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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第七章 双子竜 編
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ノシュネの力

竜殿地下祭壇間

爆裂を受けて地面をゴロゴロ転がる、痛みに耐えているけどこれは半端無く痛い両脚に力を入れて立つがポタポタ血が滴り落ちて頭がクラクラだ。


「どうしたね?この程度では無いと思っていたけど存外見掛け倒しの様だね」

「まったく、ベラベラと・・・」

「こちらも余り時間が無くてね?これから竜を殺さないといけないんだよ」

「何言ってんだお前・・・」

「見物人は多いほうがいいんだが、私はマメな人間なんでね?君を先に殺すことにするよ」


西瓜ほどのサイズの火球が連続で四つ同じ弾道で放たれた。さっきと同じ様にしたら後ろからドカンと来る訳か・・。体の痛みに耐えながら綺麗とは行かなくとも回避していると、さらに追加の火球が飛来する。嫌らしいヤツだ、右手で龍法を展開するよりも左の龍の手で展開した方が痛みが少ないのは助かるが。


蒼煉華を放ち全ての火球が着弾する瞬間を狙い破裂させるも、爆風は消せずに飛ばされる。飛ばされた先に着地を試みるも既に火球が飛来しギリギリで御炎渦を展開して難を逃れた。自分の顔が体の痛みで歪んでいるのが分かる、それでもここで負けるのは駄目だろと言い聞かせて気合を入れる。


一撃、一撃でいいんだ。本気の一撃をブチかます!絶対当てる!蒼煉、俺の十八番の龍法。展開速度も飛ぶ速度も俺の方が速い!やれる!体中がジクジクと痛み、頭もズキズキと痛み始めているが気合を入れた蒼煉を飛ばすと変化があった。


蒼色の火球に朱色が根を張るように絡み付いている。まるでノシュネの竜の姿を彷彿とさせる朱色で、それを見た魔術師が構えるも数メートル前で蒼煉はポンと音たてて消えた。御炎渦を喰らったあの朱色が蒼煉を喰ったのだ。


「ははっ!それで君は何をどうしたいんだい?」

「なんで・・・」


魔術師はもう飽きてきたような表情と共にさらに火球をばら撒き始める。幾らかは回避出来る、それでも数が多すぎる上に一つ一つのサイズが小さい。

どうやら甚振るのが趣味のマゾヒストらしい。

もう一度、手元で蒼煉を展開するも朱色が絡みつき消失する。なんでこうなる?さっきまでと何が変わった?自分自身の体の変化はこの指輪による痛みだけのはずだが。


契約したことで力を得たのは理解しているけど、こういう形で現れるのか?ノシュネの力が邪魔をしていることになるけど、こんな事をするような。

じゃあ俺が何かを間違えているんだ、力の使い方、理解の仕方、何が違う?あの時のノシュネは龍法をジリジリ喰らっていたんだ、じゃあ彼女自身が行使する時はどうなるんだ?なんで喰われない?御炎渦に朱色の炎が伸びてきて威力もろとも喰われたのだ。今の俺の龍法には俺の力とノシュネの力が加わっているから喰われてるのか?


俺の中にあるのはソルナとルビネラにノシュネの力とヴェルさんのいや俺自身の力だ。ソルナは仮契約で力の全てを発揮出来ているわけじゃない、ルビネラは肉体強化にブレスとか言ってたか?

ノシュネの力は今体験した通り龍力を喰らう訳だろ、ルナが見せてくれた打消しよりも上位に当たるのか?個別に力を使い分けることが出来ればどうにかなるかもしれない、そう感じた俺はノシュネの力だけを引き出してみようと試みた。


目を瞑り紋が入った目に集中する。

ノシュネの力を意識してそれだけを集めるように、目に暖かいモノを感じて左腕にそれだけを流す。

血管のような管があってそこに流すイメージで手に集めて行く、少しずつ丁寧に掌から球体が生まれるようなイメージだ。ゆっくり目を開くと掌には朱色の炎があった。


「なんだねそれはっ!」

「さぁ?俺にも分からんでも・・」


言い終えるより早く魔術師が火球をばら撒きそれらは俺の頭上から降り注ぐ。俺は掌の朱色を高く放り投げて行方を見守る。朱色は一定の高さに届き火球群の一つと接触する刹那、朱色の塊から触手のように炎が幾重も生まれ火球群に絡みついた。

