リスタート
うぅ苦しい、止めてくれ!なんでこんなことに?
俺はこんなことなんて望んじゃいない!
触れたいだけなのに何で絞め殺されなきゃいけないんだよ!頼むから離れてくれ・・・助けて・・・。
苦しい!息が出来ないんだ!頼むっ!レミナ!見てないで助けてくれ!
「主様呪われるといい。苦しんで死ぬといい!」
何を言ってるんだ!レミナ!レミナぁあああ!
「っさま・・あ」
「っさま!あ・・・て!」
「いい加減にしろ!!!」
「へぶっ!!」
顔面に衝撃を感じ一瞬でそれが痛みへと変化する。
「いい加減にしろ!起きろ!そして離すといい!」
「ふぇ??」
俺は一体なんてことをしてしまっているんだ!!
目を擦りながら声の方へ顔を向けると日本ならアウトかもしれない自体が起こっていた。昨晩はいつものようにレミナと一緒に寝たのだったが、いつもなら寝相の悪いレミナによって俺の安眠が阻害されるのだが今日に限って・・・。
俺はレミナのお腹をぐにぐにしながら彼女の二の腕を甘噛みしていたらしい。俺は決してロリコンなんかじゃない!誓ってもいい!なんならルビネラにだって祈りを奉げる覚悟すらある!
「主様、噛み噛みしたりペロペロしてた。流石に引かざるを得ない、あとぽんぽんもぐにぐにしてた。有り得ない」おっ俺が?そんなことを?嘘だ!俺はそんなことなんて知らない!現実逃避の思考から出た言葉を叫ぶ。
「無実だ!」
「事実だ!」
「な・・んだとっ」
「主様だからセーフにしても良い」
「ほっ本当か!!」
「レミナは嘘言わない」
「なんて子でしょう。こんな良い子に育って嬉しいわ!これからも優しい子でいてね!レミナたん!」
「主様はなんだか今までで一番気持ち悪いからこっち寄らないでいるといい」
「なんだとそんな事を言う悪い子にはこうだ!!」
「やっやめろっ!離せ!」
五分程だろうか?俺は無我夢中でレミナの腕をペロペロし続けてやった。ペロペロを止めたのはドアに前に立つリエラと目が合ってからだったけどな。
「なっ何をしているのだ・・・」
「主様がペロペロを止めなかった・・・」
「ちっ違う!!俺は悪い事なんてしてない!!」
もう開き直るしか無い!認めては行けない気がする!確かに途中から楽しくなっていた節はあったけど違う!
「レミナの龍の力を舐めていただけだ!」
「そっそうなのか?」
「違う!主様は嘘言ってる!ペロペロ舐めながら顔が笑ってた!」
「馬鹿者!そうでもしないとレミナが怖がるだろうと思ってだな!」
「それならそうレミナに言えばいい!」
「すいませんでした!!!」
「二度は無い!!」
「有難う御座いました!!」
リエラはもう何がなんだか理解出来ないようで、俺は着替えたら行くよと促しこの空気から解放されのだった。レミナにもう一度だけ謝ると以後ペロペロ禁止令が発令されてしまったが許されたようだ。
その後はいつも通り天に両手を上げている着せ替え
レミナちゃんを着替えさせて荷物をまとめて部屋を出た。
「シン様、こちらの地図に最短距離で移動出来る道程を記しておきました」
「全部任せてしまって申し訳なかったです」
「いえ、私が申し出た事なので御気になさらないで結構ですよ」
「そうだ!シン!後二日だけ城に留まれ!」
「なんで?今日出発するよ?」
「うぐ~なら城から出られないように命を出しておこう!」
「リエラ様、何を仰っているんですか?」
「久々のシンだぞ!俺はもっと遊びたいんだ!」
「公務が既に溜まっておられますから無理です」
「俺達のせいでなんかすまなかった・・・」
「シン様が謝罪することなど一切ありません。元から溜め込んでいた仕事ですから自業自得ですので」
「あ~それはリエラが悪いから俺達は出発するわー」
「よし!城の門を全部閉じさせよう」
「リエラ様・・・」
「分かったからその目で睨むな!」
タンテの方を見るといつも通りの清まし顔だったんだけど一体どんな目をしていたのだろうか?気になるが見せてと言って見せて貰えるようなモノでもないしだろう。リエラ達に挨拶を済ませてさっさと出発しよう。
俺はそのまま歩き出そうとするとタンテから言葉が出た。
「シン様、地図通りに進まれますと本日中には二つ目の街まで行く事が可能だと思います。一つ目の街は胡散臭い連中が多いと聞き及んでおりますのでお気をつけ下さいませ」
「ドリドゲスの脚ならもう少し先まで行けそうだけど用心に越したことは無いか・・・ありがとう」
「いや、辺りが暗くなる前には宿を取ったほうが懸命だぞ?」
「そんなもんなのか?」
「二つ目の街以降は山道で険しい道程となりますので移動するなら明るい内が良いかと」
