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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十七章 ボレンツ龍王国 編
205/217

退位と即位

さてあれから既に一週間の時間が過ぎた。現在は帝国まで戻ってきている。

そして……。



「シンシ~ンごめんばばぁい!」

「俺割りと怒ってるから、許さんよ?」


「貴様! 我が愛しの妻をよくも!」

「父上は黙っていて下さい!」


アクアヴェーテルは命令された通りに動き、皇帝に巻き付いてその動きを封じていた。

二人のお姉さん方は腰を抜かし、ガタガタ振るえ、二人で抱き合っていた。


「ウチの可愛い娘に恐怖を感じさせた罪は重い。故に尻叩き五十回だ」


ビュオン! 空を裂く俺の手を見て皇后は泣き叫ぶ。

目の前で柱を叩いたらヒビが入り、石材の一部が剥離する。


「ごべんばば~い!」


その言葉を最後に皇后は地面に頭を擦り付け、悲鳴と絶叫が入り混じるような声を出した。



「あの……シン? なんで余も連れてこられたのかそろそろ教えて欲しいのですが」

「ん? だって今のアネモスって龍の姿に戻れないんだろ? なら俺と来たらいいじゃん?」

「いえ、だからと言って……気がついたら違う国に居るなんて思いもしませんでしたから」



俺はあのあと計画通りにことを進めた。

全ては完全に思惑通りだったし、宰相さんなんてお茶目なウィンクまでくれたのだ。

何をどうしたのかと言うと。


「確かにそうでしょうな。ではどうする事が最善だとお考えになりますか?」

「俺は責任の全てを取り、王の座を退く事にしよう」


周囲者達は未だに言葉が出ずにいたが、さしものヴァルハイトは息を整えながら言葉は生む。


「シン! いえ王よ。いかに重い罪だろうとそこまで!」

「いいや。これは必要なことだ。俺はアネモスを連れてヴォルマへ帰ろう」


オトシゴの存在が消える。ようやくその思考に追い着いた者達が口々に同じことを言う。

だけど俺は聞く耳を持たない。王として責任を果たす。これは大事なことであり絶対だ。

俺は偽王だ。それでもルナという王を見て育ってきたのだから、偽者でも本物と同じように振舞う必要がある。偽物でも本物と同じ様に振舞えば、少しぐらいでも同じ様に成れるだろう。


「宰相! この決定は絶対であり覆す事は許さん!」

「ははっ! オトシゴ様が、王がこの国の誇りの為に決定されたことです。覆すことは罪!」


「だが、このままではいかんだろうな」

「はい! 王がまた不在になられると同じ事の繰り返しになるかと愚考します」


「ふむ。ではこうしよう」


俺は歩いて宰相さんの前を通過する。そして目当ての人物の前で立ち止まる。

そりゃビックリするだろうが関係ねぇ! 俺を巻き込んだ責任は取って貰おうか! んふふ~。


「では王位を貴様に譲ろうヴァルハイトよ」

「なっ!」

「これはオトシゴであり王である俺の決定である! 意があればかかってこい!」


勿論だけれど誰も何も言わない。噛みつかれるかもと思っていたヴェリテも唖然としている。


「俺はこの国を去るが、何時も空より貴様らを見ている。もし同じ過ちを繰り返すのであれば、今度こそ俺がこの国に引導を渡してやる」


俺はベルトのバックルを外し、ヴァルハイトへ手渡す。

何の役に立つか分からないけれどソルナ謹製だから安心して欲しい。

まっソルナに別のヤツをまたお願いして作ってもらおう!


「これは龍より生まれし物だ。これを貴様に贈ろう」

「シン……お前はまさかっ!」


うん。なんか久しぶりに満面の笑みになれた気がする。

嬉しい気持ちと全てが計画通りに動いたからかな? なんだか気持ちが良い。


「では俺はこれにてこの国を去ろう! さらばだ!」


肩には雲母、小脇にアネモス、背後に眠そうなエルジュ。

扉を蹴破り走る。城外には宰相さんが手配してくれた馬車と騎馬。

俺により処された五人の兵達が港まで同行してくれるらしい。


「さて帰りますか!」

「おー!」

「帰るのですよ!」



全てを投げて無理矢理手渡した感は否めないけれど、これはお前達の国の問題だ。

俺の全部を使って出来ることはしてやったのだから文句は言わないでほしい。

スタートライン、いやスターティングブロックを置いてやった程度かもしれない、でも自分達で進む意思が無いならそれまでだ。


港から船へ、結局のところ俺は行きと同様の回数をゲロりんちょしてしまった。

その度に雲母とエルジュは甲斐甲斐しく看病してくれた。ちなみにアネモスは寝たまま起きなかった。

なんとなくイタヅラがしたくてパンツを数回程凝視させてもらった。

でも俺の心は動かない。早くフェルに会いたい。


アネモスは未だに龍へ戻れずだが、場から離れることは可能のようだった。場と龍なんてことは俺には分からんけど、ソルナにでも聞けばなんとななるだろうという気持ちである。そして現在に至るのだ。