絡みついた朱色は火球をあっと言う間に包み込みそれらを消してしまった。朱色は伸ばした触手のような炎を元に戻し、俺の掌に戻って来てそのまま吸い込まれるように消える。


「わっ・・私の火球を全部喰らったのかっ!」

「らしいな!お陰で様でもっと強くなろうと決心できたぜ!感謝するよ!!」

「だからなんだ!私の優勢に変わりはない!!」


痛みはあったけどそんな事はどうでもいいと振り切って、再び走り今度こそ肉迫しボディーブローを一発プレゼントした。倍返しとは行かない、それでも地面をゴロゴロ転がって口からケチャップがだら~と流れている魔術師に言い放つ。


「おいおい、お腹減ってるんですか?オムライスが食べたいんですか?」

さっきまでやられっぱなしだった分だけ挑発し発散してまるで子供だと自分でも感じる。腹の痛みに耐えながら両脚でゆっくり立ち上がる魔術師の顔には、もうさっきまでの余裕は無くなっていた。


「遊ぶのはもう止めよう、飼い犬に噛まれたような気分で不快だよ」

「元からお前に飼われた記憶なんざねぇよボケ」


跳躍した魔術師に朱色を投げつけるとそれは腕に絡まり魔術師の手を焼いた。熱した鉄の棒が絡むように張り付き肉を焼く音に若干引いていたが、それでも魔術師は中心の祭壇に手を付きダガーで手を貫いた。流れ出る血は祭壇を染めながら黒く光りそして祭壇を包み込む。光りが拡散すると魔術師は火球を雨の様に降らせながら入り口へ逃げる。

それを許すはずもなく依然張り付いたままの朱色を引っ張るイメージで剥がすと、魔術師はバランスを崩しながらも逃げ切ってしまう。


逃がすわけには行かず追いかけ走りだすと、祭壇が粉々に砕けて礫がいくつも飛んで来る。逃げるように走り入り口へと駆け込もうとしたが、入り口の右を大きな火球が衝突し吹き飛ばされた。粉塵が舞う中で俺はそれを捉える、ノシュネと同じ体躯の竜がこちらを見据えてブレスを吐こうとしている瞬間を。


「ガッゴァアア!!」

咆哮と共に炎のブレスが粉塵を切り裂く、斜線上の全てを焼きながら飲み込む。咄嗟に御炎渦を展開しようと体が動いたが、寸での所で朱色の炎を円盤状にして展開した。ブレスが衝突するも体に来るハズの衝撃を不思議と感じる事がなく、朱色はブレスに絡みつき炎を喰らって根のように成長しながら伸びて行く。朱色の炎の根がブレスを半分程飲み込んだところでブレスは消える。ノシュネとまったく同じ体躯、だけど体に混ざっていた朱色も模様も指輪を付けた俺の手に近い色になっていた。


「フォスキアか!ノシュネの姉ちゃんなんだな!」

「ガアァアアッ」

「普通の状態じゃないってことか・・」


フォスキアは両脚に力を入れて飛び掛り、爪跡が地面に刻まれ竜の力がどれ程のものかを物語っている。それでもあくまで直線的な動きでサイドステップで回避するとフォスキアに首輪がされているのを見逃さなかった。

ヴィスがノシュネにしようとした事をフォスキアにしたのだ、直感で判断して首輪さえ外してしまえばと考え動く。フォスキアは相当に衰弱しているのか、それとも首輪の影響なのかノシュネと対峙した時よりも動きに俊敏さを感じない。それどころか痛みを振り払うかのような動きさえ見て取れる。


「今はずしてやるからあんまり動くなよ!!」

尾の方から一気に駆け寄り跳び箱の要領でフォスキアを飛び越え首へしがみ付く。痛みからなのか、それとも抵抗しているのか分からないが離れるわけには行かない。手を伸ばした少し先に首輪はあって、左手が首輪に触れると急激にフォスキアは暴れだしその圧倒的な力に空中へ放り投げだされた。

首から離れる直前に首輪の一部を朱色で焼くことができ、後一回でも張り付くことが出来れば外す事が出来る確信はあった。


空中にいる俺をフォスキアは瞬時に捉えると体を回転させ尾を叩き込んでくる。大丈夫だ避けきれると思った矢先、全身にズキッと痛みが走りモロに直撃をくらった。フォスキアは尾が俺に当たると同時にさらなる回転を加えて壁へと吹き飛ばす。壁へと直撃してしまうのは流石にマズイ、今の状態でそんな衝撃を喰らえばもう・・・。


直撃コースの手前でぐにぃを展開し衝撃を完全に殺す、地上からは十m以上の高さがあり落下地点にもぐにぃクッションを展開。落下すればなんとかなると安心しきっていた、体に風を感じた目線の先にフォスキアは飛翔している。猫パンチもとい竜パンチの直撃を受けて今度こそ壁にぶち当たった。


