表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

コモンズの設計 ――関係と関係のあいだに生まれる大地をどうつくるか

序:家だけでは都市にならない

これまでの章で描いてきた「関係の建築学」は、

一軒の家としてはすでに強靭で、美しく、現実に耐える構造を持っている。

しかし、家が一軒だけでは都市にならない。

• 家と家のあいだに道が生まれ

• 道と道のあいだに広場が生まれ

• 広場の周囲に生活が流れ

• 生活の流れが社会をつくる

つまり、

個の関係が並び始めたとき、

そのあいだに必ず「共有地コモンズ」が生まれる。

この章は、

その“あいだ”をどう設計するかを扱う。


**Ⅰ コモンズとは何か

――誰のものでもないが、全員の持続に不可欠な空間**

コモンズとは、

特定の誰かの所有物ではないが、

全員の持続に不可欠な空間である。

• 道

• 広場

• 水源

• 風の通り道

• 共有された記憶

• 共同のルール

• 公共の沈黙

これらは、

誰かのものではないが、

誰かが欠けても成立しない。

コモンズは、

関係と関係の“あいだ”に生まれる大地である。


Ⅱ 水平の意志がコモンズに与える五つの原理

水平の意志は、

個の関係を支えるだけでなく、

コモンズの設計原理にもなる。

以下は、その五つの基礎原理である。


1. 排他を前提にしない

コモンズは、

「入る資格」を問う場所ではない。

• 完璧な理解

• 同じ価値観

• 同じ文化

• 同じ痛み

これらを共有していなくても、

そこに立つことができる。

水平の意志は、

“誰でも立てる場所”を確保する。


2. 使用と保全のバランスを取る

コモンズは、

使われなければ荒れ、

独占されれば壊れる。

水平の意志は、

• 過剰な使用を避け

• 過剰な保全を避け

• 適度な流動性を保つ

というバランス感覚を持つ。

これは、

関係の“呼吸”を社会全体に拡張する技術である。


3. 誰かが過剰に負担しない構造をつくる

コモンズは、

誰か一人が管理し続けると壊れる。

水平の意志は、

• 負担の偏りを避け

• 非対称を調整し

• 役割を循環させる

という構造をつくる。

これは、

社会的ケアの分散化である。


4. 壊れたときに修復できる制度を持つ

コモンズは壊れる。

• 争い

• 誤解

• 不信

• 歴史の痛み

これらは避けられない。

水平の意志は、

壊れたときに

透明化・減速・緩衝・再接続

という修復技術を社会レベルで運用する。

これは、

「壊れない社会」ではなく

“壊れても持ち直せる社会”をつくる思想である。


5. 沈黙の者もアクセスできる余白を残す

社会には、

声を上げられない者がいる。

• 子ども

• 高齢者

• 病者

• 移民

• 言語を持たない者

• 立場上語れない者

水平の意志は、

沈黙を欠如ではなく、

アクセスの形式として扱う。

沈黙の者が排除されないコモンズは、

社会の強度を決定づける。


Ⅲ コモンズの危機:荒廃・独占・硬直

コモンズは、

三つの危機に常にさらされる。

1. 荒廃(誰も使わない)

2. 独占(誰かが使いすぎる)

3. 硬直(制度が変化に耐えられない)

水平の意志は、

これら三つの危機を

**“揺れながら持続する構造”**によって回避する。

• 過度な管理を避ける

• 過度な自由を避ける

• 過度な固定化を避ける

コモンズは、

揺れ続けることで生き延びる。


**Ⅳ 社会という大きな建築

――水平の意志は“インフラ”になる**

個の関係を支える建築学は、

そのまま社会全体の設計原理へと拡張できる。

■ 社会は巨大な“関係の網”である

• 家(個の関係)が無数にある

• そのあいだに道・広場・排水・光・風が流れる

• どれか一つが壊れると、全体が揺らぐ

水平の意志は、

この“あいだ”を支えるインフラとして働く。

■ 社会における水平の意志の役割

1. 倒れにくい制度設計

2. 再接続の文化

3. 負の資産の透明化

4. 仮設性の導入

5. 非対称性の調整

これは、

水平の意志が描いてきた「倒れにくい関係」の思想を、

社会という巨大建築の耐震構造へと拡張する試みである。


結語:大地としてのコモンズ、都市としての文明

水平の意志は、

個の関係を支える家を建てるだけではない。

その家々が並び、

道が生まれ、

広場が生まれ、

風が通り、

光が差し込み、

人が行き交い、

沈黙が共有され、

歴史が積み重なる。

そのすべてが、

コモンズという大地の上で起こる。

水平の意志の建築学は、

荒野に一軒の家を建てるためのものではない。

それは、

荒野に都市を築くための最初の設計図である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