「気をつけることに越したことは無いか・・・そうだな、今日は取りあえず二つ目の街まで行く事にするよ」
「うむ。気をつけるんだぞ?何かあったら直ぐに言え。お前達を妨げる者があるなら切り捨ててやる」
「リエラ様はこれから仕事ですので」
「うっ・・・」
「じゃあ俺達はそろそろ行くよ。何から何までありがとうな」
「なに気にするな当然のことだ」
「私共もルビネラ様に御会いする機会を得られた事に感謝しているのですから」
彼女達との挨拶も程々にして厩舎へと向かいドリドゲスと合流した。
ドリドゲスには色々と荷物が装備させられていたが「こんなもん全然余裕だし」と言わんばかの顔をしているので心配無さそうだ。
「おはようドリドゲス」
「ドォオリドォオゲスウゥウ」
「ヒンッ!」
ドリドゲスの首にレミナがしがみ付くとじゃれ合っているようで俺は厩舎の兵士にお礼を済ませてから騎乗した。レミナは俺の前にすっぽり収まっていてもたれるようにして座る。
「よ~しっ!しゅっぱ~つ!」
「お~!」
「ヒ~ン!」
街の出口付近までゆっくり移動をしていると後ろから声を掛けられた。ドリドゲスが何もせずとも止まってくれて振り返ると・・・。
「はぁん・・はぁん・・何度も呼んでいたのに無視するなんて酷いわん!」
「あ~全然気が付かなかったです」
「坊やったら・・もしかしたらワザとしてたのかしらん?そうだとしたら相当な鬼畜ねん!ぷんよっ!ぷん!」
「あ~凄く可愛いですね」
「思っても無い事を言われても嬉しくないわん!」
「それでどうしたんですかべネラさん?」
「これをあげようと思ってねん!」
「これは?手紙ですか?」
「そうよ~ん。ヴェーネ大雪山に行くのよねん?なら港町ヴィルポルトで船に乗る事になるのよん?」
「それとこの手紙がどう関係してるんです?」
「そのお手紙はヴィルポルトのギルド長宛に一筆書いたのよん!あの子とは知り合いだから良くしてあげてねんってかいてるのよ~ん」
「何から何まで有難う御座います」
「いいのよん!滅多に見れないモノを見せて貰ったお礼なのよんっ」
「ルビネラですか」
「坊やもよん?またいつでも寄りってね~ん?」
「ええ、帰りにまたジョコラに来ると思うんで、その時にまた」
彼女から貰った手紙を懐に入れて手綱を持つと指示も無いのに歩き出してくれるのがドリドゲスだ。レミナはべネラにぶんぶん手を振っているがバシバシ俺に当たっているのはワザとなんだろうか?一番強く振ったその手が顎にヒットして痛みに襲われているとレミナも自分の手を抱え込んでダメージを受けているようで今後は気を付けろと話すと頭を上下にぶんぶんしていた。
急ぐ必要が無い以上は無駄にドリドゲスを走らせることも無く俺達はゆっくりとしたペースで進む。舗装されていない土の道に響くのは蹄の音と時折吹く風で揺れる葉の音だけでそれが気持ち良い。レミナの頭がさっきからゆらゆら揺れて終いには俺に持たれかかり完全に夢の世界に旅立ってしまった。
助手席に乗る人間は寝てはいけないだろう?と日本ルールを思い出してしまう。現在の俺はドリドゲスに乗せてもらっている状態で運転している訳では無いから睡魔がちょくちょくお誘いに来るのだ。でも、俺は助手席では寝ない!
運転もとい運んでくれているドリドゲスに悪いという気持ちがなんとか最後の一線を死守してくれている。何か話でもしないと睡魔に勝てそうにない状態なのは否定できないんだが・・・。
「ヒンッ!!」
「大丈夫だドリドゲス・・・俺は起きてるぞ!」
「ブルルゥ」
「迷惑掛けるな、ヴィネジュに会いたいだろう?」
「ヒ~ン・・・」
「なんだよ?前だって仲取り持ってやったのに」
「ヒン」
「また蹴られたのか?」
「・・・」
「押してダメなら引いてみろって言う言葉があるんだぜ?」
「ヒン?」
「いいか?今まではヴィネジュに正面から向かって行ってただろ?」
「ヒヒン!!」
「でもな?しばらくはヴィネジュには会えない!」
「ヒン↓」
「だからな?ヴィネジュからしたらいつも来てくれるドリドゲスが居なくなった事で寂しさみたいなもんを感じるんだよ」
「ヒン?」
「いつも居たドリドゲスが居ない事で少なくともヴィネジュはお前の事を考えてくれるって事だよ」
「!!」
「ヴォルマに戻ったらヴィネジュの方から寄って来てくれるかもしれんぞ?」
「ヒン!!!!」
「レスタには手紙に色々書いて送っておいてやるから安心しろな?」
「ヒ~~~~~ン!!!!」
「ドォリドォゲェ~スうるさぁあいいい!」
気持ちよく寝ていたレミナが起きてしまい、ドリドゲスの立派な鬣をモフモフし始めてこの話は流れてしまった。だが先ほどから比べるとドリドゲスの気分も少し良くなっているようだ。蹄が鳴らす音が軽快になっているのだその証拠だ。青空に上り燦々と降り注ぐ光が真上に見え始めて、ジョコラを出発してから数時間は経過してるだろうことを教えてくれている。
