笑顔の涙
呆気無く簡単に竜を撃退、いや殺す事になったのだがお釣りとばかりに新たな問題を抱えることになってしまった。国の復興やら死んだ者達の供養等々、様々な事が山積している中で俺は人生の岐路に立たされる事となる。
踏み出す未来を考えることになるのだが、自分で選んだというより選ばざるを得なかったと言うべきだろうか?ヴォルマ強襲から二週間程の時間が過ぎて避難していた人々も少しずつヴォルマに戻り徐々にいつもの姿を取り戻していた。
ソルナは暫く城に滞在してルナとの時間を過ごしていた。というよりも俺も彼女も戻る方法が良く分からなかっただけだったんだけど。最終的に白い凹んだ部屋で俺の龍紋と彼女の龍力でなんとか戻ることに成功して。
戻る際に「次は一言・・・」言い切る前に消えていった。
濃い二週間はあっという間で自室で色々と準備を始めていると扉がノックされる。ノックでリズムを刻むのはやめて貰いたい・・・。
「どうぞ!」
「入る!!」
「どうかしたのか?」
「主様っ!!」
「うぐっ!ちょっと待て首が絞まってるから!!」
彼女の手をタップして解放してくれと催促すると、慌てて手を離してくれるんだが何度目の下りだよと彼女を見る。ニコニコ笑顔の彼女は竜の体内に取り込まれたどこぞの龍か竜の魂の一部だとソルナは言う、話をしてみると分からないとしか答えが帰ってこなかった。
頭を撫でてやるとニタァと顔が蕩ける彼女は便宜上クーレミナと名付けた。
最後まで名前を決める勝負が行われたが本人がクーレミナが良いと言ったことで幕を下ろしたのはまた別の話なんだけど。何故かやたらと俺に懐く彼女を皆羨ましそうな目で見るのだった。
「あ~るじぃさぁ~ま!」
「ん?どうしたんだ?」
「何してる?」
「明日から二人で旅に出るから色々と準備しておかないとな?」
「どこ行く?」
「どうしようか?取り合えずジョコラ経由で色々と動く事になりそうかな?」
「ジョコラ?おいしい?」
「食べ物じゃないからな?」
「ふぇ?」
「レミナが居ないって困ってるリュウがいるだろうから探さないとな?」
「探す!!」
それからは二人で必要な物をまとめてマーレが食事の準備が出来たと呼びに来てくれるまでの間、明日の準備に勤しんだ。
二週間前
「なっなぁソルナ・・」
「ん?生まれたのじゃ」
「え・・・俺捕まらない?」
「何を言っておるんじゃ。それは主と同じように玉から生まれてはおるがヒトではないのじゃ」
「お・・おう」
「主がタツノオトシゴであるなら、それはタツノコと言うべきじゃな」
「仮にも龍だが竜なのかは知らんけど魂の一部なら自分がどこの誰か分かるんじゃないかな?」
「聞いてみればいいだけなのじゃ」
腕に抱いた幼女を見ると目が合い、なんだかいけない事をしているみたいで困惑してしまう。じぃとまったく目を逸らさないからどうしたもんかと思ったが相手はリュウだし礼節を軽んじてはけないな。
「初めまして、シンと言います。あなたの名前を教えてもらっても?」
「・・・・・」
「あの~」
「・・・・・」
「名を聞いておるのじゃろう!」
「・・・・・」
「黙っていても仕方ないのじゃ!」
「・・・っぐ」
「なんじゃ!?」
「ふぇあぁああ!!!」
「おい泣かすなよ!!」
「わっ妾は別に・・・」
「うえぇええああああ」
まっぱの幼女が泣いているのだ・・・アウトだろ。
俺は何も悪くない。何もしてない!触れてるけど何も無い絶対に。
混乱しそうな俺の胸中なんぞお構いなく、泣く彼女の頭を取り合えず撫でるとまた目が合う。出来るだけの笑顔で彼女をあやす様にしていると髪も目も綺麗な橙色で綺麗だと思った。ようやく泣き止むと再びじぃ~と観察するように注意深く俺を見るから俺もそれに答えて見詰め合っていたら。
「シン・・・あなたという子は・・・」
「シン様!流石に行けません!」
「シンちゃん・・・幾らなんでも」
「シン頭おかしくなったの・・・」
「シン!ダメですよ!!」
混乱しそうな最中に出てくるな!!はい俺は完全に混乱しました!
