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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第七章 双子竜 編
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国の形、その思想

「シン殿背が曲がっているぞ」

「!こんな甲冑なんて着たことねぇんだって」

「直ぐに馴れることだな、まるで新兵以下だぞ」

「へいへい」

「はい!だ上官に対してなんだそれはっ!」

「何・・・もう始まってるのか」

「国に入ってその態度だと怪しまれるのでな」

「了解です!隊長殿!」

「ははっ、その調子だ」


竜殿を出発した俺達は近くの森まで移動した所で夜を明かした。ラガノを始め竜殿に詰めている部下の精鋭達十数名、エルフの魔術師十名、レミナ、エルジュ、ノシュネ、クレフィア、たったコレだけの数だがやるしかない。ちらっと見えたその中にヴィスが見えたけどな・・・。

「シン殿、ヴィスも焦っていたのだよ、根は本当に真面目な男だ。信頼などは無用だが信じて欲しい」ラガノがそこまで言うのだから信用だけはしてやる事にはしたが相変わらずの目線でもう呆れるすら止めた。


「シン殿、そろそろ行くが問題はないか?」

「何時でも大丈夫ですっ!隊長殿!」


レミナ達がこちらの動きを見て駆け寄り俺は兜を外す。

「主様いくか?」

「行ってらっしゃいなのですよ」

「シン様、どうかご無事で」

「おう、ドリドゲスのことは頼むぞ?」


言い残してドリドゲスの代わりに宛がわれた馬に騎乗する。代わりの馬に乗ってみるとドリドゲスが如何に凄い馬であるかを実感させられて、これが終わったらドリドゲスをたくさんもふろうと心に進む。


「あんたが城に行っても大丈夫なんだよな?」

「問題あるまい、新たに騎士となる者は現騎士団長から御言葉を頂くと同時にその剣に誓いを立てる事になっている」

「薄っぺらい見掛け倒しの誓いだけどな」

「見た目だけでも形式とは大事なものなのだよ。あそこにいる者達にそれをされると困るがな」

「竜殿に詰めてる騎士達か・・・あいつら連れてきて良かったのか?」

「あの者達は自分が騎士団長をしていた時に可愛がっていた信頼できる部下達だ。無論、事情も理解している」

「クレフィアの為の騎士団ってか・・・」

「これも形だけだ」

「色々ありそうなこったな」

「シン殿も同じだろう?」

「違いない・・・」

「では、行くぞ」



何かあれば俺からノシュネへ合図を送る事が出来るし、そういった意味では切れるカードがある。

ラガノと並び森を出ると丘の先に目的地、ノヴィス王国を確認することが出来た。


「こういっちゃ何だが、そこまで大きな規模じゃないんだな」

「あぁ自分が聞き及んだ数は三万程度だと記憶している」


ヴォルマは自然の地形を上手く利用した都市づくりをしていたが、ネヴィスのような平地の国はそうも行かないらしい。近づくに連れてその全容が見えてくる、がっちりとした石造りの壁が円を描くようにそびえ立つ。この場から見て取れるのは壁の中央に門が構えられていること、建物が全て白で統一されていることぐらいだ。雪に溶け込むよう見えるが、近づくに連れて多少の活気ある音が聞こえ始める。


「シン殿、そろそろ中に入るが大丈夫だな?」

「行こう!隊長殿!」


門の前には防寒コートを来た門兵が左右に二名ずつ立ち番をしている。その中心を裂く様に進んだところで、門兵が左右から一名ずつ前出て止まるように促がすとラガノは兜を取った。ラガノの顔を見た兵士らは一気に気が抜けたような顔で何も確認せずに門を開いて、どうぞなんて言うのだ。

敬礼した姿をそのまま真似すると馬鹿正直に敬礼をこちらにも向け、そのまま国の中へと入る事に成功する。ラガノの機嫌が若干悪そうに見えた俺が彼を見ていると「なんとも腑抜けきった態度だ、本来な叱責するところだが今はそれが有り難いとは」怒ってるのか喜んでるのか複雑そうだ。


