岩穴泊
現在の俺は天の光も落ちてしまったこの雪山で野宿をしております。綺麗に穿たれた岩穴は結構な奥行きがあってドリドゲスが中に入っても全然余裕です。そこで焚き火をしながらご飯をせこせこと用意しております。ドリドゲスにも暖かいスープを上げるとなんの躊躇も無く飲み干して、果物を良い音を鳴らしながら食べてくれました。
「ドリドゲスおいしいか?」
「ヒヒ~ン♪」
「そうかそうか沢山食べるといい」
「ヒン」
頬を撫でてから俺は焚き火に向かった。
夕食といっても魚の干物に火を通すだけの簡単な作業だったけど香辛料を買い込んでいて正解だった。とてもスパイシーな香りが空間を埋め尽くして早く食べたいと胃袋が催促してくる。
数尾の魚を焼いてもしゃもしゃ食べるとやはり美味い!家で食べたらそこまでじゃないかもしれないけど場所の効果もあって美味さ倍増だ。
ぐぅっ~ぐぅ~と音がしてその方向を見ると羨ましそうにこちらを見ている縦髪ロールが体育座りをしているのだ。目が合った瞬間にぷいとされるが魚を手に持ち近づくと目だけで魚を追っている。
「お腹減ってるんだろ?遠慮しないで食べろよ」
魚を手渡すと受け取ろうとしたのに寸での所でぷいと顔を背けた。
「ばっ・・・化物の施しなんて受ける訳がありませんわ!そうやってアタクシを篭絡するつもりですのね!負けませんわ!」
「俺は化物なんかじゃないって何度言ったら分かるんだよ・・・」
「ではその手は?その目は!一体なんだと仰るのですの?言って御覧なさいな!ほら言えないではないですの!!」
「いや・・・お前さ・・・」
「お前ではありませんわ!!アタクシにはちゃんと名前がありますわ!!」
「じゃあ名前を教えてくれよ」
「馬鹿仰い化物に教える名前なんてありませんわ」
「そうかい・・・・」
俺は諦めて魚を持ったまま焚き火の近くへ戻った。
その折に縦髪ロールが物欲しそうに魚を見ていた事はちゃんと分かっているが、いくら食べていいよと言っても頑なに拒否の姿勢を崩さないのだ。
では何故、こんな事になったかだ・・・。
「離しなさい!この卑怯者!!」
「いや・・ちゃんと話を聞いてくれよ・・・」
「アタクシの騎士と従者をどこにやったか分からない敵の話なんて聞きませんわっ!この下郎!!」
「あのさーいい加減にしてくれよ・・・」
縦髪ロールの攻撃を全て流し両手を掴んだところでやっと会話が出来たのだがこのありさまだ。
彼女の妄想では俺は悪者で彼女と騎士と従者を魔法で罠に掛けた相手らしい。
「その手はなんですの!汚らわしい!化物の手ですわ!!それにその目はなんですの!!変な模様ばかりが浮かんでいて怪しいですわ!敵ですわ!」
「いや・・・だから説明させてよ・・・」
「話かけないでくださいまし!!」
「埒が明かないな・・」
「はっ!アタクシを拉致するつもりでしたのね!拉致してアタクシを辱めるつもりでしたのねっ!!」
「はぁ???」
「この化物!ばけもっ・・」
急に俺へと倒れこんできた縦髪ロールの後ろにドリドゲスが居た。まさか馬にヘッドバットをかまされて気絶する人間を見る事になるとは思いもしなかったぜ・・。
ドリドゲスに感謝の言葉を述べると「ヒヒンッ」と鼻で笑ったのだった。気絶した縦髪ロールをドリドゲスに乗せて移動したのは良かったが、天候は悪くなる一方で結局はこの岩穴へと避難したのだった。
「にしても凄い吹雪になったもんだ、山頂まで後どれぐらいかかるかんだか」
「ヒヒヒ~ン」
「ドリドゲスに乗って行けば楽々だろうけどさ流石に危ないと思うんだよ」
「ヒ~ン↓」
「こういう時は焦っても仕方ないし、あの二人も大丈夫だろう」
あの二人が貧弱だったら死に物狂いで探し出すだろうけどあれでなかなか強いし、もしかしたら二人で山頂目指してる可能性もある。何回も中腹に戻されてはまた山頂目指してたりして、そんな事を考えるとこんな時なのに少し笑みが零れた。
「何か如何わしい事を考えてるんですのねっ!!」
「そんな気はさらさら無いから安心してくれよ」
「あなたのような化物が近くにいて安心なんて出来る訳ないですの!!それに馬とおしゃべりなんて馬鹿らしいっ!!」
「ドリドゲスは賢い馬だから俺が何言ってるかちゃんと分かってるもんな?」
「ヒンヒンヒヒヒン」
「で?あんたは何でこの山にいたんだ?」
「話す必要は無いと言っているでしょう!
