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平凡な大学生が異世界に転移したら、なぜか美少女たちから求められまくった件

作者: 冥

平凡な大学生が異世界に転移したら、なぜか美少女たちから求められまくった件


第1章「異世界転移と最初の出会い」


俺の名前は佐藤翔太。

どこにでもいる平凡な大学2年生だ。


経済学部に通い、特にこれといった特技もなく、彼女もいない普通の毎日を送っていた。

そんな俺の人生が一変したのは、大学の図書館で古い本を手に取った時だった。


「『古代魔法概論』......?なんだこれ」


なぜか禁書庫みたいな奥の棚にあった、革の装丁の古い本。

興味本位で開いてみると、不思議な文字が書かれていて、見覚えはない言葉だったのになぜか読めてしまった。


「なんだこの本…?えっと…光よ、闇を照らし......?」

開いたページにあった呪文らしき文章をなんとなく音読した瞬間、本が光り始めた。


「うわっ!」


眩しい光に包まれて、俺の意識は途切れた。


「......うーん」


目を覚ますと、見慣れない天井があった。

石造りで、中世ヨーロッパの建物みたい。


「ここ、どこだ?」


慌てて起き上がると、部屋の扉が開いて、見たことのない美しい女性が入ってきた。

長い銀髪に青い瞳、背が高くスラリとした体型。

そして何より、アニメにでてくるキャラクターみたいに耳が鋭く尖っている。


「気がつきましたね」

女性が冷静な声で言った。


「あの、あなたは?」


「私はエリシア・フォレスタル。このあたりに住んでいるエルフです」


エルフ?まさか......。


「ここは異世界ですか?」


「異世界…?あなたはどこから来たのですか?」

エリシアさんが椅子に座った。


「あなたのような人間は初めて見ます。変わった服を着ていますし」


確かに、俺は大学に行く時の普通の服装だった。

この世界の人から見たら変かもしれない。


「俺、佐藤翔太と言います。どうやらここは俺が過ごしていた世界とは全然違うみたいです。

どうやら異世界転移をしてしまったみたいで…」


「転移......」

エリシアさんが興味深そうに見つめる。

「それは珍しい」


「エリシアさんは、どうしてここに?」


「私も旅人です。この宿で休んでいた時に、あなたを見つけました」


エリシアさんの表情が少し寂しそうになった。


「一人で旅をしているんですか?」


「......はい」


何か事情がありそうだが、詳しく聞くのは失礼かもしれない。


「とりあえず、助けてくださってありがとうございます」


「いえ困った時はお互い様です」

エリシアさんが小さく微笑んだ。


その時、俺の手が淡く光った。


「え?」


「あなた......もしかして癒しの魔法が使えるのですか?」

エリシアさんが驚いた表情をした。


「癒しの魔法?」


「とても珍しい能力です。この世界で癒しの力を持つ人は滅多にいません」

俺は手のひらを見つめた。

確かに、なんだかほんのり温かい力を感じる。


「試しに、私の手に触れてみてください」


エリシアさんが手を差し出した。

見ると、小さな傷がある。

俺が恐る恐る触れると、傷がみるみる治っていった。


「すごい......」エリシアさんが感嘆の声を上げる。

「間違いありません。あなたは癒しの光を扱えます」


「癒しの光?」


「生き物の傷や疲労を回復させる、高等な魔法です」

なるほど、異世界転移の時に何か特殊な力を得たのか。


「でも、俺にはこの世界のことが何もわからなくて......」


「でしたら、しばらく私と一緒に旅をしませんか?」

エリシアさんが提案してくれた。


「え?いいんですか?」


「あなたの能力があれば、きっと多くの人を助けることができます」

エリシアさんの瞳に、強い意志の光があった。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


こうして、俺の異世界生活が始まった。

翌日、エリシアさんと一緒に町を出発した。


