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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第四章 クラジョ・コラジュ編
32/217

ドキドキ再会、時々ドリドゲス

拝啓 ヴォルマの皆様

現在の私は長い井戸の底のような牢屋の中にいます。膝上ぐらいまで水に浸かっていて寒いですがなんとか元気でやっています。さて、今回このような状況に何故なっているのでしょうか?

私が一体何をしたと言うのでしょうか?

理由も分からぬままにレミナと強制的に離されリエラにも会えないままです。正直に申しまして非常に不愉快極まりない事この上ないですが、飲み水だけは確保出来ているので良しとしましょう。

抜け出すこと自体は簡単なのですが、レミナの居場所が分からないので簡単には動けそうもありません。最悪の場合は・・・いえ、なんとかしてみますのでご安心下さい。私は元気です。

末筆ながら皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。

PS.お昼ご飯は穴の上から投げ込まれ水中にドボンしてぐちゃぐちゃになったグズグズのパンを頂きました。



「なんでやあああ!!俺が何したあああああ!!」

「うるせー!悪党がっ!」

「何もしてないだろうがああああ!」

「黙れ!この下郎がああああああ!」

「だから何もしてねぇだろおおお!」

「誘拐犯が喚くな!この化物がっ!」

「訳が分からんぞぉ!このう●k!」

「うっせぇ!もうしゃべんな化物!」

「オラが何しっだっでいうんだべぇえ!家にけぇしてけろぉ!無実だぁあ!!」

「黙れと言っているだろう!!」

「ぶっぁあああやめてけろおお!」


上から魔法で水を注水され胸下の辺りまで水嵩が一気に上がった。なんでこうなった?それに誘拐犯ってなんだよ・・化物とか言われたし・・・。

この御手手のこと言ってるのは仕方ないけどさ、何?レミナを誘拐したとか思われてるのか?レミナが話をしてさえくれれば大丈夫だろう。なんとかなるさ!


「大丈夫だったかい?怖かっただろう?」

「主様怖くない」

「あっ主様っ・・御嬢ちゃんもうそんな呼び方しなくても大丈夫だよ」

「???」

「主様いつ来る?」

「もう大丈夫だからね?もうすぐお父さんとお母さんが来てくれるよ!」

「???」

「お腹空いているだろう?食べてもいいんだよ?」

「くれるか?」

「沢山食べるといい!」

「頂く」


むしゃむしゃと兵士達が用意してくれた昼食を食べる彼女は残念ながらまったく現状を理解していないのだった。

「あの野朗はどうしている?」

「水牢に閉じ込めましたが、何やら無実だの何だの叫んでいるようでした」

「ったく太てぇ野朗だな!化物がっ!」

「まったくです!あまりに五月蝿いので魔法で水嵩上げてやりましたよ!」

「それでも生ぬるいっ!」

「しかし、変なヤツでしたね」

「城に来てリエラ様に会いに来たと嘘を付いて捕まるんだから相当な阿呆だぞ」

「それにあの手に背中の武器も怪しいですよ!!」

「あぁ!リエラ様がお戻りになられたら直ぐに罰せられるだろうよ」



髪がぱりぱりになってら、海に飛び込んでから拭いただけだったもんな。調度水も大量にあることだし!水浴びしようそうしよう!ふんふんふん♪ふふふんふん♪おっふろっ!おっふろっ!暖かいおっふっおっ!先ずはビー玉サイズの蒼煉を幾つか造り水中へ投下しまーす。本来なら爆発しますが龍力を最小限で展開していますので安心して下さい。

水中で屁でもこいたぐらいのボコボコが生まれる程度なのです。勿論匂いなんてありませんからね?そしたら少しずつビー玉を足して温度を調節しましょう!あなたが調度いい温度で止めればさぁ出来上がり!


あっあぁああ~ぎもぢいいぃ~。やっぱ風呂ってのは心が落ち着いてリラックス出来るな!ついでに塩気を含み若干パリパリになっている衣類も手揉み洗いで綺麗にしておこう!

