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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第四章 クラジョ・コラジュ編
31/217

旅立ち

旅立ちの朝はいつもより早く目が覚めた。

子供の頃はピクニックに行く前日なんてなかなか眠れなかったし、起きたらすぐテンションも上がったりもしたけど。そんな気持ちとは全然違う思いで住み慣れた城を散歩していた。城も街もまだ起きていない静寂が気持ち良く、あと数時間もすればいつもの活気が生まれると思うと不思議な気分だ。


竜を倒して出来た素材は城と街の損害を補填する為その一部を売るそうだ。ジョコラからも物資の補給が絶え間なく届いていたらしく、コラジュにも素材を送るそうで俺達はその船に乗る事になっている。街を眺めていたら後ろから肩を叩かれた。


「よう!おはようさん!」

「あっ、おはようございます」

「そんな他人行儀なあいさつは止めてくれよ」

「朝からその顔みたら結構怖いから・・・」

「いうようになったじゃねーか坊主よぉ~?」

「いてぇよ!肘でグリグリすんなって」


闇夜から現れるスキンヘッドのおっさんなんて怖いだろ。あの戦いの最前線でグラナルのおっさんも戦ってたらしく、俺が割って入らなかったら死んでたと何度も感謝されていた。


「そうだった、あの兵士達の家族から改めて坊主に礼を言っておいて欲しいと頼まれてたんだった」

「あっあぁ・・・」

「坊主が気にする事じゃない、とは言わねぇ。だがな、坊主の行動で助かった者もいたし救われた気持ちってのもあるんだぜ?」

「結局ソルナが居たから助かったようなもんだろ。俺は・・・大したこと出来なかったよ」

「馬鹿だな坊主は、いいか?坊主が少しでも遅ければ俺も部隊もさらに多くの兵が死んでたんだ」

「でも・・」

「もっとやれるハズだと思ったか?」

「あぁ」

「俺が言えた事じゃねーがな、そりゃ自分の力に溺れるってヤツだぞ?」

「力に溺れるか・・・はぁー」

「なんつー気が滅入る声出してんだ、俺が言わなくてもわかってんだろ?」

「フェルに散々言われてたからな」

「ならあのお嬢ちゃんに感謝するんだな」

「そうしとくよ」

「じゃあ俺は橋の番あるから行くが元気でやれよ」

「あぁ・・・おやっさんも酒に溺れんなよ」


グラナルのおっさんは「ガキに言われるまでもねぇよ」とニカッと笑いながら立ち去った。おっさんのお陰だろうな、濁ってた感じがずっと溜まってたけど気持ちが軽くなったわ。うしっ!と気合を入れて部屋に戻った。



港へ向かう時間になるとルナ達が部屋に来て色々と用意していたものを送ってくれた。

「少ないだろうけど取っておきなさい」

「え?」

「シンはお金持ってないでしょ?」

「はっ!!」

「まったく・・どうするつもりだったのかしら?」

「地面があれば寝れます!」

「レミナはどうするつもりなのよ」

「木にでも吊るしておけば安心だね!」

「主様!レミナ吊す?」

「うん!吊るそうな!!」


ボカッと叩かれた。

「見た目は大きくなったけどもう少し勉強させておくべきだったかしら?」

「ルナだいしゅきぃ~」

「ルナだいしゅきっ」

「はいはい、レミナは良い子ね」


ぐぬぬぬ。そこは俺の立ち位置だろう!!!

くっそレミナめっ!!後で噛んでやるからなっ!

がるるると言うと彼女が「ひゃああ!これは噛まれる前兆!」と叫んで逃げた。


「シン様、これは私共からです」

「ウチ達からだよ」

「役に立つと思うの」

「お?」


綺麗な刃をした二本の短刀と薬が何種類もあった。

「私共に差し上げれるモノはこれぐらいしかありません」

「昔ウチらが使ってたお古で悪いんだけどね」

「薬はターニャからなの。小分けにして効果も書いてあるの」

「すごい嬉しいよ!ありがとう!」


テンションに任せて三人に抱きついちゃった☆

「あぁ~シン様いけません」

「シンちゃん本当に大きくなったねぇ」

「ふぉふごふぉふううう」

「ターニャごめん小さすぎて埋まってしまったな」


ルナが羨ましそうにコチラを見ている。

抱きつきますか?(はい/yes)