「この世界には魔物がいるので、気をつけてください」


「魔物ですか」


「ええ。でも、私がついていますから大丈夫です」


エリシアさんが身長くらいある立派な杖を見せてくれる。

確かに頼もしい。


森の道を歩いていると、突然茂みから何かが飛び出してきた。


「きゃあ!」

狼のような魔物に襲われている女の子がいた。


「誰か、助けて!」


「翔太さん、下がっていてください」


エリシアさんが魔法を唱え始めた。


「氷よ、敵を砕け!」

氷の弾が魔物に当たったが、まだ倒れない。


「しつこいですね」


その時、俺は気がつかないうちに前に出ていた。


「危ない!」


魔物が女の子に襲いかかろうとした瞬間、俺は咄嗟に手を伸ばした。


「光よ!」


俺の手から眩しい光が放たれ、魔物は消滅した。


「すごい......」

女の子が目を輝かせて俺を見上げる。


「大丈夫?怪我はない?」


「はい、ありがとうございました!」


女の子は俺と同じくらいの年頃で、狼のような耳と尻尾があった。


「私、ルナ・ウルフハートです!」


「俺は佐藤翔太。こちらはエリシア・フォレスタルさんです」


「翔太さん......なんて優しそうな名前」

ルナが頬を赤らめる。


「ルナさんは獣人なんですね」


「はい!狼の獣人です」

ルナが元気よく尻尾を振る。


「それにしても、翔太さんの魔法すごかったです」


「魔法というより、不思議な力みたいで」


「癒しの光ですね。この世界ではとても珍しい能力です」

エリシアさんが説明してくれる。


「へー!翔太さんって特別なんだ!」

ルナの無邪気な笑顔に、俺の胸が温かくなった。


「ルナさんは何をしてたんですか?」


「薬草取りです。村の人が怪我をしちゃって」


「怪我?」


俺は提案した。

「よかったら、その人を治療させてもらえませんか?」


「本当ですか?」

ルナの目が輝いた。

「お願いします!」


ルナに案内されて、獣人の村に向かった。

村は森の奥にあって、色々な動物の獣人たちが住んでいた。


「ルナ、おかえり」


「族長、翔太さんが治療してくれるって!」

村の族長らしき人が、驚いたような表情をした。


「人間の方が?」


「はい。癒しの力を持ってるんです」


怪我をしているのは、熊の獣人の男性だった。

足を深く切って、痛そうにうめいている。


「失礼します」


俺は男性の傷に手を当てた。

温かい光が傷を包み、みるみる治っていく。


「おお......」


村の人たちがどよめいた。


「ありがとうございます、翔太さん」

獣人の男性が深々と頭を下げる。


「いえいえ、困った時はお互い様です」


「翔太さん、すごい!」

ルナが飛び跳ねて喜んでいる。


行く当てもないので、さっきのお礼もかねてこの村で一晩泊めてもらうことになった。

その夜、村で歓迎の宴を開いてもらった。


「翔太さん」

ルナが俺の隣に座る。


「翔太さんって、どこから来たんですか?」


「遠い国からです」


「そうなんだ。私、翔太さんみたいな優しい人、初めて会いました」


ルナが俺を見つめる瞳が、とても綺麗だった。


「ルナさんも優しいですよ」


「えへへ」

ルナが嬉しそうに笑う。


少し離れた場所で、エリシアさんが一人でお酒を飲んでいる。


「エリシアさん、一緒にあっちのテーブルで飲みませんか?」


「私は大丈夫です」

エリシアさんはどこか寂しそうに見えた。


「何か心配事でも?」


「......別に」


エリシアさんは素っ気なく答えたが、俺にはわかった。

一人でいることに慣れすぎて、人と距離を取ってしまうんだ。


「俺も一人は寂しいです。一緒にいてもらえませんか?」

エリシアさんが少し驚いたような表情をした。


「......わかりました」


エリシアさんが俺の隣に座る。


「翔太さん」

ルナが俺の反対側に座って、三人並んだ。


「これから、どこに行くんですか?」


「まだ決めてません」


「だったら私も一緒に旅させてもらえませんか?」

ルナが提案した。


「え?」


