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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第二章 転生編
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ヴォルマの異変

ヴォルマへ到着してからルナは三侍女達に次々と命令を下していた。俺は邪魔になるだろうからとフェルに連れられ龍殿まで一緒に戻り城の橋で彼女と別れた所で彼女と会った。


「あーシン君!もう帰ってきたんだ?」

「うん」

「凄い早い帰りだね、何かあったのかい?」

「僕に聞かれても分からないよ」

「そうだよね~君に聞いても分かるはずないか」

「そうだね」

「その首飾り綺麗だね!ちょっと見せてよ!」

「ちょっ!」

「返してよ!」

「いいじゃん!細かいな!見てるだけじゃんか?綺麗だねこれ頂戴よ?」


やっぱり癪に障る。相手の気持ちとかは全部無視で自分のことを全部優先して自己中心的。それは別に許せても人の物を勝手に取り上げるだろうか?さらに寄越せってコイツ頭おかしいのか?俺は疲れもあっていつも以上にエスカに対してイライラしている自分に気が付いていたけど押さえられなかった。


「返せよ!」

「あ?」

「勝手に取るなよ!」

「ふ~ん。君はちゃんと怒れるんだね~いつも誰かに引っ付いてるただのガキかと思ってたよ」

「どうでもいいから返せって」

「はいはい~どうぞ」


エスカは腕を上げ取れるものなら取ってみろと言わんばかりにレムトをプラプラさせてくる。ジャンプして届くが指が触れる瞬間にクイっと手首をスナップさせるとケタケタ笑うのだった。イラ立ちを隠せなかったが脚を魔力で強化して再びジャンプして今度こそ取り返すことに成功した。


「オトシゴってのも名前だけじゃないんだね~」

「・・・・・・」


城へ入ろうと歩き出すと「それで何を守れるんだろうね」と呟く声が聞こえた。ダメだなもう関わらないようにしようと決めたわ。翌日、俺は昨日の事を忘れたかのように……いやストレス発散の為に街へ行こうと城正面の橋へ向かっていた。


衛兵のおっさんことグラナルとは顔見知りで、街のどこそこの店が美味いとかお得情報を定期的に教えてくれる気の良いおっさんだ。

俺と同い年の双子の娘さんが居るんだとか。


「おう坊主!街に女でも漁りに行くのか!」

「ちっ違うよ!」

「お前も十三だろ?俺が十三の時なんかはもうずっと女の尻だっか見てたぞ!」

「あはは……」


尻もいいけど俺はもうそれ以上のモノを知ってしまっているから、必要ないなんてこと教えたら絶対に絞められるな。筋肉モリモリのあんな腕に絞められたら一発で落されるだろう。グラナルと話をしていると橋を一人の兵士が歩いてきてグラナルが呼び止めた。


「おう!どうかしたか?」

「いえ、何も問題ありません」

「どうした?体調でも悪いのか?」

「少しだけ気分が悪いので城で休憩をしようかと」

「あん?体調悪いなら今日は帰ってもう養生しておけ。それに……おいっ!」


グラナルが話し終える前に兵士が走り出そうとするが、いかなる理由であれ入り口の許可とグラナルの許可無くして入城は許されない。グラナルが止めようと手を伸ばすと兵士はそれを避けて走り出す、彼が兵士を追おうとすると兵士が血を噴出して倒れた。


先日に聞いたばかりなのにタイミング良すぎだろ。

兵士に近づこうとしたら首根っこを掴まれ彼の後ろに移動させられた。


「坊主は近づくな!何かおかしい!」

「うううぅうあぁああ」

「グラナルさん!どうするの!?」


グラナルが兵士を起こそうとすると叫んでこと切れた。

「汚らわしい魂の分際で触れるな!」

コラジュで聞いたセリフまんまじゃねーか!きな臭くなってきたな。

「坊主は見るな、お前のような子供はこんなもん見ちゃいけねぇ。誰でもいいから呼んで来い!」

「わっわかった!」


とは言ったものの誰を呼んでいいか分からない。

三侍女達に言うのが早いか?来た道を戻り城の階段を上がるとシェルトとラヴァがいた。二人に駆け寄り兵士がいきなり血を噴出して倒れたと言うとすぐさま走り去った。三侍女の部屋へ入るが誰も居ない。すぐさま玉座の間へと駆けて、近衛に伝えると程なくしてルナが出て来た。


「シン!場所は正面入り口でいいのね!」

「うん!!」

「シンはここに居なさい!いいわね!」


いい残して数名の近衛を連れ走っていった。

疑いたくはないが思考はコラジュの裏切りなんじゃないか?と進めてくるがルナ達が戻るまではその思考を捨てた。「汚らわしい魂の分際で」か、フェルからも同じセリフを聞いていた俺は一連の事件に繋がりがあるという答えだけは得た。


