癒しの水
本話も読んで頂きまして有難う御座います。
ブックマークをして下さっている方々にも感謝です。
皆様が龍軌伝を読んで下さっているお陰もありまして、総合PVが五万を超え、ユニークPVも九千を超えました!本当に感謝です。七月からスタートしてもう直ぐ三ヶ月が経過しますが本話以降もどうぞ宜しくお願い致します。
丘をいくつか越え上り坂に下り坂を数度行った先に街が見えた。地図によればあの町の名前はマルドラと言うらしく、ジョコラ兵の詰め所といくつかの宿に商店がある程度の比較的小規模な構成の町のようだ。俺達には特に用も無いし通過するだけの町である。近づくにつれて町の全貌が視界に入るけど町と呼ぶには少々心もとない雰囲気だ。
先に進む為に町を抜けて行くだけでも門を通る必要があるらしく、入り口には門兵が左右に二名立っていてその手には槍が持たれている。
こちらに気が付いた左の兵士が手を上げてこっちに来いと誘導しているのでドリドゲスを見る。ドリドゲスは「言わなくても分かってるから」なんて感じでパカパカ歩いて兵士の手前で止まった。
「マルドラに用か?」
「通過するだけでこの先の町に用があるんだ」
「了解した。旅の道中といったところか」
「あぁ、今日は先の町で宿を取る予定なんでね」
「ふむ。では一応こちらも仕事なんでな持ち物を改めさせて貰うが良いか?」
「結構しっかりしてるんだな?何かあったのか?」
町の程度はヴォルマやジョコラなんかとは比べ物にならないぐらい小規模なのにそこまでする必要なんてあるんだろうか?不思議に思いつつもドリドゲスから降りてレミナを抱えて下ろしてやる。
「特に何かあった訳じゃないんだがな!昨日にジョコラから伝令が来たんだ」
右に居た兵もこちらに近づいてドリドゲスの荷物を調べながら続けた。
「何でもリエラ様のご友人がこの町を通るらしくて、不備等があっては失礼だし問題があってはいかんからと厳命されていてね」
「あ~リエラならやりそうなことだな・・・」
「だな!」
俺が口から零すように言った言葉を兵士は聞き逃さしてはいないようで。
「失礼だが、今リエラ様と言ったか?」
「あぁ・・俺達はジョコラから来たんだよ」
「とっということは、あなた様がリエラ様のご友人のシン殿であられますか?」
「いや・・そんな丁寧にしなくても」
荷物を調べていた兵士がドリドゲスを迂回するようにこちらに来て俺達を見た。
「申し訳ないのですが、何か証拠になるようなモノは無いでしょうか?」
「証拠って言われてもジョコラで何か貰ったりしてはいないからなぁ~この手とか割と特徴的だけど」
通行書らしい物なんて貰ってないし何か無いかと貰った地図を出しては見るけどこんな地図で証明にはならんしな。
「その地図を少し拝借しても宜しいでしょうか?」
地図を見た兵士が言うので地図を広げて渡したら兵士の目がぎょっとなった。きよし師匠もびっくりする程に。もう一人の兵士は俺の手に釘付けになってるけど・・・。
「この地図で十分です!それに手の事は既に聞いておりました!」
「大変失礼致しました!」
「地図で何か分かるのか?手は特徴的だからこっちの方が分かりそうだけど?」
兵士に聞くと地図の裏側をこちらに向けて少し光にかざすようにすると、地図に光が透過して紋章が透けて見えたのだ。
「使われてる紙が特殊な加工がしてあったのか」
「そうなりますね、この紋章はジョコラのものでリエラ様しかお使いになられませんからね」
「そんな事なんて一切言ってなかったし気が付かなかったよ」
「見る人間が見れば分かるようにという事だったのかもしれませんね」
「大変失礼致しました。町を通過されるとの事ですので左側から入って頂いて裏の通路からお進み下さい」
「手間を掛けさせてしまって申し訳無かったな」
「いえ!リエラ様のご友人に失礼があっては我々の面目が立ちませんので!」
「後、町を抜けるまでは下馬する決まりですので宜しくお願いしたします!」
そう言った兵士から地図を受け取りレミナと手を繋ぐともう一度だけ兵士に礼を言って町へ入った。言われたとおりに町の裏側の通路を二人と一頭で歩くと細々と露店が出ている。名物らしい食べ物を売る店や旅の必需品等を取り扱う店が多いようで、レミナはじぃ~と物色するように見ては「アレは無い」「アレは不味い」とか感想を教えてくれる。言うまでも無くドリドゲスは後ろからゆっくりと付いて来る。
「やぁ~旦那さん!何か買っていかれませんか?」
不意に声を掛けられて脚を止めてしまった。
「見たところ旅のお方と存じ上げますが、旅の必需品等はいかがでしょうか?」
何も言って無いのに商品を進めてくる辺りに商人魂を感じるけど特に必要無い。大体の物はルナやリエラ達が持たせてくれているし節約は大切だ。
「特にいらないかな?必要な物は大体あるし困ってないから」
「いやいやいや!旦那さん!持っておくに越したものは無いと言える商品が御座いますよ!」
私服を肥やして丸々としたボールが喰い気味に商品を手にしてこちらに見せ付けるようにしてくる。
「これなんてどうでしょうか?一粒飲めば直ぐに腹痛が治る薬に御座います!」
「いや、いらない」
「では、こちらなんてどうでしょうか?見るところ小さいお子様との二人旅!この商品は少し食べるだけで満腹感を味わえる商品ですよ?」
「そんなんいらん!」
食に対しては文句を言ったりしないレミナが叫ぶように言うのだが、何が彼女をそこまでさせるのだろうか?
