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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十八章 進む世界編
206/217

縦社会

ヴォルマへ帰還してから三日の時間が経っていた。まぁこの三日が恐ろしいことの連続だったんだ。

ルナからは「龍王国で何をしでかしたのかしら?」なんて根掘り葉掘り聞かれるし。

フェルからも同じ様に「なぜ龍王国で奉られる方がおられるのでしょうか?」と笑顔で聞かれたんだ。

まるで取調べを受ける犯人のような気分だった……これはそのダイジェストである。



三日前ヴォルマへ戻るとルナは「明日の朝一番に玉座の間へ来なさい」を残しお仕事に戻られた。

エルジュは何を思ったのか「マーレさんに会いたいのですよ!」等と言い残し消えた。

この時、雲母はマーレのぐにぃの間に挟まっていたことから彼女も恐らく連れて行かれたのだろうと思う。


そうして引き算していくと残るのは俺、フェル、シラタマさんである。なんだろうね? 帰還後即ハグしたのだが何だか凄く恥ずかしい気分になってくる乙女心。フェルにしても大きくなったお腹を撫でながら微笑んでいらっしゃるし、こんな時には空気を読みきるシラタマさんが役に立つ。いつも通り「がふっ」なんて言いながら尾で俺を撫で回し、俺とフェルを背に乗せるとあっと言う間に我が城に帰っていた。


二人で庭に腰をかけて……なんか今、視界の隅に長い何かが見えたような気がしたんだけれど綺麗なカーテンでも買ったのだろうか? 俺、フェル、後ろから包み込むようにシラタマが座る。この状態がどうにも心穏やかにさせてくれて落ち着くのだった。



「シン……本当にすみませんでした」


そう謝るフェルの表情は本当に申し訳なさそうで、あの時の俺は俺で辛かったけどフェルに悪意は無いのだから仕方ない。でもなんだか今日は甘えたい俺はフェルに膝枕を所望する次第です。


「ふふっくすぐったいですよ」

「ん~フェネルギー充電中に付きご協力ください」

「好きなだけどうぞ」


そう言うフェルは頭を撫でてくれるので、お返しにお腹を撫でてイチャイチャするのでした。


「ふぇ!?」


不意の衝撃に驚いて顔をあげると、フェルは笑ってこう言った。


「この子もお帰りなさいと言ってますよ?」

「ふぇる~」


嬉しさの余りフェルに抱きつくと、フェルは俺の背中をぽんぽんしてくれて凄く癒される。


「シンに一つ言わないといけないことがあります」

「なっ何? もしかして貴方とはもうやっていけません! とか言うつもりなの!」


そんな冗談を言ったらフェルは真顔でムッとされてしまいました。


「私がシンを嫌いになることはありません! これからもずっと一緒ですよ?」

「はい、俺もフェルとずっと一緒が良いです」


「テオスのことなんですが」

「そういえば見ないな」


「五日程前からルセルに行ってます。そのうち帰ると行っていたので心配はいりませんよ」

「そっか。じゃあしばらくはフェルとちゅっちゅ出来るな」


「なっ何を言っているのですか///」

「ずっとフェルと離れてたんだぞ!」


「それを言うならシンがルセルに行ってから私は随分待っていましたよ?」

「すみませんでした。それで何を言おうとしてたの?


「えっと何を話そうとしてましたっけ……」

「そんなフェルすら愛おしい!」


そう言いながらハグしたフェルの頬は真っ赤でした。

そして翌日の事である。今の俺はというと玉座の間にて正座をしております。


「それで?」

「ルナはいつも綺麗だね」


「そう、嬉しいわありがとう。で?」

「え?」


ながーい溜息とギロリと睨むルナの目が非常に恐ろしい。

「龍連れて帰って来ただけじゃん?」そう言ったらまた睨むんです。


「じゃあ本当に困っている人がいたとして、自分じゃどうにもならない人がいても無視するの?」


そう問うてみると、苦虫を潰すようなお顔をされました。


「でも相手は龍であって人ではないでしょう? シンの言いたいことは分かるわよ?