「翔太さんと一緒にいたいんです。色々な人を助けたい」


ルナの目に、強い決意があった。


「エリシアさんはどう思いますか?」


「......仲間がいるのは悪くないですね」

エリシアさんが小さく微笑んだ。


「じゃあ、決まりですね。三人で旅をしましょう」


「やった!」

ルナが俺に抱きついてきた。


「翔太さん、大好き!」


「る、ルナさん......」


頬が赤くなってしまう。

エリシアさんも、なぜか頬を染めて俯いていた。


翌朝、三人で村を出発した。


「次はどこに向かいましょうか?」


「近くにリベルタという町があります」

エリシアさんが地図を見せてくれる。


「そこは色々な種族が住む大きな町です!たくさんの露店もありますよ!」


「いいですね、ではその町に行きましょうか」


町に向かう途中、馬車が盗賊に襲われている現場に遭遇した。


「助けて!」

馬車から上品な服装の女性が顔を出している。


「翔太さん!」

ルナが身構える。


「行きましょう」


俺たちは盗賊たちと戦った。

エリシアさんの魔法、ルナの格闘術、そして俺の癒しの光の連携で、盗賊たちを退けることができた。


「助けてくださってありがとうございます」


馬車から降りてきたのは、とても美しい女性だった。

金髪に緑の瞳、品のあるドレスを着ている。


「私、リリアンヌ・アークライトと申します」


「俺は佐藤翔太です。こちらはエリシア・フォレスタルさんとルナ・ウルフハートさん」


「皆さんのおかげで助かりました」

リリアンヌさんが優雅にお辞儀する。


「この方角だと、リベルタまで向かわれるんですか?」


「はい、実は......」

リリアンヌさんが困ったような表情をする。


「家の事情で、しばらく一人で旅をしなければならなくて」


「一人で?危険じゃないですか?」


「大丈夫です。魔法も使えますし」

でも、どう見ても慣れていない様子だった。


「よろしければ、俺たちと一緒に旅しませんか?」


「え?」


「俺たちも行く先は決まってませんし、仲間がいた方が安心です」

リリアンヌさんの顔が明るくなった。


「本当でしょうか?ぜひお願いします」


こうして、俺の仲間がまた一人増えた。


夕方、リベルタの町に到着した。


「大きな町ですね」


「ええ、色々な種族の人が住んでいます」


宿を取って、四人で夕食を食べていると、ルナが俺にもたれかかってきた。


「翔太さん、今日もお疲れ様でした」


「ルナさんも頑張りましたね」


「えへへ」


リリアンヌさんも俺を見つめて微笑んでいる。


「翔太さんは本当に優しい方ですね」


「そんなことないですよ」


エリシアさんだけは、なんだか複雑な表情をしていた。


「どうしました、エリシアさん?」


「......何でもありません」

でも、明らかに何か考え込んでいる様子だった。


その夜、俺は宿の屋上で星を見ていた。


「翔太さん」


振り返ると、三人の美少女が立っていた。


「みんな、どうしたんですか?」


「一緒に星を見ませんか?」

リリアンヌさんが提案してくれた。


四人で並んで空を見上げる。


「綺麗ですね」


「翔太さん」ルナが俺の腕にしがみつく。


「私、翔太さんと出会えて本当に良かった」


「俺もです」


「私も」

リリアンヌさんも微笑む。


「翔太さんがいてくれるから、安心して旅ができます」


エリシアさんだけは黙っていたが、小さくつぶやいた。


「私も......同じです」


「エリシアさん」


「翔太さんと出会えて、良かったです」


エリシアさんが初めて、本当の笑顔を見せてくれた。


異世界に来て数日だが、こんなに素敵な仲間ができた。

俺の新しい人生は、まだ始まったばかりだった。


第2章「深まる絆と新たな出会い」


リベルタの町での生活が始まって一週間が経った。

俺たちは町の冒険者ギルドに登録して、簡単な依頼をこなしながら資金を稼いでいた。


「今日の依頼は薬草採取ですね」


「私、薬草には詳しいんです」

ルナが得意げに胸を張る。


「頼もしいです」


