sideレミナとエルジュ
ノヴィスでの戦いが終わりヴォルマへ帰還、次週で三ヶ月になろうとしていた。
毎朝のボコボコにも馴れてしまい、もしかして俺は真性のマゾなんじゃないかと自分自身を疑い始めていた。いや、決してマゾでは無い!と何度も自分に言い聞かせていた。この期間、レミナとエルジュと食事等は共にする事はあったが彼女らは基本的にノヴィスで双子達と時間を共にしていたらしい。
エルジュはヴォルマとノヴィスを行き来して、マーレ達といることの方が多かったようだ。
「今日は何する?」
「レミナちゃんは何したい?」
「鍛錬ごっこ!」
「お姉ちゃんもレミナちゃんも強いから、わたしすぐ負けちゃう・・・」
「ノシュネも頑張ればいい!でもレミナはリュウになれないから竜は禁止だ!」
三人で鍛錬を始めてみるも何をしたらいいのか分からないらしく、十分もしない内におしゃべりの時間へと変化する。三人とも背丈も殆ど同じで何か妙な連帯感を感じているのかもしれない。城へ繰り出しいつも話す場所、城の一番高い所で見張りの兵がいる場所を陣取る。奉られている竜の二人にタツノコという組み合わせのせいか、彼女らに話掛ける人物はおらず我が物顔で廊下ペタペタ歩く。
本来なら竜である双子に一生で一度でも御目にかかれるかどうか、それほどの事なのに本人達にその自覚は一切無い。さらに三人の姿を見て誰も彼もが可愛らしいと感想をもらす始末。
いつもの見張り台に上がり女性の兵士に手を上げて挨拶。
この場所は竜殿側と言う事もあり見張りには竜殿の者が上がる取り決めになっている。勿論、現在の見張りの女性も竜殿の魔術師で既に顔見知り。
三人仲良く並んで座り、完成間近の竜殿を見下ろしてはまたペラペラおしゃべりタイム。
「もう直ぐ完成!」
「「やっと一緒!」」
「良かったな!」
「レミナちゃん達のお陰だよ!」
「お兄ちゃんに山で会ってなかったらお姉ちゃんとも会えなかったもんね」
「主様はレミナもエルジュも助けてくれたからな」
「「お兄ちゃん凄いね!」」
「手も綺麗だし眼も綺麗だ」
「「うん!」」
毎日の女子会を聞かされながら見張り台に立つ者の気持ちなんてお構いなし、ただ裏では・・・。
「ちょっと!あなたは一昨日に見張り台行ってたんだから今日は私よ!!」
「そうよ!私はまだ一回しか行って無いんだから今日は私の番よ!」
「ふざけないで!そっちは一回でも上がってるんでしょ?こっちはまだ一回も行って無いんだから!」
『三人を優しく見守る会』が竜殿で秘密裏に発足していたと知らぬまま、いつも通り会話は続けられる。見張り台の取り合いは竜殿が完成するまでの期間、連日のように行われた。
翌日、ソルナに会いに来たレミナは彼女に提案をした。
「ふーむなるどほなのじゃ」
「べちゅにいいんじゃないでちょうきゃ?」
「ホントか!」
「レミナの根源を探すためにアレは動いておるのじゃしなぁ~」
「でもにゃんでそんなきょと急に思ったんぢゃ?」
「ルビネラの話方聞き取り難い・・・」
「うっ~」
「妾も口が悪くなければ普通でもいいと思うのじゃけど、アレのせいで余計におかしくなっとるのじゃ」
「ショルニャさみゃまで・・・」
「レミナもリュウだから・・・戦える!!」
「アレはレミナにそんなことして欲しく無いと思っとるんじゃろう?」
「まぁ、ここ最近は毎日ボコボコにしてますけど確実に強くなってますからね」
「戻せるのになんでそんな話方する?」
「なんでじゃろうの~」
「きゅうう~~」
ルビネラが一人悶々とし始めた所でソルナはレミナと向かい合い、その気持ちを聞き出そうとする。長い髪を翻してレミナに近づくと目の前にドカッと座り、一杯始め出しそうな空気にレミナも同じように座る。
「じゃがレミナは鍛錬なぞせんでも十分強いじゃろ」
「力の使い方がイマイチ分からんのじゃ!」
「このタイミングで真似るでないややこしくなるのじゃ!!」
「レミナにはダークエネルギーフラッシュハリケーンしか無いからな・・」
「暗いのか輝いておるのか分からんのじゃ、だっさいのじゃ」
「ださくない!DEFHは格好良い!!」
「なら見せてみるのじゃ」
シュッと立ち上がり構えるレミナを見守る二人。
「主様にはこれは使うなって言われてる!」
「それほどに凄い技なんじゃな」
「ゲロが禁止する技・・・」
「おぉおおおおおお!!ダークエネルギーフラッシュウウウウウウウハリケエェエエエエエエン!!」
