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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第八章 小休止 編
71/217

sideレスタ

ヴォルマに戻って二週間、あれやこれやと生活しているとあっと言う間に時間は流れる。ソルナ達が普段引きこもっている空間で鍛錬をしていると時間の感覚が曖昧になることが多い。朝から二時間位は二人に付き合って貰っている訳なんだが、一ヶ月を三年ぐらいまで引き伸ばせる上に昼も夜も無いのだ。


ノシュネの力とフォスキアの力を試してソルナとルビネラに文句を言われたり、アドバイスを貰ったりで得ることが圧倒的に多い。あの空間で三年過ごして鍛錬したと言っても基礎中の基礎程度だと自分に言い聞かせて教えを請うたのだ。


昼以降は基本的にルナ達の仕事を手伝う。手伝いの多くはノヴィスに関連したものばかりで俺一人サボってのほほんとする訳にも行かない。ノヴィスにもジョコラにも裏ルートを使い数回、顔を出してはあれやこれやと動き回っていたからあっという間。本日は昼以降特にする事も無いからゆっくりして頂戴の言葉を頂いたので休みな訳。いつも通り庭のベンチでゴロゴロして時間を潰す。レミナとエルジュはノヴィスへ行ってあの二人と遊ぶらしく久しぶりにぼっち。


背中をベンチに預けて体を伸ばして空を見上げてぽかぽか天気で日光浴。

目蓋を閉じていても感じる光を感じてのんびりモードを楽しんでいたら急に光りを失う。雲一つ無い晴天だったのに何でだ通り雨か?


「うばっ! あがっ! うぅあえあああぼぶっ……あぼぼぼ」

「いやん、息吹きかけないでよシンちゃん!」

「あばっ」

「あははは~苦しいかなぁ~」


顔に圧し掛かる圧倒的な重量を両手で掴み脱出を果たす。どうやらレスタのぐにぃを両手でぐにぃしているらしい、とても気持ちが良いんだもの離したくない。顔面だけは脱出したけど両手は離さないままでレスタと目が合った。


「一人ぼっちで寂しいシンちゃんを構って上げるウチの優しさはどうかなぁ~」

「とても重い優しさに驚いてる」

「重いとか言わないでよ」

「ありがとうございます」

「シンちゃんも好きだねぇ~顔は逃げたけど手はしっかりだもんねぇ~」

「レスタのが俺を放さないんだもん」


言い訳したらレスタは体を起こし俺の手からぐにぃは去ってしまう。

あ~待って! もう少しだけ! もう少しその暖かいぐにぃを我に!

両手でぐにぃを追いかけてしまう。


「あはは! 餌に釣られて魚だねぇ~」

「レスタの意地悪!」

「ウチが意地悪だったらシンちゃんはタダの変態になるねぇ~」

「ありがとうございました!」

「何でそこでお礼言うのかなぁ~」


俺の隣に座った彼女も今日は休みらしく暇だそうだ。

頭をもふられたり、頬ふにふにされたりしている内にレスタからお願いされる。

チビの俺になって欲しい、今の俺じゃあ不満なんだと泣き真似してみるも小さい方が楽しい、そう言われた。


「どうせ俺なんて小さくないと存在価値ないんだぁああ!」

「そんな事を言う割りにはウチの膝の上で凄い寛いでるよねぇ?」

「それは仕方ない、気持ち良いから」

「そっか~ウチの膝の上は気持ち良いか~完全に背中と頭だと思うけどねぇ?」

「アーアーーーあーーアアあーあーーーーあーーーあーーーあーああ」

「聞こえないようにしても意味ないよねぇ?」

「あっ! ドリドゲス!」

「どうしたの急に……」

「レスタ! ヴィネジュは!」


忘れてなんて言えない。ここ最近、ドリドゲスの相手をあんまりしなかった!

ヴィネジュとの仲を取り持たないと行けないのに! くっそおおおしてもうた!

今行くぞ! ドリドゲスううううううう!


「ちょっと! シンちゃん! 待って」

「ドリドリドリドリドドドッゲスがあああ」

「大丈夫だってば。ヴィネジュね? ドリドゲスが居なくなってからあんまり元気なかったんだよ~?」

「もしや!」

「多分、あの子も蹴ってはいるけど気になってるんだろうねぇ」

「今どうなってんの!」

「ヴィネジュはいつもの厩舎だけど、ドリドゲスは別の厩舎だねぇ~なんたって大きいからねぇ」


俺は地面に正座してレスタに土下座した。ベンチに座るレスタに子供が土下座する構図になっている事に気付いたレスタは止めようとしている。でも駄目だ! ここで負ける訳には行かないんだ! ドリドゲスの為なら俺はなんだってやる!


