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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第六章 神の山 編 
48/217

山と雪と・・・

山頂から吹き降りてくる風が顔に当たると冷たく、吐く息は白く、この辺りが寒いのだと実感する。

実感すると表現しても実際は龍製の衣類のお陰でさほど寒さを感じずに雪道を歩くことが出来る。

白銀世界とはこの風景のことを指すのだろう。

山頂を視認することは適わないが現状の見える範囲全てが真っ白な世界で構成されているのだ。

俺はドリドゲスの手綱を持ち、レミナとエルジュは雪を必要以上に踏んだり投げたりと遊びながら後方から着いてくる。


「ドリドゲスは寒くないか?」

「ヒヒンッ!!」


俺達と違いドリドゲスは荷を積んで歩いているが馬でも寒いもんは寒いだろうと心配になる。山道を登り始めてどれぐらい経ったのか分からないが光は既に真上へと昇りきっていた。


「飯食うかなぁ~」

「主様ぁ~ご飯!!!」

「なのですよぉ~!!」


地獄耳なのかそれとも食べ物の匂いに反応したのか、レミナは雪を掻き分けて走るがその姿を一瞬で消した。何が起こった?何故消えた!なんてことは微塵も思わない、深みにズボッとはまっただけでなんてことは無い。

「大丈夫なのですよ~!今引っ張るのですよ!!」

穴に両手を突っ込んだら雪まみれになったレミナがサルベージされた。

「今のはびっくりした!」

両目をカッと開いてエルジュに話すと、どうやらエルジュもそれがしたいらしく辺りを走り出すが一切深みに落ちることは無かった。


テンションの高い二人に麓での休憩中に作ったサンドウィッチを手渡してやると「主様!!歩きながら食べていいのか?」「歩きながらなのですよ!?」

歩きながら食べることがそこまでの事なのかモフモフ頬張り笑顔で美味しいと訴えている。

因みにドリドゲスには果物を切り、口へ放り投げるようにしてやると良い音を鳴らしながら食べてくれるのだった。


水筒と呼ぶには簡素なそれからスープを鉄のコップへ注ぎ、豆粒サイズの蒼煉を落としてやると簡単に適温になる。ここ最近、龍法を行使するのが敵と呼べる相手ではなく、生活面を楽する為に行使する場面が増えてきている気がする。

飲料を温めたり、風呂の水を沸かしたり、調理を行う際に火を熾したりと意外に幅広く役立っている。


食べ終わると再び二人は雪遊びを開始する。

「よくも飽きずに遊んでられるもんだな・・」

「ヒヒン」

「ドリドゲスは寒くないか?疲れてないか?」

「ヒンッ↑↑」

「全然余裕ってか?」

「ヒン~!!」


頼もしいものだ以前の器の俺だったら既に根を上げていることだろう。この体になってからは疲労を感じる事は少なくなった様に思う、ただ龍法を連続行使したりすると若干の疲れを感じるそんな程度だ。

現在の俺自身がどれだけの龍法を連続で行使出来るかは試したことが無いので一度はやってみたいと思うのだが、それをしたら綺麗な風景が荒野になってしまうかもしれないと考えると少し怖い。


考え込んでいる俺を気にしてか、ドリドゲスがフードをもしゃもしゃしてくるものだから笑顔で頬を撫でてやる。目をパチパチさせるドリドゲスに大丈夫だよと声を掛けるとヒンヒンと返事をくれてまた笑顔になる。そんな風にゆっくりとだが着実に山頂を目指していると少し風が出て来たのだった。


徐々に風は強くなり正面から吹きつけるように吹く風に時折、腕で顔を隠したりしながらも進む。

後ろの二人はそれでも楽しそうにキャッキャしているので、それを見て体力馬鹿の烙印をプレゼントした。斜面をグネグネ歩き続けていると、広い場所に出た。新雪で一面綺麗な銀色に光輝いている風景が綺麗で俺も少しテンションが上がっていると一層強い風が吹いた。その風は地面の雪を巻き上げるようにして一瞬、俺から視界を奪ったのだった。


「うっ・・顔が寒いなっ・・」

「ヒン!」

「全然余裕だって言いたいのか?」

「ヒン!!」

「二人共そろそろ遊ぶの止めてこっち来い!!」


数メートル先は未だに見えず二人を呼び戻す為に放った言葉に対して返事は戻ってこない。

二人が無視するハズも無いのでもう一度大きな声で叫ぶように言葉を投げるが聞こえるのは風の音だけだった。咄嗟に目に龍力を集中させて後方にいるであろうレミナとエルジュを探すが二人共反応が無かった。


