32 情報多すぎ
「しかし、昨日のお知らせと内容が違いませんか?
確か……なんちゃらっていう神コップをヒカリ君にあげた後、俺が帰されるのでは?」
「か、神コップ……。あ......なんかジワる……。
あー……その事なんだけど、勇者君がね……?どうも、俺の宝物である神コップ?を壊そうとしていたからさ。
イシさんを帰した後に、ここから神託マイクで、またお空から願いを聞いて叶えてあげることにしたんだよね〜。
あんな人間見たことないよ……規格外もいいとこだよ、全く〜。
しかも前なんて『ちょっとそこまでお使いに〜♬』レベルで俺を殺そうと考えてたんだよ?激やばっしょ〜!」
キーキーと騒ぐ神さま兄さんは、変な黄金色のピカピカマイクを取り出してブンブンと振り回す。
もしかしてアレに向かって喋ると、神託を授けられるのかな……?
神託マイクという言葉に少しジワっとくるものがあったが、それよりも、ちょっと神様兄さんの言っている内容が信じられなくて首を大きく傾げる。
「ヒカリ君はそんな事しないと思います。そもそもそんな事する理由がありません。」
キリッ!と表情を引き締めてそう断言すると、神様兄さんは大きなため息をついた。
「もうめんどくさいから言っちゃうけど……。神コップを破壊してしまえば、イシさんの帰る道が永遠になくなるって知ってたんだよ。
こっわ〜……。それに気づいちゃう能力も、壊せる力も、その発想も全部怖いよ。あいつ〜。
俺の大事な大事な神コップちゃん、壊されてたまるかって感じぃ〜!」
神様兄さんがプンプン怒りながら手を前に突き出すと、突然その手の先に黄金に輝く大きなカップが出現した。
大きさ的には両手で抱えるくらいで、イメージ的にはレース大会などで貰う優勝カップに似ている。
そんな黄金のカップには、沢山の光り輝く宝石が埋め込まれていて、確かに神々しさの様なモノを感じるといったら感じるなという感じであった。
神様兄さんはそれを優しく抱きしめ、更にチュチュっ!とキスまでし始めたので、それが終わるのを一応待ってから疑問を口に出した。
「え〜と……俺を帰さないためっていうのはおかしいかと……。
ヒカリ君は、俺をとっとと帰すために頑張りました。何か別の目的があると思うのですが……。」
ハテナを大量に頭から飛ばしていると、神様お兄さんはもう一度ため息をつきながら、シャンパンタワーを指差す。
すると、シャンパンタワーはグニャ〜と粘土の様に形を変えていき、そのままハートの形の巨大な窓になってしまった。
「イシさんって凄くポジティブだけど、結構自己評価低いよね。
今あっちの方では大変な事になってるよ。」
「は、はぁ……そうでしょうか……。大変な事って────……?」
呑気に質問しかけたが、ハート型の窓がパカーッと開いた瞬間、とんでもない映像が飛び込んできたためピタリと口を閉じる。
「ぎゃ……ぎゃああぁぁぁ!!」
「ゆ、勇者様ぁぁぁ〜どうかお許しをぉぉぉぉ!!!」
阿鼻叫喚の叫び声と共に見えたのは、ヒカリ君が剣を振って巨大な建物?豪邸??を跡形もなく壊している映像であった。
しかもヒカリ君は、今まで見たことがないくらい大激怒している。
「…………。」
その凄まじい怒気が恐ろしすぎて、ヒュッ!と変な息を飲むと、周りでギャアギャア悲鳴をあげている人達の中で一番煩い人へと視線を向けた。
服がビリビリでほぼ全裸、更に頭が斑らハゲになってしまっている知らないおじさんだ。
す、凄まじい剣風で、服と髪の毛があんなに……??
目が点になってしまった俺の眼の前で、そのおじさんはヒィヒィ!と悲鳴をあげながら、必死に金貨?の山に縋りつき大号泣している。
じょ、情報量が多すぎる!
そのまま呆気に取られていると、すっかり建物全てを破壊し尽くしたヒカリ君は、そのおじさんの方へ顔を向けると、そのままスタスタと近づいていった。
「どっ……どうかどうかお許しをぉぉぉぉ〜!!!
イ、イシ様を無能なドブネズミなんて言って意地悪までしてすみませんでした────!!!」
おじさんはガタガタ震えながら大声で叫び、金貨の山にしがみ付いたが────ヒカリ君は完全無視して剣風でおじさんを吹き飛ばす!
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────────!!!」
全裸のまま吹き飛ばされたおじさんは、そのままゴロゴロと転がっていってしまい、ヒカリ君はガラ空きとなった金貨の山に渾身のパンチ。
────パンッ!!!
金貨達は、金色の花火みたいに派手に爆発してしまった。
「……うわ〜キラッキラ〜!」
ニッコリしながら現実逃避をしていると、突然ヒカリ君はスッと黒ペンを取り出すと、そのまま真っ白に燃え尽きているおじさんに近づき、その顔に沢山の茶色い排泄物の絵を描きだす。
サラサラサラ〜♬
迷いなく描かれるソレはおじさんの顔を支配してしまい、もう誰か分からないほどだ。
更には、周りにへたり込んでいる人達にも全員同じモノを書いていた。
何故こんな酷いことをするのか分からず、俺は隣で大爆笑している神様兄さんに尋ねる。
「ヒカリ君に何があったんですか??あのおじさんに相当恨みでも……?」
「ん〜……?なんか生贄らしいよ。イシさんを呼び戻すための。」
「い、生贄??それは一体……??」
ここら辺でもう本当に意味が分からなくて、頭を抱えてしまった。
しかし神様兄さんの方は、突然笑いを引っ込めてブルっと大きく震える。
「俺も全く意味わかんない。アイツ本当に頭おかしいって!
イシさんをいじめた奴らの財産を全部破壊して、さらにあんな落書きまで……。
それを召喚の間に集めてどうするんだろ??」
「俺を虐めた人達……??」
『虐め』と聞くとピンッ!と来なかったのだが、先程犠牲になったおじさんの言っていた言葉を思い出し、やっとジワジワ記憶が蘇ってきた。
『異世界人などと大層な肩書だが、実際は無能なドブネズミではないか。』
『ドブネズミに人の部屋など必要ないだろう?馬小屋で十分だ!』
一人のキラキラした服をきたおじさんが、突然異世界最初の日にタオル一枚を投げつけ、そう怒鳴ってきた。




