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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十一章 箱庭編
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第二ラウンド

爆裂音が三発鳴り響けば土煙が舞ってそれは風に乗り煙幕となる。

脇腹を裂くように振り上げられた爪が急に右から出現するも余裕を持って回避した。さらに追撃で爆裂音が響き視界は奪われ目に砂が入らないように必死になっていた。

俺の視界を奪っても相手からは匂いで居場所が特定出来ると考えた一手だろうけど実際は俺からもばっちり見えている訳で。次は背後に回ってから強襲しようとしているのも、この目には見えていてあえてそれに乗ることにした。


「くっそぉ! 隠れるなんて卑怯だぞっ!」

「人間風情には分からんだろうが俺にはお前の位置が丸分かりだ」


俺の目には敵の色が見えている。

単純だけどしっかり敵がどっちを向いているか? とか今どっちの足が出たとかそれらが分かるレベルで見えている。単色のサーモグラフィーとでも言えばいいのかな? だから土煙で視界が奪われても正直なところ意味が無い。

それに対して相手は匂いと気配で位置を特定して攻撃に出ている。

敵の強さから判断するなら見えていようがどうであろうが恐らく関係無いと思う。


それでも相手は俺が見えていないと言う前提を作って行動している以上はそこが完全な隙で最大の好機。一撃目はあえて反応を遅らせ様子見をしたと言うのを理解していない様子でベラベラ返答するんだから心にはまだ余裕があるんだと思う。見てくれこそ俺は本気で怒ったぞ! みたいな感じになっているけど、俺には分かる。コイツは狩りをするように楽しんでるって。


背後から腕が振り下ろされる前に振り返れば、隙だらけのガラ空きで殴って下さいって言わんばかり。俺はそれにアッパーで答えて差し上げれば土煙の向こうから呻き声が聞こえて地面を擦る音だけが残った。その方向へ進む前にさらにカウンターを入れておこう、巨大魔道弓も魔力を帯びている部分だけがはっきり見えている。ピンポイントで破壊するように小さめの蒼煉を三発放てば爆音が綺麗に三つ重なった。風に流された土煙がようやく視界を返してくれれば敵さんは膝を付いて睨んでいる。


「こんな単純な罠に引っかかるとは思わなかったからビックリしたぞ」

「お前! 見えていたのか……」

「バッチリ見えてたから笑いを堪えるのに必死だったぞ? どうした?顎を殴られたような顔をしてるぞ?」

「あまり舐めるなよ人間っ!」


鋭い目付きは少々怖く感じるも、俺はそれより怖い目をするヤツらを少なくとも二人は知っているのだ。ルビネラも大概怖いけどさ、彼女を宥めた時のソルナの目が一番怖かった。あの目だけは忘れない、ぽこにゃんがしゅ~んと萎んだからな。それと比べれば今回、俺のぽこにゃんは萎んでないからって変なバロメーターを頼りに相手を推し量ってしまう。


二人の鍛錬と銘打ったボコりを思い出すと今でも身震いするレベルで体に染み込んでいる。三度のシバリングの後、目の前の王を見れば既に立ち上がり丸太のような両腕をクロスさせたポーズを取っていた。まさか、ダークエネルギーフラッシュハリケーンの使い手かもしれんと俺の気分は少しだけ高揚する。


「ここからは本気で殺しに行かせてもらうぞ?」

「おぉおお~」

「我らが獣人だけが扱う事を許された秘技だ、前回は俺もまだ若くあの耄碌爺にしてやられたがっ!」


魔力の集中が起こり、体全体は勿論だけど特に顔と手足にそれが集中している。

覆う魔力が固着すれば目の前に象並みにでかいライオンさんがガォーなんて吼えて出現する。獣人だけの秘技だなんて言うから期待したんだけどな。


次にその獣を捉えた時には既に俺の真上に飛び上がり口を大きく開いて喰らおうとしている。これだけ大きいから動きは鈍重かと思ったけど相当な速度で動けるらしい。実際、それを見た感想を言うなら凄いと思わされたから。


「止めだ」

「速いっ!」

「その四肢引き裂いてやる! もがき苦しめ!」

「でも当たらないけどな!」


サイドステップで回避すればジャストタイミングで俺が立っていた場所に獣の爪跡が走る。曲芸でも仕込まれたサーカスの獣の如く、器用に体を捻り尻尾を振り抜く。リンボーなんて経験の無い俺でも尾を見切れば視線の真上を音を発てて通過して行った。さらに回転した獣は腕を伸ばせるだけ伸ばして五指の爪が空を裂く。


俊敏であり体のバネを上手く使った攻撃は連続で続いて俺を襲うも、ギリギリのところで俺は見切り続けて気がつけば背中に樹がぶつかった。

獣の股の間に飛び込んで攻撃を回避し振り返れば、獣の薙いだ腕が太い幹を抉り取っていた。常に相手を一撃で仕留めるに来る攻撃は獣故なのか?思考が獣寄りになっているのかもしれない。


「逃げるばかりの人間がぁああああ!」

「ちゃんと捕まえてみろよ!ばーか!」


獣の姿勢がガクりと下がれば口を大きく開いて咆哮する。

凄い声量に空気が振動したかと思えば俺の体を重圧を受けて十数メートルの距離を飛んだ。体のバネを使った獣が今度こそ止めとばかりに真上から飛び着く。


それでも足りないと感じてしまうのはあの二人のせいと言うべきかお陰と言うべきか。逆立ちで地面に蒼煉を放ち推進力を得たロケットの様に真後ろへ飛んで回避。俺も気合入れて対応しようと新たに入荷した技を展開していく。