圧政に苦しんでいる、そう聞いたから町の雰囲気は重くるしいものかと思っていた。いざ踏み込んでみるとヴォルマの町とそう変わらないようにも見せる。

子供は楽しそうに遊んでいるし、店で買い物をする人々も笑顔で悲観的な顔をしている者が誰もいなかった。周囲を見ながら進んで行く中で気が付いた。

ヴォルマには女性が多く様々な種族のヒトが生活をしていたけど、今見える範囲にいるのはエルフでもシルキーでも無く人間ばかりだった。


「隊長殿!宜しいでしょうか?」

「どうした?」

「竜殿にはエルフ達がいましたが、城の中には人間ばかりなのですね」

「ノヴィス国は人間が中心となって成り立ってきた国なのだ、故に人間以外の種族は殆どいない」

「殆ど・・と仰いますと?」

「ノシュネ様を奉っていた竜殿側にはエルフやシルキーを始め多種に渡る者達がいたが、フォスキア様を奉っている竜殿には人間しかおらんのだ」

「それでか・・・」

「戦争の折に竜殿は破壊され信仰を失った者達の多くは国を去り、一部の者達の尽力もあってノシュネ様を奉る竜殿が国の外で建てられた。そういう事だ」

「ノシュネ様が奉られる竜殿付近に人間以外の者達が移住して住んでいると?」

「そうだ、そろそろ城門だ礼儀正しくな」

「心得ております」


馬の速度を落としラガノは下馬すると手綱を持ち進むから俺も同じ様にした。城門前は外の門より警備がしっかりしているようで兵士の数が倍ほど違っている。が、結局ラガノの顔見た途端に大した問題も無くほぼ素通りで中へ入る事ができてしまった。


「隊長殿・・」

「もう聞かないでくれ」

「はっ!」

「はぁ~」


厩舎方面へ連れられて馬を預ける。

そうして中央の入り口から堂々と城へと入城を果たした。ここまで何の問題も無く入れたのが気味悪いぐらいだったが、俺の目から見て不審な箇所は見当たらなかった。一応、周囲を目で見ても違和感も何も無く結界が張られている様子も無い。入り口から左の廊下を渡り一度階段を上がると黒い扉の前で止まった。


「良いか?この部屋に現団長殿がおられる心して臨むように!」

「はっ!」

「それから兜を持つのは右手だ」


俺は慌てて兜を持ち直し目で合図し、二度のノックの後に中から声が聞こえた。「どうぞ」の声に揃って挨拶をして中へ入るとラガノより線は細いが長身の男が本を片手に立っている。

「レーゼン騎士団長殿、本日は新任の騎士となる者を連れて参りました」

レーゼンと呼ばれた男は本を閉じてラガノと俺を交互に見て笑顔を向けた。

「そうか、よく来てくれた」

そうして俺はレーゼンへ頭を下げると「そんなに畏まる必要などないよ、顔を上げたまえ」で頭を上げる。


「私がノヴィス王国 騎士団団長のレクトゥーラ=レーゼンだ」

「ルーヴェンザ=シンラと申します団長殿!」

「ふむ、シンラ君は騎士となってなんとする?」

「自分はノヴィス王国直下の兵士ではありませんが、竜殿騎士として誇りを持ち弱きを助けたいと考えております!」

「宜しい。見ない顔だがラガノ殿の肝いりというところか?」

「はっ!行き場の無かった彼を拾い、竜殿で兵士として育て上げました」

「行き場がない?」

「はっ!自分が育ったのは孤児院であります!」

「ほう・・それはどこの孤児院だね?」

「ジョコラであります!」

「では育てて貰った恩のあるジョコラで騎士を目指さなかったのかね?」

「確かに恩はありますが・・・自分は雪が好きでありましたので!」

「雪が好きという理由でこの地を目指したと?」

「はっ!元々は旅をしようとしておりました。ですが、雪山で遭難し命の危機に会いました所、ラガノ殿に助けて頂きました」

「そうして竜殿で過ごし兵となったか・・・」

「はっ!」


ここまでの会話は既にラガノと打ち合わせ済み、予測通りの質問だっただけに絵空事のように返答が出来た。ラガノも何も言わずフォローをしない辺り上手くいっていると言ってもいいだろう。それにしてもヴィスの話を遠まわしとは言え聞いていたから警戒はしていたが・・・。


「騎士となる以上は其れなりの手腕が無いと判断出来かねるな」

「シンラは自分と互角以上に戦え、尚且つその判断力は目を見張るだけの素質があります」

「ふむ・・ラガノ殿のお墨付きという訳か、疑う訳では無いが一度だけ力を見たいが宜しいか?」

「はっ!」

「では、騎士団の者と手合わせしてもらうことにしよう。外の訓練所で待機してくれたまえ」

「はっ!失礼致します!」


部屋から出るとラガノは無言で外へ出て訓練所前へと移動した。訓練所からは声が聞こえていたがそれ以外、周囲からは気配が無いと分かるとラガノは口を開いた。

「シンラ、順調だがどうだ気分は??」

「無さ過ぎて逆に気持ちが悪いぐらいです。自分の目から見ても!」

「ふふっ気持ちが悪いか、前提としてこちらは緊張しているからな」

「でも、団長も少しお疲れなのでしょうね」

「何か分かったのか?」

「疲れが溜まっているように見えました!」

「騎士団長は魔法も扱うことが可能だから疲れなどどうにでもなりそうだが?」

「魔法を使えば残光は多少は残りますし変ではありませんが・・残光の残り方がおかしい」


何があるから分からない以上、出来る限り役に徹しつつ会話の中で変化つけていたが最後だけは小声で言った。そこでラガノの表情も締まり小声で返す。


「どこがおかしかったのだ?」

「身体強化を魔法で行った場合、残光ってのは内側から煙が出るような感じになります」

「違っていたと・・・」

「体を包むように残光が見えました。あんな残り方は見た事がありませんね、単純に自分が知らないだけってのもあるけどなんか気持ちが・・」

「ヴィスから聞いた話もあることだ警戒はすべきか・・」

「まずは目先の問題を片付を」

「シンラなら簡単に勝ってしまえるだろうが慢心はいかんぞ?」

「はっ!隊長殿!」


訓練所、そう言っても広いだけで特質して何かあるって訳でも無く、数名の兵士達が固まって剣を振るったり向かい合って訓練をしている光景だけがあった。ラガノはお構いなしに進み手前で剣を振るう男へ声をかけた。