「おい・・・マジかよ・・・」

「ヒン??」

「隠れてるのか・・?」

「ヒ~ン?」


風が収まり徐々に視界を取り戻していくが後方に二人の姿は無かった。俺はドリドゲスの手綱を持ち道を戻るが誰もいない。何が起こってる?埋まった?そんな考えを巡らせているとドリドゲスが一鳴きして俺に何かを告げたのだ。

告げた先にあったものは二人の足跡。


俺とドリドゲスの通った道には足跡がまだ残っているが、後方に居た二人の足跡が途中から忽然と消えていた。俺を驚かそうと隠れるにしても辺り一面には何も無く、隠れる事が出来るのは雪に埋もれるぐらいなのだが・・・。雪を掘り返したような跡も無くその考えは間違っていると教えている。


「ドリドゲス・・・何か感じるか?」

「ヒヒン」

「上に乗るぞ?」

「ヒン!!」


ドリドゲスの背中に立って改めて周囲を確認していく。眼帯もハズして両目に龍力を込めて綿密に探して見るが生物の存在は確認出来ない。何かしらの魔法攻撃でも受けたのか?だが残光は残っていないからそれは無いハズだが・・・何が起こってる?

ドリドゲスの背中から降りて彼の頬を撫でながら思考をするも答えは出ない。そして今朝のおっちゃんが言っていた言葉を思い出した。山に居るっていう神様の存在が俺の脳裏に張り付いてきて、それが答えだろうと挙手している。


「マジで神様の力ってやつかよ・・」

「ヒン?」

「いや・・でも神様って呼ばれているのはリュウで間違いないんだ。リュウの力で何かしらの力を行使したら残光が残るハズなのに・・・」

「ヒ~ン↓」

「魔法か龍法か、トラップでも展開されていたのか?いや、それでも残るハズだし何も無いのはおかしいだろ・・」


話を思い出すと中腹に飛ばされていると言った言葉を思い出す。中腹はすでに越えていたってことになるのか?冒険者達は身に危険があった訳じゃないって話だったよな。

単純に登ってきた来た道を戻されただけと考えると、俺が戻れば恐らく合流出来るだろうけど二の舞になりかねんか。中腹に戻されたのは何故あの二人だけなんだ?考えてみれば俺とドリドゲスは何で戻されていないんだ?俺という存在を飛ばせなかったなんて理由ならまだ百歩引いて理解は出来る。

でもここには俺とドリドゲスが存在している訳で、あぁああ訳分からんぞ!


「ドリドゲス二人は中腹まで戻されてるハズだ!」

「ヒヒン!!」迎えに行きますか?走りますか!?と気分が高揚しているドリドゲスには悪いが。

「二人とは合流せずに頂上を目指そうと思う!!」

「ヒン?」

「俺とお前だけが残っている理由が分からんし、戻っても同じ事になる可能性が高いから頂上の神様ってのに会いに行くぞ!」

「ヒンッ!」


俺はドリドゲスに跨り「辛いだろうけど少し踏ん張ってくれ!」そう言うと「だから・・・全然余裕だし」ぐらいのヒ~ンが返ってきた。

手綱を握るとドリドゲスエンジンがロケットスタートする。本当に余裕なんだろう、むしろ何で今まで走らせてくれなかったの?と言わんばかりの速力で疾走を開始。斜面なんてお構いなくどんどん伸びるように走ると道が崩れて崖のようになった場所に辿り着く。流石にここは無理かと思った矢先、関係ないですけど?と普通に跳躍するのがドリドゲスだった。三度の跳躍を終えるとさらに道が広がっていて頂上まで後どれぐらい時間を費やすか分からなかった。


山の頂上へ少なくとも近づいていることは雪量が教えてくれる。既にドリドゲスの足から十五cmぐらいは埋まっているのだ、ここで無理して怪我でもしたら大変だと思い俺はドリドゲスから飛ぶように降りた。


「流石にここから先はもっと雪が深くなる可能性があるから、速度は落ちるが確実に行くぞ」

「ヒンヒンヒン!!」

「余裕ってのは分かってるけどな?万が一を考えて動いた方が得策なんだ」

「ヒ~~ン」

「走り足りないか?」

「ヒン!!」

「この登山が終わったら思いっきり走らせてやるから我慢してくれな?」

「ヒヒン!」


そうドリドゲスに言い聞かせて再び歩き出した俺達の上から何かが落下してきた。咄嗟に俺とドリドゲスは離れるようにそれを避けると一段と深みのある場所にそれが埋まった。足をバタつかせているのでそれがヒトであることは理解出来るが・・・俺は空を眺めてみるが特に異変は無い。バタバタしている足を掴んで引き抜いてやった。


