第1話:辞表と帰郷と、実家の裏山にある「アレ」について
メインキャラクター紹介
1. 主人公:佐藤 ケンジ(Sato Kenji)
• 年齢: 42歳
• 属性: 元ブラック企業開発チーフ / 現ダンジョン農家 / 隠れSランク探索者
• 性格:
• 極度の合理主義者かつ効率厨。「定時退社」と「睡眠」を何より愛する。
• 基本はローテンションだが、農作業やシステム構築のことになると早口になるエンジニア気質。
• 世間の流行に疎く、自分の配信がバズっていることを「サーバーのバグ」だと思っている。
• スキル:『最適化(Optimization)』
• 対象の構造を解析し、無駄を省いて性能を極限まで引き上げるチートスキル。
• (使用例)
• スライム → 粘度を調整し、全自動水撒き機へ最適化。
• ゴーレム → 駆動系を再構築し、燃費無視の高馬力トラクターへ最適化。
• 魔法 → 詠唱プロセスを「マクロ」化し、無詠唱で連発。
• セリフ:
「ドラゴン? ああ、トマトの苗を折られると困るから駆除しておいたよ。燃えるゴミの日だったかな?」
2. 相棒(管理AI):コア(Coa)
• 属性: ダンジョン・コアの精霊(見た目は掌サイズの妖精)
• 役割: ダンジョン管理 / 動画配信プロデューサー / スパチャ管理
• 性格:
• ケンジの「最適化」により、自我が目覚めてしまったダンジョンコア。
• 現代のネット文化に毒されており、承認欲求が強い。ケンジに無断で配信を行い、スパチャ(魔力資源)を稼ぐことが生きがい。
• ケンジが画面外でドラゴンを倒すたびに「あーっと、また主様がやっちゃいました(棒)」と実況を入れる確信犯。
• セリフ:
「主様、また同接が増えてますよ! 今日の農作業は『ASMR風』でお願いします! ……チッ、また通知オフにしてる」
3. ヒロイン(?):神楽坂 カレン(Kagurazaka Karen)
• 年齢: 21歳
• 属性: 国民的アイドル探索者 / 剣聖 / 居候
• 性格:
• 若くして日本のトップランカーとなった天才だが、プレッシャーと激務で心が折れかけていた。
• お忍びでケンジの「道の駅」を訪れ、そのトマトの味と、ケンジの「強さをひけらかさない生き方」に感銘を受け、勝手に弟子入り(居候)する。
• 配信では「謎の美少女店員」として人気が出るが、本人は農業研修生だと思っている。
• 役割:
• ケンジの非常識さを読者に解説するツッコミ役。
• ケンジの代わりに、対外的な面倒ごと(ギルド対応など)を処理する窓口。
• セリフ:
「師匠……これSランクの魔剣ですよね? なんで支柱にしてナスを縛ってるんですか!?」
4. マスコット(従業員):ゴーレム・タロサ(Unit-01)
• 属性: 農業用改造ゴーレム
• 特徴:
• 元はダンジョンの中ボスだったが、ケンジに「最適化」され、キャタピラとアームを装備した重機のような姿になった。
• 「ホワイトな職場環境(定期的な魔力補給とメンテナンス)」に感動し、ケンジに絶対の忠誠を誓う。
• ブラック企業の元上司が来た際は、最も激しく怒り、排除行動に出る。
• 機能:
• 整地、耕作、害獣の物理排除。
• 背中に「安全第一」とペイントされている。
5. 敵役(ざまぁ対象):黒井 部長(Director Kuroi)
• 属性: 元上司 / IT企業役員
• 性格:
• 部下を道具としか思っていない典型的なパワハラ上司。ケンジが辞めた後、プロジェクトが炎上し、その責任をケンジに押し付けようと画策している。
• ダンジョンの権利を主張して乗り込んでくるが、「労働者の権利」に目覚めたモンスターたちにボコボコにされる。
• 役割:
• 読者の「日頃のストレス」の象徴。
• 彼が悲惨な目に遭うことで、読者にカタルシス(ざまぁ)を提供する。
キャラクター相関図イメージ
• ケンジ ➡(興味なし・害獣扱い)➡ ドラゴン・魔物
• ケンジ ➡(ただの農機具)➡ ゴーレム・スライム
• ゴーレム・スライム ➡(崇拝・ホワイト社長)➡ ケンジ
• コア ➡(金づる・最高のコンテンツ)➡ ケンジ
