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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第八章 小休止 編
70/217

side ルナリア

季節は山楼、雪の下から新たな命が芽吹き地桐の終わりを告げていた。

それでも山側は相変わらず雪化粧で吹き付ける風は冷たい、あの会議から三ヶ月ほどの時間が流れた。既にヴォルマとジョコラからは人材が派遣されていてクレフィア達は毎日勉強漬けだ。竜殿に関して言えば、元々あったフォスキアの竜殿を一部解体増築し双子竜を奉る準備は淡々と進められている。残るは学校だけ。


ノヴィスで開校する事は既に決まっていたけど、如何せん町に建築するにも土地に余裕が無い。ノシュネの竜殿を学校に造り替える方が楽じゃないかと提案したがあっさり却下されてた。結局、町の端側の倉庫群を取り壊し区画整理した上で建築される事となる。初年度はヴォルマ、ジョコラ、ノヴィスの三国から推薦された人間が入学する事となり基礎を造ることで決定された。


俺はというと、一度ヴォルマに戻りやるべき事をやっていた。

一つはドリドゲスの片思いを成就させるキューピットで、これは約束していた事だしドリドゲスを裏切る訳には行かない。


もう一つは龍チームと竜チームから必要な知識の入荷と鍛錬。

双子竜との契約で何が出来るようになったかの確認と、龍法の研究の為だった。

ソルナが普段、引きこもっているあの空間で再び鍛錬して貰った。

毎日ボコボコにされたんだけどね・・・。

強くなれたと思っていたけど、ゼッペキンも蒼パンも初めて鍛錬してくれた時は三割程度しか力出して無いって聞いた時は絶望した。


レミナには暫く鍛錬するから、一端リュウ探しは待って欲しいと頼んだらレミナもやると聞かなくなった。エルジュにしても同じで、三侍女達に教えを請うていた。四人は親近感があるらしく料理に始まり魔法の基礎も叩き込まれているそうだ。もっとも基本的な事に関してはフェルから教えて貰ってらしいけど、一ヶ月ぐらいが過ぎた頃に飼い主様と呼ぶのは駄目ですと四人から言われてぶーたれたいた。本人曰く「周りと被る呼び方なのでしたくないのですよ!お姉様だって主様って呼んでるのですよ!」だから変えないらしい。


ヴォルマに戻って一週目。

住み慣れた城内を歩いていたある日の事、ルナから呼び出しを喰らって玉座の間まで兵士に連れられていった。何かしたか?下着はあの一件以降盗んでないし、チビの姿でマーレ達にベタベタ触ったけど本人達は喜んでいたから怒られるような事もしてはいない。ルナも王で俺の無茶苦茶に付き合ってくれてはいるけど、仕事も増えているようで一番の被害者だと言われたら返す言葉も無いだろう。

ルナを癒す作戦でも開始しようと決めたのだ。


「ルナリア様!シン殿をお連れしました!!」

「入っていいわよ」

「さぁ、シン殿どうぞ・・あれ?」

「下だよ下!」


チビっ子の俺を見て何やら羨ましそうな目をくれていたけど敬礼してから去っていった。俺だってね?したくてする訳じゃないんだからさ?そのあたりの気持ちも汲んで欲しいもんだよ、まったく。今の俺は五歳児、三歳児だと呂律が悪い上に体も鈍くなるのでアレはここ一番でしか出さないことにしたんだ。


「失礼しますよっと~」

「なんでその格好なのかしら?アタシに叱られるとでも考えていたみたいね!」

「別にしょっしょんなことありまへん」

「話方が変よ・・いいからこっちにきなさいな」

「殴られますか?」

「なんで殴らないといけないのよ・・何かしたのかしら?」

「してないけど?」


警戒しながら近寄って玉座の前に座ろうとして止められた。

何?って顔にでも書いてあったんだろうか、ルナは黙ってちょいちょいと手を動かす。さらに増す警戒心だったが玉座に座るルナの前まで行って捕縛された。


「何・・・いきなり・・・」

「もっと小さくなりなさい」

「なんでさ・・・」

「いいから・・・」


言われるがままに三歳児の俺へと戻ってみたらぎゅーされる。

ぐにぃに包まれる俺は呼吸こそ出来てはいたけど完全に埋まっていたんだ。

気持ち良いことに。


「どうしたの?」

「疲れてるのよ・・言わせないでよ」

「ぼくのせいだね・・ごめんね?でもありがとう」


手を伸ばして頭をいい子いい子してみると「ほんっと可愛いわ・・癒されるわ」本音だだ漏れのスイッチのルナが言うのだ。実際、ヴォルマに戻ってからは色々と大変そうではあったけど、俺に出来ることは特に無くて手伝うと言っても首を縦には振ってくれない。