そりゃそうだろいいえの選択肢なんてあるわけがない!!!ルナああああああぁあああ!!ルナに向かって行く最中に俺は蹴躓いた。そう蹴躓いた。

蹴躓いたんだよ。嘘じゃない。事実だ。

天地神明に誓うわぁあああああ。私わあああああ躓いただけでえぇえええ。嘘じゃないんでうわああああああん。


「あっこらっ・・シン///」

「ふぁぐううううう」

「シン様大丈夫ですか!」

「シンちゃんやるねぇ」

「大きさは関係ないの!!」


我の夢ここに成就せし!小さな体躯の頃より思い詰め、悩み、苦悩し、喜び、咽び、ある時は窒息に恐怖し、またある時は頭がもげそうになったが。

それは昔、あの少年はもう存在せぬ。今の我が本当の我である!故に悔いは無い!故に我有り!


やったああああ!!ぐにぃだあああああああ!!!ぴょおおおおおおおおお!!


嗚呼、なんと言う暖かさと柔らかさでしょうか?

ガキの体で感じたぐにぃも最高でしたが!

この体で感じるぐにぃこそ至高!一頻り堪能してしまった、但し直接ぐにぃには触れていない!ちょっとだけ触れたような気がするけど勘違いだ!


「ちょっ!ちょっとシン!」

「ふぇああ!!」

「もうっ!いい加減にしなさい!」

「ぷっぱぁー死ぬかとおもた」

「あのねっ!!」

「ありがとうございます!!」

「なんでお礼を言うのよ!!」


「シン様・・・」

「体が大きくなってから興味も一段と凄いね」

「シンエッチなの・・・」

「ありがとう」

「褒めてない!」ません」ないよ?」ないの」


みんな笑顔で言うのが可笑しくて笑っていたら後ろからフェルに声をかけられた。フェルは笑顔だけど少し暗い雰囲気が見て取れ、彼女の方へ近づくと手に持っていた物を渡してくれる。

「シン・・これを受け取ってください」

「フェル・・これって御守り?」

「はい、龍殿の皆さんと祈りを込めて一針ずつ縫いました」

「ありがとう!」


フェルがくれた御守りはステラルと同じ形をしていて首から下げれるようになっていた。首へと持って行くと彼女が付けてくれて、そして泣いた。

彼女が泣くから俺は抱きしめて感謝する。

「本当に色んな事を教えてくれてありがとう」

「いえ。私はシンに出会ってからずっとあなたに救われ続けていましたから」


彼女の生い立ちを思うと胸が苦しくなって力が入る。苦しかったのか少し呻くような声が聞こえるが止めない。

「シ、シン・・苦しいです・・・」

「うん」

「シン・・・?」

「帰って来る場所はここだから忘れないでね?」

「っん・・はいっ私達はここで待っています」


笑顔でみんなが頷いてくれて俺も笑顔になる。

皆が港まで行くと目立つし不安を煽るかもしれないとの事で別れは俺の部屋で全て済ませた。

荷物を持ち部屋を出る時に感じた。

ここからが俺の人生のスタートなのかもしれない、たくさん貰ったから次に合う時はもっと頼れる男になって帰ってこよう。

そんな思いでレミナと手を繋ぎ城を後に乗船した。



出航から二日目

今日も天気が良くて潮風が気持ち良い。

船長曰く昼にはジョコラに到着出来るそうで二人して甲板で時間を潰すことにした。ぶっちゃけ暇過ぎてやること無いのだ。


「主様!主様!」

「んあ?また見たいのか?飽きないのか?」

「見る!飽きない!」

「ほいほい」


後ろからレミナを掴みあげ船の縁に座らせてやると海をぼけーっと眺めて蕩ける。140を満たない身長の彼女は俺と似たようなローブに身を包み、ミディアムでふわふわな髪を風に遊ばせている。


「主様、なんで海青い?」

「ん~凄く簡単に言うとだな?空にある一番でかい星があるだろ?あれの光が反射してるらしい」

「何いってる?」

「あー気にするな。青いから青いんだよ」

「なるほどな」

「分かってねぇだろう?」

「分からん」


何の為に聞いたんだよ・・・。

レミナの頭がガシガシ撫で回すと「ふゃあああ!」と言いながら足掻いているのが可愛らしい。

じゃれ合っていると彼女が質問を幾つかしてそれに答える流れが続いてジョコラが見えた時、テンションの上がったレミナが海に落ちた。


「おいいいい!!」

「うぇっぶあぁああ」

「俺でも落ちなかったっての!」


船からダイブして溺れている彼女を抱えた所で両脚から龍力を解放、圧縮から解放された力は俺とレミアを簡単に浮かせて船へと戻る。龍力は魔力では無理な事の多くが簡単に出来てしまう、圧縮し解放するだけでも破壊力のある力として放出が出来たりするのだ。ただ着地を考えていなかったせいで背中から落下するがぐにぃを展開してしまえば衝撃なんて吸収出来てしまう。


