表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第二章 転生編
13/217

彼女が泣く理由

改稿前のものをアップしてましたので、所々変更があります。

申し訳御座いませんでした。

転生して十年目、季節は地桐


紅葉していた葉が枯れ始めたそんなある日。

俺はフェルと龍殿で武道の稽古を行う約束をしていた。昔は城から伸びる橋を一人では行き来できずにいたけど、今となっては自分の意思で渡ることができる。


橋を渡り始めると後ろからフェルの同僚で親友のエスカに声をかけられた。山吹色の腰まである髪を長い三つ編に纏めていて、歩くとプラプラと揺れるのが微笑ましい。頭にはピコピコ動く耳が付いている、彼女は獣人で俺は彼女が少しだけ苦手だった。


たまに舌なめずりをしたりするのが何故か妖艶でそれでいてピリッとするからだ。話せば凄くいい人で優しいお姉さんって感じの女性だ。ぐにぃはC級でたまに大きくならないかなぁ? と言いながら俺の前で自らぐにぃして見せるのだ。ちゃんと登録してますからね!


「やぁ。シン君これから稽古かい?」

「はい。フェルと武道の稽古だよ」

「そうかい。毎日頑張ってるね」

「それ以外はやる事がないだけなんだ」

「努力は大切さ。後で後悔しても遅いからね無駄でもやると自信になるものさ」


こんな言い回しが少しイラッとするんだ。

まるで俺が努力をするのが無駄だと言わんばかりで空気なんて読まない、それに語尾が「にゃ」が付いてないしな! 苦笑いで過ごすしかないような空気ってのはそれだけで疲労する。


「ごめんよ? シン君に言った訳じゃないんだ」

「うん。分かってるよ」

「それに君の場合は才能があるんだから。何しても大丈夫だって! 魔法も上級まで扱えるんだろ?」

「ターニャ達が親切に教えてくれるからだよ」


俺が無詠唱で魔法を行使することは知らないようだ。

あの日、ルナが口外禁止令を出したからな漏れてはいない見たいだ。


「色々大変だと思うけど頑張りたまえ少年っ!」

バンッ! と背中を叩かれた。痛い。なんか癪にさわるんだよこの人の言動とか行動は。龍殿の入り口で彼女と別れると俺はそのまま龍殿の中を通り階段で一階まで降りてフェルを待った。


最上階は五階層目で城とは魔法で架けられた橋があり繋がっている。この階層には限られた人間だけしか入れないから五階には知り合いが多い。一階までは階段を使わないと行けないが、エルフやシルキー達は魔法で身体強化して上り下りしているらしい。


「お待たせしましたか?」

「ううん。今きたとこだよ」

何このカップルがやりそうな会話! ドギマギしちゃうわ! 

はぁーフェルは何時見ても美人だわ彼女が笑うだけで俺は幸せなんだよ。

「じゃあ行きましょうか」

「うん」


そう言って彼女と並んで地下へ降りると地下にはクレーター状に凹んだ真っ白な空間がある。この空間では龍逢を受けたりするらしいが、同時に一部の人間が武道の稽古をする空間でもあるのだ。


罰当たりそうとか思ったけど案外そうでもなく人の努力が好きなのかな? とフェルに聞いたことがあったけど、彼女は龍ですからねぇ~どうなんでしょうか? という具合だった。この空間には水平な面がなく高低差もあり武道をする者には刺激が多いようだ。


「今日は私と試合をしましょうか?」

「フェルと試合か……萎えるね」

「ふふっ。練習試合とはいってもちゃんと本気でやるんですよ? いいですか?」

「ウス!」


フェルはいつもの服装ではなく、ハイカラさんみたいな胴着を着ていてとても綺麗。目が離せない! いつも以上にぐにぃが強調されて自由に動くしこれはこれで凄く幸せ!