「はっはぁ、死んでしまうかと思いましたわ。雪がクッションになって助かりましたのね。ヴィス!ラガノ!テュル!無事ですの?怪我はありませんか?災難でしたわね」

「・・・・」

「・・・・」


縦髪ロールのぱっきんちゃんねーがそこ居た。

縦髪ロールのちゃんねーはペラペラ一人で喋り続けていて話かけるチャンスが全然見つからない。

縦髪ロールで「ですわよ」とか「ですの」を語尾に付けられると本当にお嬢様に見えるんだな・・。

縦髪ロールで横から見たら分かるんだけど、残念ながらぐにぃはぐにゅって出来るぐらいのサイズだろうか?見たところ一応は旅をする装備をしてるけど、もしかしたら盛ってるかもしれないと俺の本能が告げていた。


ドリドゲスが俺を見つめて、「いい加減話かけたらどうなの?」と訴えてくるんだけど、それもまだ話てるんだよなぁ・・これで一人称がアタクシだったら完全にそうなんだろうけどどうだろうね?


「それにしてもアタクシ少しだけ疲れましたわ。だってそうでしょ?朝からずっと歩きっぱなしですのよ?本当ならもう少しゆっくりしたペースだと良いのですけれど」


言った・・・アタクシって言った。

一人称アタクシだ!本当にこんなのいるんだなぁ~。なんかゲームの中とかでしか見た事無いから少しテンション上がるけど、どうしよう・・。


「さっきからどうされたのかしら?ヴィスもラガノもテュルも黙って。少しだけ休憩しますの?」

の?の部分でようやくこの縦髪ロールのちゃんねーは俺とドリドゲスを視界に入れてくれたようだ。

これでやっと話が出来るなと思って口を開こうとしたら・・・。


「なっ!なっ!なんですの!あなた方は!!」

「いやっ・・あのっ・・」

「さては間者ですのね!それに三人が居ませんわ!!何をしたんですの!!」

「ちがっ・・・」

「そうですわよね!言えるハズありませんわ!貴方を倒して聞き出して差し上げますわ!!」

「いや・・・」


話を全然聞かない相手って疲れるんだなと心底思った。俺の人生でここまで相手を慮って話をしない人間とは初めて会ったよ・・・。


「食らいなさいなっ!!」

縦髪ロールはロールを揺らしながら俺に突貫してきた。あぁ・・・やっぱり武器はレイピアなんだ。

裏切らないなぁ~なんて感慨深さを覚えていると。レイピアを顔面目掛けて突き出し、空いた左手に魔力を圧縮している。レイピアで攻撃しつつも隙あらば強化した拳で一撃入れてくる腹積もりらしい。

縦髪ロールは足元が雪だと言う事を忘れさせる程に俊敏で的確だが俺には当たらないのだ。

何度目かの攻撃をかわしたところでレイピアを龍の手でがっちり掴み、抉るように打ち込まれた拳をバシッと受け止めた。


「くっ!この卑怯者!」

何なのさ・・それじゃ攻撃当たらないといけないみたいじゃないか!

「アタクシを女だと思って舐めていると痛い目を見ますわよ!!」


そう言った縦髪ロールは自分の得物を簡単に手放して距離をとった。距離にして約五メートルを一度の跳躍で移動すると両手に魔力を込め始めて構えた。左手をピンと突き出し右手をぶらりと垂れさせているが両手は綺麗に開かれているのだ。

どうやら掌打を主軸にした戦い方をするらしく、両の掌には風の魔法を纏わせているようでインパクトと同時に放つようだ。理に適っていると感心した。パワーでは負けてしまうからそれを補う為に展開しているが当てさえすれば攻撃を通す事も可能になる訳だ。


「行きますわよ!」

「ちょっと・・・」


踊るように掌打のラッシュをバシバシ入れてくるが俺は全てを丁寧に流して行く。

どうして当たらない!顔に完全に出てしまっているが攻撃の最中に俺が地面に刺したレイピアを広い上げさらなる攻撃を重ねる。綺麗だと思った。

流れるように隙が無く、それでいて力強い攻撃はダンスのようで縦髪ロールも踊っているのだが。

そろそろ面倒だと思い相手の両手首を握りダンスを強制的に終了させたのだった。


本話もお読みださり有難う御座います。

ブックマークも感謝致します。


暫くは雪山でストーリが展開して行きますが次話以降も宜しくお願いします!



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