レミナが放ったDEFHを間近で見た二人の反応、それは・・・・。
「なんじゃ・・・掛け声だけでしょぼいのじゃ」
「名前がアレだからゲロは禁止したと・・・」
「なんで?格好良いのに」
「まぁよいのじゃ、じゃがアレとて教えようとすれば教えれて訳じゃろ?」
「主様に言っても断れて終わる!」
「レミナの事を思って言ったわけでちゅ」
「ルビネラ戻ってる!」
「・・・・」
「力の使い方ぐらいは教えてやるのじゃ!じゃがレミナに教えるのは守りの方だけなのじゃ!」
「DEFHのもっと強いの使いたいのじゃ!!」
「はぁ~アレより大変そうじゃな・・・」
「ゲロと時間被らないようにしておどろきゃせましゅか!」
こうしてレミナにもある程度の力の扱い方を教え込むことになった。
二週間後、根性論とか気合とか適当な感じで教える方が良いと気がついたソルナはルビネラに全部投げた。その代わりたまに現れるエルジュには興味があるようで、彼女に対して接近戦の何たるかを教えることになる。
レミナが頑張りだした翌日の朝。
エルジュはマーレ達の手伝いを率先してやっている。
「マーレさん!マーレさん!私めにお料理を教えて欲しいのですよ!!」
「エルジュさんはお料理が好きなのですか?」
「飼い主様がいつも作ってくれて美味しいのですよ~」
「シン様は何でも器用にこなされますからね」
「でもいつも作って貰ってばかりなのですよ・・・」
「シン様のお役に立ちたいと?」
「そうなのですよ!!」
「そういうことでしたら分かりました」
「やったのですよ!!」
「ですが先に昼食に致しましょうか」
そしてこれが最後、三侍女達から食べ方が汚いと怒られ食事のルールから叩き込まれることに。
「でも、どうやって食べても味は変わらないのですよ?」
「いいですか?シン様と旅を共にしてる訳ですよね?」
「でも、こんだけ喰い散らかしてたらシンちゃんは他の人から色んな目で見られるんだよ」
「そうなの!どう食べても同じでも綺麗に食べてる方がいいの!」
「いつもお姉様とバクバク食べるのは汚いって言われるのですよ」
「では綺麗に食べれるようになりましょうか?そうしたらシン様は驚かすことが出来ますよ?」
「本当なのですか!」
「シンちゃん喜んでくれるかもしれないねぇ~」
「私め!頑張るのですよ!」
「料理作るのはまだ先になりそうなの・・・」
が、ここでエルジュの以外な才能が開花することになる。
常識に欠如していたらこそ色々と凄い事になっていたエルジュは、三侍女達から教わる先から全て吸収した。これには三侍女達も相当驚いて、炊事に始まり掃除の家事全般をあっという間にこなしてしまう。ただ・・・。
「エルジュさん?飼い主様では無く、シン様と呼ばないとダメですよ?」
「んだよねー飼い主様だと・・なんかシンちゃんが如何わしく見えるもんね」
「一応あれでもオトシゴ様なの!他は全部出来るんだから呼び方も出来るの!」
「飼い主様には呼び捨てにして良いって言われたことがあるのですよ・・・」
「知らぬ人の前でそうのような呼び方はよろしくありませんよ?」
「うぅ~でも飼い主様は飼い主様なのですよ・・」
「そもそもなんで飼い主なのかな?」
「気になるの!!」
エルジュは自分がどんな状況で今に至っているかを話す。
元々は樹に憑いていたこと、その後のこと、今のことを包み隠さず全部話した。
話をしている間も飼い主様の呼び方を突き通しているが、話の中身が中身だけに一々訂正なんて野暮せず聞き続けた。
「だから飼い主様なのですよ!」
「だから、飼い主ですか・・・」
「なるほどねぇ~」
「意味は分かったの」
「でも、シン様はお名前で呼ばれた方が喜ばれると思いますよ?」
「お姉様は主様って呼ぶのですよ?」
「確かに・・・」
「そうなの・・」
呼び方が名前になる日は来るのかどうか、三侍女達は納得してしまったようでこれ以上は何も言えない。エルジュはエルジュで既に「お料理覚えて飼い主様を驚かすのですよ!」やる気だけは誰にも負けていなかった。
一端名前のことはおいておきましょうとマーレは二人を促がし、料理教室の続きを始めるのだった。
本話もお読みいただきまして有難う御座います。
ブックマークにも感謝です。
明日も投稿します。sideシン、ソルナとルビネラの話になります。
次話で八章は終わって新章に入りますので次話以降も宜しくお願いします。