でも、今は彼女が俺に癒しを求めて呼んでいるのだから沢山癒しを提供しなくてはならない。俺としては大義名分があるから好き勝ってにするだけで、幼児化した思考ではあまり多くを考えれないのだ・・・。


「りゅな~だいしゅきだよ~~」

「もっと言って頂戴な」


「りゅなはえらいよ~」

「はぅ~このサイズのシンには癒されるわ」


「おおきいとじゃまなの?」

「そんなこと言って無いわよ~」


「おしごとたいへん?」

「そこそこ大変ね・・・さっきやっと全部終わったのよ」


「もうぜんぶできたんだね、えらいね~」

「やっと少しはゆっくり出来そうなのよ・・・」


「ねむい?」

「眠いわ~・・・!!」


ルナは俺を抱っこしたまま立ち上がりツカツカ玉座の間を出た。

黙って抱っこされてはいるけど、ぐにぃから来る振動はやはり心地良く気持ちが晴れ渡って行くのだ。成されるがままでいると、ルナの私室のベットの上でした。圧力のかかったぐにぃに挟まれる感覚はこの世の中の全てにおいて至高だと俺は悟った、このままいっぱ・・げふん・・・ではなくてルナの頭を撫でていたらそのまま寝てしまった。


元の姿で部屋を後にして歩く廊下、兵に呼び止められルナを探しているようだ。

少し休ませて欲しいと俺が頼むも重要な案件らしく、その手には資料の束を持っていた。俺から渡しておくから任せておいてと資料を奪い中身を読む。


資材やら積載した荷における輸送の話が主でどれもこれもルナ任せらしい、客を乗せる船と物資を載せる船を分けているようだ。データは細かく記載されていて、どの週にはこれだけ人が乗っていたとか載せた荷の量とかとにかく細かい。

一つ一つ見ていく内に、思い浮かんだアイディアを余白に書き込んでいく、あらかた目を通してからルナの部屋に置いて俺は庭で休憩を取った。

あれぐらいの考えなら誰でも思い付くから無駄に終わるだろうけど、ルナの力になりたいと思ったのだ。


ここ一週間は皆で夕食を食べ、その時間にノヴィスの事をあれやこれやと話すことが多かった。遅れてやって来たルナが自分の席に着くと横に居た俺のほっぺをいきなり抓り上げてくる。


「シン・・これに書き込みしたのあなたよね?」

「しゅいましぇん・・よふぇいふぁふぉとしゅました」


「ルナリア様、どうかなされましたか?」

「どうもこうもないわよ!!」


「ルナっち怒ると皺増えるよ~」

「シンがいらんことしたの?」

「いけませんよシン?」


レミナとエルジュだけは俺の味方だと思い視線を送るも、その目線は既に料理に釘付けで助け舟が出航してくることは無いようだ。


「余計な事じゃないのよ・・・今までより効率の良い船の運航に付いてメモ書きしてるのよ・・」

「それは良かったのではないでしょうか?」

「シンちゃん何書いたの?」


「人と荷を常に別々に輸送する意味が良く分からんかったから・・・思いついた事をテキトーに書いたんだけど・・」

「ルナちゃん何書いてたの?」

「今までは人と物資は別の船で運んでたでしょ?それを一緒にするって内容よ」

「陸路は無いですから人の往来は船が中心ですし分けるのは当然ですよね?」


俺が書いた内容は海流の関係と二国間の間にある無人島群についてだった。

ヴォルマからジョコラへ行く途中の丁度真ん中辺りに無人島群がある。

ヴォルマから無人島群までは海流の関係で速度が出るが、無人島群を抜けた先からジョコラまでは速度が乗らないのだ。仮にヴォルマからジョコラまで一定の速度で航行出来たら半日以上の差が出てくる。

でも無人島群で折り返せば違うルートを通ることでより早く帰港することが可能なのだと気が付いた。これはジョコラ側から見た場合も同じで、だったら無人島群に二国間の貿易拠点を造ってしまえばコストも時間も浮くって至極単純な事を指摘して書いたのだ。