「ふん♪ふんふん♪おっせんたく~♪おせっんたく~♪楽しい楽しいお洗濯♪」

「うるせえええ!!!黙ってろ!!」

上から水をブチ撒かれた・・・。

「こっちは風呂入りながら服を洗濯してんだよ!何しやがる!糞がっ!」

「五月蝿いこのゲロ野朗!!」

「・・・・は・・・・い」


なんかゲロ野朗って単語は聞くだけで気分が萎えるからやめて欲しい。洗濯した衣類は裾を壁の隙間に突っ込むことで落下を防いで、そのまま暫くまっぱで浮かんで時間を潰した。天井を見上げて浮かんでいると上から何かが落ちてきて腹の上に乗った。パン!!


「てめぇみたいな変態にでも飯ぐらいは用意してやる優しさに感謝してろ!」


お腹が空いていたから兵士の言葉を無視して口へパンを運びかけてやめた。ちょっと待てよ?

もしかしたら?やってみるか!!!とある実験を開始する。今の俺は子供の体型になれるんだ!つまり大きい体でパンを食べるより小さい体で食べる方が満腹感は味わえるのではないか?


単純な思いつきで実験を行うことにして、体に龍の力を纏わせるとガキの頃の体躯をイメージし続ける。ソルナが言うにはガキには戻れるが、実年齢以上の体に変化させることは難しいとのことだ。目を開き体を触ると小さな俺になっている。調度リエラと合った時と同じぐらいの年齢。


果たして満腹感はいかほどにっ!!

パンをむしゃむしゃ食べると胃が答えを送ってくれた。うん、成功だ。今後は食費が浮くことだろうと得した気分になり思わず笑みが零れるのであった。


長風呂も良くないと思いなんとかお湯を抜けないだろうかと思考する。壁を触ってみたり、足で底を確かめてみると壁の一部に葉が引っ付いているのを発見した。葉を取り除いてみると本当に少しだけ湯が流れ出している。龍の手でガリガリ引っかくように削ると湯の抜ける速さが僅かに上がった。

そのまま続けて削るとブロックが外れるように取り出せた。湯が全部抜け切るまでに時間は掛からなかった。


服を取るとサイズが当然合わない、がこれは龍製の服なんだ・・・どうせこうやって龍力を流していけば。「当然じゃろ?」とゼッペキンが話す声が聞こえたような気がするが気がするだけだ。服は俺のサイズに合うように縮んでいる。

なんでもありすぎるものどうなんだろうか?だが助かるのも事実だしその辺考え出したら限が無い。一々驚いてたら身が持たないから気にしないようにするしかないだろうな、と服を着ると上から声が来た。


「変態!王が戻られた、貴様は王達の前で処罰が言い渡される!!ハハハ!」

「・・・・」

「なんだ?怖くてちびったか?」

「・・・・」

「はん!横にある穴から外にでろ!」


横穴?湯を抜いた穴はたまたま開いた訳じゃなかったのか。大人が屈んで通れる程の大きさの穴へ進んだ。穴の先に微かに風の匂いを感じ高速カサカサ龍法ver2.0を展開して外まで移動。

外に出ると両脇を兵士に掴まれ立たされた。


「リエラ様!コイツが誘拐犯です!」

「こんな子供が子供を誘拐したということか?」

「子供?何を言っておられるのです!犯人は十七~二十ぐらいの男ですよ!」

「じゃあこのフードを被った小さいのは何だ?」

「は?」


一番初めに掴みかかった兵士とあの場に居た兵士達は何が起こったか理解出来ていない様子だ。服装こそ同じなのにサイズが明らかに違うのだから混乱しても仕方ないがな!馬鹿めっ!!


「で?お前達が捕らえた男はどこにいるんだ?」

「そっそんなハズありません!」

「ふっ服装も同じです!」

「見てください!この手!どうみても化物です!」

「ん?その手は・・」


触りたくないのは分かるけどさ、まるでばっちい何かに触るように裾を指で掴むのはやめて欲しい。

腹が立ってくるな、そもそも俺は無実じゃん!