「そろそろ腹が減ってきたな・・・」
「レミナも減った・・ペコリスト手前」
「ヒン」
「よし!川が見え始めてるから良さげな場所でお昼ご飯と休憩にしようか?」
「ご飯!ご飯!」
「ヒン!ヒン!」
川幅が広く浅瀬になっているスペースを見つけるとそこで休憩をとることにした。川辺に着くとドリドゲスから荷物を下ろして自由にしてやると一目散に水を求めて川へ向かった。俺もレミナもそれに続いて川の水で顔を洗っているとドリドゲスとは違うけたたましい呻き声が正面から聞こえた。
川幅は五メートル程あるにも関わらず何かが対岸から飛びかかって来る。ドリドゲスがレミナを咥えて後ろに下がり、俺は飛びかかってきたそれにアッパーカットをぶち込んだ。軽く数メートルほど上空に飛んだそれは地面にそのまま落下して動かなくなっていた。ジャガーのような体躯にチーターの様なしなやかさを持っているそれは既に息絶えていてはいるけどあまり触りたくない。
「主様!それ!何!?」
「う~ん。俺も見るのは初めてだけど多分こいつはペッパーティパルドだと思うけど・・教えて貰ったヤツより大きいしなんか雰囲気が違うような?」
「主様は分かるのか!?」
「フェルがお話で教えてくれたんだよ」
フェルからは色んな話を聞いていて良かったと思う。こいつの特徴は異様にデカイ耳と真っ黒な体に茶色の斑点がある。そして何よりもその体躯からは香辛料のような香ばしい匂いが漂うらしいが話しの通りでかなり良い香りがしていて食欲が沸く。
食べてはダメだと教えてもらってはいたんだけどこれを食べようとは思わないのが感想だ。
なんで食べたく無いかと聞かれたら顔だよ。顔。
虎やチーターのような猫科の動物は格好良かったり可愛いって感想を持つけど。コイツの顔は酷い。
二日酔いで吐きそうなぐらいの苦しい顔をしているんだぜ?何がこいつ達の顔をここまでにしたんだろうか?元居た世界で仮にコイツが生息していたなら俺は自分の顔に自身が持てただろうな・・・。
「主様!これ食べるか?」
「食べません!」
「でも美味しそうな匂いだ!」
「食べたらこんな顔になるけど良いか?」
「・・・嫌だ」
レミナですら若干の嫌悪感を抱いているようで、俺は蒼煉を撃ちペッパーティパルドを焼いた。今日のお昼ご飯はタンテが持たせてくれているのでそれを頂くことにしていたが、これを見た後だと少し胃が黙りこんだ。匂いだけなら良いんだけど顔を見てしまうともうどうにもならない。
少し離れた場所でレミナに準備を手伝ってもらい俺はドリドゲスにも餌を与えた。ディルカーレでもお弁当はあるようでタンテの手作りだろうか?
かなり可愛いものとなっていてレミナは終始ご機嫌で食べ続けた。昼食と休憩を兼ねた時間もあっという間で再び荷造りをして行くと、川辺からレミナが両手で何かを包むようにして走ってきた。まるでふわふわしている黒い例のアレを捕まえたとばかりだな。
「虫でも捕まえたのか?」
「しょうもないモノ違う!主様!これ見て!綺麗」
レミナが包み込む様に持ってきたそれを見せてくれる。彼女の掌にはビー玉よりも一回り大きい燃えるような赤色の石があった。レミナからそれを貸してもらい魔力を見るようにして注視してみるとこれがどういったモノかは分かった。
ピトラと呼ばれる魔力を帯びたガラスのような石で長い時間をかけて蓄積された魔力が凝縮して生まれるらしい。琥珀が天然樹脂の化石ならコイツは魔力の化石とでも言えばいいのだろうか?だがなんでこんな所にあるんだろうか。
「これをどこで拾ったんだ?」
「主様がさっき燃やしたブサイクなヤツの所」
「確かに教えて貰った特徴と少し違っていたような気がするんだけど体内にピトラが生成されてたのか」
「これどうする?」
「レミナが持ってたら良いんじゃないか?もしかしたら高級品かもしれんぞ?」
「食べれないなら意味は無い・・」
「流石にそれは食べれんだろうけどさ・・・」
「レミナが持ってる!欲しかったら主様にやる」
「ありがとさん」
仕度を済ませてから俺達はまた元の道へと戻りそして街に向けて再び出発した。
ドリドゲスの脚なら余裕過ぎる道程だろうからゆっくりしたペースでのほほんと行こう。
本話もお読みいただき有難う御座います。
ブックマークをして下さっている方にも感謝です。
この前まで暑かったのにもう9月も終わりそうですね。
今年ももう残すところ三ヶ月と少し・・・早いです。
やり残したことの無いよう精進です。
次話以降も宜しくお願い致します。