絶対に痛いだろと頭では思っているのに体はその逆で痛みを感じることが無い。猛烈な吐き気の後に口からごぽりと血を吐いている自分に驚いたのだ。

本当に人間はこんなに血を吐くことがあるのか、自分の体のことなのにやけに冷静で客観的で違う人間の目を借りているのかとさえ思う。体からは力が抜けて倒れたくないのに言う事を効かない。体にある芯を抜かれたようなそんな気分、意思とは無関係にその場に倒れた。




「後はフォスキアを殺して力を奪うだけで事は成就する、彼ならもう少し戦ってくれると期待していたのだが・・」

エッチェンは竜殿から一度出て念には念をと準備に戻るその廊下でレーゼンと合流を果たした。


「君のその腕を落としたのはラガノかい?」

「これは手向けに贈ったのだよ。そういう君こそ、腕を焼かれたのか?」

「あの新人騎士は存外やるようだ、それにただの騎士ではなかったよ」

「異種族のことならもう分かっているだろう?」

「アレは異種族でも私以上に純度の高い龍の力を行使していたのだよ!」

「あの手はよもや・・・」

「オトシゴの話は君も知っているだろう?」


「数年前のあれか・・」

「彼が恐らくそうだよ」

「ならば彼も・・」

「彼は殺すよ?我々以外に彼のような存在はあってはならないのだからね」

「それで?これからどうする?フォスキア様は既におられるのだろう?」


「もう殺しても問題は無いだろうが準備は完璧でないとね」

「ふむ・・分かったではここで待たせてもらおう」

「外も襲撃されいるのだろう?」

「最早興味はないよ?どうなろうがね?」


レーゼンの言葉を聞くより早くエッチェンは先へと進む。

「聞いておきたいのだが、フォスキア様を殺すだけで済むのか?」

「一先ずはそうなる、その後はノシュネ様だがね」


「そこは私の誤算だったよ、ヴィス君がまさか生きていてラガノが匿い騎士としていたとは・・」

「異種族を毛嫌いして情報を正確に収集しなかった我々が悪い、がここまでくればもはや関係あるまいよ」


「首輪を盗んでいたのは彼だったとは知らなかったのだよ」

「どの道、フォスキア様はこちらの手中なのだ安心するといい」


エッチェンが竜殿の様子を伺いながら階段へ足を踏み込む。階段を二、三段上がったところで体に違和を感じた彼は足を止める。己の腹から突き出したそれが剣だと理解した時、後ろからホールドされて身動きが取れない。


「レーゼッ・・」

「君は熱心で良く頑張ってくれたね」


レーゼンは脇差程の刃渡りの剣でエッチェンを貫いている。剣を抜き、執拗に三度も腹を刺し地面へと倒した。エッチェンは驚きを隠せない顔でレーゼンを見るが彼は無表情で見下すのであった。


「どうなろうが興味は無いと言ったのだが?」

「レーゼン・・・貴様・・・」

「君は初めから私の掌だったと何故気が付かなかったのだ?」

「なっ・・」

「ヴィス君を逃がしたのも、彼に首輪を渡したのも私が指示した事なのだよ」

「!」

「君の血には異種族が少し混ざっているそうだね?故に君はいらないのだ」

「きさっまぁあ!!」


レーゼンが剣を振るうと階段下の兵士が倒れている横へと転がり絶命した。

「後はヴィス君の合流を待つだけか、もう一つの首輪は無いが仕方あるまい。シンラ君の戦いでも観戦させて貰おう」


レーゼンが祭壇の間へと踏み入れた時、フォスキアは天井をぶち抜き飛び去る瞬間だった。どちらにせよそう遠くへ行くことも出来ずに落ちるだろうと見切りをつけシンラへ近づく。


「凄い有様のようだね。シンラ君は強いと思ったのだがオトシゴ様でも竜と対峙しては勝てぬか」

祭壇のあった場所を見ながら誰に言うでも無くただ一人、独白のようにレーゼンは話す。

「十年、ここまで来るのにかかったがそれも終わりか、時が流れるのは早いものだね。この国の王の死も知らず平和を享受していると思っている愚民には呆れるがそれもまた人間か」


廊下から足音が聞こえたレーゼンが振り返る。

三人の女と一頭の馬がシンを見つけて名前を叫んだ

本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークも感謝です。


双子竜編も佳境に入りました。

後、五話程度で七章は終了いたしますのでどうぞ宜しくお願いします。

次話も宜しくお願いします!

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