数時間後、ルナは城への入城を規制すると兵士達に命令を出し、現時点で城の中にいる兵士達は城から出る事を禁止し外にいる兵士達の入城も禁止されることになった。侍女や俺もその対象となったがまるで篭城のようだと皆は感じていることだろうな。


「ルナリア様どうなさるのですか?」

「コラジュで聞いて直ぐこれだものね。疑うのは仕方ないけど出来すぎね」

「私もそう思います」

「ウチらがコラジュに行ってる間に間者が入ってた可能性が高いね」

「兵士に魔力残光はなかったの」


「アタシ達が留守の間に何か無かったかしらシェルトにラヴァ?」

「別段ありませんでした」

「わたしも何も無かったと思います」

「どうしたものかしらね……」

「城を内と外で分けている以上は同じことが起こる事態は避けられますが解決には繋がりませんね」


「兵士が死んだあの場所にはグラナルとシンが居たのよね?」

「そう聞き及んでいます」

「マーレ!二人をここに呼んで頂戴!」

「かしこまりました」

俺達は庭で待機していたところをマーレに呼ばれ玉座の間へ向かった。

「グラナル、状況を全部話せるかしら?」

「はい姫様」


グラナルが見た全てをそのまま話すとルナは俺に間違いは無いか?と言う目線を誰にも気が付かないようにくれた。顎を少し動かすとルナは分かったと言わんばかりに話しを変えた。


「分かったわ。グラナルにも悪いけど暫くは城から出ないでね?家族に心配かけさせて悪いんだけど」

「どういった目的・思考・思想でこのような卑劣極まりないことをしたのか分からない以上は当然です」

「グラナルにはさっきの今で悪いんだけどそのまま任務に当たって頂戴」

「はっ!」


グラナルを見送ると俺にあの惨状を説明させたく無い様子だったが事が事なだけに聞かざるを得ないといった風に声が来る。

「シンはあの場にいて何か感じなかった?」

「何にも無かったけど兵士の人の態度とか挙動は変だったよ」

「操られていた可能性が高いか?それとも別の手段でもあったのかしらね」


「ルナちゃん!魔力残光が無い以上は魔法じゃないの」

「残光を消したりとかは?」

「ウチらなら仮に残光を消すアイテムを使っても分かるからそれは無いね~」

「あまり気乗りがしないけれど仕方ないわね」

シェルトとラヴァに任務へ戻って頂戴と命令を出し、三侍女達もそれぞれの役職の仕事へと戻らせた。彼女達が退室すると俺の方へ歩いてきて頭を撫でたのだ。


「怖くなかったかしら?」

「グラナルさんが居たから大丈夫だよ」

「シンには嫌な思いをさせてしまうけどアタシに協力してくれないかしら?」

「え?」

いつも守られてばかりの俺に協力を求めた彼女の意図を汲むことが出来ずに呆けてしまうが、眼に力強いモノを感じ本気で頼ってくれていると感じた。


「何をすればいいの?」

「ついて来て頂戴」

「どこ行くの?」

「来れば分かるわ」

着いた部屋には大きい机だけがあり、その上には先ほど死んだ兵士が布を掛けられ置かれていた。

前の世界ではゲームやら映画で見た記憶はあっても現実で目にすると気持ちが悪いという感想しか漏れてこず、そんな俺にルナはお構いなく布を取って言う。


「気持ち悪いと感じるのは仕方ないし吐きそうなら吐いてもいいのよ。でもね彼はこの国の兵士で国を守る力としてヴォルマに仕えてくれていたのよ」

「でも……あのっ」

「彼が裏切りを行っていた可能性は無いと言えば安心かしら?」

「えっ!」


「ジョコラに張ってある結界の一つは悪意と害意を持つ者に対して強力な効果を発揮するんだけど、ヴォルマでも同じ系統の結界が張ってあるのよ。それも城内では無く城外の詰め所の付近にね。この結界がある以上は彼の自我では無いと判断できる訳なのよ」


「操られていたら関係ないんじゃないの?」

「確かにそう思うのは当たり前だけど、シンには内緒にしても仕方ないわね」

「内緒?」


「城外の詰め所付近の結界はアタシが張っているけど、城内で張られている結界はアタシが張っている訳じゃなくて昔から誰かに張られているのよ」

「誰かって誰なの?」


「アタシもそれは知らなかったのよ。でも船でアタシにも少なからず龍の血が流れていることは疑いようは無くなったわね」

「ルナの祖先に龍の血が入ってるのは間違いないんだもんね」


「そうね。ヴォルマの結界はジョコラの結界より強固でその効果は絶大だと思うのよ。アタシや国に対しての悪意や害意よりもっと上位の存在に対して抱く場合に反応しているような気がするの」