もう無理です!僕何も悪くないもんね!あっそうだ!!
俺も小さくなればいいんだ!ふぇふぇえふぇ!!!変身!!!
「主よ・・・何を変な格好をしておるんじゃ?」
「嘘つき!!!!」
「何を言ってるんじゃ!!」
「全然小さくなんねーじゃねーかっ!」
「現実逃避しても何も変わらんのじゃ」
「出来るって言ったのソルナだろ!!」
「いや、出来るが方法を教えておらんのじゃが?」
「じゃあ今教えて!今やるから!すぐ教えて!」
「落ち着くのじゃ!!」
ペチンと頭を叩かれて少しだけ混乱が収まるがどうしたもんか?と思考を巡らせるが答えが出てこない。幼女はと言うと俺を見つめているだけで何も言わない。俺の思考は凍結を初めるのだった。
「シン?それにあの今さっきソルナって・・・?」
「ん?妾か?」
「もう混乱の坩堝だ・・・もうワケガワカンナイ」
「シン様、一つずつ教えて下さいませんか?」
「あーあーあー」
「シンちゃんがおかしくなったよ」
「うぇあーあーうーあー」
「シン!頭打ったの?」
「ぶりりりりりぃいい」
「シン!ふざけてないで戻ってきなさい!」
「ぷるぅるるるるるぅるるうぅう」
「あ~なんじゃ?妾が説明するから聞くのじゃ」
ソルナが淡々と説明をし始めその場に居た者達は黙って聞いた。
自分が白龍ソルナであること、俺がなぜこうなっているのか、腕の中の幼女が何かと質疑応答してなんとか理解してくれるまでに三十分程の時間が経ったであろうか?不意に幼女が俺の鱗に包まれた手を握ったり、龍紋の入った目を触ろうとしたりと動き始めてもう成されるままだった。
「姓が同じだからなんとなく考えた事はあったけど、直接ソルナ様の口から聞くと重みがあるわね」
「血の繋がりは相当薄いんじゃがルナリアは間違いなく妾の子孫なのじゃ」
「まだ聞きたい事とか色々あるのですが」
「ん?なんでも聞くと良いのじゃ。妾もそうそう子孫と話をすることなぞないのじゃ」
「あのルナリア様、色々話をしたいのは分かりましたがやるべき事が沢山御座います」
「主よ!いい加減戻ってくるのじゃ」
「なんだ?ゼッペキン?」
「ぬっがっ!!」
「シン!ソルナ様になんて口の聞き方をするの!」
「シン様行けません!ソルナ様にそのような口を聞いてはダメです!」
「そっそうだよシンちゃん・・・」
「大きさなんて関係ないの!!」
「女性にそのような事を言ってはいけません」
俺を弄繰り回す幼女は放置して綺麗なお空を眺めて思いを馳せているんだから邪魔しないで欲しい。「ふぬっ!」と気合を入れたソルナによって地面をゴロゴロ転がされると竜の顎にストライク。側頭部が頭痛で痛い。頭痛で痛いふふふ。
あまりの痛みに地面をバタバタしていると幼女が言葉を発したのだった。
「主様!」
とてとて走り寄って俺に抱きついた幼女が放った言葉の意味が理解出来ず混乱は最加速。俺の顔を覗き込むように見て体を起こしてくれたけど、今何て言ったんだこの幼女は?