• カレン ➡(尊敬・癒やし)➡ ケンジ
• 視聴者 ➡(神・癒やし・「もっとやれ」)➡ 配信(ケンジ&コア)
• 黒井部長 ➡(搾取対象)➡ ケンジ
• ケンジ&モンスター一同 ➡(完全排除)➡ 黒井部長
「一身上の都合により、退職いたします」
その封筒を課長のデスクに叩きつけた瞬間、私の人生の第一章――『社畜編』が幕を閉じた。
佐藤ケンジ、四十二歳。
大手IT企業の開発チーフ。年収はそこそこ、社会的地位もあり。
ただし、代償として睡眠時間は一日三時間。ここ十年の記憶は、蛍光灯の白い光と、エナジードリンクの味、そして終わらないデスマーチの進捗報告会議しかない。
先週、部下が一人倒れた。その次は私だと直感した。
だから逃げたのだ。
責任? 知るか。私の命の責任は、御社は取ってくれないだろう。
都心のマンションを引き払い、必要最低限の荷物と預金通帳だけを持って、特急列車に飛び乗った。
目指すは北関東の山奥。五年前に他界した両親が残した、無人の実家だ。
「……空気が、美味いな」
最寄りの駅からバスに揺られること四十分。さらに徒歩で二十分。
雑草に覆われた生家の前に立った時、最初に口をついて出たのはそんな言葉だった。
東京の空気は、いつも焦げ臭かった気がする。アスファルトと排気ガス、そして他人の苛立ちが充満していた。
ここは違う。土と緑の匂い。そして、圧倒的な静寂。
「今日から俺は、誰にも命令されない。納期もない。仕様変更もない」
錆びついた鍵を開け、雨戸を繰る。
埃っぽい畳の匂いを嗅ぎながら、私は決意を新たにした。
隠居だ。
晴耕雨読。のんびりと野菜でも育てて、日が暮れたら寝る。そんな人間らしい生活を取り戻すんだ。
荷解きもそこそこに、私は家の裏へと回った。
この家には、裏山がある。子供の頃は秘密基地を作って遊んだ、なだらかな山だ。
水源もあるし、少し整地すれば畑も広げられるだろう。
まずは現状確認だ。
長靴に履き替え、草刈り鎌を片手に裏山の斜面を登る。
十分ほど歩いただろうか。かつて秘密基地を作った開けた場所に出た瞬間、私の足が止まった。
「……は?」
そこには、私の記憶にはない「穴」があった。
ただの穴ではない。
直径三メートルほどの空間が、まるで空間そのものをえぐり取ったかのようにポッカリと口を開けている。
その内側では、紫色の燐光が渦を巻き、明らかに物理法則を無視した冷気を吐き出していた。
現代ダンジョン。
二〇二〇年代半ばから世界各地に出現し始めた、異界への門。
ニュース映像でしか見たことのなかった「人類の脅威」が、なぜか私の実家の裏山(登記簿上は私有地)に鎮座していた。
「…………」
私は冷静にスマホを取り出した。
画面には「圏外」の文字。まあ、山奥だからな。
本来なら、山を降りて警察か探索者ギルドに通報すべき案件だ。「自宅の裏庭にダンジョンができちゃいまして」と言えば、すぐに自衛隊やら専門家やらが飛んでくるだろう。
想像してみる。
鳴り響くサイレン。規制線。殺到するマスコミ。「ダンジョン発生現場!」と叫ぶレポーター。避難勧告。
そして、私の「静かな隠居生活」の崩壊。
「……なしだ」
私はスマホをポケットにしまった。
絶対に、なしだ。
やっと手に入れた静寂を、国の管理下に置かれてたまるか。
幸い、ここはド田舎の限界集落。隣の家まで一キロはある。誰もこのダンジョンの存在に気づいていない。
「要は、害獣が出ないように管理さえすればいいんだろ?」
私は鎌を握り直し、紫色の渦へと足を踏み入れた。
社畜時代、炎上したプロジェクトの火消しに比べれば、未知のダンジョンなど大したことではない。あの頃の上司の方が、よっぽど話が通じないモンスターだった。
ズルリ、と視界が歪む。
次の瞬間、私は薄暗い洞窟の中に立っていた。
ひんやりとした空気。天井には発光する苔が群生しており、照明がなくても視界は確保できる。
意外にも、空気は澄んでいた。地上の空気よりもさらに濃密で、吸い込むだけで体が内側から活性化するような感覚がある。
「魔素濃度が高いのか……これ、むしろ地上より健康にいいんじゃないか?」