リリアンヌさんも最近、旅慣れしてきて、以前より逞しくなった気がする。


「皆さん、準備はいかがですか?」

エリシアさんが魔法の道具を確認している。

この一週間で、みんなとの距離がだいぶ縮まった気がする。


町の外れの森で薬草を採取していると、ルナが俺に寄り添ってきた。


「翔太さん、あの......」


「どうしました?」


「私、翔太さんともっと一緒にいたいんです」

ルナが頬を赤らめながら上目遣いで見つめてくる。


「俺も、ルナさんと一緒にいると楽しい気持ちになりますよ」


「本当ですか?」

ルナの尻尾がぱたぱたと動いている。可愛いな。


「翔太さん」

今度はリリアンヌさんが声をかけてきた。


「少し、お話しできますか?」


二人きりになると、リリアンヌさんが恥ずかしそうに俯いた。


「実は、私......翔太さんのことが......」


「リリアンヌさん?」


「好きになってしまいました」


リリアンヌさんがまっすぐ俺を見つめる。


「え?」


「翔太さんの優しさ、人を助ける気持ち、全てが素敵で」


俺の心臓がドキドキした。


「俺も、リリアンヌさんといると心が安らぎます」


「翔太さん......」


リリアンヌさんが一歩近づいてきた時、エリシアさんが現れた。

「お二人とも、何をしているんですか?」


「あ、エリシアさん」


なぜか、エリシアさんの表情が少し厳しい。


「薬草採取は終わりましたか?」


「すみません、すぐに戻ります」


宿に戻る道中、エリシアさんがずっと無言だった。


「エリシアさん、何か機嫌悪いですか?」


「......別に」


でも、明らかに普段と様子が違う。


夜、俺は一人でエリシアさんの部屋を訪ねた。


「エリシアさん、入ってもいいですか?」


「......どうぞ」


部屋に入ると、エリシアさんがベッドに座って本を読んでいた。


「今日はどうしたんですか?なんだか元気がなくて」


「特に何も」


「本当ですか?」


俺がエリシアさんの隣に座ると、彼女が本を閉じた。

「翔太さんは......」


「はい」


「ルナやリリアンヌと、どういう関係になりたいんですか?」


突然の質問に驚いた。


「どういう関係って?」


「二人とも、明らかに翔太さんに特別な感情を抱いています」


確かに、そう見える。


「俺は......」


「私も」エリシアさんが小さな声で言った。


「え?」


「私も、翔太さんのことが......」


エリシアさんが俯いてしまう。


「翔太さんと出会って、一人じゃないって思えるようになりました」


「エリシアさん......」


「でも、私は他の二人とは違います」


「どういうことですか?」


「私には、消せない過去があるんです」


エリシアさんの表情が苦しそうになった。


「私の故郷は、魔物に滅ぼされました。家族も、友人も、みんな......」


「エリシアさん......」


「だから私は、もう大切な人を失うのが怖いんです」


エリシアさんの目に涙が浮かんでいた。

俺は何も言わずに、エリシアさんを抱きしめた。


「翔太さん?」


「俺は、エリシアさんを置いて行ったりしません」


「でも......」


「みんなを大切に思ってます。エリシアさんも、ルナさんも、リリアンヌさんも」


「みんなを?」


「はい。だから、誰かを選んだり、諦めたりは考えてません」


エリシアさんが俺を見つめる。


「それって......」


「この世界では、そういうことも可能なんですよね?」


エリシアさんが小さく微笑んだ。

「......そうですね。あなたのような特別な人なら」


「ありがとうございます、エリシアさん」




翌日、町で新しい依頼を受けようとしていた時、見知らぬ男性が俺たちに声をかけてきた。


「君たち、なかなかやるじゃないか」


振り返ると、俺と同じくらいの年の男性が立っていた。

黒髪で、どことなく日本人っぽい顔立ち。


「あなたは?」


「黒木雄介。君と同じ、異世界から来た人間だ」


俺は驚いた。他にも自分のように現代から転移してきた人がいたのか。