「どうしました? 私に何かついてますか?」

「ううん。綺麗だなと思ったからえへへ」

フェルが相手だと俺は色んな意味で素直になってしまうんだよ。


「うふふ。ありがとうございます。シンにそう言ってもらえて嬉しいですよ?」

「んふふふ」

「でも試合中は集中しないと怪我に繋がりますからしっかりしましょうね」

「うす!」

「攻撃魔法は禁止、身体強化に使うのは許します」

「うすっ!」

「私に一撃綺麗に入ればシンの勝ちですよ?」

「うーっす!」

「始めましょうか。どこからでも来てください」


こう見ると分かるフェルには全然これっぽっちも隙という隙が無い。どこからでもと言われてもどこから行っても崩せそうにない。


「ふぅ」

気合入れんとな! 俺は手と脚に魔力を流し留めて強化する。魔力は流して留めて詠唱で導くと魔法となるが、身体強化の場合は自分の思う場所に流して留めて圧力をかける感じだ。


圧力を強くかけるとそれだけ応えてくれて、魔法が全然ダメな人でも魔力の流れを感じる事ができれば誰でも使う事が可能でかなり普及している。


これはあくまで一般的でフェルほどの人だとその強化の意味合いが大きく変化する。彼女が身体強化を脚に集中した場合、五mの距離なんて一瞬で詰められてしまう、使える人間が多くても扱う者次第では化けるのだ。


俺は魔力を圧縮すると腰と膝から力を抜いて崩れるように体から軸を外していく。クレータの斜面に沿い倒れそうなぐらい前のめりになると一気に加速してフェルの左側部へと距離を詰める。


左肘でフェルのわき腹へと攻撃を加えに行くが、フェルの左手で上から肘を叩かれる。それだけで俺のバランスは奪われ勢いを挫かれた体が上を向いた瞬間に右手を掴まれ投げ飛ばされる。


クルクル廻って地面に着地するが、地面は曲面を描いてる為に体の中心に芯が戻りきらず追撃とばかりにフェルは右手の掌低で俺の鳩尾を穿つ。ゴロゴロ転がってクレータの中心で止まった。唯一の平面があるとすればこの一点のみだ。


「ごほっ! ごほっ!」

「まだ遅いですよシン」


片膝を付いて咽る俺にフェルが言う。

「いいですか? 身体強化もっと早く展開できるようにならないといけません。飛ばされた後すぐに防御の為に体を強化すべきでした。わかりますね?」

「はっい」


フェルは毎度の事ながらその場で動きの確認と訂正をしてくれる。直後であるからこそ体でちゃんと意識して覚える事ができるのだ。武道だけで見たら三侍女も敵わないだろう。


俺は脚と両手の指だけに強化を施し、指に集中させる事で掴んだ時に一気に絞り上げる算段に出る。脚にはさっきの倍の魔力を込める、坂道になっているからどうしても加速力が伸びないのを計算してだ。


そして行く、加速しフェルの足を払うが彼女は足捌きで綺麗にかわす。俺は裏拳で追撃し体を回して彼女の腰を掴む、同時に指先に込めた魔力を左腕全体に流しそのまま真下に腕ごと引くとようやく彼女のバランスが崩れる。崩れてきたところに右腕を一気に強化し今度こそわき腹へと掌底を叩き込む。


完璧に入ったにもかかわらずフェルは一切顔色を変えずに俺の首根っこを掴み持ち上げると、腹パンされ三mほど中に浮かされた。ダメージが大きいく彼女を視界から外してしまう。そこへフェルは俺の腰に両手を当てて押し出し吹き飛んだ俺はそのまま地面をバウンドして意識が途切れた。




横たわっているのが分かるけど全身がズキズキと疼く。目が覚めるとフェルに膝枕して貰っていた。


「大丈夫ですか? 痛みはどうですか?」

「ぐっ体中痛いよ」

「それだけなら大丈夫です。骨や臓器には異常はありませんでしたから」

「うっううん」


三侍女達と比べても遥かに厳しい、彼女達は痛みが残ったりしていると心配してくれるがフェルの場合は本当に危ないような状態で無い限り「大丈夫ですね」で終わり痛みを消す魔法やそういった努力はしてくれないのだ。


フェルなりの思いらしく、実践では己でどうにかするしかないし試合の痛みでもそれは自分の経験になるから簡単にその痛みを取り除いたりはしないのだ。

フェルはとても厳しくて優しい。


「ボクは全然ダメだね」

「いいえ。とても良かったですよ」

「でもボコボコにされたよ?」

「結果的にはそうなりましたね。でも確実に得たものがあったでしょう?」

「得たもの? 痛いよ?」

「確かに痛いでしょうね」


「最後の方?」

「最後の魔力操作はとても素晴らしかったです。今までの中で一番早くそして力強かったです」

「そうかな?」

「あの感覚を何時でも使えるようになれば今よりもっと強くなれます」

「そうかな~」

「ええシンは強くなれます。時間はありますからね?」


俺の頭を撫でた彼女は懐かしい何かに触れるようにしばらくそうしていた。俺は彼女の事をあまり知らない十年お世話になっているけど彼女は自分の事を語らない、だからどうしても知りたくて質問したんだ。