化物の癖に話しかけないで欲しいですわっ!」
「そんなにピリピリしてて疲れないの?」
「ピリピリなんてしてませんわ!!」
「人は腹減ると気が立ちやすいんだから食べればいいのに」
「いりませんわっ!こんな時の為の食事ぐらい用意してますわ!」
そう言った縦髪ロールは腰に下げたカバンをガサゴソして、不味そうなパンと不味そうなペースト状の何かを取り出した。それをパンに塗り手繰るとお上品に食べ始めたのだったが・・・とんでもなく不味いとその表情が物語っていた。それでも一口ずつゆっくり食べるが不味さにも勝てなかったようで見る見る苦しそうな顔へと変化した。
「どんだけ不味そうなもん食ってんだよほらっ!
これ飲めって!」
「ん・・・ぐっ・・・ん」
涙目になりながらも俺の手からコップを奪い取ると一気にゴクゴク飲み干した。辛そうだった表情から幸せそうな表情へと一瞬にして変わったのを見ると俺特製のスープはどうやら美味しかったらしい。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですわ!これほど不味い食べ物は生まれて初めて食べましたの・・・」
「どうみても美味そうには見えないだろうに・・」
「しっ仕方がないですわ!こんな時に我侭なんて言ってられませんわよ」
「なにか急ぎの用でもあるのか?」
「だ・か・ら・話す事は何もありませんのよ!!」
何話しても無駄なようだまったく話が進まない。
今の段階で分かるのは何かあるからこの山に居ること、そして彼女は騎士と従者の合わせて三人伴っていること。騎士、従者、アタクシに縦髪ロールどこぞの国の姫様だったりしてぷぷぷ~。
こんな人の話を聞かないのが姫な訳無いか?
いや、甘やかされて育ったらこうもなるのだろうか?どちらにせよ国という大きな枠組みの中にいる人物と言う事は間違いなだろう。何にしても今は頂上目指して進むしか道は無い、縦髪ロールは若干うとうとしてるし今日はこのまま休憩する他無いか。
「ドリドゲス~僕とても眠いんだ~」
「ヒン~?」
「馬と話しても意味なんてないですわ」
「ドリドゲス~一緒に寝ようぜぇ~」
「ヒン」
そう言うとドリドゲスは本当に馬かよってぐらい豪快に寝転び、俺はもたれかかって一緒に寝ることにした。縦髪ロールは「本当に馬と話ができるんですの?」なんて聞いてくるが俺は無視して寝てやった。少しばかりの仕返しを食らうといい・・Zzz。
「アタクシを無視するなんていい度胸しますわ」
翌朝はドリドゲス枕が立ち上がり後頭部に軽い衝撃を受けて目が覚めた。縦髪ロールは何度も寝返りを打ってあまり眠れてなさそうだったが今見るとすーすー寝息をたてている。こうして見ると割りと美人な顔をしていると気づかされるがムラムラしてこないのは現状のせいだろうか?ボケーと眠気眼で見ていると彼女もどうやら目が覚めたらしく俺と目が合う。どうやら寝ぼけているようだ。
「テリュ~アタクシまだ眠いですわぁ~」
「!?」
「テュリュ~着替えさせてぇ」
「ヒン・・・」
「脱ぐのは自分でしますからぁん」
俺とドリドゲスは朝から軽いストリップを見る羽目となった。何故か彼女は艶かしく服をたくし上げてぐにぃを守るぐにぃカバーが丸見えになっている。そして彼女がD級ぐにぃを持ちし女だと理解した俺だが流石にここで口を出したりすれば殺されるかもしれない。そんな気持ちからドリドゲスの手綱を持ち岩穴の外を向いて天候が回復したなぁ~とか思いながら自然の風景に心を同化させようと勤めた。
「なぁ、ドリドゲス?」
「ヒン~?」
「あの縦髪ロールさん寝ぼけてるから軽く鳴いて起こしてくれない?」
「ヒイイイイイイイン!!!!」
「うぉっ!うるせっ!」
軽くとお願いしたのにドリドゲスは結構な勢いで鳴いてみせた。俺は後ろを振り返らずに気配で察しようと試みた・・・・。
「びっくりしましたわ!皆さんどうしましたのっ」
もう少しだけタイミングをズラすべきだったと思った。自分の状況を見て言葉にせず何も無かったように振舞えば良かったのに、何故未だに服をぺろんちょしてんだよ。
