだよ、へっぽこ兵士め!!下痢になればいいんだ。
「ノシュネのパンツ見たってホント?」
この子はこのタイミングでストレートに聞いて来るんだよ、意味わかんないよ。
「違う!事故だぁあああ!階段を走って上がるからたまたま見えたんだもん!」
「この前に言ったんだよ?スカートの時は走って上がったら見えるって!」
「でも皆は俺を疑ったんだ・・・変態の烙印を押してきたんだよ・・うぇ」
「むー!!お兄ちゃんは変態なんかじゃないもん!」
皆を睨んで怒るフォスキアが神に見えた。
なんて愛らしいんだろうか、なんて優しいんだろうか?この子はなんて良い子なんだろうか。膝から崩れた俺の頭をぎゅっと引き寄せてから続け様に叫んだ。
「お兄ちゃんはぐにぐにするのが好きなだけだもん!!!」
やだ~何この子、何叫んでるの?この状況でこの体勢でそんな事を叫んだらアウトじゃん。言い訳も糞もねぇじゃん?もうダメですよこれ、僕助かりませんよ。
ある母親が子にこう言って聞かせる。
「いい?そんな事ばかりしてたら、ぐにぐにお化けが出て来て連れて行かれるわよ!!」
「やぁーだーーぐにぐにお化けやだ!!おがああざんごめんなだいいいぃい!」
「ちゃんと今度からは言いつけを守れるね?」
「うぇ~~~~ん」
子供を怖がらせて、昔話のように語り継がれていくんだ・・・やだなぁ。
「あーもういいですから、俺って変態なんすよ?まじで?あはははは!皆ばいばーいさよならー」
「おんし・・・」
「シン殿・・」
「シン様・・」
「お兄ちゃん!」
もう何でもいいや、気になんてしなければ大抵の事は忘れる事が出来るんだ。
いいんだよ・・双子も助かったし、国との繋がりはルナがしてくれるだろうし、俺なんてどうせ変態さ。
「お兄ちゃん待って!!」
背中に衝撃を受けて振り返るとノシュネがぶら下っていた。
「あ~姉妹仲良く元気でやるんだぞ?じゃあな・・・」
「さっきはごめんなさい!ちょっとビックリしたから」
「別に気にしてないから!全然気にしてないから!」
「おんし気にし過ぎだの」
ノシュネが皆に話をしてくれるも、先ほどフォスキアが放った言葉のせいで何ともならないのは確実。クレフィアが怒りながら「そんな方では無い失礼だ」なんて怒ってくれてなんとか諌めてくれたけどもうどうでもいい。
「シン殿、今日は何か用なのか?見たところ旅のようだが・・・」
「そーだよー」
「レミナさんとエルジュさんはご一緒ではないんですのね」
「そうだねー」
「おんし聞いておるのかの」
「ちんぷんかんぷんぷーん」
「お兄ちゃん・・・ノシュネ?ちゃんと謝らないとね?」
「でもぱんつ見られたのはほんとだからね?」
「じゃあ俺行くからさ・・」
「まぁ一度座らんか!」
「俺は変態じゃねぇ!!!!」
何かが爆発した。
「大体なんだよパンツ見えたけど、俺が悪いんじゃないじゃん!そりゃノシュネだって見せる気なんて無いのは知ってるよ?でもさ?なんでさ?なんで俺が全部悪いみたいな空気な訳?全員俺の事を疑ってんじゃんか!!何?俺のパンツ見せたら満足なの?そもそも何でボロカス言われないといけないの?意味わかんないんだけど?もうお前らぱんつで過ごしたらいいじゃん!ぷんだよ!」
「しっシン殿、兵があれこれ言ったのは自分の教育が行き届いていないせいだ!だからどうか怒らないでくれ」
「お兄ちゃん!戻ってきて!!言ってることめちゃくちゃだよ!」
「ごめんねお兄ちゃん!わたしのせいでごめんね!!」
「シン様のぱんつ///」
「クレフィアはおんしは何を想像しているおる」
一頻り文句を垂れ流した俺は程よい疲労感で全てを吐き出した。
「ぶーぶー!!」
「それでおんしはどうしようとしておった?」
「これから一人旅だよ!」
「シン様はどこまで行かれるんですの?」
「妖精の国だよ!」
「お兄ちゃん妖精の国ってどこ?」
「あっちだよ!」
「お兄ちゃん、またわたしが乗せてあげようか?」
「歩くよ!ありがとう!」
「クレフィア様、どうか自分に途中まで送らせてもらえませんでしょうか?」
「それなら安心ですわね!シン様?どうかお願いしますわ」
「もう何でもいいよ!」
新たな旅のスタートは最悪を通り越して言葉では形容しがたいものになったけどもういい。破れか被れだよ・・・・ラガノが途中まで送ってくれるのは有り難いけど既に凄い疲れた。
本話もお読みいただきまして有難う御座います。
ブックマークにも感謝致します。
本話から新章『偽オトシゴ編』に入ります。
前八話構成、旅の道中を書いた話になります。
次話以降も宜しくお願い致します。