でもやっぱり龍なのよ……今はソルナ様とお話されているんだったわね?」


「でもルビネラだってちょいちょいいるんだし? 変わらなくね?」


長い無言、睨む目、玉座に間にいる騎士達が息をのむ音。

ちなみに今日は二侍女は居ないです。お仕事で街へ出ておられるとかなんとか。

何時もなら助け舟を出航させてくれる二人が居ないだけでこんな事になるらしい。


静寂を破ったのは俺です。この痛々しい空気に耐えきれる訳もないので言いましたよ。

「まっなるようにしかならんでしょ!」

確かにこの場においてはこれが正解であった。というよりも保留するほかに答えは出ないのである。

ソルナがあーだーこーだ言い出すまでは回答しかねるのであったとさ。


「分かったわよ。今言っても仕方ないことには変わりないものね」

「じゃそういうことで俺はっ「まだ終わってないわよ」」


「……」

「変な顔してないで座りなさい」


この時、俺の変顔を見た騎士の一人が吹きだし、ルナに睨まれる一幕が生まれる。

ちなみに他の騎士達は笑っていなかったけれど、全員が違う方向を見ていたという点は見逃しては無い。


「なによ? アタシは忙しいのよ」

「それはアタシの言葉よ。真似しないで頂戴、いいから座りなさい」


ここは玉座の間である。王は玉座に収まり、その正面に立つ者は頭を深くさげたり、膝を付いたりと王に許可を得るまでは顔を上げてはならない。がしかし、王は座れと普通に言うし、言われた本人も胡坐をかく。本来ならあり得ない光景が見れるのもヴォルマの魅力だねっ!


「じゃあなんなのさ~」

「シン? あなた龍王国で王になったんですってね?」


「あぁーてかそれしか方法が無かったんだってば! 俺だってやりたくなかったんだ! 文句はあの国の宰相さんに言って」

「龍王国を治める気があったのかしら?」


「ないないないないない! 俺が王になったのも一日限りだし? その場で次を任命して即退位だって。

それにルナのこと見てるからあんな忙しいことしたくない!」


「本当なら今日は朝から色々と予定があったのよ。それなのにここに時間を割いているの分かるかしら?」

「俺のせいでルナが忙しくなってしまいまして、誠に申し訳ありませんでした」


「分かっていればいいのよ。それにアタシだってシンを怒る気なんてないわよ」

「怒ってるじゃん」


「のらりくらりしてるからでしょ? シンがしたことは凄いことに変わりないわよ」

「龍やらなんやらに関してはソルナ待ちってことで! 本当にどうにもならんかったら俺がどうにかするから」


そう言ったらルナは笑ってから「じゃあ今日はもういいわよ。ゆっくり休みなさいな」と言って解放された。



「ルナリア様……」

「何かしら?」


「本当に宜しいのでしょうか? 他国のそれも龍王国で奉られていた龍なんですよね?」

「そうみたいね」


「でしたらっ……これを発端に戦争になる可能性も」

「あるわけないでしょ」


「ですがっ!」

「あの子があぁして帰って来て。自分のしたことの重大さが分かってないのは見れば分かるわよ?

でもシンは悪い事なんてしないわよ。それに龍のことをアタシ達がどうこう言える訳ないでしょ」


「ですがオトシゴ様は!」

「だからオトシゴなんでしょう? それにシンは自分がオトシゴだから偉いとか、権力がとか興味無いわよ」


オトシゴが退室した後、あれやこれやと話が生まれた。ネガティブな意見とポジティブな意見、様々ではあるものの龍という括りになると誰も何も言えなかった。


「ルナちゃんただいまなの」

「はぁ~すっごい大変だったよ」

「二人ともどうだったかしら?」


レスタとターニャが戻り、事の顛末を聞くことになる。


「あっはっは! シンちゃんが王様かぁ~」

「シンには無理なの!」


騎士達は思う。どうしてこんなに軽く受け止めることが出来るのだろうか? と。



あれこれと忙しないままではあったけれど、それでも時間は過ぎ行くものである。

長い時間を過ごす中で変化するもの、しないもの。

短い時間を過ごす中で変化するもの、しないもの。


フェルの膝枕を求めて帰る道すがら、ヴォルマの庭で俺は拉致された。

自分の意思は関係無かった。抵抗も出来ぬままに気が付けば拉致されていたのだ。


「変な顔なのじゃ。ほれとっととここに座るのじゃ」

「……おつした」


俺を拉致したのは絶壁美人ことソルナ様でした。彼女の隣にはいつもルビネラがいるのだが、今日は違うらしい。未だ悲しそうな表情のアネモスは俺に頭を下げるのだが……なんか怖い。嫌な予感しかしない。