「もっと上位って?」


「龍よ」

「えっ!」


「ジョコラにも龍殿はあるけど城とは別の建物であり、城と龍殿は個々に確立されていてそれぞれが独立しているのよ」

「ジョコラの城には城しかなかったね」


「でもヴォルマはどうかしら?城と龍殿は魔法の橋で繋がっていて個々ではなく二つで一つに見えないかしら?それにヴォルマでは密接に二つが関係してるわ」

「ヴォルマしか知らなかったから城と龍殿はどこも繋がってると思ってたよ」


「彼が裏切りじゃないって何故言えるのかというと、結界が答えなのよ。もう分かるかしら?」

「国やルナに対しての悪意と害意に反応したんじゃなくて結界を張った張本人に対しての悪意と害意だから?」


「シンは賢いわね。アタシや国に対してなら橋の手前の詰め所にいる魔法護衛兵達が見抜けるはずだし、あそこの結界でも十分に反応するのよ。でも彼は城内まで来た上で死んでいるわ」


「つまりヴォルマとルナに敵意は無いけど違う敵意があった」

「アタシやヴォルマにも少なからず敵意はあったと思うわよ?じゃなきゃ彼が橋を渡る段階で消耗しているはずが無いもの」


「敵意に順番があったのか」

「そうなるわね、アタシや国以上に優先する対象があってその対象のせいで結界に阻まれ死んだと言うことね」


「国とルナ以上の対象があって、詰め所の結界ではなく城内の結界に反応した」

「対象は白龍ソルナ様になるわね」


そのセリフを聞いたらもう気持ち悪いとか言ってはいられない気持ちが込みあがってくる。ルナのいう通りなんだ名前も知らないけどこの人は確かにヴォルマの兵士で国の為に働いていたのに、悪意で捻じ曲げられた挙句に命までも取られたんだ。えげつない事しやがる……俺は彼の前で手を合わせた。


「魔力残光が無い以上は魔法ではないことは疑いようが無いわけよ」

「僕なら見えるし感じる事が出来るものがある」

「彼は敵じゃないのよ、お願いできるかしら?」

「まかせて!」


机の上の兵士を見る。体中に血がべったり張り付いていて少しだけ気持ちが悪くなったけど彼は被害者だと思うとそんな気持ちは綺麗に洗い流された。

昔に蒼西瓜球を造った時の感覚を呼び戻す。

己の五感に対してそれを付加する感覚、魔身体強化する感覚ではなく自分の体に染み渡るような洗練された感覚。


目を瞑り深呼吸を二度、目を開けると見えた。

俺が知ってるモノとは別モノにしか見えない、俺の場合は綺麗な蒼がきらきら煌いていたのに対して彼の体にはうねうね蠢くような赤黒いモノが纏われていたからだ。それを見ていると喉にせり上がるものを押さえきれなくなった。


「オエエエヴヴェエ」

「シン!!」

「くっそ!なんでこんな……」

「大丈夫なのシン!!」

「ルナ!間違いないよこれは龍法だ」

「見えたのね?」

「赤くて黒くて蠢いてる」

「邪龍?」


呟いたルナを尻目に俺は立ち上がり、死んだ彼に己の龍法で生まれる蒼く煌くそれを流すように手から溢れさせると赤黒く蠢いたそれは綺麗に消えたのだった。


この世界には多くの龍が居るとヴェルさんは言っていたけど、龍の全てがヴェルさんのような良い龍だけでは無いということか?ヴェルさんから生まれた俺ならどうにか出来るんだろうか?でも何をどうしたらいいんだ?分からないとしか答えは出ない。

でも目の前の赤黒の蠢く力は何の問題もなく消せている以上は対抗しうる力はあると示していた。


龍法に対抗できるのは龍法だけなのか分からないが俺なら何とか出来る可能性だけはあるのか?

少なくとも可能性があるのなら俺はもう諦めたりしたくない。転生する前に散々体験したじゃないか惨めな思い抱えて、自分がブレて、それに成れて、当たり前になって、中身が捻じれて完成して後悔して、嘘付いて、もう後悔はしたくない。


この世界ならやり直せるなんて甘い事を考えもしたが惨めな自分はもう要らない。そんなモンは俺自身で殺して、殺して、殺しきるんだ。今なら出来るんだあの頃の俺じゃない努力も必要だが、それ以上に俺はもう恵まれすぎているんだから出来るんだ!


今まで魔法や武道を学ぶ時に導いてくれる人がいたが、ここから先はそれが出来る人はいない。思考して模索して失敗すら喜んで突き詰めるしかない。


そう決心を固めるが現状は起こってしまっているんだから、後手に回るし何時なにが起こるか分からない。時間はあるかもしれないし無いかもしれないがやるしかない。


そんな思いとは裏腹に兵士が部屋に来てルナに告げた。

二人目の犠牲者が出たと……。

ヴォルマで事件が起こりました。

これから二章のラストにかけて物語は展開して行きますので宜しくお願いします!


読んで下さった皆様、ブックマークをして頂いた皆様

本当に有難う御座います!

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