49話 おんぼろ軽トラ
翌日、高穂は灯油屋の駐車場を見ると少し仰天していた。
「ぼ……僕の86が軽トラになってる……」
「これで配達行くかもしれねぇだろ、ほら荷台にポリタンクを積んである、練習して来い」
「でもこれ横向きで穴空いてる……」
「いいだろ、練習だと思えば」
「それに固定しておかないと滑る」
「ああ、それをコントロールしてこその走り屋じゃないのか?」
「……ずぶぬれで帰って来ても知らないよ」
そう言って高穂は軽トラに乗り込んだ、すると助手席にもう一つポリタンクがあった。
「これは?」
「もしこぼした時に中身が無くなったらそれを使えってやつが」
「親父、練習して来いって事?」
「ああ、つべこべ言わず走ってこい」
そう言って海人は軽トラの荷台を蹴った。
「ほら行ってこい」
「どうなっても知らないからな」
そう言って高穂はアクセルを踏んだ。
(一体親父はどういう考えなんだ?)
そしてヒルクライムを始めたが後ろからびしゃびしゃという音が聞こえた。
(物凄く水がこぼれる音が聞こえる……ってかあれ水なのか?)
水じゃなければ炎上するリスクがある、だが水と言わなかったためか高穂は丁寧な走りをしていった。
(……どうやって走ればいいんだ?)
そして山の上の道の駅の駐車場にたどり着いたが中身は半分もなかった。
「……ん?」
高穂はポリタンクの秘密がわかった、荒い運転をしたら水がこぼれ、何かをすればこぼれなくて済むということだ。
「じゃ、ちょっと走るか」
高穂はポリタンクに液体を入れ、満タンにした。
「走るか……」
高穂は86を転がし、ダウンヒルを始めた。
(一体どうしたらこぼれずに済むんだ?)
コーナーでブレーキを踏みながら曲がった軽トラだがびしゃびしゃという音が一瞬止んだ。
(一瞬液体がこぼれなかった……つまり液体をこぼさないコツは荷重移動かスピードを出さないか……どっちだ?)
高穂は次のコーナーでブレーキングドリフトをした、すると水はこぼれなくなった。
(液体がこぼれなくなった……荷重移動をしていけばこぼれないのか)
この事に気が付いた高穂はコーナーの手前でブレーキを踏み、曲がることを練習していった。その時灯油屋の前では海人がずっと待っていた。
(あいつの事だ、水を全部こぼしてるだろう)
海人は高穂の事をあまり期待していなかった、だが可能性に賭け、無茶なことをさせていた。
「おっ、帰って来たな」
海人は軽トラに向かい、高穂は降りてくると真っ先にポリタンクを見に行った。
「ほぉ、やるじゃないか」
海人はポリタンクに水が入ってることに気が付いた。
「……予備のポリタンクはどうだ?」
海人は予備のポリタンクを見た。
「もともとこれは往復分しか入れてなかった、それで少しだけでも残してくれただけ、妥協点ってところかな」
そう言って海人は煙草をふかした。
「親父、たばこを買ったのか?」
「ああ、この方が親父臭がするだろ」
「いや、たばこ臭い」
海人は高穂にタバコを否定され、少しだけ寂しい気持ちになった。
(まぁ、親の気持ちがわからないってのが今の子供だな)
時の風情を感じる海人であったが高穂はこの特訓の意味が解らなかった。
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