ガルバレイ鉱山-3
さて、撤退したアルマの軍は今どこにいるのだろうか。
凶悪種フレア・ドラゴニルの通過したと思われる地点をただひたすらに走っている。
「もう少し早くに来ていたら殺されていたかもしれないな・・・このような幸運を与えてくださった神に感謝・・・」
流石の大将軍アルマも命を捨てる覚悟で向かっていたようで、通り過ぎた後のルートだと分かった時点でらしくもなく神に祈った。
「将軍、ここは一思いに駆け抜けるべきです。通り過ぎたからと言って安心は出来ません。毎回、大まかなルート通りに移動はしてますが、反転や短縮移動などで毎回同じ周期に移動するという訳でもありませんので。」
「それもそうだな。早めに駆け抜けてしまえ。この先にはラテール将軍も居る。まずはあの人の居る駐屯地点まで下がるぞ!」
ラテール・マハルディッカ。
おじさんと言った方が正しい位の壮年の男性。
豪胆な戦法を用いる。しかし、状況を冷静に見てからそのような戦法を使用するという抜け目ない性格をしている。
なぜ現役の大将軍を引退したのかは未だに不明だが、理解ある将軍として他の将軍格の人間からは尊敬を、兵士からは父親としての尊敬を受けている。
「さて、敗戦の報告を受けている我々は何をしなければならない?」
「はっ、味方の撤退を手助けし、敵の侵入を拒む事になります!」
「そうだ。我々は撤退するアルマ大将軍殿の援護をせねばならない。ではどうすればいい?」
「はっ、まず崖上に弓兵を配置して追撃する敵兵を掃討します。次いで魔法部隊による進路の封鎖を行います!」
「それもいいな・・・とはいえ、それだけではつまらんだろう?」
「・・・恐れながら私では思い浮かびませぬ。何かいい案でも?」
ふむ、と一つ息をつくラテール。
「いや、これは言わないでおこう。万が一諜報が入っていたとなれば敵に看破される恐れがある。」
「父上将軍の仰る通りです。確かに、軽々しく口にしたとなれば、諜報に気取られる可能性もありますね。」
「何、相手はかの常勝将軍レツィオだからな。これくらいの事はやらねばなるまい。もしかしたら、部隊に数十人、紛れ込んでるやもしれんな?」
「ははは、父上将軍も疑り深いですな。とはいえ、言われてみればあの常勝将軍がそれくらいの事をやらないはずがありませんから、我々の位置も特定されているのでは?」
「ははは、何。動けなければ他を動かすまで。そうだろう?」
「・・・はぁ・・・?」
「はっはっは。わからなければそれでいい。さて、軽装弓兵50名を呼べ。なるべく信頼出来る人間をな。」
「はっ。かしこまりました。」
「・・・何?弓兵が別行動を始めた?」
「はっ、ラテール軍に潜伏している者からの報告です。」
「ふむ・・・奇襲か・・・?」
「かと思われます。50名ともなれば矢の数も相当。それに彼らには岩などの攻撃手段もございます。」
「魔法部隊の移動が行われていないという報告から察するに魔法による攻撃の心配はないかと。」
「そうか、なら崖上に注意しつつ進め。」
「了解。」
「ラテール・マハルディッカ・・・父上将軍がただ単に仕掛けてくるか・・・?」
「彼の采配には迷いがないと聞きます。故に豪胆な策略も行えるとか・・・」
「ただの奇襲とは考えにくい。しかし、道すがら穴場になるような地点はなかったはずだ。」
「仰る通りですが、それは杞憂では・・・?ラテールとてこの様な奇襲は常套手段だと認識しているはずです。」
「だからこそ危険なのだ。とはいえ、背後を取られる心配はないはずだ。このまま行軍せよ。」
何点中何点 という評価を下すとなれば、レツィオの中ではこの回答は60点程度のモノだと認識している。
背後が奪われないという絶対的な有利を足したとしても、点数が上がることはないだろう。
ラテールという男の存在が点数を下げる要因となっているだけでこうも落ち着けない、というより焦っている自分がいるのが認識出来ているのもあるからかもしれない。
それはレツィオ本人でないとわからないが。
簡単に勝てる相手ではないと分かっているからこそ、その単純な行動にいちいち深読みしてしまうのだ。
何か意味があるはず・・・ここがこうだから・・・こうか?
