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龍軌伝 異世界で龍に愛されるニート  作者: とみーと
第十一章 箱庭編
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クイズと防衛

天気になる、そう言ったのにも関わらず雨は降り出した。

女王ルセルジーア=マグラディは神樹の上部にある物見矢倉から広大な森を見て溜息を付く。その傍らにはフィルディア=ゼスに出雲と雲母の六枚の羽を持つ妖精が宙に浮いていた。今朝方、女王の夫ことバイン=ゾルドは兵と共にルセルを出立した。今頃は先遣部隊と合流を果たし斥候からの情報を精査し作戦の立案と行動を起こしている頃だろう。


「どうなるかしら……」

「グラディーがそんな拍子抜けのような態度でどうするの」

「まさかこんな展開になるとは思わないでしょう?」

「それはそうだけど、文句と言った所で何かが変わる訳じゃないでしょ」


「父様と八雲大丈夫かな?」

「八雲はずるっ子したから父様帰ったら二人で独占!」


二人の間に協定が結ばれてふんふん頷きあっている様を見て女王達は癒されるのだった。


ルセルから出立した兵達は森の中に壁を作るように展開され、後方にゾルド率いる部隊長達が会議を始めていた。


「ゾルド様! 三組に分けた斥候の内、二つの隊が戻りました!」

「残り一つはどうした!?」

「第三隊は湿地帯を迂回しておりますから戻るまでにはまだ時間が」

「分かった! まず戻った斥候からの情報を上げろ!」


「第一部隊、申し上げます! 敵影の確認は出来ませんでした!」

「第二部隊、此方も敵影は確認出来ませんでした!」


「山を真っ直ぐ越えてくるかと思ったがハズレたか……」

「ゾルド様、一番面倒な道を敵は進んで来ていると言う事ですか?」

「一番面倒ではあるがこちらと衝突するまでは安全を取ったということだ」


ゾルドを呼ぶ声に会議は中断され皆が外へ出た。

物見兵が言うには何かがこちらに接近しているとのこと、それが何かと問うても歯切れ悪く分からないと返答がくる。樹に上がり己の目で視認しようと広大な森に目を凝らして注視すればそれを直ぐに発見した。片手を樹に付いていたゾルドの掌には力が入り、樹の表面はバキッと音を発てる


「ゾルド様!」

「なんという惨たらしいことを」


遠目には三本の枝を落とされた樹が移動しているように見える、だがその先端に何かがぶら下がっていて気が付いた兵から順に息を飲む。モズの早贄、捕獲した獲物を枝に突き刺す行為。それを戻って来ない第三斥候部隊の三名に対して行っていたのだ。


先端を細く加工し、三名の太ももを貫き通して生殺し。

苦痛に顔を歪めるも手はぶらりと垂れ下がり、肩を破砕されて成されるがまま。

樹が血を吸い赤く染まり、それを持つ巨躯の兵士の顔は不気味な笑みを零していた。


「ゾルド様!」

「逸るな! これは挑発だ……」

「ですがっ!」

「分かっている!」


敵は王を前面に置いて進軍していた。

本来なら王が一番安全な場所から指示を出す事が基本であるのにも関わらずだ。

其れほどまでに己の力に自信があるのか?それすら挑発の一端なのか?

理解に苦しむがゾルドも同じく前面に出て相対した。


既に合って無い様な互いの距離の中、敵の王が手を上げて真下へ振り下ろせば、兵を串刺しにした樹を目の前で勢い良く地面に叩き付けたのだ。

それでも兵の足からそれが抜ける事は無く、間髪置かずにまた樹は立ち上がる。

王が指示せずとも立ち上がった樹をまた叩き付けた時、右の兵士の足から樹は抜けて宙に放り投げられる。


目の前に落下してきた兵を敵の王はジャストで捉え、会心の一撃を持って殴りつけた。体がへしゃげる鈍い音、地面を転がった兵士がルセル側まで転がるとそれには本来有るべき頭部が無かった。


「生きていたんだなゾルドよ」

「貴様……」

「怒るなよ? お前達の兵が貧弱だからこうなっただけの話だ」

「許されると思うなよ、小僧が」

「老いぼれが粋がるなよ、前は散々だったが今回は違うだろ? 俺もお前も!」

「ルセルに行けると思うなよ若造……」

「とっとと終わらせてルセルの女王を調教して俺のペットにしてやろう。そうだなお前の屍の前で犯すのも一興だな」

「……」


ゾルドの怒りは頂点に達しそうだったが、深呼吸をして兵へ指示を出し戦争の火蓋は切って落とされた。




「おっオトシゴ様! 一体これは?」

「ん? これが本体でさっきのは偽物って訳だよ」

「貴様! 離せ! 薄汚い人間風情が!」

「黙って俺が聞くことに答えろ」


毎度の事ながらこのアイアンクローは脅しに対して最適だと思わされる。

異様な手に顔面を掴まれて五指の爪が食い込み流れる血、そのまま腕を上げてしまえばほら簡単。獣人は皆が恵まれた体躯だと思っていたけど、コイツは事情が違うらしい。だってレミナより少し大きいぐらいで簡単に持ち上がるんだもの。