「では仕方ありません!ウチにある商品の中でも一番の物です!」
商人は辺りを見回す様にしてコソコソと液体の入った瓶を取り出したのだ。
「これは?」
「旦那様の目に止まりましたか!これは大きな声では言えないのですがね!癒しの水と呼ばれる薬に御座います」
「癒しの水?」
「えぇ、そうです。この水を飲むだけであっという間に怪我が癒えますよ!」
胡散臭いことこの上ない商品を目玉に据えている辺りに怪しさしか感じない。
「嘘だと思っておられますな?この水はある町の近くにある森の泉の水なのですよ。その水には癒しの効果があるんですよ」
近い、凄く近い、不快感が凄い。仮にそんな水があったとしても俺もレミナもこの服があるから怪我なんてそうそうしないのだよ。胡散臭い商人から逃げるように歩き出すと瓶が割れる音がして振り返るとびっくりする光景があった。
ドリドゲスが商品を咥えて地面に叩きつけたり奥にある同じ商品を荒らしていたのだ。
「おい!何をするんだ!この糞馬がっ!!」
「ヒン!!!」
「止めろって言ってんだろうが!!」
「ヒンッ」
商人がドリドゲスを殴った瞬間に俺は商人の手を握り指の骨をポキッとしちゃった☆だって賢くて優しいドリドゲスを殴る下種に生きる資格なんて無いじゃない。
「ぐあぁああああ!!!」
商人の絶叫に周りの人間達の視線が集まると商人が叫ぶように言うのだ。
「店の商品を潰しやがったんだ!妨害行為だ!兵士達に突き出してやる!!」
まるでの○太君だな・・・。あっと言う間に兵士達が集まると何事だ?といった感じで人だかりが出来てしまった。しまった逃げられない。
「何事だ!!」
「聞いて下さいよ!こいつらが店の商品を破壊し尽くした挙句に私の指の骨を折りやがったんです!」
やばい・・どうしよう。
また捕まるとかマジ勘弁なんだけど、破壊し尽してなんてないし。兵士が俺達を見るとドリドゲスがまだ中身が入っている瓶を俺に転がしてきた。
ドリドゲスの目には何か強い意志が感じられて俺は瓶を手に取った。癒しの水って言ったか?怪我が治る水。傷を癒すような効果あるってことは何かしらの魔法的効果が加されいるんだろうが・・・。
目に龍力を込めて改めて見てみるが特に何も無いしただの水のようなんだが。俺の目から見てもただの水と分かる以上、これは水以外の何者でも無い。
このボールは嘘を言っていることになるけどなんて阿漕な商売してやがんだよ。
「ちょっといいか?この商人が言うのは事実か?」
「半分正解で半分外れだな・・・」
「何を言っやがるこの糞野朗がっ!」
「お前は少し黙っていろ!」
兵士に言われて黙ると俺に続けて問うた。
「半分正解で半分外れとはどういう意味だ?」
「その商人が言うにはこの水には癒しの効果があるようなんだけど」
「うん?その水がか?」
「商人が言うにはな?でもこれは何の変わりも無い水なんだよ」
「貴様!嘘を付くな!」
ボールが一々口を挟んできてとてもウザいのぎっと睨むとまた黙った。
「何故ただの水だと分かるんだ?」
どうしよう・・・なんて説明したらいいか分からない。魔力が込められてないからと言ってもエルフじゃないし信じてもらえないだろうな。
「どうした?何故黙る?」
このままじゃ俺はまた牢屋行き確定なのか?