「ねぇフェル?」

「どうしましたシン」

「ボクが龍玉から生まれるって教えて貰ったからこの国に来たんだよね?」

「ソルナ様の龍逢でヴォルマに来ました」

「じゃあ龍逢が無かったらその村にまだ居たの?」

「えっ……ええそうなりますね」


やっぱり少し悲しそうな顔になる。

俺みたいな人間が偉そうにどうこうできるとは思えないけど、フェルには感謝してるし多くを教えてくれるし、どうにかしたいと思うのは必然だった。


「フェル? あのね」

「なんでしょうか?」


「ボクなんか何にも頼りにならないし、力にもなってあげられないけどね? ボクはフェルに会えて凄い感謝してる。話しを聞かせてくれるし、訓練もしてくれるし貰ってばっかり。それなのにフェルの為に何にも出来ないのが凄く悔しいよ! ボクがしてあげられることって何にも無いのかな?」


俺はこんなことを言える人間なんかじゃなかったんだ。でもディルカーレで出会った人達のおかげで中身が綺麗になって行く自分を感じていて素直になれたんだ。


フェルが涙を流していた。

女性が目の前で泣くような光景に出会った事なんて今まで無かったから、どうしていいか分からず考えたけど言葉が見つからない。俺は立ち上がってフェルの頭を抱いて、彼女がいつもやってくれるように頭を撫で続けた。


嗚咽が漏れフェルは俺に力強く抱きついて泣いたのだ。暫く彼女が泣く声だけが白の空間に響いた。どれぐらい時間が経ったのか分からないけどフェルが顔を上げた時、彼女は痛々しい顔で笑みを浮かべた。フェルは俺を膝に座らせて初めて自分の事を話し始めた。


「私が生まれたのは本当に小さな村で本来なら私のような人間がこんな大きな龍殿に住んだり、ルナリア様とお話なんて出来るような身分ではないんですよ」

ゆっくり、ゆっくり、彼女は言葉を探しながら話すのを俺は黙って聞いた。


「私には弟と妹がいたんです。弟は今のシンぐらいで妹は五歳で父と母も仲が良くていつもニコニコしていました。そんな生活がずっと続いて裕福でなくとも幸せだったんですよ」


フェルの話を聞くのは嫌と言うよりかは怖い感じがしていて、彼女の暖かさを背に感じながらも体の体温がガクッと下がったような気がした。


「父と母は村の小さな龍殿で働いていたんです。小さな村ですから村の人達の怪我や病気、それに話相手だったり農作物だったり色々頼られていました。私はそんな父と母が大好きで誇りに思っていたんです。サクリとフィーチ二人の面倒はいつも私が見ていて二人とも素直で元気で優しい子達でした」


「フェルってシルキーだよね?」

「私の母はシルキーで父はエルフとシルキーのハーフなんですよ」

「そうだったんだ」

「ええ」

「あっ話の腰折っちゃったね」

「いいえ大丈夫です」

膝に乗せた俺を彼女は強く抱きしめて声を搾り出すように続けた。


「季節は空皇に入ったばかりで暑さが残る日でした。サクリとフィーチが怪我をした男性を村に連れて帰ってきたんです。ブジャルト=モルテと名乗りました。父と母が治療を行い怪我が癒えるまで家で生活するになったんですけど私はそれが嫌でした」


普段なんでも笑顔で聞いてくれて、嫌だとか嫌悪を示すことの無い彼女のたったその一言が重く圧し掛かり聞いてしまう。


「なんで嫌だったの?」

「なんだか奇妙な感じで、どうしても些細な態度が嫌悪感を引き出すような感じで。不思議な感じで」

フェルが歯切れ悪く説明するが自分でも上手に説明が出来ないようだった。


「怪我が癒えた彼は礼を言い村を去りました。怪我が治った事を喜んだのか彼が村から居なくなるのが嬉しくて喜んだのか……とにかく私は彼が家に居ない日常が嬉しかったんだと思います」