「なるほど、貿易拠点ですか・・・」

「確かにヴォルマからジョコラ目指すより途中で折り返す方が速いよねぇ」

「シン・・頭悪いのに良いの」


「それでルナリア様はそれを見てどう思われるのですか?」

「アタシの率直な答えは大賛成よ!なんでこんな簡単な事に気が付かなかったのかしらね!」

「後は、リエラにもそれ見せたら・・・・」


「でもね?シンが勝手に資料を読んで、アタシの仕事を奪うのは良くは無いのことよ?兵士だってこれをアタシに直接持って来たのをシンが取って行ったって言うのよ?」

「はい・・・すいません・・・・」


国に関わる仕事とは無縁だから余計な事するなと言われたのだ・・・。

気持ちがしょんぼりしてきて、心も気持ちも滅入って来ると自然と体から力抜けてきて消えてなくなりたい。そんな俺を思ってかフェルは何でそんなことをしたのかと理由を尋ねるのだ。


「俺のせいでさ、皆大変でしょ?でも俺は皆に何も出来ないでしょ?ヴォルマに帰ってからはソルナ達と鍛錬してるけどさ?自分で金稼いでる訳でも無いし、タダ飯食らって風呂入って寝てさ?旅の費用も工面して貰ってさ?極潰しじゃん、ルナも凄い疲れてるみたいだし、何かしたいなって」


「それでシンはルナリア様に少しでも楽にして貰いたくてやったのですね?」

「は・・・い・・出しゃばってすいませんでした・・・もうしません・・・」

「シン様は優しいですね」

「シンちゃんはルナっちの事を思ってやったんだねぇ~優しいね~」

「シン偉いの」

「主様偉い!」

「ですよ!」


「あっ・・アタシが悪者じゃないのよ!別に怒ってる訳じゃないんだから」

「すいません・・・」

「あのね?シンには目的があるでしょ?その為にアタシ達が協力するのは当たり前なの!あなたがヴォルマに流れて来た日からそう皆で話したのよ」

「じゃあ・・俺だって皆の為に何かするのだって当然だよ」

「そっそれは・・・」


「ルナリア様?シンだって私達のことを思って動いてくれている訳ですから」

「そうですね、シン様だって自らの力で協力したいと思って下さる訳ですし」

「竜の時からそうだったもんねぇ~」

「シン偉いの」

「主様偉い」

「ですよ!」


「ターニャとレミナにエルジュはさっきからご飯しか見て無いけどな・・・」

「あ~もう分かったわよ、実際のところシンのお陰で大きく改善出来るのは確かだしね」


ルナが俺の頭をもふってからありがとうと一言だけくれて、俺も満面の笑みになる。それからはいつも通りの食事の時間で、今日あったこととか色々と皆で話し合って楽しい時間は過ぎていった。


レミナだけなら俺の部屋で眠ることは出来てもエルジュまでとなるとそうとは行かず、二人は別に宛がわれた部屋で寝ている。ヴォルマの風呂を一人で堪能できるのは最高に気分が良くて、泳ぎたい衝動に狩られる・・泳ぎたい・・泳ぎたい!小さくなればそれも可能だったりするんだけどね、ソルナ達に出会う前は何を隠そう日替わりでみんなと入ってたりしてたんだよ。

それもまた良い思い出だ、最高のぐにぃ達の楽園がこの風呂なのだ・・・。

平泳ぎでスイスイ~背泳ぎで潜水艦ごっこしたりしてぼっち遊びをする。

潜水艦ごっこは水面に浮上した状態から単純に沈んで行くだけなんだが、絶対に外せない肝心な事が一つある。己の下腹部にあるぽこにゃんを潜望鏡に見立てて一番最後に沈めるって事が大切なのだ。


「ぶはぁっ!!!緊急浮上!!!ゴウンゴウンゴウン!ビーッビー」

「一人で何してるのかしらこの子は・・・」

「・・・・・何してるの」

「お風呂に入りに来ただけよ、今のシンにだけは聞かれたくない質問ね」

「ブーーーブーーーーー敵襲!敵襲!各員配置に付け!!!」

「なっなに!!?」


鼻を摘んで口に湯を含みびゅーっとルナへ吹きかける。

「ちょ!ちょっと!!汚いでしょ!!」

「えっ?」

「アタシが驚くところでしょう!」

「風呂に入らないの?」

「入るわよ!」


ルナが風呂に浸かり俺は浮上したままその目の前を流れる。

ルナの全裸を見たところでおっきすることはないので、安心して潜水艦ごっこに興じていたところで頭を引っ張られ引き寄せられた。

頭がルナのぐにぃにぐにぃだよ、生ぐにぃだ!