「主様ってなんだ?」
「主様は主様」
「何言ってるんだ?」
「何がだ?」
「あのさ~?」
「なんだ?」
「名前教えてくれない?」
「知らん!」
ここでソルナもギョッとなり俺達の方へ近寄ってきた。記憶無いとかそういう感じなんですかね?どうしましょうかね?と俺が目線を送ると手で制される。
「名前が分からんのじゃな?」
「分からん!」
「どこの誰かも分からんのじゃな?」
「分からんのじゃ!」
「リュウの魂の一部なのは変わらん以上は」
「のじゃ!のじゃ!」
「俺が行くしかないだろうな」
「それが良いのじゃ」
結局そう纏まるしか答えは出ないのだ。
俺は立ち上がりルナ達に決めたことを話すと心配そうな顔をされたがソルナの後押しも合って決定してしまった。三侍女達もフェルも着いていくと言わんばかりだったが現状の国が国なだけにその決定に反論はしなかったのだ。
俺だってマーレにレスタやフェルのぐにぃと離れたくなんて無いに決まってるだろう!ふざけんなっ!
そして今に至る。
ソルナは今日の朝にクレーターの部屋から送り返したが、最後まで自分が決めた名前が採用されないことをぶーぶー言っていた。が、クーレミナは俺の名付けた名前が気に入ったらしくガン無視を決めたことで決定は翻ることなど微塵も無かった。結局の所はクーレミナよりレミナと呼ぶことの方が多いんだが、それも良いと彼女が言うのでそう呼ぶ。終いにはソルナのことをのじゃ!のじゃ!と呼び続けて二人でいがみあう始末で手がつけられななかったけど、それ以来レミナの表情は柔らかくなったようだ。
意外なことでも無いけど、ソルナから体を小さくする方法を学んでいる際に真横で蒼煉をいきなりぶっ放し危うく死ぬかもしれないという一幕があったりで。
彼女もタツノコで龍の一部なのだから出来て当然とソルナはいうが、力の使い方を間違えると危険だと教え込む事が一番大変で疲れた。
レミナに蒼煉を放たせどれだけ危ないかと一つ一つ丁寧に教えると「そうか・・それは仕方ない」と余り的を得ていなかったみたいだけど、俺が心配そうな顔をして言うから納得だけはしていたみたいだが。心配の種がぽんぽん地面から咲き乱れる恐怖をお分かり出来るだろうか?
体を変化させれるようになる頃にはソルナから話を聞かされたりしていて「分かった!」なんて言うが本当に分かっているんだろうか?
マーレが部屋に呼びに来ると俺達は部屋を後にした。
夕食を食べに行く為に移動し始めるとちょこちょこ後ろをついて来るのが愛らしい。アヒルの親の気分でうねうね歩くと彼女もうねうねついて来る。
RPGの主人公気分になってきてついつい鼻歌を歌ってしまう。
レミナも楽しいのかふんふん言いながらも俺の通ったルートをなぞり食堂まで行った。
「あらシンの所にいたのね」
「さぁシン様こちらへどうぞ」
「レミナはシンちゃんの横でいいね」
「ターニャお腹すいたの」
「レミナもこちらへどうぞ」
「お腹へっターニャなの!」
「お腹へっターニャなの!」
「シンは変なこと教えないの!!」
レミナはよく俺の真似をするのだが、そのせいで最近は俺が怒られる頻度が増えている。子供の頃の姿じゃないから対応もそれなりになってきているのが最近辛いのだ。先に小さくなる術を学んでおくべきだったとここで本当に後悔した。
ぐにぃしてぇ~な~と思いソルナから教わった龍法で子供の姿になってみたが効果は皆無で寧ろ怒られた。世知辛いな・・・。あの夢のような日々が懐かしい。子供ってやっぱりいいな。思いを馳せていると袖をクイクイ引っ張られる。
「主様?どうした?お腹減ってないか?」
「いんや、ちょーペコリストだよ」
「ちょーペコリスト!!」
「あぁペコリストすぎておかしくなりそうだ」
「ペコリストでおかしくなると危険か!」
