婚約破棄された貴女に、救済を代行します。~レンタル救済承り中~
「婚約破棄、されそうなのです」
そう切り出すと、受付の女性は慣れた様子で頷いた。
「お相手のご身分は」
「伯爵令息です」
帳面にさらさらと書き込む。
「伯爵令息でしたら、実父の伯爵コース、宰相コース、国王コースがございます」
「違いは?」
「実父コースは、ご家族による説得です」
「宰相コースは、法的整理を中心に」
「国王コースは、その場で全て終わります」
私は少し考えた。
「国王コースで」
「承知いたしました」
受付は新しい紙を差し出した。
「反撃に必要な証拠収集は弊社で承ります。手紙や帳簿などをお持ち込みいただければ、調査期間を短縮できます」
「こちらを」
私は封筒を置く。
伯爵令息が男爵令嬢へ贈った宝石の領収書だった。
受付は中を一枚だけ見て微笑んだ。
「十分です」
「当日の割り込みのお言葉ですが」
私は顔を上げる。
「国王コースの標準は『何事だ』で割り込ませていただきます」
「ほかにも?」
「『その件、余が預かる』、『誰の許しを得て、その裁きを行っている』などのオプションもございます」
私は少し考えた。
「標準でお願いいたします」
「承知いたしました」
受付は契約書を閉じる。
「請求書は館へお送りいたします」
「お願いいたします」
三日後。
夜会。
「エミリア!」
伯爵令息が私を指差す。
「君との婚約を破棄する!」
隣では男爵令嬢が涙ぐんでいた。
「彼女は君から何度も嫌がらせを受けた!」
会場がざわつく。
私は静かに待った。
予定時刻まで、あと少し。
扉が開く。
「何事だ」
低く響く声。
誰もが一斉に跪いた。
国王陛下だった。
「陛下!」
伯爵令息が青ざめる。
「説明せよ」
伯爵令息は勢いよく男爵令嬢を指した。
「彼女は長年、この女から嫌がらせを!」
「証拠は」
「え……」
「あるのだな」
「それは……」
国王は私へ視線を向けた。
「そなたは」
私は一礼する。
「こちらをご覧ください」
衛兵へ封筒を渡す。
中には宝石の領収書、帳簿の写し、商会の記録。
国王は静かに目を通した。
「伯爵家の資金で買ったものではないな」
伯爵令息の顔色が変わる。
「それは!」
「王家補助金の流用か」
会場が静まり返る。
国王は帳面を閉じた。
「伯爵令息。謹慎」
「男爵令嬢。調査が終わるまで王都を出ることを禁ずる」
「以上だ」
衛兵が二人を連れていく。
伯爵令息は最後まで私を睨んでいた。
夜会が終わり、人払いが済む。
担当者が国王へ歩み寄った。
「陛下、本日はありがとうございました」
「うむ」
「出演料は、いつもの口座へ振り込んでおきます」
「請求書は後で送る」
「承知いたしました」
二人はそれだけ話すと、それぞれ別方向へ歩き出した。
担当者は私へ向き直る。
「本日の救済はいかがでしたか」
「満足しております」
「ありがとうございます。またのご利用を」
「次はないことを願います」
私は笑って館を後にした。
少し高かった。
けれど、国王コースにして正解だった。
面白かったら評価、ブックマークいただけると嬉しいです。