「はなっせ! はなっ!」

「さて問題です! ババン!」

「オトシゴ様?」


「今の音の正体は一体なんでしょう~~か!? 四択問題です。

①俺の屁の音 ②お前の屁の音 ③俺の指の関節の音……」

「なんだっ! 何を言ってい!いい加減離せ!」

「④お前の頭蓋が軋む音……さてど~れだっ?」

「ひっ!」


「回答時間は三十秒です。回答に間違った場合、罰ゲームがありまーす。

ではスタート!いーち、にーい、さーん」

「おい! 冗談は止せ! 私をどうするつもりだ! 私は宰相だぞっ!」

「じゅーごー、じゅーろーく」

「おい無視をするな! 私を殺せば貴様達も死ぬのだぞ!」

「にじゅーごー、にじゅうーろーく」


徐々に手に力を掛ければ流れる血の量は目に見えて増えて、宰相と名乗った男の顔色が変色して行く。


「わかった! 話すから! 一度止めてくれ!」

「にじゅーはーち、にじゅーくー」

「はっ! ④だ! 答えは④だ!」

「ピンポン! ピンポ~ン! 正解でーす!」

「よし! 正解したんだから離せ!」


「デデン! 第二問! 今掴んでいる頭部はこのままだとどうなるでしょう~か! 自由回答三十秒になりま~す!スタ~ト!」

「頼む! 頼むから殺さないでくれ!」

「ぶっぶ~不正解で~す」

「っは……はっ頼む……」

「ぶっぶ~不正解です!」

「全て話すから! 離してくれ!!」

「ぶっぶ~~~~~不正解です。後十秒になります」

「あっあぁあああっあああ~~」

「ぶっぶ~分かる言葉で回答してください」

「ちゅぶれっず!」

「う~ん、噛んでるけど俺は優しいから正解にして上げるよ」

「離せっ……」


「デデン!」

「ひっ!」


宰相はおしょんをお漏らしして解放すればその場にへたり込んだ。

そこへ暇なんざ与える間も無くドラシャールを首に掛けて問う。


「第三問、王は一体どこにいるんでしょーか? 回答時間二十秒になりまーす! スタート」

「あっひっあっ」

「五秒経過、残り時間十五秒です」

「おっ王は……王は今朝方に……るっせるを落とすと……出立されました」

「あ?」

「城など……なくな……なくともっ……るせるっを落とせば関係ないっと」

「オトシゴ様!」

「分かってる!」


宰相の顔面を一撃殴れば簡単に吹き飛んで、玉座に収まったまま失神した。

してやられた、城に残っているのは全て囮で既に王達はルセルに進軍していると。時間の遅れはかなりのものになる、下手すれば既に開戦している可能性があるんじゃないか?そんな焦りのせいで思考は定まらず俺は慌てていたが、そんな俺をガゼリは両肩を掴んで落ち着けと諭してくれる。


「良いですか? この城は既に落ちたようなモノ、後方からの隊の内右翼側の戦士達を残して我々はルセルを目指しましょう!」

「あっあぁ……でも」

「確かに時間はかなり経過していますがこの城からなら山を迂回するルートで走ればまだ間に合います!」

「そうだな……まだ」


ガゼリが隊と連絡を取り合い隊の再編成を行っている間、俺は気が気じゃなかった。そんな中で戦士に声を掛けられ振り返ればバリエンテが立っていた。


「オトシゴ様! 本当に……」

「肩透かし食らった状態だよ、忌々しいことにな」

「ですが貴方は動いてくださったではないですか」

「それでも成し通せなければ嘘と同じだ」

「それでも王が居ないとしても城はほぼ落とせました。後は!」


編成を終えたガゼリはバリエンテを見て駆け寄ると命ある互いを喜んだ。

あの後、王と謁見して牢へ監禁されていたようだ。王は気にも留めなかったが宰相が裏切りの可能性を最後まで示唆し慎重に判断されたと。

牢には他にも捕縛された戦士が何人かいて彼らは処刑を待つ者ばかりで、命を助けられたとバリエンテにまたも感謝されるのだった。


「さてオトシゴ様、編成に関しては既に完了です。城も宰相を初め幾人かの役所付きを捕縛できました」

「この城が完全に落ちるのも時間の問題ですからオトシゴ様はルセルへ!」

「あぁ、悪いけど道だけ教えてくれるか?」

「我々も共に参りますから安心して下さい!」

「いや、本気で走るから付いて来れないと思う」


妙な事を言う人間だなんて思われていることだろう。

実際、俺と彼らの体型を比べれば言うまでも無く恵まれたいるのは彼らだ。

にも関わらずそんな突拍子も無いことを言うのだから困惑させてしまっただろうけど、バリエンテは俺に強襲された事を思い出して納得していたようだ。

ガゼリもついさっき目の前で見せられた光景を思い出し頷いてくれる。


地図はいらない、どうせ見ない。

山さえ見えれば迷う事も無いし方向さえ分かればそれで良い。

指された方角目掛けてひたすらに真っ直ぐ突き進むだけだから簡単だ。

走るのみそれだけに注力を注げば良い。


マラソン選手がやるような仕草をしたのは良いけど、それをやる意味が分からない俺には果たして効果はあるのだろうか?バリエンテが後から絶対に追いつきますと言い残し、ガゼリは戦士を連れて出発の準備を始めていた。

