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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

一次創作多めのなんでも短編集

変化

作者: るーとに
掲載日:2026/03/21

歳を取る、背が伸びる。それは人間にとって避けられないもので。


「少し身長が伸びたかな..」


全身鏡に映る自分を見る。


「変わったなぁ..」

-----------------------

『あんたもうそろそろ卒業でしょ?それで、就職先はどうするの?』


親が問いかける。


「どうしようかなぁ」


卒業なんて、したくない。だって


(大人になんて、なりたくない)


『どうしようかなって..ちゃんと考えなさい!』


声を張り上げられる。


「そんなこと言われてもさ」


少しの言い合いが始まる。


ダンっ!


[こっちは仕事で疲れてんだよ!勘弁してくれよ..]


父親が机を叩き、そう吐き捨てる。その目の下には、クマができていた。


(大人に近付くことの何がいいの?)

小さい頃は、近所のケーキ屋で働いていた店員さんが憧れだった。


いつもニコニコしてて、明るくて。


でも、それすらも作ったもので。


営業終わりに、少しドキドキしながら店員さんに手紙を渡した。店員さんは嬉しそうに受け取ってくれた。私も、嬉しかった。

手紙は道路の脇に落ちていた。


その翌日に店員さんに「手紙は読んでくれた?」と聞いた。店員さんは、素敵な笑顔で『読んだよ〜!素敵なお手紙ありがとうね!』と言った。


いつのまにか憧れなんて消えていた。


大人になれば、自分が自分では無くなってしまうのだろう。


それなのに、いつの間にか店員さんのような笑顔ができるようになっていた。


(もういっそのこと、これ以上変わらないようにすればいいのかな)


時間が存在する限り、私は変わり続ける。


それなら、時間を止めて仕舞えば変わらなくて済む。


『明日一緒にケーキ買いに行くからね』


1階から母親の声が聞こえ、適当に返事をする。

-----------------------

深夜0時、ドアを開ける。


変わらないままでありたいから、綺麗に保たれるよう海へと足を進める。


「遺言も書いたし、あとは変わらなくなるだけか」


しばらく歩き、段々と潮の匂いが香る。


浅瀬の方に足を踏み入れ、ちゃぷちゃぷと深い方へと進んでいく。


(昔の私だったら、自殺なんて御免だったろうな..変わっちゃったなぁ)


肌を突き刺すように冷たいはずの海水が、今は心地よい。


ふと、足が止まった。


本当に、これでいいのだろうか。結局私は変わった状態で死ぬことになる。


いつか見た、誰かの笑顔が思い浮かぶ。

それが何を意味するかなんて、私には分からない。


(でも、大人になるのは嫌だ)


足が波を掻き分ける。


今はただ、体を預けていたかった。

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