新たな技なんて言っても応用でしか無く、あのお二人さんが言うにはこの状態で戦われるとウザいとのこと。これを使って戦うと二人は直ぐ龍になってさらにボコられる結果になるから控えていたけどね……ほんと。


やる事は単純。龍の手を覆うように朱食みを展開、もう片手では碧乱を展開。

別々に展開しているけどやっぱりノシュネとフォスキアは双子ちゃんなのだから相性はかなり良い。朱食みも碧乱も遠距離でこそ役に立つと思っていたけど、その真髄は接近戦だって気が付いたのだ。


殴って魔力を喰い、吸収すれば即魔法。

そもそも無詠唱で魔法を展開出来るんだから鍛錬すれば容易く会得出来てしまう訳で。才能って怖い! って図に乗れば五倍以上でボコボコにされたあの日が懐かしい。


「朱と碧、双子の力の真髄見せてやんよ」


飛び込んだ獣の腹を真下から打てばその肉は焦げ、喰った魔力を再利用し落下する獣の真下からポルタポルトで壁をせり上げさらに腹を打つ。

焼かれた痛みと自重で腹に食い込んだ壁の痛みで地面をのたうつ姿はやはり獣なのだ。口から血を流してもその目は今だ鋭い。


「父様強い!」「父様綺麗!」「父様!頑張って!」


三人からの黄色い声に少し感動を覚える。

体育の授業でこんな声援を貰っていた男子はこんな気持を常に感じていたのか。

まぁあの頃の俺には絶対無いことだったけど。

体育で泳げば「息継ぎの顔やばい!」なんて汚い声援を受けたぐらいだ。


「シン……あなたはどこまで?」

「っぐっ……」

「まだ動いては駄目よあなた」

「大分マシになった、助かったぞグラディー」

「シンが来てくれなければどうなっていたか」

「小僧は!」

「動かないで! 今、戦っているのよ」

「あれが小僧か……」

「えぇ、あれが龍の力」

「なんという」

「あんな力に対抗出来るのはそれこそ」



獣が再び咆哮すればさっきと同じ様に重圧を体に受ける。

でもね俺も同じ手を食うほど馬鹿じゃない。朱御炎渦を展開しその全てを受けきれば、口を開いたままの獣の姿がチラチラと炎の隙間から見えて突進する。

朱御炎渦を押し付けられた獣は接している部分を焼かれ叫び声とも取れる声を上げた。龍やらを相手にした場合なら所詮は盾としか機能しない、だたそれ以外の相手ならば盾としてでも攻撃としてでも機能してくれる。


朱御炎渦と樹に挟まれた獣は尚も吼えて最後には樹が折れてしまった。

展開を止めて獣を見れば、元の姿に戻った敵が体から煙を上げて倒れ俺は勝負に勝った。速度や威力は確かに凄まじい、でも所詮は龍達を含めないってのが前提なんだ。強い相手だとは一切感じることは無かった。それを目の当たりにした敵の兵士達が撤退を始めて行く中、後方から追いついたガゼリ達の奇襲により瓦解し終息へ向けて一気に動き始める。


グラディーに顛末の説明をすれば彼女はルセルの兵へ命令を下してくれる。

彼らは敵では無いと、もう争う必要は無くなったのだと。

そうして事態は終わりを告げた。

敵の王はボロボロになっても立ち上がり一歩を踏み出す。


「お前の負けだ、諦めろ」

「ふざけたことをぬかすな!まだ終わらんさ……まだ」

「お前のとこの兵はもう諦めてるのにか?」

「初めから消えても困らん駒に過ぎんわ」


魔力を込めた敵の王がもう一度咆哮し俺に向かって突進する。

さっきのような速度はもう出ないらしく体を引きずるように突き進む。

何がコイツをそうまでさせるのか? そこまで憎いのか?

そんな考えを持った時、曇天が影を落とした。

影はどんどん濃くなり地面が揺れて轟音がけたたましく響く。

土煙が舞うも一瞬で拡散して事態がまだ終息して居ない事を告げていた。


「遅いぞ……」

「来てやっただけでも有り難いと思うのだな」

「その声!」


「ほぅ~ついこの前振りになるか? お陰で助かったぞ?」

「はっ?」

「貴様のお陰で時間が早まったとでも言えばいいか」

「何言ってんだ」


「人間如きには分からんだろうな。俺はこの竜の復活を待っていたのだ」

「俺はあの場所に閉じ込められていた、それをお前が流してくれた力のお陰で封が取れた。それだけだ」

「まんまとハメられたって訳か?」

「導いた対価と言って欲しいな」


目の前には子供が絵の具で色作るのに失敗した時のような汚い色をした竜がいた。紫やら緑やらが見えるけど基本的に汚い。どうして悪い竜ってのはこうも汚いのだろうか。それに翼を持っていないのに竜なんて言われても困る。

どうみてもでかいトカゲ、いやカメレオンか?足して割ったかのような見てくれに長い尾が特徴的で目がぎょろりと動くのが気持ち悪い。


俺も単純馬鹿だとつくずく嫌気が差した。

全部俺のせいじゃないか、目的を優先するばかりに目がいってしまって多くを見落としていた。俺が主体で起こしたと考えるとイラつきも相当なもので、それは俺自身に対してだった。ここから先は全部、余す所無く俺が責任持って対処してやるって気合を入れ構えた。

本話もお読みいただきまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


あと六話程度で終了を予定していますので次話以降も宜しくお願い致します。

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