嫌だよ!レミナの腕をぐにぃ出来ないなんて我慢出来ないよ!どうしたものか?証明出来たら良いんだろうけど。
商人と目が合った。
俺は商人に近づくと折れた方の手を取って兵士に言う。「この水が本当に癒しの水だったらさ?この折れた指も治るだろう?」そう言い放つと商人が「うっ」なんてありきたりな同様を見せてくれたので行けると確信する。
「いいだろう。だがもし治った場合は理解出来ているだろうな?」
「あぁ分かってるよ」
「やめろ!貴様!!」
「うっさい黙れ」
ボールの意見を無視して水を掛けると確かめるまでも無く治らない。当然だ。
「ほらな?分かったか?」
「治っているようには見えないな、おいっ!」
違う兵士に促すと兵士が商人を捕らえようと近づくが痛い所を突かれた。
「待ってくれ!偽物なんかじゃないんだ!」
「言い訳はもういい!実際に貴様の指は治ってないだろうが?」
「違います!見てくださいよコイツの手を!これは魔物の手だ!化物の手だ!この手のせいで聖なる力は阻害されたんだ!」
そう言った商人の言われるがままに全員が俺の手を見た。鱗に覆われた龍の手。俺にとってこの手は自慢出来る手なのにそんな事を言われると少しは凹むんだぜ?兵士達の視線が手に集まると不意に手を握られた。
「主様の手は綺麗!」
レミナが怒りながら言ってくれたのだ。
「主様の手は化物ちがう!」
ぶぅ~と商人を睨むレミナの気持ちが嬉しい。
俺はレミナの頭を撫でてやるとにたぁ~の顔が一瞬で生成される。だが、これはどうしようもないな。水が偽物と証明しても俺の手に悪い力が無いと証明出来ない以上は信じてもらえないだろう。
考えるが答えが出ずに兵士が俺も捕まえようと動くように見える。逃げるか?こんな兵士程度なら何人掛りでも捌ける自身はあるが・・・。
「何事だ!!!」
「なんの騒ぎだ!!」
人だかりの外から二人の兵士。左兵と右兵と呼ぶことにしよう!左兵と右兵が人だかりを掻き分けて入ってくるけどお前ら門番じゃなかったのかよ。伝令が来たからわざわざ門の前に居てくれたのだろうか?なんて考えていたら二人が俺達の側まで来て改めて事情を話した。
「癒しの水ねぇ・・・」
左兵は胡散臭い物を見るように瓶を手に取り眺める。「はい、そちらの者が言うにはこれは偽物だと、ですが商人はそちらの者の手のせいだと」
「お前達はコチラの方が誰か知らないようだから言うが、こちらの方が先日連絡にあったシン殿だ」
右兵が周りの群集に聞こえるように言う。
「リエラ様のご友人であられる御方ですかっ!」
「そのような方が嘘なぞ付く訳ないだろう!」
「でっですが・・あの手は・・」
「シン殿がオトシゴ様だと言えば理解出来るか?」
オトシゴの部分に関しては伏せるように言ったせいか聞こえた兵士達の背筋はピシッと伸びて俺に謝罪をくれる。だけど別に偉い人間なんかじゃなから逆にこちらが困ってしまう。右兵が指示を出すと淡々と事態は収束して商人は数名の兵士に囲まれるとそのまま連れて行かれてるけど可哀想だとは思わん。
兵士達から謝罪を受けたが俺も指折っちゃったから取りあえず謝っておいた。面倒くさいことから解放されやっと町から出た所でドリドゲスを見た。
「大丈夫か?痛くないかドリドゲス?」
「ヒン↓↓」
「ドリドゲスここ痛い?」
「ヒン↓」
「あの商人も大概だけどさ何で行き成りあんな事したんだ?」
「ヒ~ン」
「ドリドゲス悲しい?」
「ヒン・・・」
流石に理由を聞くことは出来ないから仕方ないが無いが、ドリドゲスが急にあんな事をするような馬じゃない事は俺が知っている。きっと何か理由があったんだろうと思うしかないか。
ドリドゲスの頬を撫でてから言ってやる。
「今度からは何かあったら先ず俺に頼れな?」
ドリドゲスは真っ直ぐした目で俺を見つめると「ヒンッ!」と一鳴きで答えたのだった。