「おい、レミナ大丈夫か?」

「ごっほ、ごっほ!」

「飲んだか?」

「けほっ・・・しょっぱ」

「なんで落ちるかな・・・」

「気持ち盛り上がった結果」

「そうかい今後は気を付けてな」

「分かった。服びしょびしょ」

「服乾かすか」

「おー」


部屋で絞った服を乾かし、布で体を拭いているとレミナがじぃーとこちらを見ている。彼女は全身ズブ濡れなのに服を脱がず両手を上げて突っ立っているのだが・・・。何?俺に脱がせろと言っているのか?だが無視して自分のことを優先させていると。


「主様!」

「あんだよ・・自分で脱げよ」

「主様ぁ!脱がせるといい!」

「だから自分で脱げって」

「剥けえええええ」

「剥けとかいうなや!」


渋々ながら服を脱がしてやり頭を拭いてやると凄く嬉しそうにしているのだが、何がそんなに嬉しいんだろうか?体は自分で拭けとばかりに布を顔にグリグリしてやった。「むぁああああ」と叫んでいるが華麗にスルー。ベットに寝転がり乾くのを待っていたらそのままゆっくりと眠りに落ちた。


「・・・さまっ!」

「んにゃむぅ~」

「主様っ!!」

「へぶうぁああ」


顔面に衝撃が走り覚醒したが痛い、目をすぅーと開けていくと幼女が俺の胸の上に座っている。犯人はコイツ。

「主様!船!到着!寒い!服!」

「単語でしゃべるなよ、ちょっと待ってな」

自分の服を触ると少し湿っているが大丈夫だろうと着て、レミナの服をとってやると同じぐらいの湿り気だが仕方ない。ほれ!と渡そうとすると、またも両手を真っ直ぐ上げているのだ。

着せろということなんだろうな。

ローブの下はソルナ製の蒼いワンピースで俺と同じように模様が入っいて、聞くと効果も同じだそうだ。服を上から着せようよした時にドアが開いた。


「シン様、到着いた・・あっ申し訳御座いません!私は何も見ておりませし誰にも告げ口なんて致しませんからぁ!」

「え・・・?」

「主様!早く!」

「お、おう?」


着替えが終わり外に出ると先ほどの女性が待っているが、何故に顔を赤らめているんでしょうか?

「ねちょねちょして気持ち悪い!パリパリ!」

「仕方ないから我慢してくれ、城に着いたら水で洗ってやるよ」

「分かった!」

「ねちょ・・・パリ・・・はっ///」


「あの・・」

「ひゃい!すみません!個人の趣味ですものね?色々合って当然ですよねっ!」

「え?何を言ってるのか分からないんだけど?」

「そうですよね?はい!ちゃんと理解しておりますから!大丈夫です!」

「主様早く外行く」

「そうだな!」


船員の彼女が何を言っているのか全然理解出来なかったのが疑問として残るが気にしなくても良いだろう。甲板に出ると船長が居たので感謝のお礼だけを言い下船した。


港に降り立つとレミナが手をにぎにぎして見せるから手を繋いで歩き出す。手を繋ぐ時、決まって彼女は龍の手の方に回る。普通ならこんな手と繋ぎたがらないと思い、一度問うた事があった。

彼女曰く、「そっちも良いけどこっちのが良い」とのことで判断基準が分からない。ルナが事前に手紙を送ってくれているらしいので一先ず城へと歩みを進める。


前にあった時より急激に成長してるから誰か分からないかもしれない、と不安に思いながらもニコニコ笑顔のレミナに癒され進むのだ。ジョコラ城前で門兵に王様に会いにヴォルマから来たと話すと何故だろう?数名の兵士に囲まれそれぞれが剣を抜いたり、後方には魔法兵が魔法の展開準備をしていた。


本話もお読み頂きまして有難う御座います。

ブックマークをして頂いてる方々も有難う御座います。


夏もあっと言う間に過ぎてしまいました。

今年も相変わらず暑かったですが、少しずつ涼しくなると思うと嬉しい限りです。次話以降も宜しくお願いします。



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