「何かにつけて色々やらかすとは思っていたのじゃが、主は己が何をしたか分かっておるんじゃな?」

「何が言いたいのか全然分かりません。勘弁して下さい。僕はフェルの膝枕で寝たいです」


「話し自体は直ぐ終わるのじゃが……う~む」

「何? 怖いんだけど、それにアネモスのテンションも怖い」


「主は、このアネモスと主従関係になったのじゃ! すごい事なのじゃ!」


ソルナ様はとんでもねぇことを言い放ちました。本当に驚いたりした時って、思考回路止まるんですよね。ソルナが何言ってるか全然分からなかったんだよね。


「龍殿とは願いの集まる場、人の子らが創り上げたものなのじゃ。場を持つ龍、持たざる龍と様々おるのじゃ。妾の場合は己の意思でここにおるのじゃが、そうでない者も居た訳じゃな? このアネモスのようにの」


「?」


「でじゃ、完結に言えばアネモスからすれば主は龍殿になっておるんじゃよ~」

「はぁああああああああああああ?」


俺、生物であって建造物じゃないんですけど? なんて突っ込みを入れる間なんて無かった。


「妾もこんなこと初めてなのじゃよ~驚いたのじゃ!」

「いやいやいや」

「でも考えてみれば有り得たことでもあるのじゃな~どうしたのじゃ? 固まってるのじゃ」

「いや俺……生物だから」


「龍殿とは概念を固定化した場、概念を形にした場所と言うべきかの? 無論、龍がここになら居たいとか、その場に思いが無ければ成立せんのじゃが~主はアネモスにとってそう思わせたのじゃな~」


「////」

「何で顔真っ赤にしてんだよアネモス」


「主は無粋じゃな~アネモスにとってあの場は鳥籠と同義じゃが、主はそこからアネモスを見事に助け出したのじゃよ? 不安な気持ちを持ったままじゃが主という光りを~」

「もっもうそれ以上はお止めください///」


「なんでじゃ? いいから少し黙ってるのじゃ! 主よ良いか? アネモスのとって主は共にっ」

「お止めください!」

「むっごにゅぶっ!」


「いやだから何をどうしたらいいんだよ……主従関係ってなんだよ」

「分かったのじゃ! もう言わぬから離れるのじゃっ!」


乱れた衣装を直しながらもソルナは続けた。


「そもそも主は多数の龍やら竜と契約を重ねておるのじゃが、本質は互いの力の貸与じゃ。

じゃが主従関係となると話は違ってくるのじゃ」


「そんな話は今までしてこなかっただろうが」

「妾だって主がそんなことしでかすなんて思ってなかったのじゃ!」

「で? 何がどう違うんだよ」


「妾とルビネラが主従関係にあたるのじゃ。主従の関係になると相手の力の本質そのものの行使が可能じゃ。それに距離に関係無く移動も可能じゃし~あとは~力での抑圧も可能じゃし~命令は絶対になるとかじゃな!」


「え? じゃあパン○見せろって言ったら見せてくれるのか?」

「主は何時も妾のパン○勝手に見るのじゃ」


そうそんな笑い話のようなことを言っていた最中、アネモスはぷるぷる震え涙を流し此方を見ていた。

ドレスのスカートをたくし上げパン○を此方に見せながら……。


「こういうことじゃな」

「いやでも冗談で言っただけなんだけど?」


「ふむ。これからは気をつけることじゃな」

「うん。どこかしこ構わずこんなことされたら困るもんな」


「そうじゃな。まぁ主従の関係になろうとも対して変わらんのじゃ。ただ契約とは違う以上、力の使い方は知っておくべきじゃな」

「じゃあこれから教えてくれよ。それにアネモスの居場所はどうしたらいいんだ? クレールクレプスでいいのか?」


「まっ龍殿の役割を主が担っているのじゃから問題無いじゃろうな」

「何時まで余にこのような恥辱を……」


「「エロいな」のじゃ」


アネモスは思う。本当にこれで良かったのだろうかと。

あの時の己の思いは間違っていたのではないのか? と。

本話もお読みくださり有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


本年最後の更新になります。

今日から実家に帰省する訳なんですけど…約二週間の休暇となります。

今年の下半期は更新が滞ることが多く申し訳ないです。


来年もなんとかやっていこうと思いますので宜しくお願い致します。

では皆様、良いお年を。

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