「ビーッ!ビー艦長!座礁しました!もう終わりだーーー!!」

「何を訳の分からないこといってるのかしら、シン・・・あたなやっぱりどこか悪いんじゃなのかしら」


「いつも通りだよ?」

「ちょっと!頭で胸押すのやめなさい!あのね?誰かれ構わずそんな事しているんじゃないでしょうね!?」


「やる訳ないじゃん・・・・・ルナにはしても良いってことか!!」

「今の間は何よ!駄目に決まってるでしょ!あなたもしかしてレミナやエルジュにも同じような事を」


「何いってんさ!やる訳ないだろ!まったく!言いがかりも甚だしいぜ!」

「・・はぁ~もういいわよ」


「ありがとうございます」

「何でお礼を言われないといけないのかしら・・」

「他意は無いでござる」


ベラベラ話している内にルナは無意識に俺を抱き、背中に来た生ぐにぃにホカホカしていた。行き成り呼ばれて何事かと思ったらしく、俺に何かあったのかと皆が心配していたようで申し訳なかった。ヴォルマを出てからの事も色々と聞かれて、雪山の話だったりノシュネにフォスキアの話も聞いてくれた。


「シン?あなたは結婚する気とかあるのかしら?」

「何・・・いきなり・・・」


「ヴォルマとジョコラは昔から同盟関係にあるしこれからも同じ、でもノヴィスに関して言えばシンが頼むからそうしただけよ?」

「ん~もしノヴィスに不穏な動きやら同盟関係を維持するメリットが無ければお終いってことか・・」


「あんまりあなたに聞かせたい話じゃないけどそうなるわね、今回は特例どころか異例だと思って頂戴」

「で?結婚云々と関係あんの?」


「頭はそれなりに周るのに自分の事は全然駄目なのね・・・」

「別にそれで誰かが困る訳じゃないんだからさ~」


「今回は困らされたのよ?」

「すいません・・」


「クレフィアさんと結婚して即位すれば全部変わってくるって言いたいのよ」

「それ向こうの竜殿の婆さんにも言われたって」

「あら?ならいいじゃないの、ノヴィスは大歓迎じゃない?

クレフィアさんはシンに骨抜きでしょうに」

「断ったの」

「勿体無いわね」


「はそんな事はどうでもいいんだよ・・レミナの事を優先したいんだって」

「でもいつまでも一人って訳にも行かないでしょう?」

「その言葉はそっくりそのままお返しします」

「言ってくれるわね」


「ルナこそどうなのさ?」

「アタシは別にいいのよ、結婚なんてそもそもする気ないわよ」

「いつまでも一人って訳にも行かないでしょう?」

「そっくりそのまま返されたわね・・」


「俺と違って王様なんだから縁談の話ぐらいあるだろ?」

「全部蹴ってるわよ!」

「勿体無いわね」

「真似しないで頂戴!」

「でもなんで蹴る訳?」


ルナは天井を見上げて色々考えているようだ。

ルナは美人だし引く手数多なのは確実だろうに、それでも結婚しない理由でもあるんだろうか?それとも実は既に決めた相手がいるのか?

ロミオとジュリエット的な展開でもあるのかもしれない。


「相手は国が目当て、アタシ自身じゃないって分かってるからよ」

「シルキーなら女同士でも別に問題なんでしょ?女同士ならそういうのとは別に思えてくるけどなぁ~」

「同じよ・・・変わらないわね」


「好きな人いないの?」

「あんまり考えてこなかったから良く分からないのよね。マーレ達は好きだし、シンの事だってそうよ?」


「あっ!」

「なによ?」

「リエラもシルキーだしどうなの?」

「はあぁあああ?」

「え?」

「なんでそうなるのよ・・・」

「ダメなの?」

「アタシは男でも女でもいいけどリエラは無いでしょう!」


憤慨こそしてないけど、それは無いの一点張りだった。

俺としては男と結婚して戻ってきたら夫よって紹介されるより、知っているリエラと結婚してくれる方がい居心地も変わらないし良いだろう程度の気持ちで言ったんだけどね。でもそれは俺のエゴだし、どうなるかは本人次第だろう。

その後も少し話しをしてから一緒に風呂から上がり、ルナに誘われて一緒のベットで寝たのだ。ぐにぃに挟まれて見る夢はやっぱりぐにぃに囲まれる夢だった。

本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


本話から新章になります。

それぞれのキャラとシンを主軸にしたside○○と言う形で投稿をして行きます。

恐らくは八話程度で終わると思いますので宜しくお願いします。

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