男は振るう剣を収め張り裂けんばかりの声で挨拶をする、その声に感化されるように他の兵達も集まり始める。どうやらここも顔見知りばかりなようで全員のラガノを見る目が憧れとか感激とかそんな眼差しだった。


「さて、準備は出来ているかねシンラ君」

レーゼンの声に騎士達の空気が変わる、何時からそこにいたのか分からなかった。俺達の真後ろといってもいい距離に彼は立っていたのだ。彼はそのまま歩きながら一人の兵士に指示を出し準備をさせる。ウルダと呼ばれた俺と同じ体格の兵士に剣を手渡され、この兵士と一戦交えるようだ。


「シンラ君、刃を間引いてはいるが本物の剣となんら変わりはない。当たれば骨折ぐらいはするが覚悟は出来ているかね?」

「無論ですっ!」

「ウルダも手を抜くことは許さんそのつもりでな」

「はっ!」

「よし!互いに構えろ!」

「ウルダさん、宜しくお願いします」

「こちらこそ!」

「始め!」


合図と同時にウルダは剣を構えた状態から一気に距離を詰める。手前にあった剣先が瞬時に俺の肩付近まで届きそうになり、その剣筋を外すように左へと剣を受け流す。剣を流されたウルダは手首を捻り水平となった剣を振りぬくように切り上げる。

顔目掛けて跳ね上がって来る切っ先を上半身を逸らして回避。すると外野から感嘆の声が聞こえて来るがラガノだけは真っ直ぐ俺を見ていた。

ウルダの腕は完全に振り切られていて隙有りと見た俺は、剣の柄で彼の肩の付け根を打ちバランスを奪う。失ったバランスを取り戻そうとした時、俺はウルダの甲冑の胸の辺りを手で押し足をかけてその場に倒す。そしてそのまま剣を彼の首へと突きつけたところで「やめっ!」と声がかかった。


ウルダの手を引いて立たせると少し呆けた顔をしたままだった。自分が負けたのか?そんな事でも思っているのだろう。

「シンラ君、君の勝ちだ。ウルダ君も恥じる事は無い、シンラ君の腕前は確かなものだったのだよ」

互いに頭を下げて剣を収めるとウルダは数歩下がった。

「シンラ君は剣術と体術を組み合わせて戦うのか」

「自分は余り剣に自信がありませんが体術には少しだけ覚えがありまして・・・やはり騎士らしからぬ戦い方でしょうか?」

「確かに我々騎士団の中では異質と言えるだろう。だが、自分に何が出来て何が出来ないのかを理解した上で行き着いた道であるなら問題あるまい。それに君は竜殿で騎士となるのだろう?ならば選択肢は多いほうが良い、人間以外の種族が多い場所だ何があるか分からんからな」

「それで、騎士団長殿?」


ラガノが話しを変えるように口を挟み俺を見る。

レーゼンは準備をするから部屋で待っててくれと言い残しその場から去った。ラガノは他の兵士達と一言、二言交わした後、俺の肩を叩き訓練所の入り口へ向けて歩みを進めた。


「隊長殿、団長殿は物事を綺麗に分けるのですね」

「何だ?」

「差別主義者」

「・・・」


その言葉にラガノは黙り込んでしまった。

軽く眼帯をずらし魔法も龍法も使われていない事を確認して話す。


「いや、団長殿だけじゃ無いか?むしろこの国そのものの根幹って感じか?竜殿のこと、町には人間が多いことといい」

「勘違いしないで欲しい、現在のノヴィス王国の中枢に関わる者達が異種族に排他的なだけなのだ」

「町の人間やらは違うと?」

「そうだ、それだけは言い切れる!」

「ヴィスがあんな態度だったのも頷けるか・・・」

「確かにアレはそう言った思想を持っていることは否定出来ん。だが、竜殿で生きる内に少しずつだが変化もあるのだよ」

「そいったのも十年前からか?」

「百年前の戦争で一端そういった風潮やらが出回ったらしいが、時の王はそれを叱責し終息したと聞いている。が、確かに十年前よりかは・・」

「多少の残り火が魔術師によって再加熱されているのかもな」

「嘆かわしいことだ・・」


遠い目で在りし国の形でも思い出しているのだろう。彼はその後、話す事も無く城へ進みそのまま団長のいる部屋まで無言を突き通した。

本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークも感謝です。


次話は恐らく月曜日かそれ以降になると思います。

次話以降も宜しくお願い致します。

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