何もしてないのにこの扱いは如何に・・・。


「あのさー?そろそろ離してくんねぇかな?」

「なっ貴様!やはりっ!」

「ごちゃごちゃいってるけど冤罪だろう?」

「侮辱するのかあああ!」

「侮辱もクソねぇだろうがアホンダラ」

「切るぞっ!」


無視、スルー、相手にしない、それが一番大事。

「リエラお腹空いてるんだけど!あんなグズグズのパンなんてありえんだろ」

「貴様!リエラ様に向かってなんたる態度!」

「お前達は少し黙れ!」

「あと俺のツレはどこにやった?」


フードを取りリエラの顔を見ると、大きい状態の方が良かったと痛感した。

「シン!!」

「ふぇぶらああぁああ」

「到着していたのなら何故言わんのだ!」

「城まで言いに行ったんだって!なのに俺の話を何も聞かないでいきなり拘束して連れとも引き離されたんだって」

「貴様達、聞いた話と食い違いがあるようだが?」

「いっいえ・・・これには・・」

「この化物の魔法です!」

「そっそうに違いない!」


「コイツは俺の客人だぞ?」

「でっですが・・そのような手・・」

「何かお前に不都合でもあるのか?」

「いっいえ・・・」


「タンテ!コイツらから話を聞いておけ!」

「リエラ様、まずお客様を解放されてはいかがでしょうか?死にますよ?」

「何をいっ・・・」

「あばっがっがが」


やっぱり人間圧殺機・・・リエラはぐぬぃで人を殺せる絶対に。糸を切られたマリオネットの如くぐでーと地面にヘタリ落ちた。もうやらないなんて嘘だった!騙された!卑怯な!と悲しみを込めた潤んだ目で視線を送ると彼女は固まっていた。


「リエラ・・・?」

「いっいや違うんだぞシン?」

「何がどう違ったの?」

「あっあの・・そのっ・・アレだ!なっ?」

「え・・・あ・・・そう」


彼女のテンションがマッハで急降下して行くのを見ていると楽しい、続けていたいけどそうにもいかない。レミナがどこにいるか分からんのだ、連れて行った本人が目の前にいるんだから聞けばいいだけ。どうせ詰め所やらなんやらで餌付けでもされてんだろう。


「おい、アンタ!俺のツレはどこにいるんだ?」

「誘拐犯だと言う事実は変わらないだろう!」

「てめぇは何訳の分からんこといってんだよ?」

「嘘つきめが!彼女なら既に父親に引渡したわ!」

「あ??」


コイツが何言ってるか分からん、レミナの父親?

んなもんいねぇだろう?

アイツはタツノコなんだぞ。いや、俺が知らないだけか?そんなハズはないだろう。ソルナも龍の魂の一部だと言っているのに親がどうのこうのなんてありえない。嫌な単語が浮かぶ、人攫い、あるいは奴隷商人かそれらに順ずる何かか?

だがレミナはチンチクリンに見えて強いから何かあったらどうにか出来ると思うが。探さないといけないな!とりあえずは・・・・。


「勝手なことしてんじゃねーよ!!」

「おがっぁあ・・あっがごっぐごああ」


ちゃんと手加減はしたもん、龍の手じゃない手で顔面グーパンしただけだし!それにこっちの手で殴ったら顔面吹き飛んでると思うしぃ~アタチ悪くないみたいなぁ?


顔面を殴られた兵士は地面に倒れこむと顎を押さえて呻いているがお構いなしに体を起こしてやる。

そして今度こそ、龍の手でアイアンクローで顔面を絞め上げてやった。ギシギシと骨が軋む感覚がやけに気持ち悪いがそんなもん知らん!


「おい、どこのどいつだ?髪の色、身長、服装なんでもいいから教えろ」

「あっひゃぐっふぇあうがっ」

などと意味不明な言葉を供述しており話が進まないのでもう少し力を入れたら落ちた。


次、二人目の兵士も初めこそ憤りを感じ殺意を剥き出しだったが、目の前で起こった事の顛末を見せ付けられ怯えている。だが関係無い!ローキックをかましてやるとバランスが崩れて良いポジションに顔面が来たので同様に掴む。


「面倒臭いから同じ事を言わせないで欲しい」

「あっひっあはやあああ化物ああがああ」

「何言ってんだ?あまり好きなやり方では無いが必死なんだ理解してくれ?」

「あいぎいいいいい」

「骨でも砕けば話せるのか?」

の言葉に脱糞して意識を飛ばした。


三人目と翻るとリエラが膝を突き頭を下げていた。

「俺の国の兵士がシンに対して非常識極まりない事をした挙句、お連れさんにも危険が迫っている状況を生んだのは全て俺の責任だ。すまない」

「リエラ様が頭を下げる必要なんて!」と一番偉そうにしていた兵士が口にすると壁に激突していた。小便を漏らし震えている。

「貴様の浅はかな行動のせいでしょう?恥じを知りなさい。シン様申し訳御座いません」

「シン、本当にすまない」

「今はどうでもいいよ・・レミナを探さないと」


レミナがどうこうなるとは思えないが、やはり気持ちが焦ってしまうな。大人の体なら走って追いかけられるか?敵がいても戦うのが楽だろうとか思考が定まらない。落ち着け俺!と無意識に龍法を使っていたのだろう。気が付けばなんと!元の姿になってたよ?あれれ~?リエラもタンテと呼ばれたメイドさんも驚いて目がカッと開いている。