「あーかなり危険だ、レミナを頭からガブリしていしまいそうだ」
「レミナ食べられる!?」
「がぶうううううう!!」
「うひゃあああああ!!」
「シンいい加減にしなさい」
フェルに頭をペチっとされた。フェルに叩かれた、痛くないけど凄く痛くて泣きそうだ。フェルに嫌われたもうお終いだ・・・。
「馬鹿なことしてないで早く座りなさいな?」
「ふぁい・・・」
皆いつも通りだけどやっぱり違うのは直ぐに分かってしまう。今生の別れじゃ無いんだろうけど今までずっと一緒だったからだろうか?俺も感慨深い物がある。暫くは合えないと思うとやはり寂しさが込み上げてくるもんなんだな。
こんな感覚は元居た世界では感じる事なかった。そんな思いを抱えていても淡々と時間は経っていって夕食も食べ終わってしまった。
「ふぅ~美味しかった!」
「美味!」
「レミナ、口の周りに付いてるぞ」
「ん?」ったく「ほれ」と口の周りを拭いてやると「むぅっ~ん」と可愛らしい声が聞こえるのだ。そんな俺と彼女を皆は微笑ましい顔で見ていて弟と妹がいるような感覚でも味わっていたんだろうか不意にマーレが泣いた。
「マーレ・・なんで泣いちゃうかなぁ?」
「そうだよ泣いちゃダメなの!」
「すみませんっぐす。ただなんだか嬉しいのと寂しいのが混ざっていて」
「マーレも泣き虫ね!」
「ルナリア様も泣いておられますよ」
見回すとルナもマーレもレスタもターニャもフェルも俺も泣いていた。レミナだけが不思議そうな顔をしていたが黙って俺を見ているのだった。
「俺を迎え入れてくれて本当にありがとうな!」
「当然よぐすっ」
「マーレ、俺の為に頑張ってくれてありがとう」
「はいっ・・」
「レスタ、毎日構ってくれたてありがとう」
「えへへっ、ウチが好きでやってただけだよ」
「ターニャ、魔法はもう使えなくなっちゃったけど教えてくれたこと全部覚えてるから」
「うぐっひっ・・シンはターニャの弟なの!お姉ちゃんとして当然なの」
「フェル、たくさんお話しを聞かせてくれて、武道も教えてくれてありがとう」
「いいえっ・・・わたっ私もシンに・・たくさん貰いましたから」
「今までこんな風にお礼を言えなかったから言えて良かった。それに俺が帰る家はここだからな!二度と会えない訳でもないし!」
「シンはアタシ達にとって家族で可愛い弟なのよ?困ったら頼りなさい」
「私共にとっても可愛い弟です。シン様は一人ではありませんよ?」
「ウチにとってもちょっとエッチな可愛い弟なんだから」
「ターニャにとっては弟で弟子なの!だから困ったらちゃんと言うの!」
「私にとっても家族同様ですからね?シンが居なければ今頃どうなっていたか」
それぞれが今まで話合うようなことが無かった話題だけに恥ずかしい気持ちで胸が熱くなる。以前の俺なら絶対にこんなこと言えなかっただろし、煩わしいとさえ感じていたんだろうな。皆がはにかんでいる光景はもう家族のそれと同じだった。異世界に着て出来た大切な家族だ。
レミナが少しだけ寂しそうにしているから頭を撫でてやると花が咲く。暫くは二人で旅することになるけど俺が絶対守ってやる。もっとも多分本当にまずい自体が起きたらなんとかしそうなもんだけど。
涼しい風が流れる季節のこんな時間がとても愛おしく、幸せで、寂しくて、でもきっとまた来るんだという確信だけはあって。やるべき事を精一杯やろうって気持ちに活力を注いでくれた。
本話もお読み頂いて有難う御座います。
ブックマークをして下さった方にも重ねて御礼申し上げます。
夏ももう終わりですがここ数日は台風のせいもあって涼しかったですね。
9月に入ると少し更新ペースが落ちるかもしれませんが、なるべく落とさないように努力したいと思っておりますので次話以降もどうぞ宜しくお願い致します。