ふぅーとフェルが息を吐いて気持ちを入れ直したのか俺の手を握ってきた。少し震えている。俺の中の彼女は聡明で冷静で優しくて強い、その彼女が震える程の何かが起こったことぐらい察しがつく。


「私が住んでいた村は山間にあったんですが、地桐には雪が積もり山楼の季節までは他の村や街とは行き来が難しい土地でした。雪が積もり始めた時期に彼は戻ってきました。あの時の礼がしたいと言ったモルテさんに以前のような気持ちは無くなっていました」


俺は大丈夫だよと言わんばかりにフェルの手をぎゅっと握ることしかできないでいた。


「ただ雪が積もるにつれて村の人達の態度が少しづつ余所余所しくなっていったんです。サクリとフィーチがよく遊んでいた子供達も些細な事で喧嘩したり仲間外れにされたりといった具合で。私には許婚が居たんですけど、そちらの家族とも凄く仲が悪くなってしまっていて……。父と母はそれでも気丈に振舞いました、作物が少ないからみんな不安とかイラ立ちがあるんだろうって。村に居る人なら同じ境遇なのになんで私達に当たるんだって思っていましたけどね」


フェルに許婚が居た事に申し訳ないけど少しだけ嫉妬していた。だけど俺のような部外者が子供がそこに突っ込んでも困らせるだけだろうし思いは胸に仕舞い込んだ。


「父と母は彼が戻って来てからよく話すようになっていましたね。外で村の人と会っても侮蔑や汚い言葉を投げられるようになっていましたから、私も彼から」

フェルの膝から立ちがった俺は彼女に向かい合い座って両手で包み込むように彼女の手を握った。

「フェル大丈夫?」

「あっ、大丈夫ですよ」


そんな痛々しい顔で笑わないで欲しいフェルには笑顔が一番似合うんだ。

「私達にとってモルテさんは家族のような存在になっていたんです。サクリもフィーチも兄のように慕っていましたしね。父と母は私とモルテさんが結婚したらいいのにって冗談っぽく言ってました。きっと許婚の家の事を忘れさせようとしてんでしょうね」


フェルが笑顔になった。嬉しかった。

でも俺は……それにお構いなくフェルは嬉しそうに話す。


「でも山楼の季節が来て、雪が少しづづ溶け始めた時期にモルテさんは暫く村を出ると残して旅たってしまったんです。直ぐに戻ると言ったきり戻る事はありませんでした。事故か魔物に襲われたのか分からないんですけど、またすぐ戻ってくるって思って待ちましたね」


私はサクリとフィーチと三人で村の外へ三菜取りに行く事になったんですが、二人ともあまり家から出たくないようでした。食べるに困るよりマシでしょう?って言いながら家を出たんです。そうしたら村の……ひと」


涙が流れている。

サラサラと綺麗なフェルの眼から……。

彼女の涙を俺は手で拭いてあげた。

鼻を鳴らす彼女がとても幼い女の子に見えた。

「ありがとうシン」


「私達三人は広場で石をぶつけられたんです、体中に当てられました。二人を守る為に私は前へ立ったのですが、元許婚であった彼が……バンボラが私に笑いながら石を投げてきて頭から血が流れました。どうして酷い事をするのかと聞いたら汚らしい魂の分際で話しかけるな! このゴミ家族が! と言われてました」


あーやばい。なんだこれマジでキレそう。

ボコボコに殴り飛ばしてやりたい。

我慢しろ、我慢だ深呼吸だ。

ここでキレたってダメだ。話を聞くんだ。

自分に言い聞かせて体に力をどうにか抜いて冷静を振舞った。


「意味も分からない理由でそんな事をされなければいけなかったのでしょう……サクリとフィーチが私の手を引いて三菜がある場所まで逃げました。フィーチが泣きながら私の血をふいて布で巻いてくれて、サクリも泣いていましたけど黙って三菜を集めてくれていました。本当に優しい子達です」


「直ぐに家に戻ったら、またあのような事をされると思ったので日が落ちるまで三人で身を寄せていました。日が傾き始めてから村へ隠れるように帰ったんですけど、村に着くと広場で火が焚かれていて父と母は……そこで火刑され殺されていました」