「説明している暇は無いんだ。俺は俺だしどちらかと言うと今の俺が本来の姿だと思って欲しい」

「シン・・・?えっ?あ?」

「このような・・・なぜ?」

「反応はしかないけどさ・・いやいいか!悪いけどこの兵士借りるぞ?」


小便ブルブル野朗に向かい顔面を掴みあげるとリエラがやっとまともに話してくれた。

「正直驚いている。反面信じ難いが間違いなく本人なんだろうが」

「覚えてる?リエラが無理矢理くれたんだよ?」

「あぁ俺が渡したレムトに違いない」

「タンテさんは龍殿の巫女ですね?」

「えっ!」

「龍逢でこれを渡すように言われたで間違いないハズだけど?」

「何故それを!この話はリエラ様にしか・・・」

「俺も誰にも口外してはおらんぞ?」

「ルビネラと知り合いとでも言えば信じて貰えるだろうか?」

「そっそんなことが・・・」

「悪かったなシン疑うようなことを」

「気にしてないからいい、それより急がないと」


その後の行動は迅速で的確だった。

兵士がレミナを引き渡したのは線の細い男で魔法使いのようだったと言うことで山道方向へ向かったらしい。あのアホはなんで疑問すら持たず連れて行かれてるんだよ!知らない人には付いていっちゃ駄目って教えていなかったことが悔やまれる。時間的に二時間以上経っているがなんとか追えるだろうと城の出口へと向かった。


城門前でリエラとタンテさんに複数の兵が既に待機している。俺はまったく関係ない兵士に謝罪されながらも鎌を返却して貰い向かうべき方角を見据えて動く。

「シン待ってくれ!コイツらを連れて行け!俺の私兵だから信頼は出来る!」

「いや、いらない一人でいい」

「あっしらが信頼出来ませんか?」

「信頼がどうとかじゃない」


空気が僅かに張り詰め始めた所で一人の兵士が馬を曳いてこちらに来る。見た事のある馬だが。


「ドリドゲス!!」

「ヒ~ン!」

「船に荷と一緒に詰まれておりましたが引き取らずに降りられたとかで」

「俺なんにも聞いてないんですけど・・・」

「ヴォルマの船長が忘れておられたのでしょうか」

「まぁどっちでもいいや!ありがとう助かります」

「いえ!では自分はこれで失礼致します」


兵士達が自分の馬と比べて驚きドリドゲスを凝視している。確かにデカイから目を引くのは分かるけど今は時間がない。

「ドリドゲス!レミナが攫われたから助けに行く!力を貸してくれ!」

「ヒヒ~ン!!」

「リエラ、本当に悪いが一人で十分、と言うよりドリドゲスに付いてこれる馬はいないと思う」

「だろうな・・・こんな体躯の馬は初めてみたぞ」

「時間が勿体無いから行く!」

「連れ戻せたら改めて謝罪がしたい!気が乗らんだろうが戻ってきてくれ!」

「分かった!」


ドリドゲスに跨り声をかける、それだけでいい。

他の馬なら足で腹を絞めたりだのケツぶっ叩いたりする必要があるだろう。だがこの馬にそんな野暮はいらない、言えば聞いてくれる最高の天才馬だ。

「ドリドゲス行くぞ!」

「ヒ~ン!!」


一声かけるとドリドゲスエンジンがスタートし一気に加速しスピードを上げていった。

「姫様!追いつけるか分かりませんがせめて後方から我々も追走の許可を頂けないでしょうか?」

「だがシンがああ言う以上は邪魔はするな!」

「はっ!」

五人の私兵が騎乗するとリエラに敬礼し走りだすのだった。

今話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークをして下さった方にも感謝致します。


九月に入った途端に暑さが一気になくなって嬉しい限りですね。

季節の変わり目は体調を崩しやすいので皆様もお気をつけ下さいね。

次話以降もどうぞ宜しくお願い致します。



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