「シン殿、どうか母上を許して下さい」

「オルクス君? あのさ? もうこの父親は俺がぶっ飛ばしてやるから王位継げよ」


「確かに、色々とやるべきことをは終わりましたけど……あのシン殿?」

「おいもう退位しろよ? 俺もついこの前退位してきたんだ丁度いいだろ」


「シン殿が退位ですか?」

「とーさま龍の国でおーさまになったけどやめちゃった!」


「龍王国でも色々と大変なことに巻き込まれたようですね。それにそちらの女性は?」

「ん? あー向こうの龍殿で拉致監禁されてた龍だ」


「はぁ……もうシン殿が何をしても驚くことが無いかもしれませんね」


「で? ウチの雲母を虐めた罪は誰が追うんだ? 皇后だろうけど意識飛んでるし? こういう場合は夫だろうな」

「えぇ父上で良いのでしたら存分にどうぞ」


「ルクス! 貴様は父を売るのか!」

「父上、シン殿が言う通り退位して下さい」


「あぁそれで責任は相殺してやるよ」

「ぐぬぬっ」


「それか尻叩き五十発、受けてくれる?」


それを聞いた途端、皇帝は黙り十秒後に退位を決めたのだった。


「うし。確かここの庭から帰れるんだよな?」

「そうです。ですがシン殿? どうせなら龍王国からでも帰れたのでは?」


「それなんだけどさ? 俺がやるとあんまり上手く行かないんだよな」

「何かあるのですか?」


「距離なのかな? あんまり遠いと無理なんだよ……シラタマは上手いことできるのにな」

「向き不向きは誰にでもあると言うことでしょうね」


「まっ帰れるからどうでもいいけどな。じゃ皇帝様も頑張れよ」

「シン殿に負けぬよう精進します」


そんなこんなでオルクス君は帝国の皇帝になり、俺は一日どころか半日以下で王になりそして退位した。

とにかく今回は疲れた。直ぐにでも帰れると思っていたのに、想像以上に時間を食ってしまったようだ。

半月、今回の問題を解決するに掛かった日数だ。フェルは大丈夫だろうか? そんな不安な気持ちを抱えながら転移するのだった。





潮風香るヴォルマ、ここ数年で人と物の往来が増え活気にわいていた。どこからでも見える二つの城の内の一つ、王が住まう城の庭に一人の女性の姿があった。龍殿で用を済ませた彼女は久しぶりに城へ入り椅子で休憩とり、その背後には六本脚の虎が座している。