「僕の方が君より先にこの世界に来ている。もう半年になるかな」


「そうなんですか!?」


「君の噂は聞いているよ。癒しの光を使う転移者がいるって」

黒木さんが俺を値踏みするような目で見る。


「僕は攻撃魔法が専門だ。炎と雷を操れる」

手のひらに小さな炎を作って見せてくれる。確かにすごい。


「君たち、今度一緒に仕事をしないか?」


「仕事?」


「高額報酬の依頼があるんだ。でも、一人では難しい」


「どんな依頼ですか?」


「古代遺跡の調査だ。危険だが、報酬は破格だ」


確かに魅力的だが、何か引っかかるものがあった。


「ほかの仲間にも相談したいので少し考えさせてもらえますか?」


「もちろん。でも、あまり時間はないよ」

黒木さんが去った後、みんなで相談した。


「どう思いますか?」


「報酬はかなり魅力的ですね」

リリアンヌさんが言う。


「でも、なんだか感じが悪かったです」

ルナが眉をひそめる。


「私もルナと同じ意見です」

エリシアさんが同意する。


「翔太さんを利用しようとしているような気がしました」

みんなの意見は一致していた。


「じゃあ、断りましょう。いまは生活に困っているわけではないし、コツコツ依頼をこなしていきましょう!」


その夜、宿で夕食を食べていると、黒木さんが現れた。


「考えはまとまったかい?」


「申し訳ないんですが、この前の件はお断りさせていただきます。」


「そうか、それは実に残念だ」

黒木さんの表情が変わった。


「でも、きっと他にも良い冒険者がいますよ」


「君のような能力者は他にはいない」

黒木さんが俺をじっと見つめる。


「君は自分の価値をわかっていない」


「価値?」


「癒しの光は、この世界では非常に貴重だ。

君がいれば、どんな危険な依頼でもこなせる」


「俺の力は貴重かもしれないですが、仲間を危険な目に合わせるわけにはいきません」


「甘いな」

黒木さんが嘲笑する。


「この世界は厳しい。理想論では生きていけない」


「翔太さんは甘くありません」

黙って横で聞いていたルナが怒って立ち上がる。


「翔太さんは、みんなを幸せにしてくれる優しい人です」


「そうです」

リリアンヌさんも同意する。


「翔太さんの優しさは、この世界に必要なものです」


「君たちもわかっていないな」

黒木さんがため息をつく。


「まあいい。そのうち現実を思い知ることになる」


黒木さんが去った後、俺は考えていた。


確かに、この世界は危険だ。

でも、だからといってこの力を振り回すのは違う気がする。

それに、あいつは何を考えているかわからない。


「翔太さん」

エリシアさんが声をかけてくれる。


「あなたの考えは正しいです」


「そうでしょうか?」


「人を救うための力は、美しいものです」


「私たちがついてます」

ルナが俺の手を握る。


「みんなで一緒に、正しい道を歩みましょう」

リリアンヌさんも微笑む。


俺は三人の温かい気持ちに包まれて、安心した。

確かに俺の力は特別かもしれない。

でも、一人で何でもできるわけじゃない。


みんなと一緒だから、正しい判断ができる。

みんなと一緒だから、強くいられる。


「ありがとう、みんな」

俺は三人を見回して、心から感謝した。


これからどんな困難が待っていても、この仲間たちとなら乗り越えられる気がした。


#第3章「試練と絆の深化」


黒木さんとの出会いから数日後、俺たちは隣の街アルトリアに向かっていた。


「この街には大きな図書館があるんです」

リリアンヌさんが地図を見ながら説明する。


「翔太さんの力と転移について、何か手がかりが見つかるかもしれません」


確かに、俺の「癒しの光」について詳しく知りたかった。

なぜ俺がこの力を得たのか、どこまで使えるのか、全然わからない。


「いいですね。調べてみましょう」


街道を歩いていると、前方で黒い煙が上がっているのが見えた。


「何かあったみたいですね」


急いで向かうと、商人の馬車が魔物に襲われていた。

でも、魔物を相手にしているのは......