そういった憶測しか生まれず、結局出せる命令も曖昧であやふやなモノになる。
レツィオは一度そういった事を起こしたことがある。
そのためある程度の豪胆さを持ち合わせるようになった。とはいえ未だに勘ぐる癖が残っているが。
情報にも気を回す回数を増やし、常に敵の動向と隣国や近隣の村落の情報まで全てを扱うようになった。
それくらいせねばならないのだ。
あの無様な敗戦をまた味わいたくはない。
一種の意地とも取れるソレがレツィオを動かしている。
ところで。
同じような偽情報が何度も耳に入ればそれは事実と誰もが認識するだろう。
例え名将と呼ばれるような稀代の天才でも。
例え智将と呼ばれるような神算鬼謀の策略家でも。
例え猛将と呼ばれるような猪突猛進の一騎当千でも。
同じような情報が大量に。しかもほぼ同じ情報であればそれを事実と認識する。
それはレツィオでもラテールでも当てはまる。
むしろ当てはまらない人間の方が少ないのではないだろうか。
捏造された情報だけしか入らない状況となればそれを信用するしかないだろう。
「やはり、もう少し進んだ先に弓兵が潜んでいるか。」
「ハッ、そのほかに見える影はありません。」
「よし、では盾を装備しろ。頭と喉、他致命傷に成りうる場所を鎧などを補強し対処しろ。」
「了解。」
帝国は数百メートル先の岸壁上に王国軍が待ち構えているという情報を得る。
弓矢となれば、破壊力はないにしろ、急所を突きやすい形状をしている。
狙い撃ちは重力も加わる為、難しいだろうが、それでも心臓や喉に刺されば確実に殺すことは可能だろう。
そのため、帝国は鎧と兜を補強、そして盾を用意した。
多少暑くなっても、すぐに通り過ぎてしまえばそこまで大きな問題には発展しない。
とはいえ、今通っている道は火口とはかけ離れた位置に存在する。
いくら暑いと言ってもそれは日照りによるものだろう。
今は日が最も長くなる時期。そろそろ各地の村や町では祭りが行われるだろう。
清涼祭と一般的に呼ばれるお祭りが全国各地で行われる。
祭りの締めは魔法による花火だったり、鉱山から採れる火薬を使った花火だったりと、見る者を圧倒させるような仕様になっている。
そんな時期故に暑いのは致し方ないだろう。
ただそこを通り抜けてさえしまえばいい。
なんなら見つけた敵から全てを魔法で吹き飛ばしたりすればいいのだ。
魔法技術が発達してる為、その程度の事であれば大体出来る。
その程度とはいえ、魔法の種類としては難しい、所謂中級者向けなため、扱える人間がそれ程多いという訳ではないが。
放出系の魔法は、収束系の魔法より難しいという訳でもない。
だからと言って収束系の魔法も難しい訳ではないのだが。
閑話休題
ともかく、帝国は敵の動きを察知するというアドバンテージを得ることに成功したのだ。
これを利用しない手は存在しない。
「敵に注意しつつ、前進せよ。侵攻すれば勝機は見える。」
「ハッ」
如何なる時にも冷静に対処するレツィオには、これが正しい判断だという確信があった。
情報を握るという事こそ、戦争で勝つ可能性が大きいのだ。
ぐっだぐだ第三弾。推敲してるつもりですが駄文なのが否めない。
長く更新開けまくってます。
ネタというか構成が浮かばない致命傷。
むー。精進します。