「やっぱり軽い運動は必要ですね」

「るるっ?」


「クレールクレプスの庭は素敵ですけど……まだ少し怖いんですよ」

「がふっ♪」


白い虎は「何があっても大丈夫にゃん♪」と言わんばかりに尾で女性の腹を撫でた。

大きく膨らんだお腹を見て優しく微笑むとこの国の王が隣に腰をかけた。


「あら、珍しいわねフェルチ」

「ルナリア様」


「いいわよ座ってなさいな。色々と辛いでしょう?」

「腰が痛かったりもしましたけど最近は大丈夫です」


「なんだか感慨深いわね。シンが流れて落ちて色々なことが変わったと思ったら、結婚に子供……それにあの子もね」

「テオスですか?」


「えぇ、この前見たら凄い成長してたわね」

「シンで見慣れていましてけど驚きますよね」


「はぁ~なんだか最近、急に老け込んだような気がするわ」

「ルナリア様は初めて御会いした時から変わってないように見えますけど」


「嬉しいこと言ってくれるわね。でもね、ほんとうに色々あったせいかしらね~」


何かを懐かしむような目で王は空を見上げ、そして微笑む。

それに呼応したようにフェルチも空を見上げて微笑んだ。

二人が見た空、それはオトシゴが流れ落ちて来た場所であった。


視線が合うと声を出して笑い、それから少し沈黙する。

ふと背後の虎が鳴く。何時もと違うそんな雰囲気、何か合ったに違いない。

虎が見る先で光りが生まれた。



「うぉおおおおおおおおお帰ってきたあああああああああ」

「うおー」

「うわあああああああなのですよおお」


オトシゴ、ニンフ、妖精は何故か天に両手を掲げて吼えていた。

オトシゴの背後で周囲を確認する龍ことアネモスだけはオドオドしている。


「「シン!?」」

「二人ともただいまあああああああ」


一瞬にして距離を詰められた二人は対応できず、気が付くとオトシゴの胸に抱かれていた。

当然のように嫁であるフェルチは夫の帰還を喜びぎゅっと抱きつくが……何故か同時に抱かれた王ことルナリアは顔を染める。


「二人共ただいま!」

「おかえりなさい、それから……あの時はすみませんでした」

「っるる↓」


「凄く悲しかったけどもういい! シラタマも良くフェルを支えてくれたな!」

「ガフッ!」


「しっシン? なんでアタシまで一緒に抱かれてるのかしら?」

「えっ? なんでってなんで? 嫌だった?」


「べっ別に嫌じゃないわよ。でも奥さんが隣にいるのにそういうのは良くないんじゃないかしら?」

「フェル嫌だった?」

「私は気にしませんけど?」


「だって?」

「はぁ~もういいわよ。まったく……それで? エルジュと雲母は分かるけど彼女は?」

「あぁ紹介するよ。アネモス!」


不意に大声で名前を呼ばれた龍は素っ頓狂な声と共に歩き出した。

二人はこの時、シンが知らず知らずの内に嫁を作ってきた、と思っていたけれど予想は大きく裏切られた。


「龍王国で拉致監禁されてた龍ことアネモスだよ」

「「龍!?」」


「しっシン、あのここはどこですか」

「ん? ヴォルマだけど?」


「ヴォルマ……ヴォルマベールのことですか?」

「何だよ知ってるんなら言ってくれよ」


何故だろう? アネモスがカタカタ震えているような?

ん~まっ取り合えずソルナ呼んで見ればいいんじゃない? ノリで彼女を呼ぶのだ。

クルクル回る紋様の中心に手を突っ込んでから思い切り引っ張る!


「んぎゃ!」

「ソルナが釣れた!」


「シン! ソルナ様に対してなんてことするの!」

「シン! ソルナ様にそのような無礼はいけません!」


「ソルナ~ソルナ~ただいまソルナ~」

「なんじゃ! 何時も何時も妾をなんじゃと思ってるんじゃ!」


「可愛いソルナだと思ってるけど」

「可愛い!」


「それに美人?」

「美人!」


「それに綺麗なお姉さん?」

「綺麗なお姉さんなのじゃ!」


チョロすぎるよソルナ。


「あのなー拉致監禁された龍と知り合ったんだけど、なんか龍に戻れなくて困ってるからなんとかして」

「何を訳の分からんこと言っとるんじゃ?」

「あれだよあれ」


ソルナの頭を掴んでアネモスを視界に入れさせと、ルナとフェルから凄く怒られた。

でもソルナは気にしてないし? 何も言わずにアネモスを見ていた。


「ん~? なんでお前がここにいるのじゃ?」

「ひっぃいいい」


「何知り合い?」

「知り合いと言えば知り合いなのじゃ」


「何系の知り合い?」

「ん~まだ妾がこの場に来る前のことじゃ。妾が気持ち良く空を飛んでたらルビネラと絡んできたのじゃ」

「え? ルビネラの知り合いかよ」


ヴォルマだけどソルナの場だし、結婚式の時も来てたから行けるかな? ってノリで同じくクルクル紋に手を突っ込み引っ張る。


「んにゃ!」

「今度はルビネラが釣れた」

「尻を思い切りぶつけてるのじゃ」


「おどれは誰に何しとんねん」

「ルビネラ口悪い……ソルナ怖い!」


「ルビネラ? 今なんと?」

「しょしょにゃしゃさま!」


「ルビッ!?」

「んにゃ~あ~あねもちゅじゃにゃいか」


龍達の邂逅にそこまでの興味は無い、故に俺は他所でやって貰っていいですか? と言ったんだよね。

そしたら即頭部に衝撃……ルナでした。それからフェルにはじっと睨まれました。でも懐の深い我らがソルナ様は一言「じゃあ向こうで話すのじゃ! 暇な時に来るのじゃ!」それだけで終わらせてくれるのさ。ちなみにルビネラは「次にあれしたら本気で怒るわよ?」って本気で言われた……だからスカート捲ってやったら蒼だった。赤く染まったルビネラは紋の中に消えて、青くなっていたアネモスもまた拉致された。振り返ればフェルが怒ってて……俺も青くなりましたとさ。


本話もお読みくださり有難う御座います。

ブックマークにも感謝を。


まず……すみませんでした。

今まで更新を続ける中で、一月に一話しか更新しないのは初めてだったように思います。

ただね? 聞いてほしいんだよ。本当に本当に本当忙しかったんだよ!

お仕事で注文受けたりしてたんだけどそれがまぁ大変だったんだよ。


ゲームだってぜんぜん出来やしない! とか良いながらアズレンしてました……。

気が付けば年の瀬。本当はもっと話を進める予定でしたが、予定は未定と言う言葉を持ちまして良い訳させてください。


そんな訳で忙しいながらもどうにか更新して行きたいので、これからも宜しくお願い致します。

半休とって更新したぜ!へへっ!

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