「黒木さん?」


黒木雄介さんが炎の魔法で魔物と戦っていた。


「炎よ、敵を焼き尽くせ!」


強力な炎の魔法で魔物を一掃する。

確かに実力はすごい。


「助かった」

商人が黒木さんにお礼を言っている。


「報酬は確実に払うよ」


「当然だ」


黒木さんが俺たちに気づいた。


「やあ、翔太くん。奇遇だね」


「お疲れ様でした」


「君たちはどこに向かうんだい?」


「アルトリアです」


「そうか。僕も同じ方向だ。一緒に行かないか?」


ルナとエリシアさんが嫌そうな表情をしたが、断る理由もない。


「わかりました」


アルトリアまでの道中、黒木さんは色々と話しかけてきた。

「翔太くん、この世界に来てまだ間もないだろう?」


「はい、一ヶ月ほどです」


「僕はもう半年だ。この世界のことなら何でも教えてあげるよ」


「ありがとうございます」


「特に、君の力は本当に貴重だ。もっと有効活用すべきだと思う」


また同じ話だ。


「有効活用?」


「例えば、高位の貴族や富豪の治療をすれば、莫大な報酬がもらえる」


「でも、困っている人を助けるのに、お金は関係ないと思います」


「甘いなあ…」

黒木さんが首を振る。


「お金があれば、もっと多くの人を助けられるんだよ?」


確かに一理あるかもしれないが、何か違和感があった。


「翔太さんの考え方の方が正しいです」

エリシアさんが口を挟む。


「力は人を救うために使うべきです」


「君はエルフだったね」

黒木さんがエリシアさんを見る。


「エルフは理想主義的だから、現実を理解していないようだ」


「失礼な!」

ルナが怒る。


「エリシア姉さんは翔太さん以上に色々な苦労をしてきたんです」


「姉さん?」


俺は微笑んだ。

ルナがエリシアさんを慕ってくれているのが嬉しい。


「翔太さん」

リリアンヌさんが小声で話しかけてきた。


「あの方、何か企んでいるような気がします」


「そうですね。気をつけましょう」


夕方、アルトリアの街に到着した。


「それじゃあ、僕はこれで」

黒木さんが別れを告げる。


「また会う機会があったら、よろしく」


黒木さんが去った後、みんなで宿に向かった。


「翔太さん、あの人苦手です」

ルナがぽつりと言う。


「なんか、翔太さんを利用しようとしてる感じがします」


「私も同じ感想です」

リリアンヌさんが同意する。


「翔太さんのことを、道具みたいに扱おうとしている」


「俺も違和感がありました」


エリシアさんが俺の肩に手を置く。


「翔太さん、あなたは誰かの道具じゃありません」


「かけがえのない、私たちの大切な人です」


みんなの言葉に、胸が温かくなった。


翌日、街の大図書館で「癒しの光」について調べることにした。

「古代魔法の書物があるはずです」

リリアンヌさんが案内してくれる。


図書館は巨大で、無数の本が並んでいた。


「これだけあると、探すのも大変ですね」


「私が魔法で探してみます」

エリシアさんが検索魔法を唱える。


「あった。あちらの棚にあるようです」


『光の魔法大全』という古い書物を見つけた。


「『癒しの光』......あ!ありました」


本を読んでいくと、驚くべき事実が書かれていた。


「『癒しの光』は古代に存在した最高位の回復魔法。使い手は数千年に一人しか現れない」


「数千年に一人......」


「しかし、その力は諸刃の剣でもある。使い手の心が闇に染まった時、その光は破壊の力に変わる」


俺は身震いした。


「翔太さん」

ルナが心配そうに見つめる。


「大丈夫です」


俺は三人を見回した。

「みんながいてくれるから、俺は間違った道には進みません」


「そうですね」エリシアさんが微笑む。


「私たちが翔太さんを守ります」


「私たちも、翔太さんに守られてます」

リリアンヌさんが付け加える。


その時、図書館の外から大きな爆発音が聞こえた。


「何だ?」


窓から外を見ると、街の中心部で火災が起きていた。


「火災だ!急ぎましょう」


現場に駆けつけると、大勢の人が建物に閉じ込められていた。


「助けて!」


「中に子供がいるんです」

建物は炎に包まれていて、とても中に入れる状況じゃない。


でも、その時黒木さんが現れた。


「みんな、下がってくれ」


黒木さんが炎の魔法を使って、炎の威力を弱めて建物の炎を消そうとしている。


「すごい......」


確かに魔法の実力はある。

でも、建物の構造が崩れ始めていた。


「危ない!」


建物が崩壊し始める。

中にいる人たちが.....