彼が指差した方角のその先に居るであろう皆の事を思い俺は行った。


「おっおいバリエンテ。オトシゴ様は何をしたんだ……」

「分からない、見えなかった……一瞬で」


土煙だけを残して消え去ったオトシゴの方角をしばらく呆けて見ていた二人だったが、成すべき事を成す為に動き出す。




「女王様!」

「どうしました?」

「開戦したと報告が!」

「そうですか、状況は?」

「斥候三人が捕縛され目の前で弄ばれるように殺されたとっ」


「…………」

「グラディー?」

「分かりました、下がりなさい」


女王が噛み締めるのは悔しいからなのか、それとも憎悪なのかは分かりはしない。静観していれば終わるような展開にはならない事だけは分かっていた。

ゼスが出雲と雲母にこれからどうするかの相談を持ちかければ、二人共口を揃えて「父様の所に行きたい!」それを聞いたゼスは優しく微笑んだ。


「グラディー? あなも行くのでしょう?」

「えぇ、近衛と出るわ」

「ルセルには私が残ります、いってらっしゃい」

「お願いするわゼス!」


女王が衣装を着替える為に私室へ戻る途中、思い出すのは送り出したリノリスの事だった。もしあの子が今このルセルに居たと考えればきっとあの人と行くと聞かなかっただろうと。シンに本当に守りたい者を二度も助けて貰ったことを心にしまい込んで早々と着替え終える。


下の二人の娘はゼスに任せておけば大丈夫、妖精達も神樹に隠れる事は出来るしいざと成ればどうにか逃げる事も出来る。そうして私室からでた女王は橙の鎧を身に纏い、その手には杖と剣が合体した容姿の武器と、樹の根が絡み合って生成された盾を装備していた。近衛と共に城を出て煙の上がる戦場を目指し進軍を開始するのだった。



戦場では敵の兵の魔道弓に手こずらされている。

最大レンジからチクチクと飛来する杭に抗う方法は分厚い盾で防ぐしか対処出来なかったのだ。一度、兵士が盾で受けたもののいとも容易く貫通し穿たれた。

結果、厚くし魔法を付加させてようやく貫通を阻止出来る程度の強度を得た。

払う代償は機動力、本来の戦い方が出来ない状況下でゾルド達は苛立ちと燻りを覚えている。


「ゾルド様! このままでは!」

「耐えるのも戦いだ」


今は耐えるしか無く何れ相手の弾数も減るだろうと読んだゾルドだった。

しかし、その考えは押しつぶされて消される。

敵の王を初めとし巨躯を持つ兵が俊敏に動き盾の破壊を始めたのだ。

後方から放たれる魔道弓の杭を気にもかけずに。

至近距離で放たれる拳はそれだけで大地に穴を開ける、そんなモノを一撃でも貰えば簡単に命を散らす結果になる。


ゾルドは止む終えず後退を指示しジリジリとルセルの一群は下がり始める。

そんな好機を逃してくれるはずも無く、さらに激しい攻勢が始まり仲間が次々と倒れて行く。兵士達は仲間を救いたいのに救えない悔しさを噛み締め、後退しか道が無い己の弱さに涙を溜める。


どれぐらいの距離を後退したか分からない、自分達は初め広い空間に居たハズなのに今はもう近くに樹が見えている。もしこのまま下がり続ける状況になればルセルまで到着するんじゃないか?とすら思う者も出始める。

指揮が目に見えて下がり、そこを王達に狙われる。

潰された兵を間近で見た兵も心が折れて負の連鎖が止め処なく続く。


ゾルドは苛立ちと焦りを覚え、そこへ魔道弓の杭が真上からゾルドを刺すように落ちた。一瞬の緩みは反応速度を低下させゾルドは一撃程度ならと手を掲げるがそれは制される。横から押し出される様に体がスライドすれば一人の兵が身代わりとなり肩にそれが刺さっていたのだ。


「ゾルド様、大丈夫ですか?」

「すまぬ……」

「この程度、自分は大丈夫です!」


思考を切り替えようとした所へ乾いた声が響く。


「じゃあこの程度ならお前はどうなるんだ?」


肉が潰れる音、次に兵士を見れば頭部はぐしゃぐしゃに押し潰されて周囲を染めた。敵の王が眼前まで来ていることにすら気がついていなかった、そのせいで自分のせいで一人の命が散った。なんの慈悲も無く、自分が死んだとすら認識することさえ許されずにただ無残に死んだ。

ゾルドの怒りはとうとう溢れ出し叫び声を上げた。

本話もお読みいただきまして有難う御座います。

ブックマークにも感謝です。


もう二月になってしまいました。

ほんとうに早すぎて驚きますね・・・皆様は今年の目標はありますでしょうか?

私は二つ目標がありまして、その為に努力をしようと思います。


次話は明日か明後日になると思いますので、次話以降も宜しくお願い致します。

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