その時、前方の地面がボコボコと盛り上がった。
現れたのは、泥の塊のような不定形生物。
マッド・スライム。初級ダンジョンに生息する、物理攻撃が効きにくい厄介な敵だ。
スライムは私を認めると、敵意を剥き出しにして飛びかかろうと体を収縮させた。
――襲われる。
普通の人間なら恐怖する場面だ。
だが、私の目には違った情報が見えていた。
『対象:マッド・スライム(Lv.2)』
『構造:粘性液体、魔力核』
『行動パターン:索敵→突進→溶解』
『脆弱性:魔力核の座標固定により行動不能』
職業病とも言える私のユニークスキル、『最適化』が自動発動していた。
元システムエンジニアとしての経験と、この世界の理が混ざり合って発現した能力。
目の前の事象を「コード」として視覚化し、無駄を省き、書き換える力。
「バグだらけの仕様だな。リファクタリングしてやる」
私はスライムに向かって右手をかざした。
頭の中で、目の前の「敵」のソースコードを展開する。
攻撃判定、削除。
敵対識別フラグ、オフ。
代わりに組み込むのは、農作業用の単純アルゴリズム。
「『最適化』実行」
指先から青白い光が走り、スライムを包み込む。
ピタリ、とスライムが空中で静止した。
次の瞬間、ボトリと地面に落ちたスライムは、敵意を失った子犬のように私の足元に擦り寄ってきた。
そして、近くの乾いた地面に這っていき、自らの水分を吐き出して土を湿らせ始めた。
「よし。自動散水モード、正常に稼働中」
完璧だ。
これなら、水やりの手間が省ける。
私はダンジョン内を見渡した。
一定の温度、適度な湿度、豊富な魔素。そして労働力。
ここは危険な迷宮ではない。
神が与えてくれた、最高に効率的な「全自動ビニールハウス」だ。
「ここを、俺の畑にする」
そうと決まれば、まずはセキュリティだ。
野生動物や、万が一の侵入者に荒らされてはたまらない。
私は持ってきた荷物の中から、小型のWebカメラのような魔導具を取り出した。
秋葉原のジャンク屋で買った『遠隔監視クリスタル』だ。
ダンジョンの入り口付近の岩場に設置する。
これで、母屋にいてもタブレットで畑の様子を確認できる。
「設定は……ええと、『外部出力モード』? よくわからんが、とりあえずオンでいいか」
説明書を読むのが面倒だった私は、デフォルト設定のまま起動スイッチを押した。
クリスタルが淡く光り、レンズが動き出す。
よし、稼働した。
その時、私は知らなかった。
この安物クリスタルの『外部出力モード』が、世界最大の動画配信プラットフォーム『Dチューブ』の新規配信枠に直結していることを。
そして、私のチャンネル名が、デフォルト設定のまま『test_stream_001』として全世界に公開されてしまったことを。
「ふぁ……」
大きなあくびが出た。
久しぶりに頭を使ったからか、心地よい眠気が襲ってくる。
今日はもう寝よう。
泥のように眠って、明日の朝、またここに来てトマトの種でも植えよう。
私は満足げに頷くと、スライムがせっせと整地するダンジョンを後にした。
背後のカメラが、そのシュールな光景――おっさんが去り、スライムが几帳面に畑を耕すだけの映像――を、世界中に垂れ流し始めたことにも気づかずに。
これが、後に『伝説の農家』と呼ばれる男の、静かすぎる初配信だった。
【次回予告】第2話「スキル:『最適化』と泥スライム」
社畜生活を脱したケンジが、裏山ダンジョンで本領発揮!
遭遇した泥スライムを、元エンジニアの神スキル**『最適化』**で強制書き換え(リファクタリング)!
「攻撃判定削除」「耕転モジュール追加」――凶暴な魔物が、まさかの**「全自動ルンバ式耕運機」**に早変わり!?
あっという間に構築される完璧な分業システム。優雅にコーヒーを啜るケンジだが、背後の配信画面は大変なことに。
『おっさん、今スライムのコードいじったぞ!?』
世界中が驚愕し同接が爆増する中、ケンジはあろうことか称賛のコメントを**「文字化け(エラー)」**と勘違いして通知オフ!
勘違いスローライフが加速する中、新たな魔獣の影が……。
「やれやれ、デバッグの時間か」
常識外れの農業革命、お見逃しなく!