俺は迷わず建物に駆け込んだ。


「翔太さん、危険です!」


「でも、放っておけません」


俺は「癒しの光」を全開にして、建物の中を照らした。


煙で前が見えない中、光を頼りに人々を探す。


「こっちです!」


一人、また一人と救出していく。

最後に残ったのは、小さな女の子だった。


「怖いよう」


女の子が泣いている。

俺は彼女を抱き上げた。


「大丈夫だよ。もう安全だから」


俺の光に包まれて、女の子が安心したような表情になった。

なんとか建物から出ると、みんなが心配そうに待っていた。


「翔太さん!」


ルナが俺に飛びついてきた。


「もう、心配したんですから」


「すみません」


「でも、翔太さんらしいです」

エリシアさんが微笑む。


「人を救うためなら、自分の身を顧みない」


「素敵です」

リリアンヌさんも感動したような表情をしている。


「翔太さんの勇気に、私たちも勇気をもらいました」


黒木さんも駆け寄ってきた。

「翔太くん、すごいじゃないか」


「黒木さんの消火魔法があったから助かりました」


「いや、君の判断と行動力があってこそだ」

黒木さんが俺を見つめる。


「やはり、君は特別だ…」


その夜、宿で休んでいると、救助した人たちがお礼に来てくれた。


「本当にありがとうございました」


「あの時は、もうダメだと思いました」


特に印象に残ったのは、最後に救出した女の子とその両親だった。


「お兄ちゃん、ありがとう」


女の子が俺に手作りの花束をくれた。

「お兄ちゃんの光、すごく温かかったよ」


俺の胸が熱くなった。

これが、俺の力を使う本当の理由だ。


みんなが帰った後、三人と一緒に屋上に上がった。


「翔太さん、今日は本当にかっこよかったです」

ルナが頬を赤らめて言う。


「私も感動しました」

リリアンヌさんが俺の手を握る。


「翔太さんみたいな人と一緒にいられて、誇らしいです」


「私も同じ気持ちです」

エリシアさんも俺に寄り添ってくる。


「翔太さんがいてくれるから、希望を持てます」


三人に囲まれて、俺は幸せを感じていた。


「俺こそ、みんながいてくれるから頑張れるんです」


「翔太さん......」


その時、ルナが俺の頬にキスをした。


「る、ルナさん?」


「好きです、翔太さん」


続いて、リリアンヌさんも俺の反対側の頬にキスをした。


「私も、翔太さんが大好きです」


最後に、エリシアさんが俺の額にそっとキスをした。


「私たち、翔太さんの特別な人になりたいです」

俺の顔が真っ赤になった。


「俺も......みんなのこと、大切に思ってます」


「本当ですか?」

三人が同時に聞く。


「はい。みんな、俺にとって特別な存在です」


「やった!」ルナが飛び跳ねる。


「これで、私たちは翔太さんの恋人ですね」

リリアンヌさんが嬉しそうに微笑む。


「みんなでひとつの家族みたいですね」

エリシアさんも優しく言う。


星空の下で、俺たちは新しい関係を築いた。


でも、この幸せな時間が長く続かないことを、俺はまだ知らなかった。


第4章「真の絆と新たな出発」


俺たちがアルトリアで幸せな日々を過ごしていたある日、街に緊急事態が発生した。


「大変です!古代の封印が破れて、強大な魔物が復活しました!」

街の冒険者ギルドから緊急招集がかかった。


「これは......古代の上級の魔物ですね」

エリシアさんが資料を見て顔を青ざめる。


「『破壊の魔王』......数百年前に封印されたはずの」


「僕も参加するよ」

黒木さんも招集に応じて現れた。


「こんな時こそ、異世界から来た俺たちが力を合わせるべきだ」

確かに、これは個人で対処できる相手じゃない。


「わかりました。協力しましょう」


街の外れにある古代遺跡から、巨大な魔物が現れていた。


「うわあ......でかい」


十メートルはありそうな巨体に、全身から邪悪なオーラが漂っている。


「翔太くん、君は後方支援だ」

黒木さんが指示を出す。


「僕とこの三人が前衛で攻撃する」


「わかりました」


戦いが始まった。

黒木さんの炎と雷の魔法、エリシアさんの氷魔法、ルナの格闘術、リリアンヌさんの光魔法。


でも、魔王の力は想像以上だった。


「くそっ、効かない!」


黒木さんの最大級の炎魔法も、魔王にはかすり傷程度しか与えられない。


「みんな、下がって!」

魔王の攻撃で、仲間たちが吹き飛ばされた。


「エリシア姉さん!」


「リリアンヌ!」

みんな重傷を負って倒れている。


「翔太くん、危険だ!逃げるんだ!」

黒木さんが俺の腕を掴む。


「でも、みんなが......」


「もう手遅れだ。君まで死ぬことはない」

俺は黒木さんの手を振り払った。


「みんなを見捨てるなんてできません」


「翔太くん!」


俺は仲間たちの元に駆け寄った。


「みんな、大丈夫ですか?」


「翔太さん......逃げて」

エリシアさんが弱々しく言う。


