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勇者パーティーハーレム!……の荷物番の俺の話  作者: バナナ男さん


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8 俺である理由

直ぐに多次元ボックスから二つ鍋を出し、カパッと開けてみせた。



<多次元ボックス>


多次元と呼ばれる空間へ繋がる箱型のアイテム。

欲しいと願うだけで空中に入口が出現し、どんなモノでも出し入れすることができる。

製作者のレベルによりその収容できる大きさが違う。

中に入れておけば時が止まるため、食べ物も腐らない。



この便利なアイテムのお陰で、暇な時は沢山料理を作り置きしておいて、好きな時に出せる。


俺の中では、地球にも是非とも普及してほしいアイテムNo. 1に輝いている。



一人暮らしだと一食分作るの難しいんだよな……。



夏に気づくと傷んでしまっていたファミリーサイズのキャベツとか、勿論ちゃんと食べたが味落ちは確実にしていた食材達を思い出し嘆く。


ヒカリ君は俺の言葉を聞いて睨む目の勢いは衰えないが、ため息をつきながら空いている場所に座ってくれた。


それにキラッと目を輝かせ、セカセカセカ〜と皿に作り置きのオカズをこれでもかと盛り付けていく。



実はこの世界、大豆が結構主流栽培物であったため醤油も当然のようにあった。


しかしどうもお肉に掛けるくらいしか活用法がなかった様だったので、他の出汁と共に煮込み料理に使ったらこれまた大好評!


実はそれで作った煮物はヒカリ君の大好物になっている事も知っているのだ。


ドヤッとしながら、実に若者に相応しい大盛り煮物丼ぶりをツンツン勇者様に差し出すと、そのまま無言で食べ始めた。


ムスッ!としているが、スプーンの勢いは衰えず、やはりお腹は減っていた様だ。


そうして食事をしている間に、先程吹っ飛ばされたコップを回収すると手早く拭き取り、また熱いお茶を淹れてあげる。


そしてそれを少し冷ましてから差し出してやれば今度は振り払われずに受け取ってくれた。



「……惨めな中年。」



ボソッと呟かれる言葉は辛棘だが、先ほどのトゲトゲオーラは少しだけ鳴りを潜めている。



「いつかは誰でも中年になる。今から俺を見てよく勉強しておくように。」



へんっと鼻で笑ってやると、アイリーン達がここぞとばかりに俺をなじる言葉を開始。



「ふん!勇者様をあんたみたいなしょぼくれたおじさんと一緒にしないでよね!

勇者様には、輝かしい未来が待っているんだから!」


「そうよぉ〜。なんていっても勇者様はこの旅が終わったら王様の次の身分が与えられるの。

地位も名誉も財も思うがままの夢の様な生活が待っているわ〜♡ 」



アイリーンとメルクがウットリ〜とした表情で、勇者の輝かしい未来を語る。


それにコホンと咳払いをして話し出すのはキュアだ。



「歴代勇者様達は、その後誰もが幸せな人生を送ってきました。

ある者は王女と婚姻を交わし王になった者もいれば、国のトップ層に名を連ね一生贅を尽くした生活を送った者もいます。

他にも沢山の女性を囲いハーレム王になった者もいたそうです。」


「スゲェよな〜。あたい達もこの旅が終われば一生遊んで暮らせる生活が待ってるんだぜ!」


「へぇ〜。まぁ、そりゃー命の危険があるし、その分給料も高くもらわないとな。」



つまりハイリスク、ハイリターンの代表選手みたいなもんか。勇者パーティーは。


ほほ〜う?


自分には縁のない世界にイマイチ現実味を感じられずに、首を傾げる。


実は俺もこの旅が終わり、訳のわからんなんちゃら杯で異世界へ帰る時に、結構なお金を貰えるそうだ。



しかし……正直そのお金って使えるの?って感じだし?

趣味は近所のドッグランの見学くらいだし?

それより帰って消息不明で仕事クビになっている方が痛い!



「ふぐぅぅぅっ!!」



見えない将来、更に転職の大変さを考えると頭が痛くなって思わず呻く。



履歴書の空白に『異世界で勇者のパーティー加入』とか書いて大丈夫??────無理無理〜♬



自分で言っててハハッ!と笑ってしまうと、ヒカリ君が突然ガンっ!と俺に皿を投げつけてきた。



「……あんたさ、ホントに何のために来たんだろうね?だって不細工だし、役に立たないし?

あ、俺たちみたいに戦わなくても自分は沢山お金貰えるんだっけ。随分と運がいいよね。 」


「えっ?えぇぇぇ〜……。あ、あのな〜……!」



ハイリスクNO!な俺からしたら、こんなのちっともラッキーじゃな〜い!

お金を貰っても多分使えないし!(日本円でお願いします!)



心外に次ぐ心外に流石に物申してやろうと思ったが……その瞬間、突然目の前にあの境界線が現れた。


そして何故か周りの景色は寂れた荒野みたいな所に変わっていて……周りにいたはずのアイリーン達もいない。



「あ……あれ?」



驚いてアワアワしていると、線を引いた向こう側に背を向けているヒカリ君がいて、ただぼんやりと遠くを見つめていた。



「んん〜??えっと……ヒカリく〜ん!」



とりあえず名前を呼んでみたが反応なし。


俺からは背中しか見えないので、彼がどんな表情をしているかは分からなかったが、なんとなく纏う雰囲気が────俺がよく知っているモノの様な気がした。



────ハッ!


突然意識を取り戻すと、目の前には俺を見下す様な目で睨みつけてくるヒカリ君、不自然に逸らされるアイリーン達の姿が……。



「???」



まるで白昼夢の様な出来事に首を傾けながら、睨みつけてくるヒカリ君をボンヤリと見つめ返した。



何だったんだ?今の……??



何がなんだか分からず、頭をボリボリと掻きながら更に周囲を見回したが、ここには先ほどと変わぬ森の景色が広がっているだけだ。


ますます首を傾げながら視線をヒカリ君へ戻すと、そこには激怒しているヒカリ君の顔が……。


とりあえずこのままだと無視している事になってしまうと思い、頷きながら答えた。



「あ〜……うんうん。多分『ご飯をいっぱい食べようね』だと思うんだよな〜神様の言いたい事。

そんなに文句あるなら、ちゃんと食べてちゃんと寝ろよ。

きっとそんな子供みたいなワガママ言うからだぞ、俺が来たの。」



一応人生の先輩として真面目に答えたつもりだったが、ヒカリ君とアイリーン達はポカンとした顔をする。


それに俺は大きなため息しか出ない。



何てったって全員生活能力が低すぎる!

そんなんじゃ、地球に来たら直ぐにゴミ屋敷からの孤独死決定だ!



俺は全員が静かになったのをいい事に、チャンスとばかりにチクチクと反撃してやった。



「ヒカリ君は全体的に生活不規則、家事能力ゼロ!脱いだら脱ぎっぱなしだし、お皿は出しっぱなし!食べる時は頂きますもご馳走様も言わない!

幼子以下!野良ニャンニャンと同類!」



「────!!!なっ!!」



ヒカリ君は図星を差されて、ブワッ!!と逆ギレオーラを出してきたが、ニャンニャン怒っても、そんな猫パンチなど怖くないぞ!


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