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MUJINA  作者: 友紀 藤也
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始まり

 じっとりと蒸し暑い夏の始まり・・・父親が失踪した・・・。


 幼い頃に病弱だった母親は亡くなり、東京の閑静な住宅街での父親と僕と妹の家族三人のささやかな生活が突如壊れた。

 捜索願を出したものの、一向に行方は知れず、無情にも時間だけが過ぎ去っていった・・・。

 幸いにも僕が、父親に代わり家計の管理を任されていたので、残された預貯金で日々の生活は成り立ったが、未成年の僕らは不安な日々を過ごし、一年の月日が流れた・・・。


 また・・・、じっとりと蒸し暑い夏が始まりを告げる・・・。


 僕は高校を卒業し、小さな会社の社員となって働いていた。

 二つ年下の妹は母親に似て体が弱く、高校に通っていたものの徐々に体調が悪くなり、夏を前に休学を余儀なくされていた。


 そしてその頃から、妹は変なものが見えると怯え始めた。

 それは次第に酷くなり、恐れるあまり僕の傍を片時も離れまいとするほどになってしまった。

 当然、会社に行く事も外出する事さえもままならなくなり、やむなく僕は退職を余儀なくされた。


 絶望が僕らに降り注ぐ・・・・。


 昼間の閑静な住宅街に、バイクの走る音が微かに響く・・・。

 誰も口を開かない静かな家の中に、不意にメールボックスに何かが投函された音が響く・・・・。

 僕は傍らで疲れた顔で眠っている妹を起こさないように気をつけながら、のろのろと玄関に向かう。

 メールボックスの中には白い封筒が一つ、妹宛てだ・・・。

 何気なく差出人を見ると、そこには失踪した父親の名前が書かれていた。


 僕は慌てて妹の元へとむかい、妹を起こす。

 妹は焦点の合わない目で一瞬僕の顔を見つめ、促されるまま僕の手の中の手紙の差出人の名を見て顔色を変える。

 妹は震える手で苦労して封筒を開封して手紙を読むと、これまでになく恐怖に引きつった顔で声もなく震えだす。


 何事かと慌てて手紙を覗き込むと、そこには妹一人で某県にある新葉町(しんようちょう)に来るように書かれていた。

 新葉町は、母親の故郷と昔に聞いた事があるが、僕らは一度も行った事がない場所だった。


 何故、父親が失踪したのか・・・。

 何故、父親が妹に一人で来るように告げたのか・・・。

 何故、理由もわからず妹がこれほど怯えるのか・・・。


 答えが出ぬまま怯える妹を励まし、僕も一緒に新葉町に行くことを決めた。

 


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