龍と馬とリュウにニンフ
事がようやく収束しても天には未だ光が昇らずにいた。町の外へ戻ろうとしたけど、ニンフの後ろ髪引かれる思いに泉のある場所で眠ることになった。あれだけ寝ていたにも拘らずレミナはドリドゲスに抱きついた状態で眠りへと落ちていく。俺も俺とて地面にゴロンと寝そべり睡魔を待った。
睡魔は中々に襲って来てはくれずに何度目かの寝返りを打った時に背中に暖かいモノを感じた。
「飼い主様は眠れないのですか?」
「何だよ?」
「飼い主様が眠れなさそうだったので私めがお手伝いしようと思ったのですよ」
そう言った真っ裸のニンフは後ろから俺に抱きついてきたのだ。特盛ぐにぃの圧力は計り知れない程のもので余計に眠れなくなる。
コイツは本当に何を考えてんだか・・・。
「ニンフの使う魔法は人を惑わしたり眠りに落としたりもできるのですよ?」
「自然に眠りに落ちないと寝覚めが悪くなりそうだから余計な事しなくていいんだぞ?それになんで引っ付く必要がある?」
「飼い主様がそのブレスレットをしているからなのですよ~。それの近くにいると安心するのですよ」
「これから付いて来ることはもう了承したんだ。だからこのブレスレットはお前が付けておいていいんだぞ?」
「それは嫌なのですよ~飼い主様が持っているから意味があるのですよ」
「そうかい・・・あと飼い主様ってのは何とかならんのか?」
「私めにとって飼い主様は飼い主様なのですよ?」
「あと、敬語で話す必要なんて無いからな・・」
そんな会話をしている内に俺は眠りに落ちた。
-皆寝てしまわれましたか、ニンフは余り眠ることが無いので少し暇なのですね~。本当なら今頃は消えて無くなっていたのに、エルジュの我が儘なのにここまでしてくれる。力を流された時に力強くも優しいものを感じたのですよ。飼い主様と初めて会った時はまだ小さな子供だったのに何時の間にか大きくなってて驚いたのですよ?ドリちゃんが何事も無くしていたので気にしてませんでしたけど・・飼い主様の力は人の枠を越えているようにも思うのですよ。今度、時間があったら聞いてみるのですよ。
敬語で話す必要は無いか・・・どうしたら良いのでしょうか?なんだかエルジュはエルジュなのに飼い主様に力を流されてからは根本から変わってしまったように感じるのですよ。未だに飼い主様の力が体の中で疼い・・・はぁはぁ///エルジュはどうなってしまうのでしょうかはぁはぁ///これが飼い主様の色に染められて行くということなのでしょうか。それに・・・zzz。-
眠ることの無いであろうニンフは完全に眠りへと落ちて行った。彼女自身も自分の体がどうなっているか未だ掴めていないようで戸惑いをどうにか隠しているのだった。彼の力が完全に馴染む頃には今の自分とは違う自分になる事を彼女はまだ感じてはいなかった。ただ自身が変わって行く事には疑問も持たず、嫌悪もせず、受け入れてしまうのだろう。少しずつ黄金の光が地の果てへ落ちて行く頃には静寂だけが空間に満たされていった。
フハハハ貴様はここでお終いだよ!我が必殺の牙に喰われて死ぬがいいっ!!喰らえ!エレクトリカルエナジークラッシャアー!!駄目だ避けきれない!このままだと直撃を食らって終いだ・・ぐっあぁあああああ??あれ?ん・・・はっ!これ柔らかい!凄い!気持ちが良い!!
「あふっ///そんなに揉まないで欲しいのですよ」
「んにゃぁあ~これでぇ俺の勝ちにゃぁ・・・」
「そんなにされたら///」
んぐっ!?息がっ・・詰まる!?ぐるじぃ・・・。
両手で押しのけた先にはエルジュのぐにぃをぐにぃしている光景が広がっていた。完全に俺の手が吸い付きそして飲まれているのだ・・・なぜ?