「あなたまで巻き込むわけには......」


「何を言ってるんですか」

俺は三人に手を当てて、癒しの光を注いだ。


「俺たちは家族でしょう?」


光に包まれて、三人の傷が癒えていく。


「翔太さん......」


「みんなで一緒に戦いましょう」

でも、その時魔王の攻撃が俺たちに向かってきた。


「危ない!」


俺は咄嗟にみんなを庇った。


巨大な衝撃が俺を襲う。

でも、不思議と痛みは感じなかった。


「え?」


俺の体が金色の光に包まれていた。


「これは......」


「翔太さんからすごい魔力が…!?」

リリアンヌさんが驚いている。


俺は本能で理解した。

みんなを守りたいという気持ちが、俺の力を覚醒させたんだ。


「みんな、俺と手を繋いでください」

三人が俺の手を握ると、光がさらに強くなった。


「この光......」

エリシアさんが気づく。


「『聖なる光』です。あの伝説の......」


俺たちの絆が、俺の力を最高レベルまで高めてくれた。


「行きましょう、みんな」


「はい!」


俺たちは一つの光となって、魔王に立ち向かった。


「聖なる光よ、闇を払え!」


俺たちの合体した光が魔王を包み込む。


「グオオオオ!」

魔王が苦しそうに叫んだ後、光に包まれて消滅した。


「やった......」

戦いが終わって、俺たちは抱き合った。


「翔太さん、すごかったです!」

ルナが興奮している。


「みんなのおかげです」


「僕たちの絆が、最強の力を生み出したんですね」

リリアンヌさんが感動している。


「翔太さん」

エリシアさんが俺を見つめる。


「あなたは本当に特別な人です」


「俺は普通ですよ。ただ、みんなを大切に思ってるだけです」


その時、黒木さんがやってきた。

「翔太くん......すまなかった」


「黒木さん?」


「僕は間違っていた。力は一人で振るうものじゃない」


黒木さんの表情が、今までとは違っていた。


「君を見ていて、本当の強さを知った」


「黒木さんも、一緒に戦ってくれたじゃないですか」


「いや、最後は逃げようとした。君のように、仲間を信じて戦うことができなかった」


黒木さんが深々と頭を下げる。


「教えてもらえないか?本当の仲間との絆を」


俺は黒木さんに手を差し伸べた。


「一緒に学んでいきましょう」


「翔太くん......ありがとう」


街に戻ると、大勢の人が歓迎してくれた。

「魔王を倒してくれてありがとう!」


「街を救ってもらった!」


特に、前回火事の時に救出した女の子が駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん、また街を守ってくれたんだね」


「みんなで力を合わせたんだよ」


女の子が俺たちを見回して、にっこり笑った。

「お兄ちゃんたち、みんな輝いてるね」


その言葉に、みんなが微笑んだ。


その夜、宿の屋上でみんなと星を見ていた。

「翔太さん」

ルナが俺にもたれかかってくる。


「私、翔太さんと出会えて本当に良かった」


「俺もです」


「これからも、ずっと一緒ですよね?」

リリアンヌさんが確認するように聞く。


「もちろんです」


「私たち、どこまでも一緒に旅をしましょう」

エリシアさんも微笑む。


「新しい冒険が待ってますね」


俺は三人を見ながら外の景色を回した。

最初は一人ぼっちで異世界に転移してきたけれど、今はこんなに大切な仲間がいる。


「みんな、愛してます」


「私たちも、翔太さんを愛してます」

三人が同時に答えた。

星空の下で、俺たちは永遠の愛を誓い合った。


翌朝、新しい旅の準備をしていると、黒木さんがやってきた。


「翔太くん、僕も一緒に旅をさせてもらえないか?」


「もちろんです」


「ありがとう」


黒木さんの表情が、すっかり明るくなっていた。


「それにしても」

黒木さんが苦笑いする。


「君は本当にすごいな。美人を三人も恋人にするなんて」


「うるさいです」

ルナがぷんぷん怒る。


「翔太さんは特別なんです」


「僕たちの絆は、恋愛だけじゃありませんから」

リリアンヌさんが上品に付け加える。


「家族のような、深い絆です」

エリシアさんも同意する。


「そうですね」

俺も微笑む。

「みんなで一つの家族です」


こうして、俺たちの新しい冒険が始まった。


異世界に転移してきて、最初は不安だったけれど、今はこの世界で生きていけそうな気がする。

大切な仲間たちと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。

俺たちの物語は、まだまだ続いていく。


新しい街で、新しい出会いで、新しい冒険で。


でも、一つだけ変わらないものがある。

俺たちの絆だ。

どこまでも、いつまでも、この絆を大切にしていこう。


愛する仲間たちと共に。


【完】

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