「お願いします! どうかこの通り!」

「ちょっ! ちょっと待って! 行き成り何してるのシンちゃん……」

「どうか! どうか! お許しください! 何卒どうか!」

「ウチが悪者みたいに見えるからそれ止めて!」

「これでも足りませんか! 俺に出せる物ならなんで出しますから!」

「お願いだから一先ず顔上げてからウチの話聞いて欲しいんだけど~」

「はい! ご主人様!」

「いやっ……それも止めて」

「はいっ!」

「取りあえず~ウチの膝の上に戻ろうかぁ~」

「はい! 失礼致します!」


レスタの膝の上にピシッと背筋を伸ばして座る。

ここで失礼な事をしてしまっては全てが台無しのおじゃんだ!

相手に失礼の無いよう、最大限神経を尖らせておかないと駄目!


「シンちゃんお願いだから元に戻ってくれないかなぁ」

「いけません! 私のせいであの子がどうなるか分かりませんことよ! 失礼してはいけませんわよ!」

「あのね凄く話し辛い上に疲れるから普通にしてないと逆にねぇ~」

「レスタの膝の上は最高だなぁ! 本当に気持ちが良い! 褒めてつかわすぞよ!」

「極端だねぇ」

「そっそれでウチの子はどうなんですか!」

「あのね? 別にウチは何も言って無いんだけどねぇ」

「そっそれは駄目と……」

「だから! もうっ~こうしてやるから!」

「あばぁあああ」


体をくるりと回されて、顔面をぐにぃに挟まれ身動きが取れなくなる。

息は出来る! 死ぬ事はない! 大丈夫だ! 落ち着け、クールダウンだ。

そう心を落ち着かせて……。


「一瞬で顔が蕩けたねぇ」

「気持ち良いからね、これは仕方ないね」

「ちゃんとウチの話は聞けるかなぁ?」

「あっはい、こうしてますんでどうぞ」

「やり難いなぁ~」

「それで~?」

「ヴィネジュも気になってるから今から会わせて上げようと思ってねぇ」

「行こう! すぐいこう! 俺ドリドゲス連れてくるからレスタはヴィネジュの所で待ってて!」

「シンちゃん必死だねぇ」


俺は肉体強化で一気加速してドリドゲスのいる厩舎まで急ぐ。

忘れてたなんて言ったら、二度と俺を背中に乗せてくれないかもしれない。

でも嘘なんてつけないし。


「どっドリドゲス~いるか~」

「……」

「ドリドゲスぅ~~」

「……」


怒ってるかもしれん、完全に無視してるもん。怒ってるよね。

俺がもふっても無反応だし、目も合わせてくれないし。


「今なぁ~レスタに言ってヴィネジュと二人きりにしてあげようかと」

「ヒーーーーーン!」

「ごめんなちゃい! わっ忘れてたわけじゃないんだ!」

「ヒンヒンヒヒヒン?」

「あのなドリドゲスが居なくなってからヴィネジュ元気無かったんだって」

「ヒン!」

「ヴィネジュもドリドゲスのこと気になってるんじゃないかって」

「ブルゥルルッル」

「今から二人きりにして上げるからさ……許して?」

「ヒン」

「許してくれるのか?」

「ヒヒン!」

「ドリドゲスうううううう!」

「ヒ~~ン」


厩舎からドリドゲスに乗ると居場所は分かっているらしくエンジンスタートだった。城内でこんな速度出したらきっと怒られるだろうけど、そこは甘んじて受け止めてやる! 坂道を上がった先に厩舎と柵に囲まれたスペースがあって、レスタの姿を見つけた。