そんな事を思う前に目の前の変態の表情を見て咄嗟に両手を戻した。「あんっ!!」そんな桃色吐息を出して恍惚に飲まれていた変態が俺を見つめて頬を染めている。
「飼い主様は朝からこのようなことがお好きなのですよ~///」
「一体何をしたんだよ・・」
「酷いのですよ!私めが飼い主様を起こそうとしたら急に乳を揉み///」
「あーうん。二度としないようにするから許してくれ・・・すまなかった」
「二度としないのですか!それは行けません!毎朝して欲しいのですよ!」
「何いってんだ・・・変態が・・・」
「もっと罵って欲しいのですよ!」
変態性に拍車がかかってる気がする。
悶えながらはぁはぁ言ってる・・・。
俺は立ち上がりぐっと伸びをすると変態も同じ様に伸びをしている全裸でな。これから一緒に行動することになるが常に全裸という訳にも行かないのだよ。服をどうにかせんとな・・・。
一晩中ドリドゲスの背に張り付いて寝ていたレミナが目を擦りながら朝の挨拶をしてきた。
レミナは未だ全裸のエルジュを見て、
「いつまでそんな格好してる服着ろ」
なんて低いテンションで言い放つ。
「お姉さま、おはようございますですよ~でも服なんて今まで一度も着たことなんてないのですよ」
衝撃の事実を突きつけられた。
「エルジュ・・・お前それ本気で言ってるのか?」
「本気も本気なのですよ?ニンフは服なんて着ることが無いのですよ?」
「でも流石にこれからもそのままって訳には行かないことは理解してるよな?なっ?なっ?」
「飼い主様にこの体をお見せできることが私めの至福なのですよ~?」
「私服だけにか?」
「主様・・・何言ってる?」
ちょっとした茶目っ気だったのに全力で叩き潰されたような気持ちになった。いや!でも服を着ないと駄目だ!これは絶対条件なんだ!中身はアレだが見た目だけで言えばエルジュは本当に美人なのだ。そんな美人が常に往来を裸で移動なんてしてみろよ俺の人間性が疑われるだろう。
「いいかエルジュ!」
「はい!飼い主様!」
「お前は服を着る意思はあるんだな?」
「飼い主様がそれを望むならそうするのですよ」
「よし、分かった!ならいい!」
レミナはそれを無視して自分の荷に手を突っ込みガサゴソと何かを探しているようだ。
「あった!」の声に反応すると一枚の服を取り出してエルジュに手渡したのだったが・・・。
「あの、お姉さま・・流石にこれは大きさが違いすぎるのですよ・・・」
「大丈夫!主様に頼めばいい」
「えっと・・飼い主様?」
「服どうしたんだ、持ってなかっただろ?」
「ルビネラが沢山くれた」
なるほど合点がいった。ルビネラ製の服なら俺の龍力を流せばサイズ変更なんて簡単だ。エルジュに服を当ててサイズを測る。大きすぎても小さすぎても駄目だから慎重にする。
「飼い主様?どうしたのですよ?」
頭を傾げているエルジュに真っ直ぐ立てと命令するとビシッと体に力を入れて直立した。
「よしっ、このぐらいだな」
「服が大きくなったのですよ!!」
「これで着れるだろ?とりあえず着てみてくれ微調整も出来るから」
「はいなのですよ!!!」
凄い喜びようで服を来たのだが、いやこれはプレイでもない限りは駄目じゃないかな?目の前に立つエルジュは幼稚園児が着るようなスモックを纏っているだ。
「レミナ?」
「どうした主様?」
「他に違うヤツ無いのか?」
「違うやつか!待ってろ!」
その後、数回の衣装チェンジの末に着心地が良い衣装をエルジュ自身が選んだのだった。ただ、その数回がどれもこれもレミナに対して渡された衣装なのでエルジュが着るとどうしてもエロくなってしまった。最後に選んだ服以外の選択肢が無かったと言ってもいい。それを彼女が気に入ったのが唯一の救いだった。エルジュ曰く、着てるようで着てないような感覚が丁度良いらしい。彼女が選んだ衣装は真っ黒なサリーだった。
布地が薄く完全にぐにぃが透けて見えていたので赤い布をぐにぃに巻かせて何とかなったけど・・・。やたらと体のラインが強調されているのが逆にエロい。右肩から右腕に掛けて布地が無く、左腕の方だけ布が地面に垂れ下がる程に長いのだ。振袖かよ。
突っ込んでも理解されないことはもう理解していたので黙っていた。俺達が着ている服同様に模様が入れられているあたり同じような効果があるんだろうか?着てるだけで頑丈な鎧以上の効果がある服なんだし怪我されるより、もとい全裸でかっ歩されるよりはマシか・・・。