「おっおはようさん」
「・・・」
彼女は自分の置かれる状況を思い出したようで少し寂しそうな表情をしていた。気が許せる仲間が誰一人としていないのだから、それも分からんでもないんだけど。
「あのさ・・・取り合えずふっ服を・・・」
「・・・・っ!」
自分自身を確認するようにして彼女は一瞬で服をバッと下げて顔を赤く染めている。逆上して殴りかかってくると覚悟していたけど人並みの恥じらいは持っているみたいで安心した。それから朝食を、と言ってもパンと昨日と同じスープを作ってモグモグ食べるだけ。ドリドゲスも俺にもくれと肩をハミハミするもんだから口へ放り込んでやると美味そうに食べるのだった。
「ほら、お前も食べろよ」
「あなたの施しなんて受けませんわよ!」
「食べておかないと体が持たんぞ?」
「あなたと行動を共にする訳じゃないでしょう!」
「あぁそうか。俺達は頂上目指してるから進むよ、一応ここに置いて行くから気が向いたら食べろよ」
「えっ・・・あっ・・・」
「ん?どうした?」
「何でもありませんわっ!さっさと消えなさい!」
「分かったよ・・お前も気をつけろよ?ドリドゲス行くぞ」
「ヒン~」
こんな所で女性一人を置いていくのは気が引けるが、真っ直ぐ道なりに進めば麓に降りれる。
それに動かなければ彼女の仲間だって探しに来る可能性もあるし悪いけど先に進ませて貰うよ。
敵対行動してたのに普通に出発させてもらえるんだなぁ~なんて考えながら外へ出た。
ドリドゲスの手綱を持ちゆっくりと山頂を目指す。
地面に反射する光が眩しいが昨日に比べると風はそれほど強くない。体感で一時間ぐらいだろうか?急に上空から冷たい風が吹き付けて俺はそれを見た。何かが上から落下してきて四箇所に砲弾が穿たれるように雪の柱が立ち上がる。後方の柱の一つからバランスボールサイズの氷塊が一つ高速でこちらを目掛けて飛んできた。
「ドリドゲス!」
「ヒン!!」
咄嗟にそう言ってから鈍器鎌ことドラシャールを展開、同時に眼帯を外してドリドゲスの背中に飛び乗りしゃがむようにして構えた。氷塊を鎌を振り上げて真っ二つに割ると続けてもう一つの氷塊が同じ柱から飛ばされる。
「ドリドゲス!全力で真っ直ぐ走れ!」
「ヒィィ~ン」
合図をするとドリドゲスエンジンがスタートと同時に超加速する。恐らく上空で氷塊を四つ撃ち出し俺達を囲うように着弾させたのだろう。
ドリドゲスを真っ直ぐ走らせて前方に立つ二つの柱の間を抜けようと試みる。正面を睨みつけるように見ていると違和感を覚えるあ。
「ドリドゲス!ストップ!!!」
俺が叫ぶとドリドゲスは頑張ってスピードを落とすが間に合わない。前方にぐにぃの壁を展開させるとドリドゲスはそのまま激突したが、流石のぐにぃの壁で完璧にドリドゲスの膂力を弾くことなく全て吸収したのだった。
「ドリドゲス!怪我してないか!!」
「ヒン!ヒン!!」
「急に止まれないって言いたいのか?」
「ヒン!!」
「悪かったよ・・でもそうでもしないと危なかったんだって」
「ヒヒン?」
俺はドリドゲスから降りると二つの柱の間にコップを投げて見せた。するとコップは空中で止まると瞬く間に凍って氷柱が出来上がったのだ。
「俺達もこうなってた訳だ」
「ヒ~ン↓↓」
「しかも雪柱が四つだ・・・」
「ヒン!」
「結界ってことになるな、ここから出るには張本人を倒すしかないってことか」
「ブルルゥ」
「俺がどうにかするからドリドゲスは下手に動かずここにいろ」
「ヒン!!」
さてはて、どんなヤツが相手なんだか・・・。
レミナとエルジュの所にも何か起こってる可能性を考えるとグダグダしてられない。
一度、中腹まで戻る方がいいか?と考えをまとめていると前方から氷弾が三発飛んできたのだった。
本話もお読みいただきまして有難う御座います。
ブックマークをして下さっている皆様にも感謝です。
流石に寒くなってきましたね。
気がつけばも今年も二ヶ月と少ししか無いようで色々焦ってます。
皆さんも体調にはお気をつけ下さい。
では次話以降も宜しくお願いします!