「ドリドゲス! ストップ!」

「ヒーーーン!」

「気持ちは分かる! でも一端冷静になれって! 再会した相手が行き成りガツガツ来たら引かれるって」

「ヒン!?」

「何にも無かったぜ! って風を装って颯爽と現れた方が絶対カッコいいから!」

「ヒンヒン!」

「さらっとヴィネジュに近づいて、素直に会いたかったって言えばいいんだ!」

「ヒン↑」

「クールが大切だ! いいな?」

「ヒンヒン!」


俺はドリドゲスから降りてゆっくりレスタに近づいて横に立つ。

レスタはドリドゲスを撫でてやっぱり大きいねぇ~なんて言うけど俺たちは気が気でなら無い。


「ドリドゲスはヴィネジュのことが好きなんだねぇ?」

「ヒン!」

「そっかそっかぁ~ヴィネジュはね他の馬も蹴るけど、ドリドゲスの時は何か違うんだよ?」

「ヒ~~ン?」

「あの子は照れ屋さんだから気長にね?」

「ヒン!」

「もう柵の中にいるけど厩舎の影にいるからね?」

「ヒン!」

「頑張れドリドゲス!」


柵の中へドリドゲスを入れてやり俺とレスタは少し離れて見守ることにする。

明らかにドリドゲスの動きがおかしい緊張してるんだろうか。

ぱかぱか音をならして厩舎へ近づくとヴィネジュが出てきた!

どきどきする……大丈夫かな。


ドリドゲスを見たヴィネジュはそのまま止まり、ドリドゲスも近づく事なく立ち止まった。首を伸ばせば届く距離なのにじっとしたまま双方共に動かずじっとしたまま。先に動きを見せたのはまさかのヴィネジュ、自ら近づいてドリドゲスに体を擦りつけたのだ!


「ヴィネジュは完全にドリドゲスが好きみたいだねぇ、あんな風に雄の近くに自分から行くのなんて初めてみたねぇ」

「まじか!」

「うん! 大丈夫そうだねぇ」

「おおおお! やったぜドリドゲス!」


でもドリドゲスが一向に動く気配を見せないのはなんでだ。

アイツ、もしかして緊張しすぎて動けないなんて事ないよね? 大丈夫だよね?

「俺も行ってもいいかな……」

「あはは! シンちゃん心配性だねぇ! まっ大丈夫かな?」

ドリドゲスに近づいて見ると固まってやがった。大きい体してるのに何してんだか。頬をペチペチしてやるも動かず目だけはヴィネジュを追っているので意識はしっかりしてるようだが。


「ヴィネジュ久しぶりだな覚えてるか?」

「ひぃん」

「おう! 覚えてるか!」

「シンちゃんもしかしてしゃべろうとしてるのかなぁ」

「分からないけど分かるんだよ!」

「そっそうなんだ」


「なぁ~ヴィネジュ?」

「ぶるぅぅ」

「固まって動いて無いんだけどさ、ドリドゲスで良いのか?」


じぃーとドリドゲスを見ながら言ってやったらやっと動きやがった。

猛抗議しているらしく俺のフードをもしゃって引っ張りやがる。

「あれれ~? さっきまで動かなかったのは誰かなぁ~」

「ヒィイイイン」

「嘘だって!」

「ひぃ~ん」

どうやらヴィネジュがドリドゲスを宥めてくれているらしい。

危うく振り回されて飛ばされるところだった。

「あとはお若いお二人でお楽しみくださいね? おいとまさせて貰いますわ!」

「あはは……」


レスタと城へ戻る際にちらっとだけ振り返ると、ドリドゲスは邪魔者がようやく消えたと言わんばかりにヴィネジュに近づいていた。結局、良い蹴りを一発貰ってたけど心なしか嬉しそうにも見えて、あいつはMだと確信した。


「ヴィネジュには暫く乗れないかもねぇ~」

「えっ? なんで?」

「ドリドゲスと引っ付いたんだから、子供出来ちゃうかもしれないからねぇ」

「なっ……なんだと……」

「ドリドゲスの子供だから丈夫な子が生まれると思うけどねぇ」

「どっどどっどどうしよう! ドリドゲスお父さんになるのかっ!」

「落ち着いてよシンちゃん。普通のことなんだから」

「なっ名前どうしよう! ドリジュ? ジュネドゲス? どっどうしよう!」

「混ぜるのはやめて上げようよ、それにまだ先だしねぇ?」

「もう仕込んでる可能性あるよな」

「仮にそうでも生まれるまで一年ぐらいはかかるから」

「そっそうか」

「大丈夫~」

「レスタ! こっ今後とも宜しくお願い致します!」

「あははは! うん、うん! 宜しくねぇ」


一年後にはドリドゲスに子供が生まれるかもしれない。

他人、他馬? と言ってしまっては元も子無いけど、それでも自分と親しい間がらで喜びのようなものを共有出来るっのはなんだか気恥ずかしくもある。

それでも今の俺の心境は嬉しい気持ちで満たされていた。

本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


sideレスタと言いつつもドリドゲスの話になっていたような気がします・・。

本年も残り僅かとなりましたが、今月中には八章を終わらせて九章の中盤まで投稿出来たらと思っていますので今後とも宜しくお願いします。


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