「飼い主様!見るのですよ~!この衣装とても綺麗なのですよ!」
「レミナに貰ったんだから大切にしろよ」
「はいなのですよ!お姉さまっ有難う御座いますですよ~!」
「うん!エルジュにとても似合ってる」
朝一のファッションショーが終了して、レミナの腹が減ったコールで朝食を取る事になった。朝食といっても黒くて硬いパンにスープという簡素な食事だったがレミナはおいしそうにむしゃむしゃ食べている。エルジュにも食事を手渡すと何やら戸惑っているようだった。
「どうした?簡素で悪いが節制が大事なんだよ」
そう言ったら彼女は消え入りそうな声で「いえ、そうではないのですよ・・・」しゅんとしてしまった。おもむろに口を開くと信じられないことを口にしたのだった。
「私めは、いえ!ニンフは人間の様に食事をしたりはしないのですよ」
「えっ・・・今まで一度もモノを食べたこと無いってことか?」
「そうなのですよ」
それを聞いたレミナは目をガッと開いて、正気かコイツ?と言いたげな表情と共にパンを喰らっていた。確かに信じ難いことではあるが多種多様な種族が生きてる世界だからそんな種族もいるんだと思えば何て事はない。
「ニンフは食事が出来ないのか?」
「ニンフも食事はするのですよ?憑いてる木や大地から力を吸い上げる様にしているのですよ?」
「俺達みたいな食べ物は必要ないってことか」
「必要無いのですよ~。でもこれからは飼い主様から定期的に頂かないとダメなのですよ」
「え?何を・・?」
「ですから力を吸い上げる対象が飼い主様になったのですよ?」
「どうやって・・・」
「そっそんなこと・・・私めの口から言わせないで欲しいのですよ///孕みそうなのですよ///」
何?力を吸い上げる対象が俺って?
どうするのさ・・・?え?やだ。なんか怖い。
無意識にパンを一欠けら千切りエルジュの口へと突っ込んだ。
「むぐっぅ~!もぐっふっ!!ふっふぁ~っふ!」
「いいから噛め!そして飲み込め!」
「もがっがふ!んぐ、んぐっ、んぐっ!!ごくっ」
強制的に口へ入れたパンを飲み込んだエルジュは蕩けそうな顔でふにゃ~としていた。気にせずに横から次のパンを運んでやると今度は普通にパクパクと噛んで飲み込んだ。ふにゃっとしているけど口だけは大きく開いていて次から次へとパンを放り込んでやるとしばらくパクパク食べ続けた。
「飼い主様!これは美味なのですよ!!こんな食べ物を人間はいつも食べてるのですか!!!」
「いや、このパンは固くてゴワゴワしてるからかなり安いパンなんだけど」
「パンおいしいからレミナは好き」
「何故今まで食べなかったのか後悔ですよ~!」
朝食もそこそこに昨日の遅れを取り戻すように出発した。いかに体躯が大きい馬と言えど三人で騎乗したらドリドゲスも辛いだろうと思う。ドリドゲスの様子を伺っているとエルジュと何やら話しをしているようにも見える。
「エルジュはドリドゲスと話ができるのか?」
「ずっとドリちゃんと一緒だったので分かるのですよ!ドリちゃんは平気だって言ってるのですよ」
「ドリドゲス、お前って馬は本当に凄いな!」
「ヒ~ン」
「だろ?って言ってるのですよ。ふふっ、ドリちゃんは飼い主様が本当に大好きなのですよ」
「俺だってドリドゲスのことは大好きだぜ?」
「レミナの方が好きだ!」
結局そのままレミナ、俺、エルジュの順番でドリドゲスに乗っかり進むことになった。ただ、真後ろから抱きついて座るせいで一定のリズムを刻み背中にぐにぃがぐにぃする感触が襲い続けてどうにかなりそうだった。
「あんまり引っ付いて座るなよ」と注意するも「飼い主様///エルジュを感じて欲しいのですよ~///」と完全に変態スイッチがオンになっている。
相手をしたら引き込まれる結果しか見えないのだ。
故に生殺し状態で移動し続けるハメとなった。
これから先、ずっとこれが続くとなると俺も正常じゃいられないような気がしてならない。ぐにぃは好きなんだよ?でも向こうから求めてくる中に俺はエロさを感じないのかもしれない。チラリズムとほんの少しのエロさで満足なのに、この変態はオープン過ぎてなってないのだ!
そんな思いを払拭するように地図を広げて目的地に思いを馳せたのだった。
本話もお読みいただきまして有難う御座います。
ブックマークをして頂いている方も感謝します。
本話でドリドゲス編は終了です。
次話以降から新章に入りますので次話以降も宜しくお願いします。