「なんで! そんな酷い事!」


俺の拳はこれ以上握れない程に握られていて体が怒りでぶるぶる震えていた。

俺の声に驚いたフェルは抱きしめてくれた。


「目の前の光景が信じられませんでした。それでも村人達は笑いながら私達も殺そうと斧や包丁を持って私達に迫りました、三人で村から逃げました。走っても走っても後ろから追いかけてくる村人達の目が怖かったです。隠れながら逃げても所詮は子供の体力ですから、いずれ逃げ切れなくなって殺されてしまう」


「私は囮になろうと決めました。サクリとフィーチは最後まで一緒とせがみましたけど、私は二人を叱りつけて逃がしたんです。体が小さい分見つかりにくいですし、慣れ親しんだ山ならどうにかなるだろうと」


フェルの顔を見ていた、彼女はそのまま続けるけど聞いてるだけで辛い。


「二人と別れて出来るだけ見つかりやすい道を行きました。肩に弓を射られ最後は崖から落とされましたが、それでも命だけは助かったんです。私は三人でよく遊んだ思い出の場所に逃げたんじゃないか? って思ってそこへ行きました」


「行かなければよかったと今でも思います、近くの山道でサクリとフィーチは服もボロボロの状態で頭を落とされて死んでいたんです。私がっ! 死ぬはずだったのに! 私のせいで二人は死にました! 私が殺したようなものです!」


違うフェルは悪くない、自分を犠牲にしてまでも家族を守ろうとしたじゃないか。サクリもフィーチも誰も悪くない絶対に、俺は話を聞いて思う。

聡明なフェル、今より幼くてもなんでこんな事に。


「フェルは悪くない!フェルはいつだって優しい」

こんな当たり障りない言葉でしか彼女を励ますことができないのが悔しい。

「あなたに何が分かるんですか! あなたなんかに」

「ひっ……」


フェルが怒りを人に見せる姿を初めて見て驚いた。

それも俺を相手にだから余計にびっくりして俺は腰を抜かした。尻の痛さを感じるより彼女のそれが怖かった。


「ごっごめんなさい。ゆっゆるしてください」

「あっ、違う! 違う! 違います!」

フェルがこちらに来て、頭に手をやろうとするが俺はびっくとしてしまった。


「ごめんなさい、あなたは何も悪くありません」

「知らないのに偉そうなこと言ってごめんなさい」

「シンっ!」

俺の名前を叫ぶと彼女は俺を抱きしめた。


「ごめんね。ごめんね!」

俺に抱きついたフェルは俺にサクリとフィーチを重ねているようだ。彼女の背中に手を回して「大丈夫だよ? ボクは気にしてないよ?」その一言で彼女はまた泣いた。


フェルと抱き合っている間、彼女の背を撫で続けることしかできなかったけど、ありがとうと何度も何度も言う彼女の助けになりたいと思って心から思った。


「もう大丈夫です」

「本当?」

「シンのおかげです。本当にごめんなさい」

「気にしないで。ボクはフェル大好きだからね!」

「ふふっ、ありがとうシン」

「うん!」


「それからは辛い日々で二人を埋葬した後に私は出来るだけ逃げて、逃げて、倒れました、ここで死ぬんだって。もう良いかな? って皆に会えるならいいかなと。気が付いたらシルキーだけの小さな村にいました。村に訪れていたエスカが私を助けてくれたんです。その後は龍逢が下るまであの村で住んでいました」


「龍逢が無かったらフェルには会えなかったんだね」

「そうですね、きっと他人のままでしたね」

「龍逢なんてなかった方がよかった?」

「そんなことはありませんよ?龍玉が流れ落ちてから私の人生は大きく変わりましたし、辛かったですけど生きていますから頑張らないといけません」


「フェルこれからも宜しくね!」

「ええ私こそ宜しくお願いします」


俺はフェル自身の事を知り今まで以上に彼女に懐き、彼女もまた今まで以上に大切に思ってくれるようになった。


今回は少し長かったでしょうか?

セリフが長く読み難くなかったでしょうか?

改行を多様するか迷ったんですがこの形となりました。

ご意見頂けるとあり難いです。


本話も読んで頂いてありがとう御座います。

ブックマークをして頂いた方にも重ねて御礼申し上げます。


次話も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